なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「The Night They Raided Minsky's」 (1968)

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監督:ウィリアム・フリードキン
製作:ノーマン・リア
原作:ローランド・バーバー
脚本:アーノルド・シュルマン
   シドニー・マイケルズ
   ノーマン・リア
撮影:アンドリュー・ラズロ
ミュージカル演出:ダニー・ダニエルズ
美術デザイン:ウィリアム・エッカート
       ジーン・エッカート
編集:ラルフ・ローゼンブラム
音楽:チャールズ・ストローズ
出演:ジェイソン・ロバーズ
   ブリット・エクランド
   ノーマン・ウィズダム
   バート・ラー
   フォレスト・タッカー
   ハリー・アンドリュース
   ジョセフ・ワイズマン
   デンホルム・エリオット
   エリオット・グールド
   ジャック・バーンズ
ナレーション:ルディ・ヴァリー
アメリカ映画/99分/カラー作品




<あらすじ>
時は1925年。一人の若い女性が、ペンシルヴァニアの田舎から大都会ニューヨークへやって来る。彼女の名前はレイチェル(ブリット・エクランド)。厳格なアーミッシュの家庭で育った彼女は、ダンサーになるという夢を叶えるため家出してきたのだ。
猥雑な下町ローワー・イーストサイドに降り立った彼女は、たまたま知り合った親切な老人スパッツ教授(バート・ラー)に案内され、人気の大衆演芸場ミンスキーズへとやって来る。ここの売りはコメディアンたちによる下世話なコントと、肌も露わな女性たちによるダンスで構成されたバーレスク・ショーだった。
大勢の観客でごった返すミンスキーズだったが、支配人のビリー・ミンスキー(エリオット・グールド)は深刻な悩みに直面していた。敬虔なユダヤ教徒である劇場主の父親ルイス(ジョセフ・ワイズマン)が、不道徳な演目をこれ以上看過できないとして、一座との契約を打ち切ると言い出したのだ。
その上、ミンスキーズを目の敵にする社会活動家ファウラー(デンホルム・エリオット)からも、公序良俗に反する演目をやめなければ警察に通報すると脅されていた。常連客のマフィア・ボス、フーリアン(フォレスト・タッカー)に劇場の買収を持ちかけるビリーだったが、なかなか前向きな返事は得られなかった。
一方、スパッツ教授の口添えで花形芸人レイモンド(ジェイソン・ロバーズ)と相棒チャック(ノーマン・ウィズダム)に紹介されるレイチェル。純情で初心なレイチェルに一目で惹かれるチャックだったが、レイモンドは「得意なのは聖書を題材にしたダンス」という色気のない彼女を一笑に付す。
しかし、ビリーの窮状を知ったレイモンドは一計を案ずる。レイチェルを「花の都パリからやって来た踊り子マドモアゼル・フィフィ」に仕立て上げ、さも破廉恥な演目を上演するように見せかけて大々的に宣伝しようというのだ。当然、ファウラーや警察が目を光らせにやって来る。そこで聖書を題材にしたレイチェルの健全なダンスを披露して彼らに一泡吹かせれば、いちいちケチを付けられることもなくなるだろうと考えたのである。
そんなこととはつゆ知らず、ダンサーとして雇われて有頂天のレイチェル。心優しいチャックは秘かに胸を痛めるが、女好きで計算高いレイモンドは世間知らずな彼女を手玉に取り、あわよくば手籠めにしてやろうと狙う。ところが、そこへレイチェルの父親ジェイコブ(ハリー・アンドリュース)が娘を連れ戻すために現れ、事態は思わぬ方向へと転がっていく…。


アカデミー賞に輝く『フレンチ・コネクション』('71)や『エクソシスト』('73)などの名作でお馴染み、巨匠ウィリアム・フリードキン監督による長編劇映画第2弾である。時は狂乱の1920年代、ニューヨークに実在した有名なバーレスク劇場「ミンスキーズ」を舞台に、ストリップの知られざる誕生秘話を描いたミュージカル・コメディだ。

ストーリーは極めてシンプル。一般大衆に下世話な笑いとエロを提供して大繁盛のミンスキーズだが、モラルにうるさい市民団体や警察の横やりで営業停止の危機に直面してしまう。そこで、看板芸人レイモンが考えついたのは、ダンサー志望の田舎娘レイチェルを、パリからやって来た妖艶な舞姫マドモワゼル・フィフィとして仕立て上げること。さもハレンチ極まりないダンスを上演すると見せかけ話題を煽っておきながら、実際は敬虔なアーミッシュであるレイチェルの健全なお遊戯を披露することで、手入れに踏み込んできた警察やモラリストたちの面目を丸潰しにしようというのだ。

ところが、自分がいいように利用されていると気付いたレイチェルは、貞操観念にうるさい父親にせよ、甘い言葉で誘惑するレイモンにせよ、結局のところ男なんてみんな女をモノ扱いしているだけじゃない!とばかりに大憤慨。怒りで興奮冷めやらぬ彼女は、勢い余って観客の前で服を一枚一枚脱いでしまう。かくして、ストリップなる新たなエンターテインメントが生まれましたとさ、チャンチャン、というわけである。

なんとも、たわいないと言えばたわいないお話。原作は実話を基にしたというローランド・バーバーの小説。映画でも冒頭に実話ベースであるとの断り書きが出てくるものの、レイチェルのモデルとなった実在のダンサー、メアリー・ドーソン自身は原作者の創作だとして否定している。ただ、題材となった'25年の警察によるガサ入れは記録に残っているし、ミンスキーズのオーナー兄弟(そう、実際は4人兄弟で経営していた)の回顧録にも似たようなエピソードは出てくるらしいので、全くの創作というわけではないのだろう。

それはともかく、『さよならコロンバス』('69)や『コーラスライン』('85)で知られるアーノルド・シュルマンの参加した脚本は、いい意味でも悪い意味でも奇をてらうことなく凡庸だ。辛うじて、ストリップ誕生とフェミニズムを結び付けているところは面白いものの、結果的にはただそれだけ。特にそこから広げられることも、掘り下げられることもないまま幕を閉じる。

その一方で、一連のビートルズ映画に代表されるリチャード・レスター監督作品にも似た、ポップでオフビートな演出は悪くない。'20年代当時の記録映像を随所に織り交ぜるだけでなく、撮り下ろし映像とオーバーラップさせたり、モノクロ→カラー→モノクロと自在に行ったり来たりと、様々な実験的試みによってノスタルジックな世界観にコンテンポラリーな味付けが施されている。その遊び感覚溢れる映像表現が、凡庸なストーリーをだいぶ救っていると言えるだろう。

ただ、これはフリードキン監督の才能によるものではなく、編集者ラルフ・ローゼンブラムの功績だったようだ。当初のいわゆるディレクターズ・カット版は、プロデューサーからもスタジオからも大不評。フリードキン自身、本作について後に「自分にとっては難題過ぎて、どうすればいいのか分からなかった」「問題の多い映画だったが、最大の問題は私が役不足だったこと」などと振り返っているが、作品の方向性について皆目見当がつかなかったようだ。当時のフリードキンといえば、監督デビュー作『ソニーとシェールのグッド・タイムス』('67)が大コケしたばかり。なので、恐らく拾ってもらった製作者ノーマン・リアには気を使っていただろうし、作家としてもいろいろと迷っていたのかもしれない。

そこで、これじゃあ埒が明かないと考えた配給会社ユナイテッド・アーティスツの社長は、シドニー・ルメット監督御用達の編集者ローゼンブラムに大胆な改修工事を依頼する。「いくら時間がかかってもいいから、これを好きなように料理してくれ」と。もともと本作は劇場公開の時期が未定だったため、延ばそうと思えばいくらでも延ばせる。そこで、ローゼンブラムは手元にあるフィルムをイチから切り貼りし直し、先述したような記録映像の挿入やビジュアル効果の追加などを施し、およそ9カ月をかけて再編集を行ったのである。「リチャード・レスター監督のようなアヴァンギャルド性は、編集によってしか成し得ることが出来ない」とローゼンブラムは回顧録で述べているが、なるほど、これは映画における編集の重要性がよく分かるエピソードでもあるだろう。

また、本作は伝説的なエンターテイナー、バート・ラーの遺作としても見逃せない。『オズの魔法使』('39)の臆病なライオン役で一躍有名になり、その後ブロードウェイの舞台やテレビで活躍したラーだったが、本作の撮影時は既に72歳。当時としては結構な高齢だ。これがおよそ12年ぶりの映画出演だった彼は、もともと若い頃はバーレスク芸人だったのだが、そんな彼が年老いて仕事にあぶれたバーレスクの元人気芸人スパッツ教授を演じている。スパッツ教授がレイチェルをミンスキーズに売り込むのも、それを口実に自分も舞台に立ちたいから。すきあらばレイモンやミンスキーに自分の古い得意芸を披露するが、まるで見向きもされない。そんな彼が、ガサ入れ騒動で誰もいなくなった劇場のステージに立ち、観客の大歓声を想像して笑みを浮かべるクライマックスがなんとも切ない。撮影終盤の'67年12月2日にガンで亡くなったラーだが、幸いにも出番のほとんどは撮り終えていたという。

レイチェル役には『007/黄金銃を持つ男』('74)のボンドガール役でも知られる、英国出身の小悪魔系セクシー女優ブリット・エクランド。当時はピーター・セラーズの年下妻としても有名だった。人気芸人レイモン役には名優ジェイソン・ロバーズ、その相方チャック役にはこれが初のアメリカ映画出演だったイギリスの人気喜劇俳優ンーマン・ウィズダム。劇場主ミンスキー役には本作で映画デビューを飾ったエリオット・グールド。今となっては豪華な顔ぶれの主演陣だが、いずれも当時は成長中の注目株か全くの新人だった。

そのほか、往年のB級西部劇俳優フォレスト・タッカーや戦争映画でお馴染みのコワモテ俳優ハリー・アンドリュース、『007/ドクター・ノオ』('62)のタイトル・ロールで有名なジョセフ・ワイズマン、『インディ・ジョーンズ』シリーズでも親しまれたデンホルム・エリオットなどが共演。賑やかなアンサンブル演技を披露しているが、蓋を開けてみると興行的には全くの不発だった。それでもフリードキン監督が干されなかったのは、批評家からの評価が高かったおかげかもしれない。

ちなみに、プロデューサーのノーマン・リアは主にテレビ畑で活躍した制作者で、'70年代を代表する国民的ドラマ『All in the Family』('71~'79・日本未放送)や黒人シットコムの草分け『Sanford and Son』('72~'77・日本未放送)など、数々のヒット作を生み出した人物。また、ブロードウェイ・ミュージカル『バイバイ・バーディ』や『アニー』で有名な作曲家チャールズ・ストローズが音楽を担当している。彼にとって、映画用にオリジナル作品を手掛けたのは、これが最初で最後だったらしい。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:99分/発売元:Olive Films/20th Century Fox/United Artists (2015年)
特典:オリジナル劇場予告編




by nakachan1045 | 2017-09-02 13:28 | 映画 | Comments(0)

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