なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「眠れぬ夜のために」 Into the Night (1985)

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監督:ジョン・ランディス
製作:ジョージ・フォルシー・ジュニア
   ロン・コスロー
製作総指揮:ダン・アリンガム
脚本:ロン・コスロー
撮影:ロバート・ペインター
音楽:アイラ・ニューボーン
主題歌:B・B・キング
出演:ジェフ・ゴールドブラム
   ミシェル・ファイファー
   リチャード・ファーンズワース
   イレーネ・パパス
   キャスリン・ハロルド
   ポール・マザースキー
   ヴェラ・マイルズ
   ロジェ・ヴァディム
   クルー・ギャラガー
   ダン・エイクロイド
   デヴィッド・ボウイ
   ブルース・マッギル
   カール・パーキンス
   デヴィッド・クローネンバーグ
   アート・エヴァンス
アメリカ映画/117分/カラー作品




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<あらすじ>
不眠症に悩んでいる工学技師エド(ジェフ・ゴールドブラム)は、ある時たまたま妻の浮気現場を目撃してしまう。以前から同僚ハーブ(ダン・エイクロイド)に気晴らしのラスベガス行きを勧められていた彼は、深夜に思い立って一人でロサンゼルス国際空港へ。すると、怪しげな男たちに追いかけられた美女と遭遇し、彼女を車に乗せて逃走する。
美女の名前はダイアナ(ミシェル・ファイファー)。何も訊かずに家まで送って欲しいというダイアナだったが、ロサンゼルスの各地をたらい回しにされた挙句、車まで警察にレッカーされてしまったエドは不信感を募らせる。
そんな彼に、ダイアナはようやく真相を明かした。実は彼女、とある国際密輸組織の運び屋として、イラン王家伝来の宝石である6つのエメラルドをヨーロッパからアメリカへと持ち込んだのだ。そのため、彼女はイランの秘密警察SAVAKなど幾つもの組織から命を狙われていた。事情を知ったエドは、ダイアナのために一肌脱ぐことにする。
ダイアナが頼りにする裏社会の大物ハミッドが守ってくれることとなり、彼のもとへダイアナを送り届けたエド。しかし、嫌な予感がして部屋へ上がると、イギリス人の殺し屋コリン(デヴィッド・ボウイ)によってハミッド一味は皆殺しにされており、ダイアナは人質になっていた。すると、ハミッドの用心棒ウィリアムス(カール・パーキンス)が息を吹き返し、コリンと死闘を繰り広げる。そのドサクサに紛れ、ダイアナとエドは辛うじて脱出した。
しかし、今度はメルヴィル(ロジェ・ヴァディム)なるフランス人のマフィアに囚われてしまう2人。一方、ダイアナの後を追うイラン秘密警察の捜査官たちは、ダイアナの親友クリスティ(キャサリン・ハロルド)とその愛人バド(ポール・マザースキー)の家に押しかける。一味によってクリスティは殺されてしまった。
ダイアナの機転によってメルヴィル一味を巻いた2人は、最後の頼みの綱としてダイアナの愛人だった大富豪の老人ジャック・ケイパー(リチャード・ファーンズワース)のもとを訪れる。そこで、自分たちの運命を握る相手がイラン秘密警察の女ボス、シャヒーン(イレーネ・パパス)だと知った彼らは、一か八かの賭けに出ることにするのだが…。

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『ブルース・ブラザース』('80)に『狼男アメリカン』('81)、『大逆転』('83)に『スパイ・ライク・アス』('85)、『サボテン・ブラザース』('86)などなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでヒットを飛ばし続けた'80年代のジョン・ランディス監督。その中で唯一、興行的にも批評的にも大コケしたのが本作だ。とりあえず、全米の最終的な興行収入がたったの750万ドルというのはちょっとひど過ぎる。同じく失敗作と呼ばれたスタローン主演の『オスカー』('90)ですら、2300万ドル以上を計上しているのだから。
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筆者が本作を初めて見たのは日本初公開時。ジョン・ランディス監督の新作だからというよりは、当時『スカーフェイス』('83)で夢中になったミシェル・ファイファー目当てで見に行ったのだと思う。また、高校時代からすでにクラシック映画が大好きだったので、ヴェラ・マイルズやイレーネ・パパスが出ているというのも魅力だった。なので、彼女たちをスクリーンで見ることが出来てそれなりに満足はしたと思うのだが、果たして面白かったのか?と聞かれるとなんとも記憶が曖昧でハッキリとしない。しかし、このたび32年ぶりに再見してハッキリとした。決してつまらなくはないけど面白くもない、ちょっと困りものの中途半端な映画なのだ。
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ストーリーは典型的なヒッチコック・スタイルの巻き込まれ型サスペンス。不眠症で眠れない男が真夜中に外へ出かけたところ、たまたま殺し屋一味に追われている美女を助けたことから、盗まれた宝石を巡って幾つもの秘密組織が暗躍する熾烈な争奪戦に巻き込まれてしまう。そこへ、ジョン・ランディス作品らしい一癖も二癖もあるユニークな人々を投入することで、スラップスティック・コメディ的な要素を盛り込んでいるわけなのだが、どうも全体的に陰鬱でパッとしない。
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最大の難点はストーリーのテンポと尺の長さだ。とにかくテンポが遅くて、話がなかなか先に進まない。そのため、サスペンスのスリルも緊張感も全く盛り上がらず。それでいて、上映時間が2時間近くもある。正直言って長すぎだ。まあ、確かに他のジョン・ランディス作品もだいたい尺は2時間くらいだし、『ブルース・ブラザース』に至っては2時間10分を超えていたが、なにしろスピード感満点でパワーも勢いもあった。一方の本作はそもそもスピード感とは程遠いし、コメディとしても歯切れが悪いというか、どうもどんよりとして暗いのだ。まさに、いつ明けるとも分からぬ長くて眠れない夜そのもの。確かにストーリーとはピッタリだが、しかし最後まで付き合うには少々しんどい。
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随所に投入されたナンセンスなギャグの数々もいまひとつ。どこをどう笑えばいいのか分からない。物を破壊したり動物を殺したりといった暴力的なネタや、中東系のステレオタイプをカリカチュアした人種差別的なネタが多く、それはそれでブラック・ユーモアとして面白ければ全く問題ないのだが、しかし本作の場合はそこになんの風刺も皮肉も感じ取れないため、そもそもギャグとして成立しているとは思えないのである。ただの暴力、ただの差別でしかないんだよね。
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その一方で、夜のロサンゼルスをどことなく幻想的なムードで捉えたビジュアルはとても魅力的だ。さながら異空間のような趣き。実際、ロサンゼルスは昼間よりも夜の方が格段に美しい。しかも、本作はハリウッドからビバリーヒルズにかけての一帯で撮影されているため、いかにもロサンゼルスらしい華やかな雰囲気を楽しめる。かれこれ30年近くロサンゼルスへコンスタントに通っている筆者としては、まだ再開発によって性風俗店や立ちんぼ娼婦が一掃される前のハリウッド大通りも懐かしい。今はなき風俗嬢御用達の大型ランジェリー・ショップ「Frederick's of Hollywood」まで出てくるのは感動もの。そうかと思えば、センチュリー・プラザ・ホテルのあるセンチュリー・シティ界隈や、ビバリー・ウィルシャー・ホテルのあるロデオ・ドライブ近辺などは今とほとんど変わっていない。タイムカプセル的な楽しみ方も出来る。
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また、豪華キャストを惜しげもなく使った賑やかさも捨てがたい。なんたって、主演のジェフ・ゴールドブラムとミシェル・ファイファー以外は、半ば顔見せに近いような扱いだからね。複数のシーンにまたがって登場するのはキャスリン・ハロルドにポール・マザースキー、イレーネ・パパス、ロジェ・ヴァディム、デヴィッド・ボウイ、ダン・エイクロイド、クルー・ギャラガーくらいのものか。あ、あとロックの神様カール・パーキンスね。といっても、出番はそれぞれ10分にも満たない。それ以外のキャストに至っては全員ほぼワン・シーンのみ。ヴェラ・マイルズなんて、ちょこっとセリフ喋っただけであっという間に消えちゃう。なんとも贅沢な無駄遣い(笑)。
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さらに、本作は名だたる映画監督や関係者が大勢カメオ出演している点でも見逃せない。とりあえずポール・マザースキーにロジェ・ヴァディム、デヴィッド・クローネンバーグの3人はタイトル・ロールでもクレジットされているが、彼らを含めて総勢17人、イラン秘密警察の捜査官役を演じるジョン・ランディスを加えると18人の映画監督および関係者が登場するのだ。
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目立つところだと、トイレの個室から美女と一発やり終えて出てくるドン・シーゲル、「Frederick's of Hollywood」の前でジェフ・ゴールドブラムにドラッグを売りつけようとするリック・ベイカー、子犬を連れてエレベーターに乗っている老人ジャック・アーノルド(しかもひどい目に遭う)、ビバリー・ウィルシャー・ホテルのドアマンに扮したポール・バーテル、浮浪者の老人ウォルド・サルト、ホテルで電話をしているジム・ヘンソン辺りか。他にも、ローレンス・カスダンやジョナサン・デミ、ダニエル・ペトリなども出てくるが、さすがに「この人だよ」って言われないと分からないかもしれない。
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ちなみに、よく本作はランディス監督が『トワイライトゾーン/異次元の体験』('83)の次に撮った映画と言われ、同作品での不幸な撮影事故(俳優ヴィック・モローと子役がヘリのプロペラに巻き込まれて死亡)のトラウマが本作の暗いトーンに影響しているとされるが、実際は結果的に公開時期が前後した『大逆転』の次に撮った映画に当たる。その間、彼は家族と共にロンドンへ居を移し、1年近く監督業から遠ざかっていた。とはいえ、当時はまだ事故の記憶も新しかったであろうから、心理的な影響が少なからずあったことは想像に難くない。そう考えると、眠れぬ夜に延々と続く終わりの見えない逃亡劇は、当時のランディス監督自身の心象風景そのものだったとも解釈できるだろう。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:なし/地域コード:B/時間:117分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby digital/言語:英語/字幕:なし/地域コード:2/時間:110分
発売元:101 Films/Universal Studios (2017年)
特典:封入ポスター




by nakachan1045 | 2017-10-09 07:40 | 映画 | Comments(0)

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