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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「いつも心に太陽を」 To Sir, With Love (1967)

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監督:ジェームズ・クラヴェル
製作:ジェームズ・クラヴェル
原作:E・R・ブレイスウェイト
脚本:ジェームズ・クラヴェル
撮影:ポール・ビーソン
美術監督:トニー・ウーラード
音楽:ロン・グレイナー
主題歌:ルル
出演:シドニー・ポワチエ
   クリスチャン・ロバーツ
   ジュディ・ギーソン
   ルル
   スージー・ケンドール
   アン・ベル
   ジョフリー・ベイルドン
   フェイス・ブルック
   パトリシア・ルートリッジ
   クリストファー・チテル
   エイドリアン・ポスタ
   エドワード・バーンハム
アメリカ映画/105分/カラー作品




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<あらすじ>
ロンドンの貧困地区イースト・エンドにあるノース・クエイ中等学校に、1人の若い黒人教師が赴任して来る。英国領ギアナ(現ガイアナ)出身のマーク・サッカレイ(シドニー・ポワチエ)だ。彼の本職はエンジニアだったが、就職先がなかなか見つからなかったため、全く未知の分野である教師に志願したのである。
到着早々、同僚教師たちから覚悟しておくよう忠告されるサッカレイ。この学校の生徒たちは、よその学校で手に負えなかった問題児の集まりで、中でも彼の担当する最終学年クラスの生徒たちは教師に対して手厳しい。ただ、ベテラン女教師クリントリッジ(パトリシア・ルートリッジ)は言う。「あの子たちは家庭に問題を抱えて大人を信用していないだけで、本当はみんないい子たちばかりなのよ」と。教師経験のないサッカレイは一瞬躊躇するが、しかし生活のためには仕事が必要だった。
生徒たちは想像以上に手強かった。授業中の私語やいたずらなどは当たり前。あえて教師の神経を逆撫でするような言動で挑んでくる。中でも特に反抗的なのが、革ジャンを着た不良少年バート(クリスチャン・ロバーツ)と大人びた美少女パメラ(ジュディ・ギーソン)。感情的になっては彼らの思うツボだと、冷静沈着に授業を進めていたが、しかしある日、女生徒が使用済みのタンポンを教室の暖炉で燃やしてふざけているのを見て、ついに我慢の限界に達してしまう。
あのケダモノのような子供たちをどう教育すればいいのか。そこで彼はハッと気づく。子ども扱いをするからダメなのだと。貧しいうえに成績の悪い彼らは大学進学することもないため、この学校を卒業すればそのまま社会へ出ることになる。嫌がおうにも大人にならねばならないのだ。
生徒の前で教科書をゴミ箱に捨てたサッカレイは、これから君たちを一人前の大人として扱うと宣言。授業のテーマも生徒自身に選ばせ、自らの実体験を交えながら実社会で役立つ知識を教えることで、生徒たちに規律や責任感などを学ばせようとする。
当初は驚いて戸惑った生徒たちだが、自分たちと同じような貧しい家庭で育ち苦労したサッカレイの言葉に共感し、徐々に心を開いていく。そんなサッカレイの教育方法に一部の同僚教師は懐疑的だったが、若い同期の女教師ジリアン(スージー・ケンドール)らは応援する。
だが、体育教師の生徒に対する理不尽な扱いを巡って、サッカレイと生徒たちの間に溝が出来てしまう。世の中に出れば理不尽なことにも耐えねばならないことを教え諭そうとするサッカレイだったが、納得の出来ない生徒たちは再び不信感を募らせてしまうのだった。果たして、サッカレイの真意は彼らに伝わるのか…。
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『野のユリ』('63)で黒人として初めてアカデミー主演男優賞に輝いた名優シドニー・ポワチエ。そんな彼にとって、1967年はキャリア最大の当たり年だった。なにしろ、その年に出演した3本の映画全てが、いずれも映画史に語り継がれる名作となったのだから。それが、アカデミー賞作品賞以下5部門に輝く『真夜中の大捜査線』、同じくアカデミー賞で2部門を受賞した『招かれざる客』、そして全米年間興行収入ランキングで8位をマークする大ヒットとなったイギリス映画『いつも心に太陽を』である。
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大都会の荒廃した学校に赴任した理想主義者の教師が、問題児だらけの不良生徒たちを更生させつつ、自らも彼らとの関りの中で人間として成長していく。まさに学園ドラマの王道とも言うべき作品だ。この種の映画は同じくポワチエが生徒役で出演した『暴力教室』('56)辺りが原点かと思われるが、現在へ至るまでの学園ドラマの系譜において最も強い影響を及ぼしたのは、恐らく本作ではないだろうか。特に日本の『金八先生』や『スクール・ウォーズ』などは、本作からの影響が大きいように思われる。実際、昔はテレビのロードショー番組でも頻繁に放送されていたし、リバイバル公開までされたからね。不良と言っても『暴力教室』のような筋金入りのワルが出てくるわけではないので、日本人にもすんなりと受け入れられやすかったのだろう。
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しかしながら、実は初公開当時、アメリカやイギリスの主要メディアにおける本作の評価は散々なものだった。なぜかというと、あまりにも非現実的な綺麗ごとだというのだ。デイリー・エクスプレス紙では「上映開始から20分で、手をあげて教室を出て行ってもいいか訊きたい気分になる」、オブザーバー紙に至っては「(映画を見て)これほどの辱めを受けたのは久しぶりだ」とまで酷評されている。本作が『007は二度死ぬ』に匹敵する全米興行収入4200万ドル以上のメガヒットを記録しながら、賞レースではほとんど無視されてしまった理由はここにあると言えよう。
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まあ、批評家受けの悪さは分からないでもない。というか、確かに綺麗ごとが鼻につく映画ではある。生徒たちも問題児というわりに、意外と素直で聞き分けがいいしね。一番のくせ者だった不良少年バートだって、ボクシングマッチで先生にKOされた途端に心を入れ替えるという変わり身の早さ(笑)。リアリズムという点では非常に弱い。いい意味でも悪い意味でも大衆向け娯楽映画であり、基本的にはフィール・グッド・ムービーの域を出るものではないだろう。
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監督は小説家や脚本家として有名なジェームズ・クラヴェル。あの『将軍』の原作者だ。奇をてらうことのないストレートな演出は無個性で、時として単調にも感じられることは否めないが、しかしスウィンギン・ロンドンと呼ばれた'60年代後半、ポップ・カルチャーの花開く英国社会の庶民生活を活き活きと捉えている点は魅力だ。瑞々しくも爽やかな味わいは悪くない。ラストだって、そうなることは分かり切っていてもグッとくる。そこを「甘過ぎる」と見るか、それとも「心地良い」と感じるかで評価は大きく分かれるだろう。
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また、登場人物のいずれも個性的でキャラが立っているところもいい。中でも、やはり主演のシドニー・ポワチエはさすがの名演だ。一見すると真面目で品行方正なエリート教師。身なりも良くてハンサムな優等生だ。それゆえ、生徒たちからしてみれば、自分たちとは住む世界の全く違う大人なのだが、しかし植民地の貧しい家庭で生まれ育ち、子供の頃はまともな英語も喋れず、様々な仕事を転々としながらも自力で大学を卒業したという苦労人。その言葉の節々からは、理不尽な人種差別に悩まされてきたことも伺える。恐らく、就職先が見つからないのもそのためだ。そんな彼の嘘偽りない素顔を知ることで、生徒たちも心を開いていく。なんだ、向こう側の人かと思ってたらこっち側の人だったんだと。この辺りの描写はとてもいい。誠実さを絵に描いたようなポワチエの凛々しさは、生徒たちの信頼を得るに十分な説得力を持つ。
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個人的にとても好きだったのは、サッカレイが生徒たちにとって身近なビートルズやカーナビー・ストリート・ファッションを引き合いに出しつつ、歴史や文化の面白さ、さらには向上心やチャレンジ精神をもって世の中を変えていくことの大切さを教えるシーン。さらには、その話に興味を持った生徒たちを連れて博物館や美術館を巡るシーン。普段は背伸びをして粋がっている生徒たちが、好奇心旺盛な子供の顔を覗かせる様子がなんとも微笑ましい。
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ちなみに、人種差別問題に触れつつも、かといって前面に出していない点も本作の特徴だ。日常の様々な場面における人種的な偏見の存在は随所で描かれるが、しかし例えば主人公が黒人だからという理由だけで、いわれなき差別を受けるようなことはない。そこは、奴隷制度の長い歴史があったアメリカとの大きな違いなのだろう。また、生徒の中には中国系やインド・パキスタン系も含まれており、当時既に英国社会が人種的に多様化しつつあったことを伺わせる。
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その生徒たちで最も印象的なのは、やはりバート役のクリスチャン・ロバーツとパメラ役のジュディ・ギーソンだ。中でもギーソンの超キュートな美少女ぶりは最強!撮影当時18歳だった彼女はこれが初めての大役で、以降はイギリスとアメリカの両方で売れっ子となり、『ブラニガン』('75)ではジョン・ウェインとも共演した。一時女優業を引退していたものの、最近はロブ・ゾンビ監督作品の常連として活躍中だ。ちなみに、日本ではギーソンと誤って表記されているものの、正確な発音はジュディ・ジーソン。また、当時生徒役の中では最年長だった21歳のロバーツも、本作を機に映画で活躍するようになったが、あまり長続きはしなかった。
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そのほか、ちょっとトボけた女の子モイラ役のエイドリアン・ポスタ、いつも様々な種類のサングラスをかけている少年ウィリアム役のマイケル・デ・バレス、バートの親友ポッター役のクリストファー・チテルも好演。デ・バレスは実生活では役柄と正反対の貴族の家庭に生まれたお坊ちゃまで、その後ロック・ミュージシャンとして知る人ぞ知る有名人となる。ディープ・パープル傘下のシルヴァーヘッドや、レッド・ツェッペリン傘下のディテクティヴといったバンドで活躍し、ロバート・パーマーの後を引き継いでパワー・ステーションの2代目ボーカリストも担当した。
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教師役では、主人公に共感する若くてナイーブな女性ジリアンを演じたスージー・ケンドールが良かった。彼女は本作の劇場公開された翌年、上流階級に嫌気のさしたお嬢様が貧困地区に移り住むものの、そこで労働者階級の厳しい現実を思い知らされるという、本作とテーマ的に共通するところのある『Up the Juncttion』('68)という映画に主演した。その後、ダリオ・アルジェント監督の『歓びの毒牙』('69)を契機に、イタリアで幾つものジャッロ映画に出演したのはご存知の通り。
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なお、本作はルルの歌う主題歌も有名。イギリスではなぜかシングルのB面扱いだったものの、アメリカではA面ソングとしてリリースされ、瞬く間にビルボード・チャートで1位を記録。年間チャートでもナンバー・ワンに輝いた。それまで母国イギリスでは幾つものヒット曲を出していたルルだが、アメリカではこれが初の大ヒットとなったのである。ちなみに、映画会社から最初に送られてきた楽曲は別のもので、ルル本人によると聞くに堪えない酷い代物だったという。そこで彼女は、知人の作曲家マーク・ロンドンに頼んで新しい曲を書いてもらったところ、それが最終的に正式な主題歌として採用されたのだそうだ。ルルは元気なお転婆娘バブス役として本編にも出演。当時自分のルックスにコンプレックスを持っていた彼女だが、この役柄が一般の観客に大好評だったことから、自分に自信が持てるようになったと語っている。
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ちなみに、ロンドンの庶民家庭の子供たちという設定なので、生徒役の俳優たちはみな私服を着用して撮影に臨んだのだが、当時既にスターだったルルはパリで買ってきた最新モードを着用したのだとか。また、クライマックスの卒業パーティでクリスチャン・ロバーツが着ている黄色のスーツは、カーナビー・ストリートでルルが選んでくれたのだそうだ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ&DVD情報(3000枚限定プレス・イギリス盤2枚組)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:105分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:105分
発売元:Powerhouse Films/Columbia Pictures (2016年)
特典:女優ジュディ・ギーソンと評論家ジュリー・カーゴ、ニック・レッドマンによる音声解説/原作者E・R・ブレイスウェイトと教育家サロメ・トーマス=エルによる音声解説/俳優クリスチャン・ロバーツのインタビュー(24分)/美術監督トニー・ウーラードのインタビュー(11分)/原作者E・R・ブレイスウェイトのインタビュー(24分)/ルルのインタビュー(5分)/シドニー・ポワチエの元マネージャー、マーティ・ボームのインタビュー(5分)/教育家サロメ・トーマス=エルのインタビュー(11分)/ドキュメンタリー「Miniskirts, Blue Jeans and Pop Msic!」(15分)/サウンドトラック音楽再生機能/イメージ・ギャラリー/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2017-07-17 21:28 | 映画 | Comments(0)

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