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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「バージン・エクソシスト/甦える悪魔のエクスタシー」 L'ossessa (1974)

「バージン・エクソシスト/甦える悪魔のエクスタシー」 L\'ossessa  (1974)_f0367483_05322770.jpg
監督:マリオ・ガリアッツォ
製作:リカルド・ロマーノ
   パオロ・アッツォーニ
原案:マリオ・ガリアッツォ
脚本:アンブロジオ・モルテーニ
台詞:テッド・ロソフ
撮影:カルロ・カルリーニ
特殊効果:パオロ・リッチ
音楽:マルチェロ・ジョンビーニ
出演:ステラ・カルナチーナ
   クリス・アヴラム
   ルクレチア・ラヴ
   イワン・ラシモフ
   ガブリエル・ティンティ
   ルイジ・ピスティッリ
   ジャンリコ・トンディネッリ
   ウンベルト・ラホー
   ジュゼッペ・アッドバーティ
イタリア映画/85分/カラー作品




<あらすじ>
長きに渡って閉鎖されていた古い教会で、非常に珍しいイコンが発見される。それは、イエス・キリストと共に処刑された2人の泥棒を模った木彫の磔刑像だ。そのうちの1体は本物の人間と見紛うほど見事な出来栄えだった。イコンに詳しいことから調査団メンバーに起用された美大生ダニーラ(ステラ・カルナチーナ)は、修復作業のためその1体の磔刑像をアトリエへ持ち帰る。
その晩、ダニーラは両親と共にパーティへ出かける。父親マリオ(クリス・アヴラム)と母親ルイザ(ルクレチア・ラヴ)は不仲で、ルイザは愛人(ガブリエル・ティンティ)との肉欲に溺れる日々を送っていた。パーティを抜け出してSM行為に興じるルイザと愛人。その様子をたまたま目撃してしまったダニーラは大きなショックを受ける。
パーティ会場を後にしてアトリエへ戻るダニーラ。するとみるみるうちに息を吹き返した磔刑像によって彼女はレイプされてしまう。磔刑像には悪魔(イワン・ラシモフ)が宿っていたのだ。帰宅した両親は淫らな恰好で発狂する娘の姿に愕然とするが、駆け付けた医師(ジュゼッペ・アッドバーティ)の応急処置でダニーラは平静を取り戻す。
翌日、ダニーラの彼氏カルロ(ジャンリコ・トンディネッリ)を伴って田舎へドライブに出かける一家。その途中で車がエンストを起こしてしまい、ダニーラは近くにある古代遺跡を訪れる。もともとは古代エトルリア人の邪教神殿だったという。そこでダニーラは幻覚に襲われる。それは例の悪魔に処女を捧げる生贄の儀式の様子だった。
それ以来、ダニーラは頻繁に錯乱状態に襲われ、やがて彼女の両手首には楔を打った痕が浮き上がる。驚いた医師は仲間の精神科医(ウンベルト・ラホー)らと相談し、ダニーラをカトリック教会のアントニオ司祭(ピエロ・ジェルリーニ)に見せる。実際に彼女と面会したアントニオ司祭は、悪魔祓いが必要であることを両親に伝えた。
郊外の修道院へ運ばれたダニーラ。アントニオ司祭は彼女を救うには母親の愛情が必要だとルイザに伝える。一方、父マリオはアントニオ司祭の案内で悪魔祓い師ゼーノ神父(ルイジ・ピスティッリ)の元へ訪れると、神父は彼らの来訪を予知して準備を整えていた。かくして、ゼーノ神父は命懸けの悪魔祓いでダニーラを救おうとするのだが…。

『エクソシスト』('73)の大ヒットで火のついた'70年代オカルト映画ブームは、文字通り世界中で似たような柳の下の泥鰌を生んだわけだが、言うまでもなく本作もその一つ。イタリア産のなんちゃって『エクソシスト』映画といえば、『デアボリカ』('73)や『レディ・イポリタの恋人/夢魔』('74)などは当時日本でも話題となってヒットしたが、こちらはひっそりと地上波テレビ放送された後にビデオ発売されただけで、ほとんど注目されることはなかった。まあ、それも仕方あるまい。本当にショボいC級オカルト映画なのだから(^^;

で、内容はというと、悪魔に取り憑かれた女子大生が色情狂になってしまうというだけのお話。数ある英語タイトルの中のひとつが「Sexorcist」だったりするのだが、まさにその一言で済んでしまうような映画なんだよね(笑)。とりあえずヒロインが両親の不仲に悩んでいたり、男好きな母親と愛人の変態セックスを目撃してショックを受けたり、古代エトルリアの邪教崇拝が絡んでいたりするものの、それらの肉付け要素も結果的には殆ど意味をなしていない。最大の見せ場は、悪魔に取り憑かれた若い娘が、大声出しながら自分の乳揉んだり股間を弄ったりして、狂ったように悶える発情(?)シーン。あ、あとは美熟女の母親が全裸になってバラの花束で鞭打たれるSMシーンもか。要するに『エクソシスト』的設定を隠れ蓑にした、純然たるセクスプロイテーション映画なのだ。

演出と原案を手掛けたマリオ・ガリアッツォは、『虹をわたる風船』('74)や原案のみの『メリーゴーランド』('74)といった、通俗的で安っぽいお涙頂戴映画をヒットさせた職人監督。カンニバル物やソフトポルノなどのジャンル系映画も多く残しているが、恐らく脚本の通りにしか撮れない人なのだろう。演出はどこまでも平坦かつ凡庸。悪魔祓いバトルの描かれる終盤の展開なんか、あまりにも緊張感のないグダグダぶりにかえってビックリする。クライマックスも、え?これでおしまいっすか!?みたいな感じ。製作費も想像力も貧困な映画のお手本みたいな出来栄えだ。

ただ、唯一感心したのは木彫の磔刑像に命が宿って動き出すシーン。地味だが完成度の高い特殊メイクや、俳優イワン・ラシモフの巧みな演技が功を奏してか、なかなかリアルで不気味なシーンに仕上がっている。これは『ドクター・モリスの島/フィッシュマン』('79)や『食人帝国』('80)などで知られる特殊効果マン、パオロ・リッチのお手柄であろう。

主演のステラ・カルナチーナは本作くらいしか代表作がないものの、どことなくコリンヌ・クレイリーを彷彿とさせるような'70年代的ヨーロッパ美人。脇役には当時のイタリア産B級娯楽映画でお馴染みのスターたちがズラリと揃っており、キャスティングの賑やかさは魅力だと言えるかもしれない。『女戦士ゼナベル』('70)や『エンジェル・グラディエーター』('73)、『空手アマゾネス』('74)など、なぜか当時アマゾネス映画で引っ張りだこだった女優ルクレチア・ラヴの、エレガントで退廃的な有閑マダムっぷりも要注目だ。

なお、これまで本作は海賊盤まがいの画質劣悪なビデオソフトしか出回って来なかったのだが、数年前にようやく真っ当なクオリティのブルーレイがアメリカでリリースされた。ただし、残念ながら必ずしもブルーレイとして十分納得できるような画質ではない。恐らく保存状態の比較的良い上映用プリントから、ハイビジョンでテレシネしたのだろう。過去のVHSやDVDに比べると遥かに高画質ではあるが、しかしフィルムの傷や汚れは所々で目立つし、全編を通して画像の輪郭も甘ければ粒子も粗い。とはいえ、従来のパン&スキャンではなくビスタサイズのワイドスクリーンで見れるだけも御の字ではあるのだけど。多分、もはやオリジナル・ネガの所在自体が不明なんだろうなあ。

評価(5点満点):★☆☆☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※1000枚限定プレス
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:85分/発売元:Code Red
特典:解説ビデオ付き再生モード「Katarina's Bucketlist Mode」


by nakachan1045 | 2018-01-19 10:03 | 映画 | Comments(0)

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