なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「七人の特命隊」 Ammazzali tutti e torna solo (1968)
監督:エンツォ・G・カステラーリ
製作:エドモンド・アマーティ
原案:ティト・カルピ
エンツォ・G・カステラーリ
脚本:ティト・カルピ
フランチェスコ・スカルダマリア
ホアキン・ロメロ・エルナンデス
エンツォ・G・カステラーリ
撮影:アレハンドロ・ウロア
美術:エンツォ・ブルガレッリ
音楽:フランチェスコ・デ・マージ
出演:チャック・コナーズ
フランク・ウォルフ
フランコ・チッティ
レオ・アンチョリス
ケン・ウッド(ジョヴァンニ・チャンフリリア)
アルベルト・デラクア
ヘルクレス・コルテス
イタリア・スペイン合作/96分/カラー作品
<あらすじ>
南北戦争時代のアメリカ。形勢不利な状況に追い込まれつつあった南軍は、ある打開策を講じることにする。頭脳明晰な犯罪者クライド・マッケイ(チャック・コナーズ)を使って、北軍の軍資金を強奪しようというのだ。
マッケイが仲間として集めてきたのは、拳銃の早撃ち名人ホーギー(フランコ・チッティ)にダイナマイトで何でも爆破するデッカー(レオ・アンチョリス)、先住民とメキシコ人の混血でナイフの達人ブレード(ケン・ウッド)、軽業が得意な根っからの殺し屋美少年キッド(アルベルト・デラクア)、そして人間を素手で2つに折る巨漢ボガード(ヘルクレス・コルテス)と、いずれ劣らぬならず者ばかり。北軍の情報将校リンチ大尉(フランク・ウォルフ)がお目付け役として作戦に同行する。
北軍は軍資金である金貨を火薬の中に隠しており、100万ドルがトドス・サントス教会跡の前線基地に保管されている。出発前にリンチ大尉がマッケイに言う。「みんな殺して一人だけ戻れ」と。つまり、作戦が終了したら仲間たちを口封じのため全員殺せというのだ。
北軍前線基地のふもとには、一般人が出入り可能な酒場があった。マッケイらはそこで乱闘騒ぎを引き起こし、そのドサクサに紛れてデッカーとブレードが給水車に身を隠して基地内へと潜入する。さらに、基地のすぐ外でボガードが放火騒ぎを起こして兵士たちの目をそらした隙に、こっそりと給水車から抜け出したデッカーとブレードがマッケイらを中へ引き入れ、たちまち激しい銃撃戦が始まった。
火薬庫を爆破して金貨を盗み出したマッケイは、そのまま仲間たちを残して一人だけ逃走。さすがに彼らを皆殺しにするのはためらわれたのだ。しかし、そんなマッケイを先回りした仲間たちが待ち構えていた。すると、そこへ北軍の兵士たちが現われてマッケイらを取り囲む。実は、ある人物が彼らを裏切っていたのだ…。
あのタランティーノ監督も敬愛するイタリアン・アクションの巨匠エンツォ・G・カステラーリ。『イングロリアス・バスターズ』('09)がカステラーリ監督の代表作『地獄のバスターズ』('76)のリメイクであることは有名だが、その8年前に作られた元祖『地獄のバスターズ』とも言うべきマカロニ・ウエスタンが、この『七人の特命隊』である。
といっても、南軍に雇われたならず者たちが北軍の軍資金を奪うという基本設定は、明らかに『荒野の七人』('60)や『特攻大作戦』('67)の影響を受けたものだし、もとをただせば『七人の侍』('54)のバリエーションである。なので、確かに『地獄のバスターズ』を先駆けていたとはいえ、厳密に言うと元祖でも何でもない。似たようなプロットのマカロニ・ウエスタンは他にも沢山ある。いわば、イタリア産娯楽映画にありがちな柳の下の泥鰌だ。
ちょっと変わっているのは、主人公マッケイが作戦終了後に仲間を皆殺しにするよう指令を受けているところか。南軍としては犯罪者集団に作戦を任せたことが世間に知れたらマズい。なので、はなから使い捨てにするつもりだったわけだ。劇中では言及されないが、恐らく一人で戻ったマッケイも始末する手筈だったのだろう。
しかし、結果的にマッケイが手を下すまでもなく、ある人物の裏切りで主人公たちは北軍によって捕らえられ、敵陣から決死の脱出を試みる過程で一人また一人と命を落としていく。まあ、その中の一人だけは仲間同士の内輪揉めで殺されるのだけど。所詮、金に釣られて集まった犯罪者の集団だからね。友情とか絆とか、そんな大層なものはございません。そうした、ある種の残酷なニヒリズムや悲壮感もまた、『特攻大作戦』なんかを彷彿とさせるポイントだと言えよう。
そんなわけで、カステラーリ監督とは『荒野のお尋ね者』('66)から『荒野の三悪党』('67)、『空爆大作戦』('69)に『死神の骨をしゃぶれ』('73)など、数々の作品で組んでいるティト・カルピなどが参加した脚本は、ある程度先の読める話をそつなくまとめたという印象。どちらかというと、アクの強い個性的なキャラの面白さでストーリーを引っ張っていく感じだ。
主人公マッケイ役にチャック・コナーズを起用したことも功を奏している。日本でも大ヒットしたテレビシリーズ『ライフルマン』で知られるハリウッドの西部劇スター。強くて逞しくて頼りになるヒーローというイメージがある一方、身長197㎝の長身にコワモテのゴリラ顔という風貌は悪役向きでもあり、実際に強烈な悪役を演じた作品も少なくない。その一筋縄でないユニークな個性は、本作のマッケイというキャラクターにはまさしくピッタリだ。
そのほか、主要キャストはどれもクセモノ俳優ばかり。しかも、端役に至るまで唯の一人も女優が出てこない。文字通りの野郎祭りという潔さもアッパレである。今だったら怒られるんじゃないのかな。機会均等法に反している!とか言って(笑)。それは冗談としても(いや、冗談では済まされないかもしれないが)、確かにこの話だと女性が絡んでくる方がかえって不自然だもんな。
面白いのは、パゾリーニ映画の常連俳優フランコ・チッティが早撃ち名人ホーギーを演じていること。当時の彼が、この手のB級娯楽映画に出演するのは極めて珍しい。その後、パゾリーニが亡くなってからはアクションやサスペンスにも出るようになったのだが。一方、リンチ大尉役のフランク・ウォルフはアメリカからの出稼ぎ俳優で、巨匠レオーネの『ウエスタン』('68)などマカロニ西部劇には欠かせない顔だった。
ナイフの達人ブレード役のケン・ウッドは、本名をジョヴァンニ・チャンフリリアという生粋のイタリア人。もともとはスタントマンの出身で、一時期はマカロニ西部劇やスーパーヒーロー映画などで主演もこなしていた。また、可愛い顔して生まれながらの殺し屋というキッド役のアルベルト・デラクアも、コール・キトッシュやロバート・ウィドマークなど幾つも変名を使って、数々のマカロニ西部劇に主演していた。なお、巨漢のボガードを演じているヘルクレス・コルテスは、スペイン出身でアメリカでも活躍した、当時の人気プロレスラーである。
カステラーリ監督の演出はオープニングからスピード感満点。いきなりクライマックスのような攻防戦が繰り広げられ、なんだなんだ!?と思っていると、マッケイ一味らのオーディションを兼ねたリハーサルでしたというオチがいかしている。メンバーそれぞれの特技を生かした派手なアクションも盛りだくさん。フランチェスコ・デ・マージによる勇壮な音楽スコアとも相まって、マカロニ・ウエスタンらしい痛快なバイオレンス・エンターテインメントに仕上がっている。
評価(5点満点):★★★★☆
参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:英語・日本語/字幕:日本語/地域コード:2/時間:96分/発売元:ニューライン/ハピネット
特典:アメリカ版劇場予告編/フォトギャラリー
by nakachan1045
| 2017-10-15 00:37
| 映画
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