なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「サタンバグ」 The Satan Bug (1965)

監督:ジョン・スタージェス
製作:ジョン・スタージェス
原作:イアン・スチュアート(アリステア・マクリーン)
脚本:ジェームズ・クラヴェル
エドワード・アンハルト
撮影:ロバート・サーティース
美術デザイン:ハーマン・ブルメンタル
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:ジョージ・マハリス
リチャード・ベイスハート
アン・フランシス
ダナ・アンドリュース
ジョン・ラーキン
リチャード・ブル
フランク・サットン
エド・アスナー
サイモン・オークランド
ジョン・アンダーソン
ジェームズ・ホン
アメリカ映画/115分/カラー作品
<あらすじ>
南カリフォルニアの砂漠に佇むアメリカ政府の極秘生物学研究所ステーション3で、保安主任リーガン(ジョン・アンダーソン)が殺され、主任研究員バクスター博士(ヘンリー・ベックマン)が行方不明となった。所長マイケルソン(ジョン・ラーキン)とCIA職員カヴァナー(リチャード・ブル)は、ステーション3の元保安主任で現在は私立探偵のバレット(ジョージ・マハリス)に調査を依頼する。
巨大なコンクリート製の扉でロックされた研究室へ足を踏み入れたバレットは、そこでバクスター博士の遺体を発見。さらに、細菌兵器として新たに開発されたばかりの「サタンバグ」とポツリヌス菌が盗まれていた。中でも「サタンバグ」が奪われたことは重大事だった。開発者であるホフマン博士(リチャード・ベイスハート)によると、1週間でアメリカ国民が、2カ月で人類全体が死滅するだけの威力があるというのだ。
事態を重く見た国防総省はウィリアムズ将軍(ダナ・アンドリュース)を捜査の指揮官として派遣し、将軍の娘であるアン(アン・フランシス)がバレットのアシスタントになる。将軍のもとにエインズリーなる人物から脅迫電話が入る。ステーション3を閉鎖しなければ細菌をばら撒くというのだ。
ほどなくして、フロリダでポツリヌス菌の感染による大量死事件が発生する。調べたところ、エインズリーとは正体不明の謎の大富豪だった。ウィリアムズ将軍らは彼を主犯と睨んで行方を追うが、バレットはどうも解せない。犯人が最初から名乗り出てくるというのは不自然だからだ。
パトカーの通報で不審車両を発見したバレットとアンは、そこで釣り人に化けた犯人グループのメンバー、ドナルド(フランク・サットン)とヴェレッティ(エド・アスナー)に拉致される。そこへ合流したのがホフマン博士。彼が内通者だったのである。
ホフマン博士によると、ロサンゼルスのどこかに「サタンバグ」を仕込んだ時限爆弾が隠されているという。果たして、バレットはこの危機を脱して時限爆弾を止めることが出来るのか。そして、首謀者エインズリーの正体とは?その真の目的とは?
サスペンス冒険小説の大家アリステア・マクリーンがイアン・スチュアート名義で発表したベストセラー小説『悪魔の兵器』を、『荒野の七人』('60)や『大脱走』('63)などのメガヒットで知られるアクション映画の巨匠ジョン・スタージェスが映像化した作品。しかもテーマは、当時まだ目新しかった細菌兵器テロである。さぞかしド派手なアクションとサスペンスとパニックの詰まったエンタメ大作かと思いきや、ところがどっこい、これが意外にも地味でこじんまりとした映画に仕上がっているのだ。
そもそも、結構な低予算で作られていることは一目瞭然。原作の舞台はロンドンだったが、映画版はロサンゼルス郊外の砂漠に設定を移している。地理的にはハリウッドの裏庭みたいなもんだし、面倒な交通整理も大量のエキストラも必要ないしね。また、原作ではテロ計画の構造もかなり複雑に入り組んでいるらしいのだが、映画版ではザックリと簡略化されている。それもこれも、映画的な分かりやすさを追求することはもちろん、それだけでなく予算を安く抑える目的もあったと考えて然るべきだろう。
とりあえず、『ピンク・パンサー』シリーズを手掛けたフリッツ・フレリングとデヴィッド・パティーによる、モダン・アート風のオシャレなタイトル・クレジットはなかなか秀逸。目玉のイラストをグーッと拡大していくと、広大な砂漠地帯で車が走る様子を捉えた空撮映像が浮かび上がる…という仕掛けも粋だ。
まずは厳重に警備された生物学研究所で細菌兵器の盗難事件が発生。冒頭ではその一部始終を克明に描いていく。これが、後に地球外生命体の感染パニックを描いた『アンドロメダ...』('71)を彷彿とさせるような緻密さなのだが、かといって同作ばりにリアルなのかというとそうでもない。監視カメラも本人認証システムもないアナログな設備は50年以上前なので仕方ないのかもしれないが、それにしても誰一人として防護服を着ていない、研究者だろうと警備員だろうと自由に研究室へ出入りできる、実験室で普通にタバコや葉巻を吸っているなどなど、生物兵器を開発する生物学研究所としていかがなもんかと思われる描写が多し。これで政府の極秘施設だからね。素人目にもあり得ないとしか思えない。
それ以外にも、難なく実行犯一味の尻尾を掴んだり、ここぞという場面で味方のエージェントが救出に現れたりと、ストーリー的になにかと都合の良すぎる展開が多い。なので、話がポンポンと調子良く進んで行くわりに、スリルもサスペンスもいまひとつ盛り上がらず。テロの首謀者エインズリーとは何者か?という謎を引っ張るのはいいのだが、いや、どう考えたってコイツしかいないだろう!というのは早い段階からバレバレだし、実際その通りだったりするので意外性も全くない。
で、1時間以上に渡って砂漠の近辺をすったもんだした挙句、ロサンゼルスの野球スタジアムに時限爆弾が隠されていることがアッサリと判明。しかも、文字通り一瞬でタイマーが解除されてしまう。あまりの呆気なさに、むしろビックリ(笑)。その後、正体の判明したアインズリーとバレットが、ヘリコプターの中で「サタンバグ」を巡ってひと悶着するわけだが、恐らくここが一番サスペンスフルな見せ場になっているかもしれない。
そんなこんなで、製作規模的にも脚本的にもテレビ・ムービーに近いような印象。『悪人と美女』('52)や『ベン・ハー』('59)でオスカーを受賞したロバート・サーティースによるカメラワークはスタイリッシュだし、巨匠ジェリー・ゴールドスミスによる音楽スコアも悪くないのだけれど、トータルではいまひとつ精彩に欠ける。
ただ、主人公バレットのキャラクターは結構興味深い。戦争反対の平和主義者で超の付く頑固者。それゆえに上司と衝突することが多く、それが原因でCIAもステーション3もクビになったのだが、裏を返すと絶対に金で買収されない男ということで、極秘捜査の任務に白羽の矢が立てられる。演じるのは、当時テレビシリーズ『ルート66』で大ブレイクしたジョージ・マハリス。これが映画初主演だった。
そう、一見豪華に見えるキャスト陣も実はあまり金がかかっていない。リチャード・ベイスハートもダナ・アンドリュースも当時はテレビが中心で、映画界では既に過去の人になっていた。紅一点のアン・フランシスも全盛期は50年代。この翌年に『ハニーにおまかせ』で主な活動の場をテレビへ移す。そのほか、ジョン・ラーキンにエド・アスナー、フランク・サットン、ジョン・アンダーソンなど、昔のテレビドラマではお馴染みの顔だったバイプレイヤーが揃っている。
評価(5点満点):★★☆☆☆
ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:115分/発売元:Kino Lorber/MGM/20th Century Fox
特典:映画評論家グレン・エリックソンによる音声解説/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2017-10-14 13:09
| 映画
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