なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!」 I, the Jury (1982)

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監督:リチャード・T・ヘフロン
製作:ロバート・ソロ
製作総指揮:マイケル・レオーネ
      アンドリュー・D・T・ファイファー
原作:ミッキー・スピレーン
脚本:ラリー・コーエン
撮影:アンドリュー・ラズロ
音楽:ビル・コンティ
出演:アーマンド・アサンテ
   バーバラ・カレラ
   ポール・ソルヴィーノ
   アラン・キング
   ローレン・ランドン
   ジェフリー・ルイス
   ジャドソン・スコット
   バリー・スナイダー
アメリカ映画/111分/カラー作品




<あらすじ>
ニューヨークのマンハッタンに事務所を構える私立探偵マイク・ハマー(アーマンド・アサンテ)。かつてベトナムで自分の身代わりとなり、片腕を失った親友ジャックが何者かによって殺されてしまう。友人の殺人課刑事チェンバース(ポール・ソルヴィーノ)の反対にも耳を貸さず、復讐を誓って捜査に乗り出したハマーは、ジャックの妻から彼がインポテンツで生前にセックス・クリニックへ通っていたこと、なにか大きな儲け話を掴んでいたらしいことを知る。
秘書ヴェルダ(ローレン・ランドン)の調査によって、ジャックが同じくベトナムの戦友ジョー(ジェフリー・ルイス)のもとを訪ねていたことも判明し、ハマーはジャックが元CIAのロメロ大佐(バリー・スナイダー)と接触していたことをジョーから聞き出す。ロメロ大佐は、かつてベトナムで特殊な薬物による洗脳で大勢を殺した戦争犯罪者。現在はその薬物を使った犯罪で一大帝国を築きあげようとしているという。
ジョーの山小屋で、謎の殺し屋集団に襲撃を受けたハマーたち。死闘の末に街へ戻ったハマーは、旧知のマフィア・ボス、カレッキ(アラン・キング)がロメロと関わっていることを突き止め、さらにはジャックの通っていたセックス・クリニックの女性経営者シャーロット(バーバラ・カレラ)に接触する。
クリニックで患者のセックスの相手をする双子姉妹に、ジャックやロメロ大佐のことを訊ねるハマーだが、その直後に姉妹は惨殺されてしまう。彼女たちが事情を知っているはずだと言っていた女性も殺されていた。犯人はケンドリックス(ジャドソン・スコット)というクリニックの患者で、例の薬物によって洗脳され殺人鬼と化していたのだ。
ヴェルダにケンドリックスの尾行を任せたハマーだが、ロメロ大佐の一味に拉致されて拷問を受ける。その頃、ヴェルダもケンドリックスに捕まってしまい…。

サム・スペードやフィリップ・マーロウと並ぶハードボイルド小説の古典的ヒーロー、マイク・ハマーを'80年代に甦らせた探偵アクション。これがですね、大胆かつ過激なセックス&バイオレンスてんこ盛り。ド派手なガンアクションとカーチェイスに、ゴキゲンなジャズ・ファンクとベタなアメリカン・ジョークが散りばめられ、ナイスバディなお姉さまたちが惜しげもなくバンバン脱ぎまくるという、童貞男子のしょーもない妄想を絵に描いたような、素晴らしいとしか言いようのないB級エクスプロイテーション映画に仕上がっている。

原作は1947年に出版されたミッキー・スピレーン著、マイク・ハマー・シリーズの第1弾「裁くのは俺だ」。もともとの原作自体がセックスやバイオレンスの要素満載で、リアルタイムでは眉をひそめる良識人も多かったパルプ小説なわけだから、本作の下世話過ぎるくらい下世話な通俗性は、すなわち原典のスピリットに忠実なものとも言えよう。

'50年代よりたびたび映画化されてきたマイク・ハマー・シリーズだが、昔はヘイズ・オフィス(日本で言うところの映倫)の厳しい検閲のせいで性描写や暴力描写に制限があったことから、どうしても内容的に大人しくならざるを得なかった。'68年にヘイズ・コードが廃止されて新たな倫理基準が設けられ、ハリウッド映画にもセックスとバイオレンスの時代が到来するわけだが、それ以降に映画化されたマイク・ハマー・シリーズは本作が初めて。ある意味、満を持しての映画化とも言えよう。

脚本を手掛けたのは、『悪魔の赤ちゃん』('73)シリーズのようなホラー映画から『ブラック・シーザー』('73)に代表されるブラック・ムービー、さらにはテレビの『刑事コロンボ』シリーズに至るまで、ありとあらゆるジャンルで才能を発揮してきた娯楽職人ラリー・コーエン。原作のストーリーや設定にいろいろと変更を加えつつも、まさしく見せ場に次ぐ見せ場で観客を楽しませるノンストップ・エンターテインメントとして仕上げられている。

冒頭から、浮気調査を頼まれた依頼人の美人妻とちゃっかりベッドインしてしまう我らがマイク・ハマー。調子がいい上に血気盛んで喧嘩っ早く、行くところ銃弾と血の雨が降り注ぐ。仲のいい殺人課刑事チェンバースからは、「お願いだから今日は誰も殺すなよ」とか釘を刺されてしまう始末(笑)。ダンディで渋みのある理知的なサム・スペードやフィリップ・マーロウと違って、本能のままに突っ走る暴れん坊探偵マイク・ハマーらしさが全開だ。

演出は主にテレビムービーで活躍したリチャード・T・ヘフロン。実はもともと脚本担当のコーエン自身が監督するはずだったが、プロデューサー陣との折り合いが悪く、撮影開始から1週間ほどでクビを言い渡されてしまった。低予算ゆえの安っぽさは否めないものの、ヘフロン監督の演出は軽妙で躍動感があり、いい意味でのB級感が満載だ。どことなく'70年代のグラインドハウス感さえ漂うのが面白い。

キャンプ場に突っ込んだ暴走車がテントを引っぺがすとカップルがHの真っ最中だったり、銃撃シーンで酔っ払いの手に持った酒瓶に弾が当たってガッカリ…みたいなコテコテのギャグにもニヤリ。映画の撮影現場で特殊効果の装置が壊れて大パニックになったり、和食レストランで鉄板焼きシェフがいきなり包丁で目の前の客をぶった切ったりと、んなバカな!と言いたくなる荒唐無稽さもまた愉快だ。

でもって、ヘアヌードも当たり前のエロシーンの数々。セックス・クリニックでの乱交パーティなんか、日本での劇場公開時は洋ピンかと見紛うほどのボカシのオンパレードだったが、実際にこのシーンではサマンサ・フォックス(イギリスの歌手とは別人)やキャンディダ・ロイヤルなどのハードコア・ポルノ女優が動員されている。また、有名な双子のプレイメイト、ハリス姉妹もかなりきわどいヌードを披露。もちろん、ヒロイン役バーバラ・カレラのヘアヌードも拝める。

本作は20世紀フォックスが配給したわけだが、当時はメジャー映画でも過激なエロはさほど珍しくなかった。今となっては隔世の感ありといったところだろうか。最近では『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』('15)ごときの性描写で物議を醸すわけだから、この30年ほどでハリウッド映画界がいかに保守化したのかよく分かるだろう。ケーブル局制作のテレビドラマの方がよっぽど自由だもんな、エロとグロに関しては。

また、原作通りにニューヨークのストリートでロケされた猥雑な雰囲気もいい。やはり、マイク・ハマーといえば大都会ニューヨークですよ。マンハッタンの事務所の窓から見えるのは、エロビデオ屋とか風俗店が軒を連ねる当時のタイムズ・スクエア界隈。このいかがわしさこそが本作の醍醐味だ。それまでの映画化作品は大人の都合で全てロサンゼルス・ロケだったので、ニューヨークで撮影されたマイク・ハマー映画というのも本作が初めてだった。

ただ、CIAの関与を匂わせる事件や陰謀の全容は分かりづらく、犯罪ミステリーとしてはいまひとつスッキリしない。地元マフィアのボス、カレッキと黒幕ロメロ大佐の具体的な関係性も最後までよく分からず。まあ、アイディアを詰め込み過ぎてまとまりがなくなるというのは、ラリー・コーエンの脚本ではままありがち。結果的に面白ければオーケーじゃないでしょうか(笑)。

現代版マイク・ハマーを演じるのは、本作が初主演となったアーマンド・アサンテ。ラテン系の甘いマスクをした女たらしのタフガイといった感じで、原作の強面なイメージとはちょっと違うかもしれないが、これはこれで全然悪くない。ちなみに、無名時代のブルース・ウィリスがハマー役のオーディションを受けたとの噂もあるが、これは厳密に言うと間違いで、ウィリスが受けたのは悪役のオーディションだったという。ただ、面接をしたラリー・コーエンがウィリスのスター性を見抜き、ハマー役に向いているかもしれないと考えたことは事実とのこと。しかし、当時既にアサンテとの契約が成立していたこともあり、コーエンは「是が非でも役者を続けるように」とウィリスにアドバイスをして別れたのだそうだ。

ヒロインの悪女シャーロット役には、翌年の007番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』('83)で、ボンドガール史上屈指の悪女ファティマ役で強烈な印象を残すエキゾチック美女バーバラ・カレラ。これがね、もう惚れ惚れとしてしまうくらい、ゴージャスでエロくて貫録抜群。この映画の魅力の半分…と言ったら大袈裟だけど、少なくとも三分の一は彼女のおかげで成立していると言っても過言ではないほどの存在感だ。

で、そんなバーバラに負けず劣らず素晴らしいのが、ハマーの秘書ヴェルダ役を演じているローレン・ハットン。グラマラスでキュートでチャーミング、しかも武器弾薬に精通していて頼りになる気風のいいお姐ちゃん。まさに童貞男子の理想的ヒロイン像ですよ。ラリー・コーエン作品には欠かせない常連組でもある彼女だが、このヴェルダ役はコーエンが彼女のために用意したキャラクターの中では最大の当たり役。コーエンとはプライベートでも親しく、本作を降板後も『空の大怪獣Q』('82)の撮影のためニューヨークに残っていた彼とたびたびランチを共にし、撮影の経過などを報告していたそうだ。

ハマーと腐れ縁の殺人課刑事チェンバース役には、『イルカの日』('73)や『クルージング』('80)、国民的長寿テレビドラマ『LAW & ORDER』などでお馴染み、女優ミラ・ソルヴィーノの父親でもある名優ポール・ソルヴィーノ。ハマーのベトナム戦友ジョー役には、クリント・イーストウッド映画の常連で、やはり女優ジュリエット・ルイスの父親ジェフリー・ルイス。ハマーと旧知のマフィア・ボス、カレッキ役には、巨匠シドニー・ルメットのご贔屓だった喜劇俳優アラン・キング。殺人鬼ケンドリックス役には、『スタートレックⅡカーンの逆襲』('82)でカーンの右腕ジョアキムを演じたほか、テレビの各『スタートレック』シリーズにたびたび出演し、『Xファイル』や『V』でもエイリアン役を演じた怪優ジャドソン・スコット。脇役も個性的な実力者がズラリと揃う。

ただ、陰謀の黒幕であるロメロ大佐役を演じるバリー・スナイダーは、確かにいい役者ではあるのだけれど、いかせん悪の親玉としては重量感に乏しい。なんというか、地味なんだよね。スナイダーはニューヨーク在住のローカル俳優で、主な活躍の場は舞台だったとのこと。もうちょっとキャラの強い役者を充てていれば、終盤のハマーとの一騎打ちももっと盛り上がったように思う。演技は抜群に上手いのだけどね。銃弾を受けて絶叫する辺りの痛そうなこと!最後のこと切れ方も滅茶苦茶リアルで感心する。

ちなみに、007シリーズを彷彿とさせるタイトルクレジットも印象的な本作だが、それもそのはず、実は最初からシリーズ化を念頭に置いていたのだそうだ。ラリー・コーエンはマイク・ハマー・シリーズ3作の映画化権を当時所有しており、少なくとも本作を含めて3本は作るつもりだったという。ただ、残念ながら本作が批評家から総スカンを食らってしまい、興行的にも不発だったことから、シリーズ化の企画は頓挫してしまう。主演のアーマンド・アサンテも、役者としての正当な評価を得るには、『マンボ・キングス/わが心のマリア』('92)や『ホッファ』('92)まで待たねばならなかった。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:111分/発売元:Kino Lorber/20th Century Fox
特典:ドキュメンタリー映画『King Cohen: The Wild World of Filmmaker Larry Cohen』の監督スティーヴ・ミッチェルと映画評論家ナサニエル・トンプソンによる音声解説/オリジナル劇場予告編




by nakachan1045 | 2017-08-01 16:26 | 映画 | Comments(0)

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