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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「アンドロメダ...」 The Andromeda Strain (1971)

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監督:ロバート・ワイズ
製作:ロバート・ワイズ
原作:マイケル・クライトン
脚本:ネルソン・ギディング
撮影:リチャード・H・クライン
美術デザイン:ボリス・レヴィン
特殊効果:ダグラス・トランブル
     ジェームズ・ショート
編集:スチュアート・ギルモア
   ジョン・W・ホームズ
音楽:ギル・メレ
出演:アーサー・ヒル
   ジェームズ・オルソン
   デヴィッド・ウェイン
   ケイト・リード
   ポーラ・ケリー
   ジョージ・ミッチェル
   ラモン・ビエリ
アメリカ映画/131分/カラー作品




<あらすじ>
ニューメキシコ州の小さな町に人工衛星が墜落。回収に向かった米陸軍調査隊は、辺り一面に住民の死体を発見して愕然とする。さらに、その兵士たちからの無線連絡も途絶えたことから、陸軍本部は人工衛星に何らかの病原体が付着している可能性があるとして緊急体制を発令した。
陸軍は4人の科学者を招集する。政府の細菌研究プロジェクト「ワイルドファイア」計画の責任者であるジェレミー・ストーン博士(アーサー・ヒル)、同計画の発足メンバーであるチャールズ・ダットン博士(デヴィッド・ウェイン)、細菌研究の第一人者である女性科学者ルース・リーヴィット博士(ケイト・リード)、そして外科手術の権威であるマーク・ホール博士(ジェームズ・オルソン)だ。
まずは、ストーン博士とホール博士が人工衛星を回収するために町へ入る。住民は苦しむ間もなく死んだようだった。しかも、死体を調べると血液が凝固して砂状になっている。論理的に説明のつく現象ではあるが、しかしこれまでに前例はない。さらに、生後間もない赤ん坊と老人の2人だけが生きて発見される。
生存者2人と人工衛星を回収した科学者たちは、ネバダ州の砂漠のど真ん中に建設された秘密研究施設へ到着。そこは表向きはこそ農業開発センターを装っているが、地下に隠された5階建ての研究施設には、細菌研究のための最先端設備が揃えられていた。
人工衛星を調べていたストーン博士とリーヴィット博士は、緑色の付着物が地球には存在しない未知の生命体であることを発見。これが有害な病原体となったのだ。しかも空気感染する。一方、医療スタッフのカレン(ポーラ・ケリー)と共に2人の生存者を調べるホール博士は、両者の共通点を見つければ感染せずに済んだ理由も分かると考えるが、しかしアル中の老人と乳飲み子に共通点などあるようには見えない。
その頃、陸軍本部はストーン博士らの要請で、細菌感染の拡大を防ぐため全滅した町の核爆破を検討するが、大統領の及び腰で宙ぶらりんの状態だった。それを知ったストーン博士らは猛抗議するが、その直後に「アンドロメダ」と名付けられた病原体が自在に姿形や習性を変化させるばかりか、エネルギーを吸収して拡散することが判明。核爆破がむしろ逆効果になると判断した科学者たちは、ホワイトハウスにその旨を連絡する。
すると、今度はダットン博士の研究ラボで異常が発生。意志を持ったアンドロメダ病原体が「脱走」したのだ。ダットン博士を救うため病原体の弱点を探るホール博士。さらに、空気汚染を受けて施設の自動爆破装置が起動してしまう…。

『ウエスト・サイド物語』('61)と『サウンド・オブ・ミュージック』('65)でアカデミー監督賞に輝いた巨匠ロバート・ワイズが、『ジュラシック・パーク』('93)の原作者としても有名なSF作家マイケル・クライトンの出世作「アンドロメダ病原体」を映画化した作品。墜落した人工衛星に付着していた未知の地球外病原体「アンドロメダ」の感染パニックと、それを食い止めようとする科学者チームの闘いと葛藤を克明に描いたSFスリラーである。

まず印象的なのはドキュメンタリー映画さながらの徹底したリアリズムだ。そもそも原作自体が「実際に起きた事件の一部始終を客観的に記録した報告書」の体裁を取っており、仮説を含めた科学的理論や専門知識、国家的危機における具体的な軍事・政治的手続きを詳細に盛り込んだ疑似ノンフィクションとして仕上げられているのだが、映画版においてもカリフォルニア工科大学やNASAのジェット推進研究所が技術協力し、宇宙科学や電気通信学の専門家で後にリバティ・グローバルの重役となるリチャード・グリーン博士が技術監修を担当することで、まるで現実にも起こり得る出来事のような臨場感がもたらされている。

もちろん、専門知識に乏しい我々観客には、本作の描写がどこまで現実に近いのかなどよく分かるまい。とはいえ、ある程度の教養を身に付けた観客であれば、少なくとも絵空事の空想科学と本物の科学の違いくらいはおよその見当がつくことだろう。当時はSF映画のリアリズムに革命をもたらした『2001年宇宙の旅』('68)が公開された後であり、観客の見る目もそれなりに肥えていたはずだ。本作が相手にしているのはそうした「知的な観客」であり、重要なのは彼らが納得しうる「本物っぽさ」を演出すること。そういう意味では十分に成功しているし、50年近くを経た今見てもなお、色褪せないだけの説得力がある。

ミュージカルから歴史大作、ホラーからフィルムノワールまで、あらゆるジャンルで名作を残してきたロバート・ワイズ監督は、もちろんSF映画とも少なからず縁があるわけだが、このリアリズムに根差したドキュメンタリー路線というのは侵略型SF映画の名作『地球の静止する日』('51)でも既に試みられている。しかし、当時はまだ技術的にも文化背景的にも表現の限界があり、必ずしも既存のジャンル枠を出るものではなかった。そう考えると、やはり本作が『2001年宇宙の旅』から受けた恩恵は大きいと言えるかもしれない。

さらに、ワイズ監督はスコープサイズのワイドスクリーンをフル活用した象徴的な画面構図、スプリットスクリーンやコンピューターグラフィックなどの映像技術を駆使しながら、極めて実験的かつ洗練されたフューチャリスティックな世界観を構築している。それはまるでアート映画のようだが、しかしそれでいて娯楽映画としてもちゃんと成立しているのは、基本的に職人肌であるワイズ監督の手腕によるところが大きいと言えよう。

例えば、地下の研究施設内では階層が下がるごとに無菌状態を徹底するため、科学者たちは何度も防疫や滅菌の処理を受けなくてはならない。本作ではそれを事細かく描いていくことになるのだが、細部まで緻密に計算されたスタイリッシュな映像表現によって、ともすると単調で退屈になりかねない一連の描写にも独特の緊張感が生まれ、むしろ事態がいかに深刻なのかを観客が手に取るように実感できることとなる。よく見ていると、無駄と思われる部分などはザックリと省かれており、実はそれほど克明な描写が徹底されているわけではない。あくまでも、そういう印象を観客に与えているだけだ。

さらに、全編に渡って難しい専門用語や先端技術の描写をたっぷり散りばめつつも、ストーリーを理解するうえで重要なポイントは非常にシンプルで分かりやすい。感染パニックの最前線で闘う科学者たちの使命感や倫理観と、ホワイトハウスや陸軍本部の政治的な思惑がぶつかり合うポリティカル・サスペンスな要素も、作品全体のバランスを失うことのない絶妙なさじ加減で盛り込まれ、スリリングな面白さを徐々に高めていく。さすがはベテランの娯楽職人たるワイズ監督。映像的には斬新でありながらも、極めて難解な作品になってしまったジョージ・ルーカスの処女作『THX-1138』('71)との大きな違いだ。

また、知名度の高い人気映画スターを一切使わず、地味ながらも役柄に相応しい名バイプレイヤーたちを配したキャスティングも功を奏している。中でも、頑固で気難しくて歯に衣着せぬ物言いの女性科学者リーヴィット博士を演じたケイト・リードは出色。この役は原作だと男性なのだが、脚本家ネルソン・ギディングの発案で女性に変更された。男性のままでもなんら問題ない役柄ではあるのだが、女性に変えることで人間ドラマに広がりや面白みが加わったと言えよう。演じるケイト・リードは『雨のニューオーリンズ』('66)のナタリー・ウッドの母親役で注目された性格女優で、シドニー・ルメット監督の『エクウス』('77)やルイ・マル監督の『アトランティック・シティ』('80)でも強い印象を残している。

恐らくキャストの中で最も有名なのは、『百万長者と結婚する方法』('53)でマリリン・モンローの相手役を演じたデヴィッド・ウェインだろう。彼は他の作品でもたびたびモンローと共演しているほか、『わが心に歌えば』('52)ではスーザン・ヘイワードの夫役、『イブの三つの顔』('57)ではジョアン・ウッドワードの夫役と、素朴かつ実直そうな個性でスター女優の相手役に起用されることの多かった名優だ。また、ストーン博士役のアーサー・ヒルは『動く標的』('66)の弁護士役や『キラー・エリート』('75)の上司役などでお馴染み、ホール博士役のジェームズ・オルソンも『コマンド―』('85)の将軍役で知られている。看護婦カレン役のポーラ・ケリーは、カルトなブラック・ムービー『野獣戦争』('72)でヒロイン役を演じていた。

なお、脚本のネルソン・ギディングはオスカー候補になった『私は死にたくない』('58)以来、『たたり』('63)や『ヒンデンブルグ』('75)など、たびたびワイズ監督作品を手掛けた盟友。撮影監督のリチャード・H・クラインは、『スタート・レック』('79)でもワイズ監督と再びタッグを組んだ。特殊効果には『2001年宇宙の旅』や『未知との遭遇』('78)、『ブレード・ランナー』('82)などで有名なSFXの第一人者ダグラス・トランブルと、『スター・ウォーズ』('77)や『アルタード・ステーツ』('80)のオプチカル効果を担当したジェームズ・ショート。『ウエスト・サイド物語』でオスカーに輝いたボリス・レヴィンが美術デザインを、『アラモ』('60)や『大空港』('70)のスチュアート・ギルモアと『007/ダイヤモンドは永遠に』('71)のジョン・W・ホームズが編集を手掛け、それぞれアカデミー賞候補になった。

ちなみに、劇中で最もショッキングなシーンの一つに、実験用のサルがアンドロメダ病原体に冒されて死亡するシーンがあるのだが、実はこれ、実際に撮影のためサルを酸欠死させている。ただし、現場ではアメリカ人道協会(American Human Association)のスタッフが立ち会い、カメラがストップすると同時に蘇生術を施したのだそうだ。なるほど、とてもじゃないけど演技とは思えないリアルな死にざまに驚いたのだが、あくまでも一時的とはいえ本当に殺していたとは!今だったら大問題になるだろうなあ。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio (英語)・2.0ch DTS (吹替)/言語:英語:日本語・ポルトガル語・スペイン語・フランス語・イタリア語・ロシア語/字幕:日本語・英語・ポルトガル語・スペイン語・フランス語・イタリア語・ロシア語・アラビア語・デンマーク語・オランダ語・フィンランド語・ギリシャ語・ペルシャ語・ハンガリー語・韓国語・ノルウェー語・スウェーデン語・ヒンズー語・トルコ語/地域コード:ALL/時間:131分/発売元:NBCユニバーサル
特典:なし




by nakachan1045 | 2017-09-05 18:53 | 映画 | Comments(0)

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