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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「皆殺しのジャンゴ/復讐の機関銃(ガトリングガン)」 Preparati la bara! (1968)

「皆殺しのジャンゴ/復讐の機関銃(ガトリングガン)」 Preparati la bara!  (1968)_f0367483_14100504.jpg
監督:フェルディナンド・バルディ
製作:マノロ・ボロニーニ
原案:フランコ・ロゼッティ
脚本:フランコ・ロゼッティ
   フェルディナンド・バルディ
撮影:エンツォ・バルボーニ
スタント監修:レモ・デ・アンジェリス
音楽:ジャンフランコ・レヴェルベリ
出演:テレンス・ヒル
   ホルスト・フランク
   ジョージ・イーストマン
   ホセ・トーレス
   バーバラ・サイモン(ブルーナ・シモネッタ)
   ピヌッチョ・アルディア
   リー・バートン(グイド・ロロブリジーダ)
   エドワード・G・ロス(ルチアーノ・ロッシ)
   ジャンニ・ブレッザ
イタリア映画/92分/カラー作品




「皆殺しのジャンゴ/復讐の機関銃(ガトリングガン)」 Preparati la bara!  (1968)_f0367483_16430972.jpg
<あらすじ>
野心家の親友デヴィッド(ホルスト・フランク)が政界に進出し、一緒に金と権力を手にしようと誘われたガンマン、ジャンゴ(テレンス・ヒル)。しかし、最愛の妻と牧場でのんびりと暮らすことを夢見る彼は、銀行の依頼でアトランタへ金貨を届ける仕事があるからと断る。
アトランタの近郊には妻の実家もあることから、夫婦一緒に旅へ出たジャンゴだったが、その途中で強盗一味に襲撃され、金貨を奪われたばかりか妻まで殺されてしまう。復讐に燃えるジャンゴだったが、その黒幕がデヴィッドであることは知る由もなかった。
それから5年後。強盗一味のリーダー、ルーカス(ジョージ・イーストマン)が牛耳る町の保安官事務所で、ジャンゴは絞首刑執行人として働いていた。町の近郊ではたびたび金塊強盗事件が起きており、無実の人々が犯人に仕立て上げられて絞首刑に処せられていたのだが、ジャンゴは秘かに彼らの命を救っていたのだ。
ジャンゴが人々を助ける理由は一つ。彼らを仲間にしてルーカスの一味に復讐を果たすこと。金塊強盗事件の真犯人はルーカス一味で、証人を買収して無実の人々を身代わりにしていたのだ。やがて、ラクルーセスからサンタフェへ金塊を運ぶ馬車が近くを通るとの情報が入る。ルーカス一味が動くことは確実だ。ジャンゴは仲間たちと共に行動を起こす。
その頃、仲間ガルシア(ホセ・トーレス)の妻メルセデス(バーバラ・サイモン)が、夫の共犯者として処刑されることとなり、ジャンゴは救出に向かう。すると、その間にガルシアが別の計画を持ち出すのだった。
たとえルーカス一味を捕らえて無実を証明したとしても、以前のまま貧しい生活を送らねばならない。ならばいっそのこと、ルーカス一味を出し抜いて自分たちが金塊を奪おうというのだ。反対する仲間を容赦なく殺したガルシアは、残りのメンバーを引き連れて馬車を待ち伏せして金塊を強奪する。
一方、ジャンゴの計画を知ったルーカスは彼を拉致し、奪われた金塊の在り処を吐かせようと拷問を加える。もちろん、ガルシアの裏切りなど初耳のジャンゴが知るはずない。そこへ現れた黒幕デヴィッド。ジャンゴは初めて親友の裏切りを知った。
郵便局員オレス(ピヌッチョ・アルディア)とメルセデスの助けで脱出したジャンゴは、酒場に集っていたルーカス一味を一掃。さらに、裏切り行為の贖罪としてガルシアに協力させ、妻の仇であるデヴィッドに罠を仕掛けるのだが…。
「皆殺しのジャンゴ/復讐の機関銃(ガトリングガン)」 Preparati la bara!  (1968)_f0367483_16424542.jpg
セルジオ・コルブッチ監督の『続・荒野の用心棒』('66)でフランコ・ネロが演じたジャンゴは、同作の大ヒットによってマカロニ西部劇を代表するヒーローとなり、イタリアでは次々と「ジャンゴ映画」が量産されることとなる。その数は40本~50本とも言われており、殆どが勝手にジャンゴというキャラクターを拝借したパチ物。中にはフランコ・ネロ主演という理由だけで、配給会社が勝手に関係ない映画のタイトルにジャンゴを入れてしまうこともあった。実際は、ネロがジャンゴを演じた作品は『続・荒野の用心棒』と『ジャンゴ/灼熱の戦場』('87)の2本だけ。あとの自称「ジャンゴ映画」は全て別の役者が演じている。出来栄えも玉石混合。大半はジャンゴ人気にあやかっただけの代物だった。そうしたジャンゴ映画ブームの最中にあって、本作は恐らく”良く出来た作品”の部類に入る一本だと言えよう。
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実は本作、『続・荒野の用心棒』の正式な続編ではないものの、立ち位置的に言うと限りなくそれに近い。確かに、生みの親コルブッチは一切関わっていないし、制作会社も配給会社も違う。その一方で、脚本には『続・荒野の用心棒』にも携わった脚本家フランコ・ロゼッティが参加しており、もともとフランコ・ネロがジャンゴ役を演じる予定だった。なので、セミ・オフィシャルな続編と呼べなくもないだろう。ジャンゴの代役にはネロのソックリさんとして売り出したテレンス・ヒル。その後『風来坊』('70)シリーズで喜劇ウエスタンへとシフト・チェンジし、軽妙洒脱な個性でトップ・スターとなるヒルだが、本作ではネロ版ジャンゴのクールで寡黙なダーク・ヒーロー路線を踏襲。角度によってはネロ本人と見紛うくらい生き写しだ。
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内容的にも共通項は幾つかある。例えば、ジャンゴの動機が妻殺しの復讐であること。金塊強奪が絡んで来る辺りも同様だ。あ、もちろん棺桶に隠した機関銃もね。テレンス・ヒルがフランコ・ネロよりも若く見える(実際はヒルの方が2つ年上)ことから、『続・荒野の用心棒』の前日譚と受け取ることも出来るし、いわゆるパラレル・ワールドでのお話とも解釈できるだろう。監督のフェルディナンド・バルディは、『アヴェ・マリアのガンマン』('69)や『盲目ガンマン』('71)といった名作を残している人だが、基本的には良くも悪くも通俗的な西部劇アクションを得意とする娯楽職人。本作でも『続・荒野~』の雰囲気やイメージを随所に取り入れてはいるが、しかしコルブッチ版のような残酷なニヒリズムもダークな神話性もそこにはない。
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面白いのは、絞首刑執行人となったジャンゴが無実の罪で死刑を宣告された人々を助けて仲間に引き入れ、彼らを陥れた共通の敵を倒すためのグループを組織していくところ。これはなかなか上手いアイディアである。とはいえ、なにしろ有象無象の寄せ集めゆえ、あっという間に仲間割れが起きてしまう。だいたい、メンバーの顔触れを見たって、エドワード・G・ロスことルチアーノ・ロッシにリー・バートンことグイド・ロロブリジーダ(あのジーナ・ロロブリジーダの従兄弟)など、マカロニ西部劇の悪役でお馴染みの連中ばかり。そりゃまとまるわけはないだろうと(笑)。
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中でも異彩を放つのがホセ・トーレス演じる貧しいメキシコ人ガルシア。たとえ晴れて無実が証明されたとしても、夢も希望もない極貧生活に戻るだけ。どうせ、ルーカスみたいな悪人は次から次へと出てくるのだから、俺たちが奴一人を倒したって世間が良くなることなんてない。ならばいっそのこと本当に金塊強奪をして、愛する妻や娘に楽をさせてやりたい。正義という絵に描いた餅よりも金という実利を選んだ彼が、恩人であるジャンゴを裏切って仲間たちをたぶらかし、さらには強奪した金塊を独り占めしようと仲間を皆殺しにする。それもこれも自分と愛する家族の幸せのため。切羽詰まった社会的弱者ゆえの愚かな浅ましさ。善と悪が混然一体となったマカロニ西部劇ならではの魅力的なキャラだ。
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そういう意味では、ジャンゴの宿敵にして親友のデヴィッドもユニークな存在だ。ジャンゴに対して浅からぬ友情を抱きつつ、しかし邪魔だと感じれば容赦なく切り捨てる。それはそれ、これはこれ。「お前はいつまで初心な世間知らずなんだ」と呆れ気味でジャンゴに言い放つシーンがあるが、彼にとってはそれがいわば大人の流儀なんだろう。なので、自分は妻と娘を愛する良き家庭人でありながら、妻殺しの復讐に燃えるジャンゴに対して「女なんていくらでも代わりがいるだろう?いつまで根に持っているんだ」みたいなことを平然と言えてしまう。ここまで極端ではないにせよ、実際にこういう思考回路の人、いるよなあ…と思えてくる複雑かつリアルな悪人なのだ。演じるのは当時の西ドイツを代表する悪役俳優ホルスト・フランク。戦争映画やマカロニ西部劇に数多く出演し、その独特なマスクで強いインパクトを残した人だが、決定的な代表作に恵まれなかったことが惜しまれる。
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悪人と言えば、デヴィッドの片腕で強盗団のリーダーであるルーカスを演じるジョージ・イーストマンがカッコいい。本名をルイジ・モンテフィオーリという生粋のイタリア人で、その後イタリア産ゲテモノ・ホラー映画の怪優として鳴らすことになる人なのだが、本作の当時はマカロニ西部劇の悪役として忙しかった。映画デビューして2年目の27歳。まだそれほどアクの強くないマスクは端正で、ワルの匂いを漂わせたハンサムという感じ。2メートルを軽く超える長身もスラッとスマート。3ピースの細身スーツがピシッと決まっている。炎に包まれた酒場でのジャンゴとの一騎打ちも印象的だ。
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かように、登場人物もストーリーも魅力的な本作。幌馬車の追撃シーンや酒場の銃撃シーンなどの大掛かりなアクションもそれなりに迫力ある。ただ、例えば冒頭のジャンゴが強盗団に襲われて妻を殺されるシーン。数発の銃弾を体に受けて瀕死だったはずのジャンゴが、次のシーンでは何事もなかったようにピンピンとした状態で妻の死体を埋葬する。これが数か月後だというのなら分かるが、しかし妻の死体を埋葬しているということは、さほど時間は経っていないはず。どういうことだ!?という疑問がおのずと湧き上がる。このような、明らかに辻褄が合わない、物理的に不自然であるという描写が少なからず見受けられ、それゆえにクライマックスの機関銃乱射シーンもいまひとつ盛り上がらない。なんとも惜しい。なお、アメリカおよびイギリスでは現在、特典映像満載の4Kデジタル・レストア版がブルーレイ&DVDにて発売されている。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)※レターボックス収録/音声:Dolby Digital Mono/言語:イタリア語・英語/字幕:日本語/地域コード:2/時間:88分/発売元:(株)エルディ
特典:なし

by nakachan1045 | 2017-05-05 08:29 | 映画 | Comments(0)

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