なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「深海の軍神」 War-Gods of the Deep (1965)

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監督:ジャック・ターナー
製作:ダニエル・ハラー
製作総指揮:ジョージ・ウィロウビー
脚本:チャールズ・ベネット
   ルイス・M・ヘイワード
撮影:スティーブン・デイド
美術:フランク・ホワイト
音楽:スタンリー・ブラック
出演:ヴィンセント・プライス
   タブ・ハンター
   デヴィッド・トムリンソン
   スーザン・ハート
アメリカ映画/84分/カラー作品




<あらすじ>
20世紀初頭のイギリス。コーンウォール州の漁村にて、ある嵐の夜、ペンローズ氏の死体が海岸に打ち上げられる。彼は地元の古いホテルの弁護士だった。地元には古くから海底都市の伝説が残されており、漁民たちはペンローズ氏の死との関連を噂する。
現場に居合わせたアメリカ人の鉱山技師ベン(タブ・ハンター)は事件を知らせるべく、ホテルを相続した若いアメリカ人女性ジル(スーザン・ハート)のもとを訪れた。そこで彼は、画家を自称する変わり者のスコットランド人宿泊客ハロルド(デヴィッド・トムリンソン)を紹介される。すると、ペンローズ氏の書斎から奇妙な物音が。得体の知れない怪物に襲われたベンは、すぐにホテルを出るようジルに促すものの、彼女もハロルドもベンの警告を真に受けない。
そうこうしているうちに、闇夜に紛れた怪物によってジルが誘拐されてしまい、後を追って秘密の通路へ迷い込んだベンとハロルドは、たどり着いた洞窟で泉の中に落ちてしまう。気が付くと、2人は古代の神殿のような場所にいた。そこで怪しげな男たちに捕まった彼らは、サー・ヒュー船長(ヴィンセント・プライス)なる人物と対面する。
船長によると、ここは古代人が建築した巨大な海底都市だという。古代人は火山の熱によって、海水から酸素と真水を生み出す技術を持っていたのだ。しかし、その古代人も今は死滅してしまい、僅かに残された子孫が半魚人となって生き残っていた。そして、かつて密輸船を運航していたサー・ヒュー船長と手下たちは、たまたま見つけたこの地下都市を拠点として移り住み、半魚人を使って近隣の住人を誘拐しては強制労働に従事させていたのだ。
ベンとハロルドの処遇を考えるサー・ヒュー船長。とっさにハロルドは、ベンが世界的に有名な天才科学者だと嘘をついてしまう。すると、それを聞いた船長はベンに交換条件を持ちかける。3日以内に火山の噴火を抑える方法を見つけ出せ、さもなくば2人とも処刑すると。
というのも、地下都市は今、火山の活動が激しくなったせいで破滅の危機に瀕していたのだ。ならば逃げ出せばいいと思うのだが、船長と部下たちにその選択肢はない。実は、この地下都市の酸素には不老不死の効果があった。サー・ヒュー船長たちが地下都市を根城にするようになったのは100年前。以来、彼らは全く年を取っていない。それゆえ、外の日光を浴びると急速に年老いて死に至ってしまうのだ。
果たして、ベンとハロルドは海底都市を破滅の危機から救い、人質となったジルを助け出すことが出来るのだろうか…?

まるでジュール・ヴェルヌの『海底二万里』とヘンリー・ライダー・ハガードの『洞窟の女王』を足して割ったような海洋アドベンチャーだが、実はこれ、『アッシャー家の惨劇』('60)や『恐怖の振子』('61)に始まる、A.I.Pが製作した一連のエドガー・アラン・ポー・シリーズの1本だったというのだから驚いた。一体どこがポーやねん!?と突っ込みたくなるところだが、一応、原作はポーが1845年に発表した「海の中の都市」という詩なのだそうな。

とはいえ、あくまでも詩ですからね。具体的なストーリーがあるわけじゃない。なので、ポー原作というのはほぼ名目上みたいなもので、実際のところはヴェルヌやハガードのパクリと考えて間違いないでしょう。なにしろ、A.I.Pには同じくポーの詩が原作ですよと謳いながら、実はH・P・ラブクラフトの「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」の映画化だった『怪談呪いの霊魂』('63)という立派な前科がありますからね(笑)。これも同様のパターンですな。

監督はこれが遺作となったベテラン、ジャック・ターナー。『過去を逃れて』('47)や『ベルリン特急』('48)など、数々の名作フィルム・ノワールを遺した名匠としても知られるターナーだが、やはりなんといってもジャック・ターナーといえば、『キャット・ピープル』('42)や『私はゾンビと歩いた!』('43)に代表される、一連のRKOホラーにおける傑作群であろう。本作でも冒頭、嵐の晩に田舎の漁村で奇怪な半魚人が蠢くというシーンで、彼一流の怪奇幻想的なムードが如何なく発揮される。ラヴクラフトの『インスマウスの影』にインスパイアされたと思しき、悪夢的なイメージが印象的だ。

まあ、全体的には『海底二万マイル』('54)をはじめとするディズニーの冒険ファンタジー映画、もしくは『地球の危機』('61)やそのテレビ版『原子力潜水艦シービュー号』などの初期アーウィン・アレン作品を彷彿とさせるような、ジューヴァナイルなエンターテインメント映画に仕上がっている。なんというか、いい意味でも悪い意味でも単純明快だ。

ヒッチコックの『海外特派員』('40)や『知りすぎた男』('56)で有名な名脚本家チャールズ・ベネットと、当時A.I.P.の御用達だったルイス・M・ヘイワードによる脚本は、分かりやすいと同時にご都合主義的で強引な展開が目立つ。流用フィルムを使ったクライマックスの火山噴火シーンもいまひとつ盛り上がらない。その一方で、地下都市の巨大なセットの出来は素晴らしい。海底に眠る古代遺跡の神秘的なムードが良く出ているし、細部までかなりリアルに作り込まれているため、見ていてワクワクさせられる。『宝島』('71)や『タイタンの戦い』('81)のフランク・ホワイトによる美術デザイン、そして『プリンセス・ブライド』('87)や『バロン』('88)のボブ・カフによる海底都市の全景を捉えたマットペイントが見事だ。

微妙なのは半魚人のデザイン。冒頭の暗闇に紛れて蠢く半魚人たちはすこぶる邪悪でクールなのだが、明るいところで見るとちょっと間抜けなんだよね(笑)。しかも、マスクを被ったスタントマンの目がバッチリと確認できてしまう。水中を泳ぐ姿は半魚人というよりも、まるで『サンゲリア』のサメを食う海中ゾンビ。ま、それはそれで奇妙な味があっていいのだけれど。モヒカン刈りロングヘアの半魚人なんか、インパクトだけは抜群だ。

撮影監督はロバート・テイラー主演の剣劇映画『円卓の騎士』('53)なんかを撮っていたスティーブン・デイド。赤や青の鮮烈な原色照明を多用しているところなどは、なるほど、エドガー・アラン・ポー・シリーズらしさを感じさせるだろう。特撮には『炎の女』('65)などハマー作品でお馴染みのレス・ボウイが携わっているものの、一部特撮は日本映画『海底軍艦』('63)のフィルムを使い回している。

主演はご存知、ホラー映画の帝王ヴィンセント・プライス。まあ、A.I.P.でポーときたら、彼を外すわけにはいきませんですな。明らかに『海底二万里』のネモ船長をモデルにしたサー・ヒュー船長。単に紋切り型の冷酷非情な悪役ではなく、亡き妻を100年間想い続けるというロマンチックな面のあったりするところがよろしい。対するヒーロー役には、'50年代のティーン・アイドル俳優タブ・ハンター。歌手としても『ヤング・ラブ』が全米ナンバー・ワンに輝いたりと大人気だったが、ゲイ疑惑(後にカミングアウトしている)が災いして当時はB級映画一辺倒で、一時はイタリアへ行ってマカロニ西部劇に出たりしていた。

そんなタブ・ハンター演じるベンの相棒的存在で、ちょっと胡散臭いけど憎めないスコットランド人ハロルド役として、コミック・リリーフを一手に引き受けるのが、『メリー・ポピンズ』('64)のお父さん役や『ベッドかざりとほうき』('70)の魔法大学学長役など、ディズニー映画で親しまれた名優デヴィッド・トムリンソン。また、ヒロインのジル役には、A.I.P.社長ジェームズ・H・ニコルソンの夫人だったスーザン・ハートが扮している。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:84分/発売元:Kino Lorber/MGM/20th Century Fox (2016年)
特典:タブ・ハンターのインタビュー(約11分)/オリジナル劇場予告編

by nakachan1045 | 2017-07-08 11:33 | 映画 | Comments(0)

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