なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「柔肌の狩人/ダンサー連続殺人事件」 Passi di danza su una lama di rasoiol (1973)

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監督:マウリツィオ・プラドー
製作総指揮:フランシスコ・バルカザール
原案:アルパド・デ・リーソ
   マウリツィオ・プラドー
脚本:アルパド・デ・リーソ
   マウリツィオ・プラドー
   アルフォンソ・バルカザール
   ジョージ・マーティン
撮影:ハイメ・デュ・カサス
美術:フアン・アルベルト
音楽:ロベルト・プレガディオ
出演:ロバート・ホフマン
   スーザン・スコット(ニエヴェス・ナヴァーロ)
   アヌスカ・ボローヴァ
   ジョージ・マーティン
   セラフィーノ・プロフーモ
   アンナ・リベラーティ
   シモン・アンドルー
   ロジータ・トロス
イタリア・スペイン合作/90分/カラー作品




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<あらすじ>
イタリアのローマに暮らすスウェーデン人の女流写真家キティ(スーザン・スコット)は、ストックホルムから遊びに来た叔父夫婦を市内観光に連れ出したところ、見晴らし台に設置された有料望遠鏡から殺人現場を目撃してしまう。被害者は美しいブロンドの若い女性。犯人は全身黒づくめで顔が分からず、建物の住所を確認しようとしたが、途中で望遠鏡が時間切れで見えなくなってしまった。
夫のアルベルト(ロバート・ホフマン)に事情を話し、叔父夫婦を空港へ送り届けた帰りに警察へ向かうキティ。だが、担当のイルーギ警部(ジョージ・マーティン)は彼女の話を信じようとはしない。納得のいかないキティだったが、その翌日、彼女の証言通り市内のアパートで若い女性の死体が発見される。
現場には事件を嗅ぎつけた女性記者リディア(アヌスカ・ボローヴァ)の姿もあった。リディアはアルベルトの親友である作曲家マルコ(シモン・アンドルー)の妻。夫婦は深く愛し合っていたが、しかしマルコはインポテンツの悩みを抱えていた。
ほどなくして、リディアの新聞に1枚の写真が載る。ドイツ人旅行者がたまたま撮影したその写真には、アパートを逃げ去る犯人らしき人物と、そこに居合わせたクルミ売りの男とその客の女性が写っていた。その晩、クルミ売りの男が自宅で殺害され、さらに被害者のアパートの家政婦も殺される。
一方、警察は現場に残された証拠から犯人が杖を使っていることを知る。犯人は足が不自由である可能性が高かった。しかも、以前に起きた未解決事件と殺しの手口が同じであることも判明する。だが、それ以外に手掛かりはなく、イルーギ警部はキティを囮に使って犯人をおびき寄せようとするも失敗。クルミ売りの客だった女性も殺される。
アルベルトは被害者女性と知り合いだったこと、怪我で片足が不自由であることから警察に疑われるも、自ら身の潔白を証明。もはや警察は信用できないと思った彼は、キティと共に独自で調査を始める。すると、被害者女性たちがいずれもバレエ・ダンサーの経験があることに気付き、いずれも同じバレエ学校に通っていたことを突き止める。手掛かりを探してバレエ学校に忍び込むアルベルトとキティだったが…。
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'60年代末から'70年代にかけて世界的なブームとなった、イタリア産猟奇ホラー映画=ジャッロ。ジャッロと言えば、スタイリッシュなカメラワークや趣向を凝らした血みどろ残酷描写に加え、やはりセクシーで美しいヒロインたちの存在が欠かせない。キャロル・ベイカーやエドウィージュ・フェネッシュ、バーバラ・ブーシェ、スージー・ケンドール辺りがその代表格と言えるが、もう一人忘れてはならない、隠れたジャッロの女王的存在がいる。それが、本作の主演女優スーザン・スコットだ。
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スーザン・スコットの本名はニエヴェス・ナヴァーロ。隣国スペインの出身だが、イタリアを主な活動の場とした。'64年に映画デビューし、ジュリアーノ・ジェンマ主演のマカロニ西部劇『夕陽の用心棒』の悪女役で注目される。以降、本名を使ってマカロニ西部劇を中心に活躍。やはりジェンマと共演したスパイ・コメディ『キス・キス・バン・バン』('66)の峰不二子的ヒロインも好演だった。'69年に出演した社会派青春映画『ゲバルトSEX』('69)以降、アングロサクソン風のスーザン・スコット名義を使用するように。後に夫となるルチアーノ・エルコーリ監督の『Le foto proibite di una signora per bene(疑惑の女性の禁じられた写真)』('70)で初めてジャッロ映画に出演し、以降エルコーリ監督作品のミューズとして、『ストリッパー殺人事件』('71)や『La morte accarezza a mezzanotte(死神は真夜中に愛撫する)』('72)などのジャッロ映画で活躍するようになる。
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当時既に30代へ突入していたスーザンは、恐らく年齢的なこともあったのだろう、ジャッロ映画のヒロインを務めた時期はほんの3年ほどだったが、しかし短期間で結構な数の作品に出演しており、夫エルコーリの監督作以外でも引っ張りだこだった。その中の一本が、この『柔肌の狩人/ダンサー連続殺人事件』である。
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当時はまさにジャッロ映画の最盛期。ダリオ・アルジェント監督の『歓びの毒牙』('69)や『わたしは目撃者』('71)の世界的大ヒットに影響され、イタリア映画界は猫も杓子も猟奇ホラー映画を撮りまくってるような状態だった。当然、ブームに便乗しただけの作品も多く、その出来栄えは玉石混合。まあ、その辺はマカロニ西部劇ブームと同様ですな。1つ当たれば雨後の筍のごとく、柳の下の泥鰌が湧いて出るというのはイタリア映画界の常だ。
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そんなジャッロ映画バブルの真っ只中に発表された本作は、結論から言うと可もなく不可もなくの凡作。ヒッチコックの『裏窓』をヒントにした脚本はけっこう複雑に入り組んでおり、二転三転するストーリー展開にも工夫は凝らされているものの、しかし思わず首を捻ってしまうような強引さも随所に目立つ。例えば、正体不明の犯人が足を引きずって杖をついているらしいという設定。当然、サスペンスとしては観客の注意を逸らすために疑惑の人物を配することになるわけだが、それにしても脚を悪くして杖をついているキャラクターが多すぎだ。キティの夫アルベルトが人形を剃刀で切り刻む奇妙なパフォーマンスをしている芸術家で、しかも脚を怪我している上に犠牲者の女性と知り合いだったことから、真っ先に警察から疑われるというのも妙に都合が良過ぎ。あまりにも作為的で不自然な設定が少なくないのだ。
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また、警察の捜査や推理が大して役に立たず、結局素人の主人公が犯人を突き止めることになるという展開はジャッロの定番だが、本作に登場するイルーギ警部はそもそも捜査すらするつもりがない。どういうことかというと、目撃者や証人を囮に使って犯人を捕まえることしか考えていないのだ。実際、劇中で本人が「それが私の秘策だ。一番手っ取り早くて確実だからね」みたいなこと言ってるし。いやいや、素人を危険に晒してどうするんですか!と突っ込みたくなるところだが、まるで当然のことのようにヒロインの写真家キティに売春婦の恰好をさせ、真夜中の裏通りに立たせて犯人をおびき寄せようとする。それって婦人警官の仕事だと思うんですがね(笑)。
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あとおかしかったのは、手掛かりを求めてバレエ学校に侵入するキティと夫アルベルトなのだが、その直前にキティが「おしっこしたくなっちゃった」といって用を足しに出かける。なにか伏線があるのかと思ったら、本当に尿意を催しただけだった。果たして、このシーンは必要があったのだろうか?また、これは英語版に限ってのことなのだが、バレエ学校校長と対面したアルベルトが去り際に、「Toodle-oo(さよなら)」と言い残していくのもムチャクチャおかしい。これって、'60年代にアメリカのティーンを中心とした若い女性が使っていた流行語で、少なくとも大人の男性が使うような言葉ではない。しかも、言われた校長まで普通に「Toodle-oo」と返事する始末。英語を母国語としない人たちが書いた脚本とはいえ、誰が指摘できなかったのだろうか。
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監督のマウリツィオ・プラドーは詳細不明だが、約30年のキャリアでたったの7本しか作品を残していない。これはイタリアの職人監督としては異例の少なさだ。手掛けたジャンルも、マカロニ西部劇に戦争アクション、ジャッロ、ソフトポルノとバラバラ。恐らく一番有名なのは、リチャード・ハリソンとクラウス・キンスキーが共演した『大爆破/特殊命令!ナチに潜行せよ』('68)だと思うのだが、基本的にこれといった個性や特徴のない監督だ。なんというか、映画作りを仕事と割り切ってそつなくこなしているという感じ。本作も御多分に洩れずで、特にジャッロの要である殺人シーンの単調な素っ気なさには、ジャンルへ対する愛情やこだわりが皆無であることを伺わせる。
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ただ、ロベルト・プレガディオによる甘く切なくロマンティックな音楽スコアは素晴らしく美しいし、'70年代当時のローマのノスタルジックな街並みも大いに魅力的だ。それもまたジャッロ映画の醍醐味であり、引いては古き良きイタリア映画の醍醐味でもある。そういう意味では、ジャッロ映画ファン、イタリア映画ファンならそれなりに楽しめることだろう。
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もちろん、我らがスーザン・スコットも見目麗しい。この人の良さというのは、ただ美人でセクシーなだけではなく、その立ち振る舞いや佇まいに洗練された大人の女性らしい気品が漂い、演技にも芯の強さや知性が感じられるところ。単なるスクリーム・クィーンに終わることなく、演じるキャラクターに深みや説得力を与えることが出来るのだ。それだけに、キャリアの終盤になってポルノ女優まがいの脱ぎ要員扱いされてしまったことは非常に惜しまれる。まあ、彼女に限らずヘルガ・リーネやフェミ・ベヌッシ、シルヴァ・コシナなど、かつてイタリア映画で活躍したセクシー女優たちは、年を取るとみな一様にして同じような末路を辿ってしまうのだが。
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主人公キティの夫アルベルトを演じているロバート・ホフマンは、当時ヨーロッパ各国の映画で引っ張りだこだったオーストリア出身の二枚目俳優。イタリアでもカルロ・リッツァーニの『目をさまして殺せ』('66)やルチアーノ・サルチェのオールスター映画『イタリア式愛のテクニック』('66)などに主演し、ウンベルト・レンツィ監督の傑作ジャッロ『スパズモ』('74)でも好演していた。
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そのほか、マカロニ西部劇の悪役として活躍したスペイン人俳優ジョージ・マーティン(本作では脚本にも参加)や、『ストリッパー殺人事件』などスーザン・スコットとの共演も多いシモン・アンドルー(最近でも『007/ダイ・アナザー・デイ』などで現役)が共演。新聞記者リディアとその双子シルヴィアの2役を演じ、大胆なヌードシーンにも挑戦している女優アヌスカ・ボローヴァは、これ以外に出演作が全く見当たらないのだが、もしかすると名前を変えて他の映画に出ている可能性がある。なにしろ、当時のイタリアでは幾つも別名を使い分けることなど珍しくなかったので。また、フェリーニ映画の常連だったグラマー女優エリサ・マイナルディがバレエ学校校長役で、イタリア映画のサイコパス俳優として名物的な存在だったルチアーノ・ロッシがシルヴィアの恋人役で、どちらもノークレジットで顔を出している。
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ちなみに、英語圏では「Death Carries a Cane」、「The Tormentor」、「Devil Blade」など幾つもの違ったタイトルで劇場公開およびビデオ発売されてきた本作。とりあえず、スーザン・スコット主演のジャッロ映画を見るならば、一連のルチアーノ・エルコーリ監督とのコンビ作がおススメだ。遥かに完成度は高いので。
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評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:90分/発売元:Full Moon Features (2013年)
特典:チャールズ・バンドによるイントロダクション/グラインドハウス予告編集



by nakachan1045 | 2017-08-02 11:45 | 映画 | Comments(0)

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