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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「Morte sospetta di una minorenne」 (1975)

「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_13282207.jpg
監督:セルジョ・マルティーノ
製作:ルチアーノ・マルティーノ
原案:エルネスト・ガスタルディ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
   セルジョ・マルティーノ
撮影:ジャンカルロ・フェランド
音楽:ルチアーノ・ミケリーニ
出演:クラウディオ・カッシネッリ
   メル・フェラー
   マッシモ・ジロッティ
   ジェニー・タンブリ
   リア・タンツィ
   ジャンフランコ・バッラ
   パトリツィア・カスタルディ
   アドルフォ・カルーソ
   バルバラ・マグノルフィ
イタリア映画/100分/カラー作品




「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22544957.jpg
<あらすじ>
ミラノで一人の少女が殺される。現場は売春の巣窟になっている安宿。マリサ(パトリツィア・カスタルディ)という名前しか素性は分からない。直前に彼女と接触した覆面捜査官パオロ・ジェルミ(クラウディオ・カッシネッリ)は、未成年の少女を斡旋する売春組織を調べており、マリサが口封じのため殺されたものと睨む。
ジェルミは貧しい家族を養うため窃盗を働く若者ジャンニーノ(アドルフォ・カルーソ)を右腕としてスカウトする。路上に立つ娼婦たちのハンドバッグを次々と奪った2人は、その中身を調べるうちミラノ市内の家政婦紹介所が売春組織の隠れ蓑になっていることを突き止める。しかし、確固たる証拠がなければ手出しが出来ない。
そこで、ジェルミは気のいい売春婦カルメラ(リア・タンツィ)に儲け話と称して、未成年の少女を斡旋するよう持ち掛ける。売春組織の元締めがライモンドなる人物らしいことは分かったが、それ以上の情報は引き出せない。
ひとまずカルメラの口添えで、ジェルミの指定したホテルにフロリアナ(バルバラ・マグノルフィ)という少女がやって来る。適当な理由を付けて彼女を帰したジェルミは、ジャンニーノと二人でその後を尾行する。フロリアナがやって来たのは郊外のあばら家。そこには一人の男が待っていた。
あばら家に足を踏み入れたジェルミだが、男と銃撃戦になって相手を殺してしまい、フロリアナも銃弾を受けて死亡する。男は売春組織のボス、ライモンドだった。どうやら、何らかの事情でここを隠れ家にしていたらしい。
すると、何も知らない2人組の男があばら家にやってきて、大量の現金を置いていった。その総額は2億リラ。引き出しの中からはスイスの銀行が発行した高額のチェックも発見される。とても売春だけで稼げる金額ではない。
現金を警察署まで運んで署長(メル・フェラー)に報告するジェルミ。札束の通し番号を調べたところ、2億リラは世間を騒がせている誘拐事件で支払われた身代金だった。死んだライモンドは誘拐ビジネスにも手を出していたのだ。
家政婦紹介所へ強制捜査に入ったジェルミは、最初に殺された少女マリサが金融界を牛耳る大物ペスチェ(マッシモ・ジロッティ)の姪であることを知る。しかも、彼女はフロリアナとも友人で、さらにグロリア(ジェニー・タンブリ)という共通の友達もいることが分かった。
ペスチェから事情を聞いて疑いを持ったジェルミは、ジャンニーノにグロリアと親しくするよう仕向け、彼女の警戒心を解かせる。すると、小児性愛者であるペスチェがマリサやグロリアを性的に虐待していたこと、ライモンドに違法な裏稼業を任せていたことなどが判明する。一方、売春組織の実態を知る関係者が次々と殺し屋によって始末され、その魔手はジェルミの身辺にも及んでくる…。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22570731.jpg
'70~80年代のイタリア映画界を代表する娯楽映画監督セルジョ・マルティーノ。アクションからホラー、セックス・コメディまで、どんなジャンルを手掛けても平均点以上に仕上げる優秀な職人だったが、中でも得意だったのが犯罪アクションとジャッロだ。警察内部の汚職を告発する『イタリアン・コネクション』は、イギリスの映画雑誌「Empire」が選ぶ“ギャング映画の隠れた名作20選”で9位に選ばれているし、女子大生たちが謎の殺人鬼に襲われる『影なき陰獣』('73)は、アルジェントおよびバーヴァ以外の監督によるジャッロ映画としては間違いなく指折りの傑作。そんなマルティーノ監督が、十八番の2大ジャンルを巧みに融合させた異色作がこれである。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22562268.jpg
まあ、実際に中身の比重としてはポリッツィオテスキ、すなわちイタリア産犯罪映画の方に寄ってはいるかもしれない。当初のタイトルもMilano Violenta(ミラノの暴力)という、いかにも犯罪アクションらしいものを用意していたが、配給会社ティタヌスの意向でジャッロを連想させるスリラー的なMorte sospetta di una minorenne(未成年の疑わしき死)に変更された。当時はまだジャッロ映画の需要が多かったからだ。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22551949.jpg
少なくともオープニングはジャッロっぽい。サングラスをかけた謎の男につけ回される美少女。怪しげな安宿の部屋に入ったところ、暗闇に隠れていた男に襲われ、鋭利なナイフで喉や顔を切り裂かれて息絶える。しかし、そこから作品のトーンは一変。未成年の少女たちを食い物にする売春組織の尻尾を掴もうと捜査する覆面刑事が、やがて巨大な誘拐ビジネスの実態と、その背後にうごめく強欲な資本家たちの汚職に迫っていく。随所にジャッロ的な殺人シーンを挿入しつつも、全体の傾向としては犯罪アクションの要素が強いと言えよう。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_23000124.jpg
マルティーノ監督自身も、本作をポリッツィオテスキとして認識しているという。テーマである少女売春と誘拐ビジネスは、当時イタリア国内で深刻な社会問題となっていた犯罪で、マルティーノ監督も強い関心を寄せていたらしい。彼はある時期に特定のジャンルを集中して連作する傾向が強いのだが、本作の当時は犯罪アクションを次々と撮っていた。言うなればマイブームみたいなものだったのだろう。それが可能だったのは、彼が腕利きの製作者である兄ルチアーノを強力な後ろ盾にして、自身の独立系プロダクションに活動の基盤を置いていたから。自ら撮りたい題材を探したり選んだりする自由があったのだ。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22590748.jpg
ただ、本作がその他大勢のイタリア産犯罪アクションと一味違うのは、かなりスラップスティック・コメディ的な傾向が強い点であろう。主人公の覆面刑事ジェルミ自体が真面目なのか不真面目なのか分からない人を食ったところのあるキャラだし、その相棒に抜擢される泥棒の若者ジャンニーノは当時のイタリア産セックス・コメディによく出てくるタイプの吉本喜劇的おバカキャラ。さらには、ディーン・マーティン&ジェリー・ルイスさながらの凸凹刑事コンビまで登場する。確かにトーマス・ミリアン主演の『Squadra antiscippo』('76)などコミカル路線のイタリア産犯罪アクションは他にも存在するが、ここまで振り切っている作品は珍しいかもしれない。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22592503.jpg
中でも秀逸なのは、本編中盤で20分近くに渡って展開されるキーストン・コップ的なカーチェイス。凄まじいカースタント・テクニックを駆使しつつ、あちこちにバスター・キートンばりの体を張ったアクロバティックなギャグも散りばめられており、見ていて思わず小躍りしてしまうこと請け合いだ。猛スピードで車に体当たりされた自転車の前半部分が吹っ飛んで一輪車になってしまうシーンなんか大爆笑。アクション・コメディのツボを見事に押さえている。また、ジェットコースターでの銃撃戦も迫力満点。カメラマンが役者と一緒に乗って撮影しているもんだから臨場感も抜群だ。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22594244.jpg
それでいて、ストーリーのダークな部分は徹底的にダークだし、バイオレントなシーンも徹底的にバイオレント。明と暗のコントラストをハッキリと際立たせることで、テーマになっている凶悪犯罪の深刻さをより一層のこと強調するのだ。そこのさじ加減を間違えると、ただ単にふざけただけの映画になってしまうということを、マルティーノ監督はちゃんと分かっているのである。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22593631.jpg
また、マルティーノ監督とたびたび組んでいる作曲家ルチアーノ・ミケリーニによる、ファンキーでグルーヴィ―で痛快な音楽スコアも素晴らしく魅力的。嫌がおうにもテンションが上がる。それでいて、ジャッロ的なシーンになるとゴブリンの『サスペリアPART2』('75)そっくりなプログレ・サウンドを聴かせてくれて思わずニンマリ。本作が『サスペリアPART2』の約5か月後に完成していることを考えると、ミケリーニがゴブリンに影響を受けているであろうことは間違いないだろう。そういえば、殺し屋に襲われた安宿の女将さんが血まみれで窓ガラスを突き破り、その様子を向かいの住人が目撃するシーンも『サスペリアPART2』っぽい。絶対に意識しているはずだ。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_23001092.jpg
主演はトーマス・ミリアンと並んでマルティーノ監督が最も信頼を寄せた俳優クラウディオ・カッシネッリ。本作を皮切りに6本の映画でコンビを組むことになるわけだが、それだけに『片腕サイボーグ』('86)で撮影中に起きたカッシネッリの事故死は、マルティーノ監督にとって一生拭い去れないトラウマとなったという。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22581684.jpg
脇役陣で特に印象的なのは、チャーミングでコケティッシュな娼婦カルメラ役を演じている女優リア・タンツィ。舞台を主な活動の場にしていた人らしいのだが、マルティーノ監督が「モニカ・ヴィッティを彷彿とさせるコメディエンヌだった」と絶賛するのも納得の可愛らしさ。映画出演が少なかったことは惜しまれる。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22584553.jpg
女優といえば、'70年代当時数々のセックス・コメディでヒロイン役を演じたジェニー・タンブリ、『サスペリア』('77)の意地悪美少女オルガ役で有名になるバルバラ・マグノルフィが顔を出しているのも要注目。さらに、往年のハリウッド映画の二枚目スター、メル・フェラーと、ヴィスコンティ映画における美青年像の原型とも言うべきマッシモ・ジロッティという、アメリカとイタリアの2大大御所俳優が脇を固めている。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_23000503.jpg
あと面白かったのは、主人公ジェルミが美少女グロリアから情報を得るために接触するシーン。人目を避けるため映画館で落ち合うのだが、これがもうですね、怪しげな人たちでいっぱいなのですわ。隣に座ったマッチョな若者の股間をモミモミするオッサンやら、もはやセックスをおっぱじめている男女カップルなど、暗がりをいいことにみんなやりたい放題(笑)。でも、昔は東京でも上野や浅草辺りの場末な寂れた名画座なんか似たようなもんだったかも…と、今は失われた古き良き(?)昭和を思い出すのであった。ま、さすがにここまで乱れてはいなかったけどね。
「Morte sospetta di una minorenne」  (1975)_f0367483_22594785.jpg
評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:イタリア語・英語/字幕:英語(原語版用・吹替版用)/地域コード:B/時間:100分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:イタリア語・英語/字幕:英語(原語版用・吹替版用)/地域コード:2/時間:100分
発売元:Arrow Films/Intramovies
特典:ジャッロ研究家トロイ・ハワースによる音声解説/セルジョ・マルティーノ監督のインタビュー(約45分)/オリジナル劇場予告編


by nakachan1045 | 2017-10-18 19:18 | 映画 | Comments(0)

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