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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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Il diabolo a sette facce (aka The Devil Has Seven Faces) (1971)

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監督:オズワルド・チヴィラーニ
脚本:ティト・カルピ
   オズワルド・チヴィラーニ
撮影:ワルテール・チヴィラーニ
編集:マリオ・コンティーニ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:キャロル・ベイカー
   ジョージ・ヒルトン
   スティーブン・ボイド
   ルクレチア・ラヴ
   イワノ・スタッチョーニ
   ルチアーノ・ピゴッツィ
   ダニエレ・ヴァルガス
   フランコ・レッセル
   カルラ・マンチーニ
イタリア映画/87分/カラー作品





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<あらすじ>
オランダのアムステルダムで旅行会社を経営するアメリカ人女性ジュリー(キャロル・ベイカー)は、とあるパーティの帰り道に何者かに尾行される。さらに、ロンドンに住む双子の姉妹メアリー(キャロル・ベイカー)から元夫に脅されているとの電話を受け、知人の弁護士デイヴ(スティーブン・ボイド)に相談する。その帰りに2人組の男に誘拐されかかったジュリーだったが、間一髪のところでデイヴとその友人でカーレーサーのトニー(ジョージ・ヒルトン)に助けられた。
ジュリーの身に危険が迫っていると知ったトニーは、知人が所有するアパートに彼女を匿うことにする。お互いに急速に惹かれあっていくジュリーとトニー。しかし、その隠れ家もまた謎の男たちに見つかってしまう。ダイヤモンドの在処を白状しろと迫る男たち。だが、ジュリーには全く身に覚えがない。どうやら、彼らはジュリーをメアリーと勘違いしていたようだった。
その頃、デイヴは秘かにジュリーの身辺を調査し始める。旅行会社の秘書マーガレット(ルクレチア・ラヴ)によると、長期休暇から戻って以来ジュリーの様子が少し変だという。さらに、ハンターと名乗る保険会社の男(ルチアーノ・ピゴッツィ)が現れ、メアリーとその夫がインドで高額のダイヤモンドを盗んだことを告げる。
警察沙汰になる前にダイヤを返還するよう、ジュリーを通してメアリーを説得できないかと依頼するハンター。だが、デイヴはそこに仕組まれた罠とカラクリ、そしてジュリーに更なる危険が迫っていることに気づき、彼女に警告しようとするのだが…。

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長いだけで特に意味のないタイトル、キャロル・ベイカー&ジョージ・ヒルトンという主演コンビの顔合わせ、美女の周辺で次々と起きる謎めいた事件を描くイタリア産サスペンス。これだけ条件が揃えば、誰だってこいつはきっとジャッロ(イタリア産猟奇ホラー)に違いない!と思うかもしれないが、いやはや、そうは問屋が卸さない(笑)。あくまでも当時ブームだったジャッロのフリをしているだけで、実際はダイヤモンドを巡る泥棒たちの騙し騙されを描いた犯罪映画である。

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ストーリー的にはツッコミどころ満載。いくら一卵性双生児とはいえ、それぞれロンドンとアムステルダムに住んでいる姉妹を間違えるか!?…という素朴な疑問については、ひとまず許容範囲ギリギリの説明が後から付けられるのだが、終盤で明かされるどんでん返しのトリックはかなり無理がある。まあ、そのために双子という設定が必要だったのね、と理解はできるものの、それにしても無駄に手の込んだ芝居をし過ぎですってば(笑)。ラストシーンでキャロル・ベイカーが見せる、まさしく“してやったり♫”といった自慢げな笑顔も、ちょっとばかり虚しく見えてしまう。

監督のオズワルド・チヴィラーニは、フェリーニやロッセリーニといった巨匠の助監督を務めた人物で、スペクタクル史劇からマカロニ・ウエスタン、スパイ・アクションからモンド・ドキュメンタリーまで、まさにオールラウンド・プレイヤーと言うべき職人監督。といっても、当時のイタリアの娯楽映画監督は、多かれ少なかれみんなそうだった。アントニオ・マルゲリティ然り、ルチオ・フルチ然り、リカルド・フレーダ然り。それでも個々に得手不得手というのはあって、それぞれに膨大な数の雇われ仕事をこなしつつ、その中から後にカルト映画と呼ばれるような名作が生まれていったわけだ。しかし、チヴィラーニにはそうした代表作がない。辛うじて現在でも見ることのできる映画は本作を含めて2~3本くらいのもので、それ以外は映画史の彼方へと遠く消え去ってしまった。その理由については、もしかすると適した作品に恵まれなかっただけなのかもしれないし、単なる器用貧乏だったのかもしれない。今となってはハッキリと言えないが、しかし少なくとも本作を見る限りでは、後者のような気がしてならない。

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まず映画としての見栄えはそこそこ。サスペンスやアクションの見せ方もそつがない。しかし、これ!という決定打に欠けるというか、どれもこれも仕事と割り切って流れ作業でやっています、という印象は否めない。ま、カーチェイスはこんなもんでいいでしょう、編集でフィルムをちょっと早回しすればそれなりに迫力も出るだろうし、さっさとスケジュールをこなして撮影を終わらせちゃおうよ。そんな姿勢すら画面から透けて見えてしまうのである。もちろん、どんな映画監督にもやっつけ仕事的な作品はある。イタリア映画全盛期の大量生産体制下ならば尚更だ。しかし、それでも必ずどこか1箇所くらいは、作り手が力を入れているシーンはあると思うのだが、本作にはそういう意味での見せ場がない。

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ただ、これは当時のイタリア産娯楽映画そのものの魅力でもあるのだが、女優陣が着用するセクシーで大胆で奇抜なデザインの衣装は面白い。本作で言うならば、主演のキャロル・ベイカーと秘書役のルクレチア・ラヴ。その辺は、やっぱりファッション大国イタリア。中でもベイカーは、着せ替え人形さながらに衣装チェンジが多い。しかも、衣装だけでなくウィッグも取っ替え引っ替え。それってウィッグなんですか?帽子なんですか?と思わず訊きたくなる水色のカツラなんか、もはや罰ゲームにしか見えないのだけれど(笑)。こういうキッチュでキャンプなファッションは、'70年代イタリア映画の独壇場と言えるだろう。

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さらに、イタリア映画界きってのメロディ・メーカーである巨匠ステルヴィオ・チプリアーニによる、とろけるように甘くてセクシーで、うっとりするほどお洒落で心地よいラウンジ・スタイルの音楽スコアが絶品。これもまた当時のイタリア映画の醍醐味で、どんなに駄作でも音楽だけは素晴らしいってパターンは少なくなかった。特にチプリアーニやエンニオ・モリコーネ、アルマンド・トロヴァヨーリの手がけるスコアはほぼハズレなし。サントラ盤CD出ているのかな。チェックしとかなくちゃ。

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で、主演は'60年代末にイタリアへ活動の拠点を移し、主にウンベルト・レンツィ監督とのコンビでジャッロの女王として鳴らしたハリウッド女優キャロル・ベイカー。エリア・カザン監督、テネシー・ウィリアムス原作の問題作「ベビイドール」('57)でアカデミー主演女優賞候補になるも、そのせいでセックス・シンボルのイメージが付いてタイプキャストされるようになったことが、心機一転イタリアへ行くことになった理由だとされているものの、実際のところは後ろ盾になっていた大物製作者ジョセフ・レヴィンとの不和や、それに起因するパラマウントとのいざこざでハリウッドに居づらくなったというのが真相だろう。だって、イタリアに移ってからもタイプキャストされっぱなしだし(笑)。ただ、本作ではお色気シーンはほとんどなし。そちらはもっぱら、秘書役のルクレチア・ラヴが請け負っている。「女戦士ゼナベル」('70)や「空手アマゾネス」('74)など、いわゆる女グラディエーター物やアマゾネス物で当時引っ張りだこだった女優だ。

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キャロル・ベイカーの相手役を演じているのは、こちらもジャッロ映画の看板スターだったジョージ・ヒルトン。もともとはマカロニ・ウエスタンのスターで、彼が主演したサルタナ・シリーズは筆者のお気に入りだ。'70年代にはジャッロと並行してポリス・アクション物にも数多く主演。ファッション・モデル出身の人だけあって、都会的なサスペンスやアクションにはうってつけだったと言えるだろう。

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興味深いのは、「ベン・ハー」('59)や「ローマ帝国の滅亡」('64)などのハリウッド産スペクタクル史劇で有名なスター、スティーブン・ボイドが弁護士デイヴ役を演じていることだろう。当時は一時的にスペインへ活動の拠点を移していたボイドだが、イタリア映画への出演はちょっと珍しいかもしれない。

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そのほか、イタリア版ピーター・ローレとも呼ばれるギョロ目の怪優ルチアーノ・ピゴッツィ(別名アラン・コリンズ)や、マカロニ・ウエスタンの悪役としてもお馴染みのダニエレ・ヴァルガス、本作のようにいけ好かない刑事やビジネスマンなどを得意としたフランコ・レッセルなど、イタリア産B級娯楽映画の名物俳優たちがズラリと脇を固めている。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(ドイツ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:ドイツ語・英語/字幕:なし/地域コード:2/時間:87分/発売元:Marketing Film (2008)
特典:フランス語版タイトルクレジット/アメリカ公開版タイトルクレジット/イタリア語版タイトルクレジット/イタリア版ロビー・カード・ギャラリー/ビデオカバー&ポスター・ギャラリー/宣伝用スチル・ギャラリー


by nakachan1045 | 2016-08-26 01:16 | 映画 | Comments(0)

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