なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アムステルダム・キル」 The Amsterdam Kill (1977)

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監督:ロバート・クローズ
製作:アンドレ・モーガン
製作総指揮:レイモンド・チョウ
原案:グレゴリー・ティーファー
脚本:ロバート・クローズ
   グレゴリー・ティーファー
撮影:アラン・ヒューム
音楽:ハル・シャッファー
出演:ロバート・ミッチャム
   リチャード・イーガン
   レスリー・ニールセン
   ブラッドフォード・ディルマン
   ケイ・ルーク
   ジョージ・チェン
香港・アメリカ合作/88分/カラー作品




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<あらすじ>
香港とアムステルダムで相次いで中華系麻薬カルテルの密売人が殺される。カルテル同士の縄張り抗争によるものと思われた。身の危険を感じた大物ボス、チャン・ウェイ(ケイ・ルーク)は、ロンドンに住む元麻薬捜査官クインラン(ロバート・ミッチャム)をアムステルダムへ呼び寄せる。
クインランはかつて麻薬捜査局でも指折りの腕利き捜査官だったが、一匹狼で周囲との折り合いが悪く、汚職の嫌疑をかけられて組織を追放された身だった。そんな人物だからこそ信用できると考えたチャン・ウェイは、彼に麻薬捜査局との司法取引の仲介を依頼する。麻薬ビジネスから足を洗って引退しようと考えた彼は、密売網の内部情報を提供する見返りとして、アメリカのパスポートと報奨金、そして身の安全を保証して欲しいというのだ。
チャン・ウェイのボディガードとして唯一信頼できる刑事ジミー・ウォン(ジョージ・チェン)を香港から呼んだクインランは、入れ替わりで麻薬捜査局の香港支部へと向かう。相談を受けた元上司オダムス(ブラッドフォード・ディルマン)は懐疑的だったものの、カルテルを一網打尽に出来れば自らの出世にも有利だと考え、まずは情報の信ぴょう性を試すことにする。
建前上、香港警察の主導のもとで捜査に協力するクインラン。最初の情報は正確なものだった。おかげで大量の麻薬を押収することの出来たオダムスは上機嫌だったが、その次にカルテルと通じているという検事を逮捕したところ、証拠不十分で釈放せざるを得なくなる。さらに、アムステルダムではチャン・ウェイが敵対カルテルに命を狙われる。何者かがチャン・ウェイの裏切りに気付いた可能性があった。
そこで、第3の情報として麻薬製造工場の場所を教えられたクインランは、自ら事前に現場へ忍び込んで調査をする。十分な証拠が揃ったと考えた麻薬捜査局は、現場指揮官リッジウェイ(リチャード・イーガン)の監督のもと検挙に乗り出すものの、待ち構えていた武装集団によって捜査官は皆殺しにされてしまった。
麻薬捜査局の内部に裏切り者がいると考えたクインランは、真相究明のためにアムステルダムへ戻る。アムステルダム支部長ライリー・ナイト(レスリー・ニールセン)が協力を申し出るものの、それを断ったクインランはジミーと共に捜査へ乗り出すのだったが…。
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ショウ・ブラザーズと並んで香港を代表する映画スタジオであり、ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』('73)で初めてハリウッドとの合作映画に大成功したゴールデン・ハーヴェストが、今度はハリウッド映画界のレジェンド、ロバート・ミッチャムを主演に迎えて製作した香港・アメリカ合作の犯罪アクション。監督には『燃えよドラゴン』のロバート・クローズを起用し、脇役にもハリウッドのベテラン名優を揃え、ロケ地だって香港にアムステルダムにロンドンと国際的。ヒットする要素は幾らでもあったはずなのだが、残念ながら見事にコケてしまった。
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恐らく、最大の弱点はロバート・クローズ監督の演出であろう。後に『007』シリーズや『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』('83)、『暴走機関車』('85)などを手掛ける名カメラマン、アラン・ヒュームの撮影技術のおかげもあってか、とりあえずビジュアルの見栄えだけは悪くないのだが、ストーリー展開のテンポはいまひとつだし、サスペンスを盛り上げるべきシーンにも緊張感が殆ど見られない。中でも、肝心のアクション・シーンが全体的にパッとしないのは問題だ。とりあえず、ここぞ!というスタントの見せ場でスローモーションを多用し過ぎ。まあ、サム・ペキンパーを見習ったであろうことは想像に難くないのだが、なにしろアクションのクオリティが違うというか、これしきのスタントをいちいちスローで見せられてもねえ…というトホホ感は否めまい。
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敵の本拠地を巨大ブルドーザーで破壊しまくるクライマックスも、とりあえずお金がかかっていることだけは分かるのだけど、その合間に挟まれる銃撃戦がグダグダ。『燃えよドラゴン』が傑作たり得たのは、やはりブルース・リーのおかげだったのだろうな…ということは、その後のクローズ監督作品を見ているとよく分かると思うのだが、本作でも改めてその事実を思い知らされることだろう。ちおなみに、スタント・コーディネーターは、後に『ロンドン・コネクション』('79)でも再びクローズ監督と組むイギリス人、アラン・スチュアート。映画よりもテレビでの仕事が多かった人のようだ。
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また、脚本も説明的なセリフに頼り過ぎている嫌いがあり、いかにも作為的で不自然なシーンが少なくない。登場人物のキャラクターも紋切型で描き込みが浅いため、いろんな意味で感情移入の余地なし。なんだろう、全員が話を先に進めるためのコマにしか見えないのだよね。最後に明かされる黒幕の正体にしたって、やっぱりアンタでしたか…としか思えず。所詮はB級娯楽映画なので、はなから深い人間ドラマなどが期待しないし、あえて必要ないとも思うのだが、それでもせっかくベテランの名優を揃えているのだから、もうちょっと各役者の個性を生かすなり引き出すなりの工夫は欲しかった。
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ただ、香港アクション映画ファンにとって楽しみなのは、麻薬カルテルの用心棒や殺し屋として顔を出しているスタントマンの面々だろう。'80年代にアイドル系アクション俳優として日本でも大ブレイクするユン・ピョウをはじめ、ジャッキー・チェンの右腕的スタントマンとして『プロジェクトA』('83)や『ポリス・ストーリー/香港国際警察』('85)などで活躍するマース、ブルース・リーのスタントマンとして知られるユン・ワー、『霊幻道士』('85)シリーズの道士役で有名になるラム・チェンインなどが登場する。どこに出ているのか探してみるのもまた一興だ。
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で、若くて活きのいいチンピラ集団を相手に殴る蹴るの大立ち回りを繰り広げたり、網でぐるぐる巻きになって宙吊りにされたりと、老体に鞭打って頑張っているロバート・ミッチャム。『帰らざる河』('54)や『眼下の敵』('57)、『恐怖の岬』('62)、『ザ・ヤクザ』('74)など数々の傑作に主演したハリウッドの大物タフガイ俳優ミッチャムだが、本作の劇場公開当時は既に60歳で、そろそろ脇に回ることも多くなってきた時期。今だったらリーアム・ニーソンとかブルース・ウィリスとか、還暦過ぎてもハードなアクションの出来る俳優は少なくないが、昔は60歳と言えば立派な老人だ。まだまだやれるところを見せたかったのかもしれないが、さすがに見ていてちょっと痛々しい。まあ、本人は後に「金のために引き受けた仕事だけど、出たことを後悔している」みたいなことを言っていたらしいのだけれど(笑)。
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そんなミッチャムの若い相棒ジミー・ウォン(!)役を演じているのは、香港生まれの中国系アメリカ人俳優ジョージ・チェン。ちょっとトボケた味わいのオジサン俳優として、『ラッシュアワー』('98)とか『スタスキー&ハッチ』('04)などのコメディを中心に活躍している人だが、本作の当時はまだ28歳でムチャクチャ若い。出世欲の強い麻薬捜査局の香港支部長オダムス役には、史劇大作『剣と十字架』('61)や動物パニック映画『燃える昆虫軍団』('75)に主演したブラッドフォード・ディルマン。この人も、奥さんを香港に連れて行けるからという理由だけでオファーを引き受けたのだとか。また、現場指揮官のリッジウェイ役には、テーマ曲「夏の日の恋」があまりにも有名な名作ラブロマンス『避暑地の出来事』('59)で知られるリチャード・イーガンが扮している。
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麻薬捜査局アムステルダム支部長には、まだコメディ俳優へ路線変更する前のレスリー・ニールセン。さらに、情報提供を申し出る麻薬カルテルのボス役として、'30年代より“名探偵チャーリー・チャン”シリーズなどのB級プログラム・ピクチャーに数多く出演し、晩年の『グレムリン』('84)における骨董品店の老人役でも知られる中国系俳優ケイ・ルークが顔を出している。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:2/時間:87分/発売元:Medium Rare Entertainment/Fremantle Media International (2016年)
特典:オリジナル劇場予告編/ロケーション・ギャラリー

by nakachan1045 | 2017-06-18 23:19 | 映画 | Comments(0)

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