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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「鉄砲玉の美学」 Aesthetics of a Bullet (1973)

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監督:中島貞夫
企画:天尾完次
脚本:野上龍雄
撮影:増田敏雄
編集:市田勇
音楽:頭脳警察
音楽監修:荒木一郎
出演:渡瀬恒彦
   杉本美樹
   碧川ジュン
   森みつる
   小池朝雄
   荒木一郎
   望月節子
   城恵美
   松井康子
   川谷拓三
   片桐竜次
日本映画/97分/カラー作品




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<あらすじ>
関西を拠点にする暴力団・天佑会は南九州への進出を狙い、血気盛んな若いチンピラを鉄砲玉として宮崎へ送り込むことにする。白羽の矢が立てられたのは小池清(渡瀬恒彦)。野心だけは人一倍だが肝心の商売はパッとせず、情婦のトルコ嬢よし子(森みつる)の部屋へ転がり込んでヒモ状態。せびった金で博打を打ってもすってばかりで、挙句の果てには喧嘩して部屋を追い出されてしまった。もはや捨てるもののない清は、鉄砲玉の仕事を一言返事で引き受ける。
渡されたのは自由に使える現金100万円とハジキ一丁。本音を言うと緊張で膝も震えんばかりだったが、精いっぱい威張り散らして宮崎の繁華街を暴れまわる。ところが、地元ヤクザからの反撃は全くない。実は九州の暴力団関係者も、既に関西から鉄砲玉が送り込まれたという情報を手にしていたが、暫くは様子見で泳がせておこうということになっていたのだ。
そうとは露も知らず、手にした100万円で夜な夜な派手に遊び、女たちからチヤホヤされて上機嫌の清。地元暴力団・南九会の幹部・杉町(小池朝雄)からも手厚くもてなされ、すっかり気分は大物だった。するとある晩、血気走った南九会の若いチンピラ(川谷拓三)に襲われる。報復として相手を殺すことも出来たが、拳銃を手にした清は発砲出来ない。人を殺したことがないということもあるが、それ以上にいきがった小心者の若いチンピラが自分のように思えたのだ。
もはや鉄砲玉の役目など忘れてしまった清は、杉町が謝罪のため差し向けた愛人・潤子(杉本美樹)に惚れ込む。権力のある男が好きな潤子も、大物のように振舞う清に興味を示す。使いたい放題の金があって、最高にいかした女と付き合って、これこそ人生ってもんだと有頂天になる清だったが、しかしその頃、関西連合が九州をバックアップすることとなり、天佑会の九州進出も中止。清は用済みになってしまう。
そうと知ってすぐさま清を見限り、ホテルから姿を消してしまう潤子。呆然とする清の前によし子が現われ、一緒に逃げようというのだが…。
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東映やくざ映画の巨匠・中島貞夫が、独立系アート映画専門のATGで撮った異色のやくざ映画。いや、これをやくざ映画と呼ぶのは、少なからず語弊があるかもしれない。豊かになった日本社会の底辺でくすぶる負け犬のチンピラ(今で言う半グレですな)が、暴力団の縄張り争いに利用された挙句、ぶざまな最期を遂げる青春残酷物語。あえて呼ぶならチンピラ青春映画といったところだろうか。
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冒頭から伝説のロックバンド、頭脳警察のアナーキーなナンバー『ふざけるんじゃねえよ』がガンガンに流れる中、映し出されるのは華やかなデパートのショーウィンドー、ハンバーガーやらステーキやらコーラやらを貪るように飲み食いする人々の口元、まだ食べられそうな残飯までバサバサと大量に捨てられていくゴミ、欲望渦巻くポルノ映画館にストリップ劇場にトルコ風呂。飽食の時代を迎えた現代日本の浅ましき狂乱が、痛烈な批判精神をもってぶちまけられていく。
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そんな社会の最底辺でくすぶっているのが、ただのウサギをアンゴラと偽って路上で安売りするチンピラの若者・小池清。夢はデカいが脳みそは小さく、大口を叩くわりには小心者でケチな負け犬だ。唯一の長所はバカが付くほど正直なところ。あ、それって長所じゃねえか(笑)。まあいいや。で、商売はあがったりだし、趣味の麻雀も負け続き。ブスだけと優しくて従順な同居人のトルコ嬢よし子(森みつる)に金をせびったり、日々の不満を八つ当たりするのが関の山だ。
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しかし、この気がいいだけが取り柄のボーっとした天然ボケ女のよし子、恐らくそれゆえなのかもしれないが、時々男の自尊心を木っ端微塵にするような一言を笑顔でさらっと言い放ったりする。で、それにブチっと逆切れした清がひと悶着の末にアパートを追い出されたところ、心酔するヤクザの兄貴から鉄砲玉としてリクルートされる。
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鉄砲玉とは、すなわちヤクザ業界の特攻隊みたいなもの。敵陣へ乗り込んで自ら玉砕し、抗争勃発の口実を作るという重要な役割だ。生きては帰れない片道切符だが、人生このかた惨めそのものの清にしてみれば、まさしく願ってもない晴れ舞台。しかも、ハジキ一丁に使い放題の現金100万円が付いてくるんだからね。これでオイラも立派なヤクザでござい!ってなもんだろう。
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で、いざ宮崎へと乗り込んだ清。ホテルの鏡に向かって決めポーズの練習するあたり、まるで少年のように無邪気な若者だ。思いっきり粋がって威張り散らすものの、あれ?と拍子抜けするくらい誰も歯向かってこない。それどころか、地元ヤクザの幹部には手厚くもてなされるわ、水商売のオネエチャンたちからはチヤホヤされるわ。まあ、実はあえて敵方が様子見しているだけなのだが、そうとは知らない清はすっかりのぼせ上り、まるで自分が偉くなったかのように勘違いしてしまうわけですな。実に単純(笑)。
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それでいて、本来の目的である玉砕のことを考えると、怖くて怖くて夜も眠れないほどのビビリ。なので、本物のやくざの凄みを目の前で見せられるとドン引きするし、せっかく鉄砲玉として弾けるチャンスが来ても、震えあがって拳銃の引き金を引くことが出来ない。なんたる情けなさ。でも、それが当たり前。所詮は粋がっているだけの若者なんだから。
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そんな清をさらに骨抜きにするのが、地元ヤクザ幹部の愛人・潤子(杉本美樹)。東京でモデルをやっていたとびっきりの美人だ。なにしろ、これまでの清の女遍歴ときたら、おかめ顔のよし子に丸々と太った年増ホステスのゆき(松井康子)など、残念ながら恵まれているとは言い難い。しかも、下積みの料理人見習時代には、トイレに自分で描いたHな落書きでオナるという惨めの極みというべき性生活を送っていたんだからね。そりゃ有頂天になりますわな。なので、もはや鉄砲玉なんてどこへやら。ホテルに籠って潤子とやってやってやりまくる毎日となるわけだ。
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ところが、いつの間にやら暴力団同士の縄張り争いは丸く収まり、本人の知らぬ間に清はお役御免。それどころか、なんだてめえ、まるで役に立たねえじゃねえか!ってなことで、逆に落とし前として命を狙われる羽目になる。そこからの転落ぶりがまた情けないというか、あまりに惨めで切ない。束の間の夢の先に待っていたのは地獄。眉唾の儲け話に目を輝かせる清に、よし子がポツリと「いつだって誰かが儲けるだけじゃない」と呟いていたが、結局ある意味でその通りになってしまう。利用されるだけ利用されて、あとはポイっとゴミのように捨てられる。いつの時代もハングリーな若者は、狡猾な大人たちの餌食になりがちだもんね。
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ATGで撮った作品とはいえ、さすがそこは中島監督、娯楽映画としてのツボはちゃんと押さえている。セックスもバイオレンスも抜かりなし。なんというか、ヌーヴェルバーグ×アメリカンニューシネマ×東映アクションといった感じ。キャストもスタッフもみんな東映だしね。反逆精神&反骨精神満載な野上龍雄の脚本も、虐げられた弱者に対する眼差しがいかにも彼らしい。
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1973年といえば『仁義なき戦い』が公開され、東映のいわゆる実録路線が本格始動した年なわけだが、その直後に公開された本作にもその精神がしっかりと宿っている。これ以降、中島監督が深作欣二監督と並んで東映実録路線を牽引していくのだから、そういう意味でも重要な作品だと言えるかもしれない。
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そして、やっぱり渡瀬恒彦である。一言、カッコいい。活きのいいヤンチャぶりといい、哀しくも惨めな情けなさといい、どっちに転んでも画になるし、なによりも演技に血が通っているんだよね。血気走った地元のチンピラを演じる川谷拓三も、少ない出番ながら相変わらずインパクト強烈。根は小心者の2人が精いっぱい粋がって威嚇しあう喧嘩シーンの、あの切羽詰まったような、鬼気迫るような緊張感は素晴らしいったらありゃしない。
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どこか気怠い雰囲気の杉本美樹も、都会的で醒めたいい女っぷりが印象的。なんだろう、'70年代後半のしらけ世代を先駆けたような役柄が面白い。しかしながら、やはり女優陣でダントツに目立つのは、ダメ男の清に貢いで尽くしまくるトルコ嬢よし子を演じている森みつるだ。お世辞にも美人とは言えない(失礼)オバチャン顔なのだが、それがまたリアルなんだよね。どつかれても蹴られても清を見捨てられず、ケロッとした顔でついてくる子犬のように無邪気なブス。清が出て行ったあと、部屋でポツンと一人、ひたすら具のないインスタント・ラーメンをすすり続ける姿が切なくもいじらしい。本作の実質的なヒロインは彼女と考えて間違いないだろう。
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そのほか、九州暴力団の幹部に小池朝雄、清の麻雀仲間に荒木一郎、車で女を輪姦する若者3人組の1人に片桐竜次、その輪姦される女に碧川じゅん、「やだー、かっこいー!」が口癖のおばはんホステスに松井康子と、当時の東映やくざ映画やポルノ映画でお馴染みの面々が登場。なんだろう、これがATG映画だってこと、完全に忘れちゃうよね(笑)。

評価(5点満点):★★★★★

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:97分/発売元:東映ビデオ
特典:予告編



by nakachan1045 | 2017-09-14 22:52 | 映画 | Comments(0)

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