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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「La nuit de la mort!」 (1980)

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監督:ラファエル・デルパール
製作:クロード・ピアソン
   ラファエル・デルパール
脚本:ラファエル・デルパール
   リシャール・ジョフォ
撮影:マルセル・コーム
特殊効果:パスカル・レヴィエ
音楽:ローラン・プチジラール
出演:イザベル・ゴギー
   シャルロット・ドゥ・トゥルケイム
   ミシェル・フラヴィウ
   ベティ・ベッケール
   ジャン・ルドウ
   ジャネット・バティ
   ミシェル・デブラーヌ
   ジェルメーヌ・デブラ
   ジョルジュ・ルカ
   ミシェル・ドゥシェズー
フランス映画/94分/カラー作品




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<あらすじ>
新しい恋人セルジュ(ミシェル・ドゥシェズー)の紹介で、人里離れた老人ホームで介護士の職を得たマルティーヌ(イザベル・ゴギー)。所長エレーヌ(ベティ・ベッケール)は、なぜかマルティーヌの到着が1日早かったことに憤慨する。危うく追い返されるところだったものの、8カ月以上も無職だったマルティーヌは必死になって懇願し、なんとか採用してもらうのだった。
入居者の老人たちは皆ちょっと風変わりだった。わざと他人の嫌がるような悪戯をするレオン(ジャン・ルドウ)、必要以上にスキンシップを求めてくるパスカル(ジョルジュ・ルカ)、編み物で革命を起こすと主張するジュール(ミシェル・デブラーヌ)などなど。別に悪人じゃないから気にすることはないと、同僚の介護士ニコール(シャルロット・ドゥ・トゥルケイム)が言う。そんな彼女も、薄気味悪い用務員フラヴィエン(ミシェル・フラヴィウ)のことは毛嫌いしている様子だった。
同年代のマルティーヌとニコールはすぐに意気投合する。ここで働き始めてから今日でちょうど2か月めだというニコールは、この間に1度も外出を許可されなかったとぼやく。ところが、セルジュからの電話でマルティーヌがデートに誘われると、なぜかエレーヌは特別に外出許可を出した。
その晩、自室で寝ていたニコールは、気が付くと老人たちに周りを囲まれていた。彼らは抵抗するニコールを無理やり隠し部屋へ連れ込んで殺害。エレーヌの指示でニコールの死体を切り裂いた老人たちは、無我夢中でその生肉を貪り食う。彼らはみな食人鬼だったのだ。
翌朝、ニコールの姿が見えないことに気付くマルティーヌ。あなたの留守中に私と喧嘩して出て行ってしまったのよ、とエレーヌは説明するが、マルティーヌは腑に落ちなかった。ある日、掃除をしていた彼女は古い新聞記事の切り抜きを見つける。そこには若かりし頃のエレーヌが載っていた。しかし、その記事に記されている年齢から計算すると、現在のエレーヌはとっくに100歳を超えているはずだった。
それ以来、次々と不可解な事実に気付いていくマルティーヌ。焼却されたゴミの中からニコールのスーツケースの一部を発見した彼女は、フラヴィエンのことを怪しんで彼の周辺を探る。やがて、マルティーヌが働き始めてから2カ月めが近づき、老人たちは次なる生贄の儀式の準備を始めるのだった…。
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これはなかなか珍しい、純フランス産のカンニバル映画だ。ご存知の通り、かつて一時的にせよ世界中でブームを呼んだカンニバル映画だが、このジャンルを得意としたのはもっぱらイタリア映画界だった。いや、ほぼ彼らの専売特許だったと言ってもいいだろう。あとはアジアと南米でちょろちょろ。筆者の知る限り、フランスで作られたカンニバル映画というのは、スペインの名物カルト映画監督ジェス・フランコが絡んだ食人族物『Terreur Cannibale』('81)と本作のみである。
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そもそも、かつてのフランス映画界はホラー不毛の地だったと言えよう。今でこそアレクサンドル・アジャやパスカル・ロジェ、ザヴィエ・ジャンなどのホラー作家が活躍し、フレンチ・ホラーのニューウェーヴなどとも呼ばれたりしているが、少なくとも'90年代まではジャンルとして成立していないに等しかった。辛うじて、エロティック系ヴァンパイア映画で有名なジャン・ローラン監督が、'60年代末から'80年代初頭にかけてホラー映画を撮り続けて孤軍奮闘していたくらいのもの。とはいえ、彼の作品はいずれも超低予算のインディペンデント映画で、フランス国内でも当時は知る人ぞ知る存在だった。そのほか、ジョルジュ・フランジュの『顔のない眼』('59)やロジェ・ヴァディムの『血とバラ』('61)、ロマン・ポランスキーの『テナント/恐怖を借りた男』('76)など、ごく僅かな例外があるのみ。そういう意味でも、本作の存在は少なからず異色だ。
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で、本作はストーリーもまた数多のカンニバル映画とは趣を異にする。なんたって、老人ホームで暮らすお爺ちゃんお婆ちゃんたちが実は食人鬼だった…というのだから。どうやら、人肉食には長寿の効果があるってことらしい。そのお手本がホームを経営するエレガントなマダム、エレーヌ。見た目年齢は50代そこそこの美熟女なのだが、実は余裕で110歳を超えている。入居者の元気いっぱいで変わり者の老人たちも、実はかなり長生きしているようだ。それもこれも、彼らが人の肉を食べているおかげなのである。
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外部にリクルート担当の協力者がいるエレーヌは、天涯孤独で身寄りのない女性ばかりを介護士として雇い、2ヶ月ごとに殺しては数日かけて内臓まで綺麗に平らげてしまう。もちろん、入居者の老人みんなでシェアして。心臓が一番美味しいので大人気だが、勝手に食べると鞭打ちの刑が待っている。で、犯行の翌日に次の新人さんを雇い入れるので、そうした悪魔の所業が疑われたりバレたりする心配などございません、というわけだ。
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しかし、ある時不測の事態が生じる。次の食事…ならぬ次の新人マルティーヌが諸事情で一日早く施設へ到着してしまったのだ。先輩のニコールが忽然と姿を消したことに釈然としないマルティーヌは、さらに仕事を続けるうち老人ホームの不可解な点に次々と気付いていく。真夜中にどこかへと消える老人たち(こっそり人肉を食べている)、推定年齢と全く辻褄の合わない彼らの昔話、焼却されたゴミの中から見つかったニコールのスーツケースの一部、そして戸棚の裏に隠れた怪しい秘密部屋。ようやく我が身に迫る危険を悟った彼女は、人里離れた老人ホームから決死の脱出を試みることになるわけだが、しかし思いがけない衝撃のどんでん返しが待ち受ける。
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全体的にのどかで淡々とした語り口は、フランス映画ならではというべきか。そこはかとなく寂しげで荒涼とした映像の雰囲気は、ジャン・ローラン作品をも彷彿とさせるものがある。まあ、さすがにローラン作品のような溢れんばかりの詩情も哀切も、ここでは全く感じられないけれど。それでも、どこか不吉で禍々しい空気の漂うところは悪くない。スプラッター描写のさじ加減も、これ見よがしにならぬようきっちり配慮されている。ダミー人形を使った人食いシーンは確かにショッキングではあるのだが、ここぞというピンポイントに絞って挿入することで、抑制を効かせたストーリーの進行にメリハリを付けつつ、作品全体の品位を保っているのだ。
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監督のラファエル・デルパールの本業は役者だが、'70年代半ばからピーター・ラファエルの別名でソフト・ポルノを撮っている。プロデューサーのクロード・ピアソンも、『ハードSEX/激しい唇』('76)や『ジャンボSEX/熱いうめき』('77)などが日本公開されているポルノ監督。それでだいたい本作の素性が分かろうというものだが、しかし撮影監督には巨匠メルヴィルの『ギャング』('66)を手掛けたマルセル・コーム、音楽スコアにはオットー・プレミンジャーの『ローズバッド』('75)やテレビ『メグレ警視』シリーズで有名なローラン・プチジラールが参加するなど、意外にもスタッフの顔ぶれは豪華だ。映画そのものの仕上がりも含め、単純に低予算のエクスプロイテーション映画と片づけることの出来ないものがある。
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主演のイザベル・ゴギーはピアソンの助監督などをやっていた女性で、プロの役者ではなかったようだが、見た目も芝居もなかなか悪くない。一方、老人たちに食い殺されるニコール役を、当時まだ無名の新人だったシャルロット・ドゥ・トゥルケイムが演じている。その後、クロード・ルルーシュやフィリップ・ド・ブロカ、ジェームズ・アイヴォリーなどの名匠に重宝され、大柄で味のある名脇役女優として引く手あまたになるシャルロットだが、ここではまだどことなく初々しい。
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悪女エレーヌ役のベティ・ベッケールは、『すぎ去りし日の...』('70)や『夕なぎ』('72)などクロード・ソーテ監督作品の常連だった女優さん。そのほか、『宝石館』('46)や『アンリエットの巴里祭』('54)のジャネット・バティ、『歴史は女で作られる』('55)や『ビリティス』('77)のジェルメーヌ・デブラなどのベテラン名バイプレイヤーが脇を固めている。
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なお、ローラン・プチジラールによる実験的な音楽スコアもかなり印象的。どう形容すればいいのか分からないのだが、あえて言うならばアヴァンギャルドなプログレ風シャンソンといった感じか。狂気と哀愁とノスタルジーが混然一体となったような、なんとも不思議な味わいを残す。よりセンチメンタルな王道的シャンソンの主題歌も良い。サントラ盤がリリースされたような形跡は全くないのだが、これは是非ともCD化して欲しいかも。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/言語:2.0ch Dolby Digital/言語:フランス語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:94分/発売元:Synapse Films
特典:なし




by nakachan1045 | 2017-10-26 09:19 | 映画 | Comments(0)

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