なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「クリープス」 Night of the Creeps (1986)

監督:フレッド・デッカー
製作:チャールズ・ゴードン
脚本:フレッド・デッカー
撮影:ロバート・C・ニュー
特殊メイク監修:デヴィッド・B・ミラー
視覚効果監修:デヴィッド・スタイプス
音楽:バリー・デ・ヴォーゾン
出演:ジェイソン・ライヴリー
スティーヴ・マーシャル
ジル・ホイットロー
トム・アトキンス
ウォリー・テイラー
ブルース・ソロモン
ヴィック・ポリゾス
アラン・カイザー
デヴィッド・ペイマー
ロバート・カーマン
特別出演:ディック・ミラー
アメリカ映画/90分/カラー作品
<あらすじ>
1959年。エイリアンが宇宙船から放り投げた物体が地球へ落下する。その頃、星空を見上げていた大学生カップルがそれを目撃。隕石だと思って近づいた男子生徒ジェシーの体内にナメクジ状の生物が口から入り込み、車で待っていた女子生徒パムは精神病院を脱走した殺人鬼によって惨殺される。
時は移って1986年。コーマン大学に入学した地味な若者クリス・ロメロ(ジェイソン・ライヴリー)は、可憐な美少女シンシア・クローネンバーグ(ジル・ホイットロー)に一目惚れするものの、遠くから目を合わすことすら出来ない。親友J.C.フーパ―(スティーヴ・マーシャル)は、ウジウジしたクリスの背中を押そうとするがまるっきりダメだ。
そこで、まずは負け組から脱却しようということで、2人はフラタニティに入会しようと考える。リーダーのブラッド(アラン・カイザー)から出された入会の条件は、大学病院の医療センターから死体を盗み出すこと。実はこの意地悪なブラッドこそシンシアのボーイフレンドだったのだが、そうとは知らない2人は医療センターへと忍び込む。
そこでクリスたちは冷凍保存されている若者ジェシーの死体を発見し、それを盗み出そうとするものの、突然死体が動き始めたためビックリして逃げ出す。入れ替わるようにしてやって来た医学生(デヴィッド・ペイマー)が、その死体によって殺されてしまう。
通報を受けたベテラン刑事キャメロン(トム・アトキンス)が医療センターに到着。しかし、警官が目を離した隙にジェシーの死体は消えていた。その頃、大学の女子寮に現れたジェシーの死体をシンシアが目撃。死体の頭部が突然パカッと割れ、中から無数のナメクジ状生物が拡散する。死体を回収した警察は首をひねる。
翌日、死体を女子寮に遺棄した疑いでクリスとJ.C.がキャメロン刑事の事情聴取を受ける。2人は医療センターに侵入したことは認めるも、死体を盗み出したことは否定。その晩、医学生の死体が甦って用務員を襲い、より一層深まった謎にキャメロン刑事は頭を悩ませる。
動く死体とナメクジ生物を目撃したシンシアは、クリスとJ.C.に相談する。クリスに気を遣ったJ.C.は、2人だけにさせようとその場を去り、向かったトイレでナメクジ生物の大群に襲われる。一方、シンシアを女子寮まで送り届けたクリスは、彼女から翌日の舞踏会に誘われて有頂天に。そこへ、2人の会話を聞いていたキャメロン刑事が現われる。
キャメロン刑事はクリスに27年前の出来事を語り始めた。当時まだ新人警官だった彼は、元恋人パムを手にかけた殺人鬼を自らの手で殺害し、現在の女子寮がある土地に埋めたという。
その頃、甦った殺人鬼の死体が寮母を殺害。通報を受けた警察は殺人鬼を倒すも、ミイラ化した死体が動き回っていたこと、その頭部から飛び出した無数のナメクジ生物に一同唖然とする。
そして、いよいよ舞踏会の夜。学生たちはおめかしに余念がなかったが、学内では大量のナメクジ生物たちがウヨウヨしている。姿を消したJ.C.の録音メッセージで何が起きているのかを悟ったクリスは、キャメロン刑事に応援を頼んでナメクジ生物を退治しようとするのだが…。
映画マニアによる映画マニアのためのジャンル映画が、商業的にちゃんと成立するようになったのは、恐らくタランティーノ監督以降のことだと思うのだが、そういう意味でフレッド・デッカー監督は世に出るのが少々早過ぎたと言えるかもしれない。
自他ともに認める根っからのホラー&SFマニアのデッカー監督。そんな偏愛するジャンルの名作群にオマージュを捧げた処女作『クリープス』と続く『ドラキュリアン』('87)は、今でこそカルト映画として高い評価と熱狂的ファンを得ているものの、しかし劇場公開当時はどちらも興行的に不発だった。結局、UCLA時代からの大親友にして相方のシェーン・ブラックが、『リーサル・ウェポン』シリーズの脚本で売れっ子となったのを尻目に、監督3作目『ロボコップ3』('92)の大失敗によって映画界でのキャリアはほぼ絶たれてしまう(ただし、ブラックと再びタッグを組んだ来年公開のリブート版『プレデター』で、脚本家としては完全復活を果たした模様)。
まあ、確かに『ロボコップ3』は弁明の余地がない失敗作だったと思うが、しかし一方で『クリープス』と『ドラキュリアン』は、どちらも単なるオマージュ映画やパロディ映画では終わらない秀作。ホラー&SFにおける名作映画の引用やジャンルのクリシェを散りばめつつ、それらを巧みに応用しながら独自のエンタメ作品へと昇華させるデッカー監督の手腕は見事なもの。ユニバーサル・ホラーやハマー・ホラーへの愛情を注ぎこんだ『ドラキュリアン』などは、さながらモンスター版『グーニーズ』ないし『スタンド・バイ・ミー』とも呼ぶべき名作で、たぶん当時よりも今の方が受けたに違いない。それは、やや粗削りな印象を残す本作『クリープス』も同様だ。
Night of the Creepsという原題が示す通り、基本路線は『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』('68)をはじめとするゾンビ映画。ただし、本作の場合はゾンビの設定が他とはちょっとばかり違う。エイリアンの実験によって生まれたナメクジ状生物「クリープス」が深く関係しているのだ。どういうことかというと、生死に関わらず人間の体内へ入ったクリープスは脳みそへ寄生し、そこに無数の卵を産み付けて人体をコントロール。やがて卵が孵化をすると、成長したクリープスたちが頭を突き破って飛び出し、さらなる犠牲者を増やしていく。要するに、ゾンビ映画と侵略型SF映画の要素をミックスさせた上で、クローネンバーグ監督作『シーバース』('75)の設定を加えたというわけだ。
で、ストーリー的には典型的な'80年代青春映画。地味でイケてない負け犬大学生がとびっきりの美少女に恋をするわけだが、案の定というかなんというか、彼女のボーイフレンドは学園の人気者でイケメンだけど性格の悪いいじめっ子ブラッド。青春映画の定番シチュエーションですな。なぜに可愛くて性格の良い(という設定の)女の子がそんなクズ野郎と付き合うのか?といつも不思議に思うのだけれど、これって要するにモテない童貞男子の僻みと偏見に基づいているわけで、そう考えると世の青春映画の多くは、実際のところ青春時代を必ずしも満喫できなかった作り手による妄想…つまり、こうあって欲しかった青春像を描いているのではないかという気もしてくるのだよね。
そんなこんなで、高根の花の美少女シンシアに恋してしまった主人公クリス。彼女の気を引くためフラタニティに入会して人気者の仲間入りしようとするわけだが、その入会儀式で大学病院から死体を盗んでくるよう命令されたところ、図らずもナメクジ状生物クリープスを世に放ってしまう。とんでもなく大迷惑な話だが、しかし彼にとっては千載一遇のチャンス(?)。なぜかというと、こういう想定外の異常事態にいち早く気付くのは、青春を謳歌している人気者ではなく悩み多き負け犬と相場が決まっているからだ。というわけで、愛するシンシアを守るために立ち上がったクリス君は、クリープスのみならずゾンビ化した恋敵ブラッドとその子分たちもまとめて退治し、見事に彼女のハートを射止めることとなるわけだ。いやはや、まさに童貞男子の妄想そのもの(笑)。
27年前に封印され保管されたゾンビ(?)をうっかり解き放っちゃうという展開は『バタリアン』、不器用で臆病者の主人公とは正反対のクレイジーな親友J.C.の哀れな末路は『フライトナイト』を彷彿とさせる本作。もちろん、ナメクジ状生物に乗り移られた人間がゾンビ化するのは『シーバース』ですな。さらには、ロメロにクローネンバーグにフーパ―にキャメロンと、ジャンル系有名監督の名前が登場人物たちに付けられている点も要注目。J.C.だってジョン・カーペンターの略だしね。さらに言えば、主人公たちの通う大学名もロジャー・コーマンに由来する。
そうしたマニアックなオマージュ・ネタを発見するのも楽しいのだが、しかし本作はそれ以前に青春ホラー・コメディとしての完成度も高い。学園生活の残酷な現実をシニカルなブラックユーモアで皮肉りつつ、地球外生命体によるゾンビ騒動を学園内ヒエラルキーの逆転劇として機能させる辺りなんか実に巧妙。それでいて、しっかりと負け犬の悲哀も漂わせる辺りなんかスティーブン・キング的なDNAを感じさせるし、デッカー監督の次回作がよりキング色を強めた『ドラキュリアン』だったことも大いに納得が出来る。
そもそも、若い頃に元恋人を救えなかったキャメロン刑事が、ゾンビとして甦った殺人鬼と27年の時を経て再び対峙するくだりなんか、明らかにスティーブン・キングの諸作を彷彿とさせるポイントだもんね。彼もまた、高卒の警察官なんて将来はないから、って理由で彼女に振られちゃった負け組。若い頃の敗北感が今もなおトラウマになっていて、それゆえにアル中の皮肉屋になっちゃったわけですよ。演じるのはロメロ作品やカーペンター作品の常連組トム・アトキンス。本人も自分のキャリアの中で最も思い入れがあって大好きな役柄と語っているが、確かに素晴らしく魅力のあるキャラクターだ。
で、本編中で最も盛り上がるのが、バスに乗って舞踏会へ向かう男子生徒たちが交通事故で全員死亡し、ゾンビとなって甦って女子寮を襲うシーン。「女子たち、良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは君たちの彼氏が迎えに来たこと、悪い知らせは奴らがみんな死んでるってことだ!」というキャメロン刑事のセリフが最高(笑)。しかも、このゾンビ化した男子生徒たち、みんな意地悪なフラタニティのメンバーなんだよね。なので、火炎放射器とライフルを片手に奴らをバンバン倒していくクリスとシンシアの勇姿も痛快なのなんのって(笑)。心置きなく「それやっちまえ!」って感じになるわけです。まさにスッキリ爽快。
ちなみに、本作の脚本執筆にノー・クレジットで協力し、エキストラの警官役として出演も果たしているのがデッカー監督の盟友シェーン・ブラック。当時ある作品の脚本をメジャースタジオにピックアップされ、映画化の企画が進行していたブラックは、是非とも出演して欲しいということでトム・アトキンスに脚本を渡したという。それが、他でもない『リーサル・ウェポン』。脚本を読んだアトキンスは大いに感銘を受け、どの役を自分にやって欲しいのかとブラックに訊いたところ、なんと主人公リッグス役だったらしい。さすがにそれは無理だろう!とアトキンス本人も思ったそうだけど。とはいえ、この出会いが縁で実際にアトキンスは『リーサル・ウェポン』に出演することとなる。
なお、本来は続編に含みを残すエンディングが用意されていたものの、劇場公開に際しては、『キャリー』的な驚かせ系のエンディングに差し替えられてしまった。ぶっちゃけ、ありがちな劇場公開版のエンディングよりも、ブラック・ユーモアを効かせたオリジナル・エディングの方が遥かに面白いのだけどね。こちらは米盤DVDおよびブルーレイに収録のディレクターズ・カット版で採用されているので、興味のある方は是非。
評価(5点満点):★★★★☆
参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語・英語(SDH)/地域コード:ALL/時間:90分/発売元:Sony Pictures
特典:フレッド・デッカー監督による音声解説/キャスト陣による音声解説/劇場版エンディング/未公開シーン集/メイキング・ドキュメンタリー「Thrill Me: Making of Night of the Creeps」(約60分)/トム・アトキンス インタビュー(約20分)/トリビア・トラック/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2017-10-23 01:34
| 映画
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