なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「Sequestro di persona」 aka Sardinia... Kidnapped (1968)

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監督:ジャンフランコ・ミンゴッツィ
製作:シルヴィオ・クレメンテッリ
原案:ウーゴ・ピッロ
脚本:ウーゴ・ピッロ
   ジャンフランコ・ミンゴッツィ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
編集:ルッジェロ・マストロヤンニ
美術:セルジョ・カネヴァーレ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:フランコ・ネロ
   シャーロット・ランプリング
   フランク・ウォルフ
   エンニオ・バルボ
   ピエルルイジ・アプラ
   ステファン・ザカリアス
   マルガリータ・ロサーノ
イタリア映画/97分/カラー作品




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<あらすじ>
大学の友人フランチェスコ(ピエルルイジ・アプラ)と共に、彼の故郷サルディーニャ島を訪れた外国人女性クリスティーナ(シャーロット・ランプリング)。山道をドライブしていたところ、フランチェスコが山賊に誘拐されてしまう。一味によって町へ戻されたクリスティーナは、すぐさまフランチェスコの父親マラス氏(エンニオ・バルボ)に連絡。フランチェスコの親友ガヴィーノ(フランコ・ネロ)が彼女を迎えに来る。
警察へ通報するという彼女を必死に止めるガヴィーノ。この島にはこの島のやり方があると説明するが、外国人のクリスティーナには理解が出来ない。ほどなくして、犯人グループから身代金を要求する手紙が届く。金額は8000万リラ。裕福な家柄のマラス氏ではあるものの、とてもすぐに用意できる金額ではない。
困り果てたマラス氏は、町で一番の有力者オシリオ氏(フランク・ウォルフ)に相談を持ち掛ける。マラス氏には内陸部と海沿いに2つの広大な土地があった。内陸部の土地は価値が下がって大した金額にはならないが、しかし海沿いの土地ならば幾らでも買い手が付くはずだというオシリオ氏。息子の命には代えられないと、マラス氏はオシリオ氏の仲介で海沿いの土地を売りに出すことにする。
まずは身代金の一部を支払うことに。犯人グループはクリスティーナを引き渡し役に指名した。白昼堂々と列車の中で行われる取り引き。呆れたクリスティーナは、その足で警察署に駆け込んで事件を通報する。しかし、警察の乱暴な捜査に地元住民はみな口を閉ざし、手掛かりは何一つとして掴めない。この土地では警察に頼ってはいけないのだ。
その頃、犯人グループはフランチェスコを移送中に警官隊と遭遇し、その銃撃戦の最中でフランチェスコは死んでしまう。そうとは知らないマラス氏は残りの身代金を支払ったものの、ほどなくして山中からフランチェスコの遺体が発見される。
ガヴィーノは何か引っかかるものを感じていた。この誘拐事件には島で進む土地開発が絡んでいるのではないかと。その黒幕を突き止めるため、彼はある計略をもって犯人グループに接触を試みる…。
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イタリアが奇跡的な経済復興を遂げた1960年代。しかしその一方で、深刻な貧富の差や地域の経済格差が広がり、政治家や警察権力の汚職が横行し、マフィアやテロリストによる犯罪も増加する。そんな混沌とした時代を背景に、イタリアでは'60年代後半から'70年代にかけて、”ポリッツィオテスキ”と呼ばれる社会派的要素の濃厚な犯罪映画が人気を集めた。カルロ・リッツァーニ監督の『ミラノの銀行強盗』('68)やエリオ・ペトリ監督の『殺人捜査』('70)、ダミアーノ・ダミアーニ監督の『警視の告白』('71)辺りが代表作と言えるだろうか。当時は数えきれないほどのイタリア産犯罪映画が作られたものだが、本作もまたその一つである。
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舞台は地中海に浮かぶイタリア領サルディーニャ島。今では風光明媚なリゾート地として知られる島だが、しかし'60年代後半の当時、ここは誘拐ビジネスの拠点として悪名高い場所だった。というのも、内陸部は険しい山や切り立った崖などが多く、身を隠すに適した場所に事欠かないことから、貧しい羊飼いたちがこの地形を有効活用(?)して、誘拐ビジネスを副業とするようになったのである。
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しかも、サルディーニャは歴史的に外敵からの侵略に見舞われることが多かったため、閉鎖的で警戒心が強い住民は警察の捜査にも非協力的で、なおかつ犯人たちも手にした身代金を派手に使うことがなかったことから、なかなか尻尾が掴めなかったようだ。本作ではそうした当時の社会問題を題材としながら、経済成長の波に取り残された地域社会の暗い闇をあぶり出していく。
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ヒロインは休暇を利用してサルディーニャを訪れた若い外国人女性クリスティーナ。具体的にどこの国出身かは劇中で言及されないが、英語のセリフのアクセントからしてイギリス人であろうと思われる。演じるシャーロット・ランプリングもイギリス人だしね。で、地元出身の大学同級生フランチェスコが島を案内してくれるのだが、ドライブの最中に彼が山賊一味…要するに犯罪集団と化した羊飼いたちに拉致されてしまう。ところが、フランチェスコの父親も親友カヴィーノも、警察に通報するというクリスティーナに猛反対。なぜなら、島には島の流儀というものがあるからだ。
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しかし、近代的な文明社会からやって来たクリスティーナには、そうしたイタリアの閉鎖的な田舎特有の古い因習が理解できず、そんなの間違っている!とばかりに警察へ訴え出たことから事態を悪化させることに。結局、そのナイーブな正義感のせいでフランチェスコを死なせてしまうことになってしまう。しかも、警察を信用していない地元住民は捜査に対しても固く口をつぐみ、犯人の目星すらつかないまま。日頃から差別意識丸出しの横暴な警察は、彼らにとって敵のようなもの。片や、犯罪者とはいえ羊飼いたちは同胞。自ずと身内を守ることになる。通り一辺倒の正義など、この島では通用しないのだ。
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そして、次第にフランチェスコ誘拐事件の背景として、島のリゾート開発計画が関わっていることが見えてくる。無知な羊飼いたちをそそのかし、地主であるフランチェスコの父親が海辺の所有地を手放すよう仕向けた黒幕が存在したのだ。美味しい思いをするのは黒幕と外部の資本家。その事実を突き止めたカヴィーノと羊飼いたちは、これまた島の流儀、つまり昔ならではのやり方で「侵略者」の手先どもに制裁を下すことになる。
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現在のグローバリズムVSローカリズムの対立構造にも通じるようなテーマが興味深い作品。いまだ古い因習に囚われたイタリア社会の暗部を炙り出しつつ、その一方でローカルの風習や価値観を野蛮なものと決めつける先進国的発想にも釘をさす。監督のジャンフランコ・ミンゴッツィは、もともと社会派のドキュメンタリー作家だったこともあり、その視点は極めてジャーナリスティックだ。日本では後期の文芸ロマンス『モーメント・オブ・ラブ』('88)くらいでしか知られていない監督だが、強烈な性描写と暴力描写でキリスト教世界の偽善を糾弾した尼僧映画『Flavia, la monaca musulmana(ムスリムの尼僧フラヴィア)』('74)は、欧米ではカルト映画として高い評価を受けている。
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ただ、メッセージ性に比重を置き過ぎたせいで、映画としては少々面白みに欠けるものになってしまった感は否めない。エリオ・ペトリ監督の『悪いやつほど手が白い』('67)や『殺人捜査』、カルロ・リッツァーニの『山いぬ』('69)など、シチリアを舞台にした骨太な社会派サスペンスを得意とする大物ウーゴ・ピッロによる脚本は悪くないのだが、あまりにも生真面目すぎるミンゴッツィ監督の起伏に欠ける演出はまどろっこしい。初期ベルトルッチ作品で知られるカメラマン、ウーゴ・ピッコーネのカメラワークも非常に淡白だ。
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島の古い掟やドンと呼ばれる長老たちに従いつつ、誘拐され殺された親友の復讐に燃える寡黙な青年を演じるフランコ・ネロははまり役。当時はマカロニ西部劇スターから、この手の犯罪映画のヒーローへとシフトしつつあった。一方、ヒロインのクリスティーナ役に英国女優シャーロット・ランプリングというのは異色のキャスティング。まるでロンドンのカーナビ―・ストリートからそのままやって来たような、洗練された都会的いで立ちが殺風景な田舎では明らかに浮いており、いかにもよそ者の異邦人という雰囲気を醸し出す。そういう意味では絶妙だ。
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そのほか、セルジョ・レオーネの『ウエスタン』などでお馴染みのアメリカ人俳優フランク・ウォルフ、『黄金の七人』('67)など'60年代のイタリア産娯楽映画には欠かせない名脇役エンニオ・バルボといった渋い顔ぶれ。また、後にタヴィアーニ兄弟作品の常連ととなるスペイン女優マルガリータ・ロサーノが、フランチェスコの母親役として顔を出している。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(ドイツ盤・333枚限定プレス)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:ドイツ語・イタリア語・英語/字幕:ドイツ語/地域コード:ALL/時間:97分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:ドイツ語・イタリア語・英語/字幕:ドイツ語/地域コード:2/時間:93分
発売元:X-Rated
特典:ドイツ劇場公開版(91分)/スチル・ギャラリー/ポスター・ギャラリー/アメリカ公開版クレジット


by nakachan1045 | 2017-10-05 15:23 | 映画 | Comments(0)

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