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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「将軍たちの夜」 The Night of the Generals (1966)

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監督:アナトール・リトヴァク
製作:サム・スピーゲル
原作:ハンス・ヘルムート・キルスト
脚本:ジョセフ・ケッセル
   ポール・デーン
撮影:アンリ・ドカエ
美術デザイン:アレクサンドル・トローネル
タイトル・シーン・デザイン:ロバート・ブラウンジョン
音楽:モーリス・ジャール
出演:ピーター・オトゥール
   オマー・シャリフ
   トム・コートネイ
   ドナルド・プレザンス
   ジョアナ・ペティット
   フィリップ・ノワレ
   チャールズ・グレイ
   コーラル・ブラウン
   ジョン・グレッグソン
   ナイジェル・ストック
   ジュリエット・グレコ
   ゴードン・ジャクソン
   ハリー・アンドリュース
   サシャ・ピトフ
   ハワード・ヴァーノン
特別出演:クリストファー・プラマー
イギリス・フランス合作/144分/カラー作品




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<あらすじ>
第二次世界大戦真っ只中のヨーロッパ。時は1942年。ナチスドイツ占領下にあるポーランドのワルシャワで、一人の娼婦が惨殺される。彼女はドイツ側のスパイでもあった。目撃者の証言によると、犯人はドイツの軍服を着ていたという。しかも将軍クラスだ。捜査を担当するドイツ情報部のグラウ少佐(オマー・シャリフ)は、たとえ将軍であろうとも罪を犯せば罰せられるべきという信念のもと、犯行当夜のアリバイがない3人の将軍に目を付ける。
1人目は出世欲の強い野心的なガブラー将軍(チャールズ・グレイ)。妻エレノア(コーラル・ブラウン)も夫に負けず劣らず権力欲の強い女性で、真面目な一人娘ウルリケ(ジョアナ・ペティット)はそんな両親に辟易していた。2人目は世渡り上手なカーレンベルク将軍(ドナルド・プレザンス)。人付き合いが良く社交的だが、いまだ独身で私生活は謎に包まれている。
そして、3人目はワルシャワに赴任してきたばかりのタンツ将軍(ピーター・オトゥール)だ。戦争の英雄として総統ヒトラーからも気に入られている彼は、史上最年少で将軍に出世したエリートだった。パルチザンを炙り出すためだけにワルシャワの街を破壊するタンツ将軍の冷徹さに、穏健派のグラウ少佐は眉をひそめる。ガブラー将軍やカーレンベルク将軍も、融通の利かないタンツ将軍を快くは思っていなかった。
そんなある日、グラウ少佐は突然異動を命じられる。中佐への昇進が決まり、フランスのパリへ赴任することとなったのだ。上司によると昇格を推薦したのはカーレンベルク将軍だという。殺人事件の容疑者として将軍たちに疑いの目を向けたことから、厄介払いされたのだ。
それから2年後の1944年。パリに移ったガブラー将軍とカーレンベルク将軍は、シュテュルプナーゲル陸軍大将(ハリー・アンドリュース)ら同志と結託してヒトラー暗殺計画を企てていた。そこへタンツ将軍も赴任して来る。彼に計画のことを気付かれてはマズい。そこでカーレンベルク将軍は部下のハルトマン伍長(トム・コートネイ)に命じ、休暇を取ることにしたタンツ将軍の運転手としてその動向を見張らせる。
ハルトマン伍長はガブラー将軍の娘ウルリケと恋仲で、久しぶりのパリでの再会を楽しみにしていたのだが、命令に従わざるを得なかった。2日目の夜、タンツ将軍はバーで見かけた娼婦をハルトマン伍長に連れてくるよう命じる。娼婦のアパートへ上がった将軍は彼女を惨殺し、その濡れ衣をハルトマン伍長に着せようとした。自分の無実を立証できないと悟ったハルトマン伍長は行方をくらます。
親しくするパリ警察のモラン警部(フィリップ・ノワレ)の知らせで娼婦殺害現場へやって来たグラウ中佐は、ワルシャワで起きた事件と同一犯によるものと気付く。しかし、犯人がハルトマン伍長というのは出来過ぎている。彼がタンツ将軍の運転手を務めていたと知ったグラウ中佐は、タンツ将軍こそが真犯人だと考えて問い詰める。折しも、ヒトラー暗殺計画が失敗に終わって軍部は大騒ぎ。タンツ将軍はグラウ中佐を射殺し、暗殺計画に加担した裏切り者だとして処理した。
時は移って戦後の1965年。ドイツのハンブルグで娼婦殺人事件が発生する。今やインターポールの刑事となったモランは、戦犯として服役していたタンツ将軍が数カ月前に出所していたことを知り、その行方を追うのだったが…。
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戦前のフランスで撮った『うたかたの戀』('35)やイングリッド・バーグマン主演の『追想』('56)などのロマンス映画で知られる名匠アナトール・リトヴァクが、『アラビアのロレンス』('62)で共演したピーター・オトゥールとオマー・シャリフを迎えて挑んだサスペンス仕立ての戦争ドラマ。人と人が殺し合う戦時下で起きた連続殺人事件の捜査を軸に、人間を野蛮な狂気へと駆り立てる戦争の恐ろしさがジワジワと炙り出されていく。
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興味深いのは物語の設定。なにしろ、通常の戦争映画では敵側として描かれるナチス・ドイツの内部で起きる出来事なのだから。追う側がドイツ軍将校なら、追われる側もドイツ軍将校。全体主義の象徴みたいなナチス・ドイツも、その内情は決して一枚岩ではなく、軍内部では権力を巡って様々な思惑が渦巻いている。ヒトラー暗殺計画に関わった将校たちも、みながみな愛国心や正義感から行動を起こしたわけではなく、戦況の悪化に乗じただけの日和見主義者もいる。誰が敵で誰が味方なのか、同じドイツ軍でも分からない。まさに一寸先は闇である。
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なので、殺人事件の真犯人を執拗に追うグラウ少佐だって、必ずしも清廉潔白な正義の味方というわけではない。確かにパリではレジスタンスの動向を見て見ぬふりするが、その一方でワルシャワでは事件の目撃証言を引き出すためにゲシュタポの名前を出して一般市民を脅したりする。そもそも、パリ警察のモラン警部がレジスタンスと知りながら見逃すのも、言ってみればドイツが戦争に敗れた場合の保険みたいなもの。基本的には、犯罪者を罰するという己の職務にどこまでも忠実な役人気質の捜査官なのだ。
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そうしたナチス・ドイツの狂気じみた世界を背景にしているからこそ、娼婦ばかりを狙った猟奇殺人の一種異様な残虐性が際立つ。ただし、いわゆる謎解きミステリーが本作の主ではない。真犯人がタンツ将軍であることは、かなり早い段階より誰の目から見ても明らかだ。むしろ本作は、なぜ彼がそのような猟奇的行為に走ってしまうのか、なぜ彼のような怪物が生まれてしまったのかという疑問点に主眼を置くことで、いかに戦争というものが人間の理性や道徳心を破壊し、大勢の運命を狂わせていくものであるかを描くのである。
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その数ある犠牲者の中でも、ことさら象徴的なのがハルトマン伍長とウルリケの若いカップルだ。元ピアニストの繊細な芸術家で戦争を嫌う非暴力主義者のハルトマン伍長だが、皮肉にもドイツ軍の体面を保つため戦争の英雄に仕立て上げられ、しまいにはタンツ将軍によって殺人鬼の濡れ衣を着せられる。それも、軍隊の組織にとっては伍長よりも将軍が欠くべからざる存在だからという理屈で。一方、戦争という状況に付け込んで私利私欲を満たす両親に愛想を尽かしているウルリケは、それゆえ野心を一切持たぬハルトマン伍長の優しさに惹かれるが、しかし追われる身となった彼と離れ離れにならざるを得なくなる。ドイツ軍の良心とも呼ぶべき恋人たちを待ち受ける理不尽な運命。それもまた戦争の生み出す悲劇だ。
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これらの連続殺人事件を巡る心理サスペンス的な人間ドラマに、史実としてのヒトラー暗殺計画、いわゆる7月20日事件が絡んでくるところも面白い。そのどさくさに紛れてタンツ将軍が自らの犯罪を揉み消してしまう展開も巧妙に計算されている。フィクションに史実を盛り込むことで説得力を持たせる手法は珍しくないが、本作はそれを上手いことこなしていると言えよう。

ただ、惜しむらくは全体的なバランスが悪いこと。ストーリーに厚みを持たせるうえで重要なグラウ少佐やモラン警部の人物像の掘り下げがいまひとつ足りない一方、映画的にはなくても構わない、もしくはむしろ削った方がいいようなシーンを懇切丁寧に描き込んでいるため、ただでさえ2時間24分という長尺がさらに長く感じられてしまうのだ。脚本は『昼顔』('67)や『影の軍団』('69)の原作者でリトヴァク監督とは『うたかたの戀』でも組んだジョセフ・ケッセルと、『007/ゴールドフィンガー』('64)や『オリエント急行殺人事件』('74)で有名なポール・デーン。大物脚本家2人のコンビ作にしてはちょっと弱いという印象が否めない。
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一方で、スコープサイズのスクリーンを存分に活かしたカメラワークは見事だ。撮影監督はジャン=ピエール・メルヴィルやルイ・マルとのコラボレーションで、数々の名作を手掛けたフランスの大御所カメラマン、アンリ・ドカエ。ワルシャワの街の一角を再現した実物大の巨大セットを破壊するシーンも、迫力満点で見応えがある。また、『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』('65)などデヴィッド・リーン監督作品に欠かせない名作曲家モーリス・ジャールによる、切なくも美しいメロディの音楽スコアも素晴らしく印象的だ。
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豪華なオールスター・キャストの中でも白眉なのは、やはりタンツ将軍の尋常ならざる狂気を体現したピーター・オトゥールであろう。見ているだけで危なっかしいというか、ただ事ではない何かを宿したヤバいオーラがピリピリとした緊張感を生む。それに比べると、グラウ少佐役のオマー・シャリフは勿体ない使われ方をしているように思える。
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そのシャリフとは『ドクトル・ジバゴ』に続いて共演のトム・コートネイが、地味ながらもハルトマン伍長の不器用な誠実さと繊細さを醸し出して上手い。ウルリケ役のジョアナ・ペティットの可憐な聡明さも、ダークで重苦しい雰囲気の本作では一服の清涼剤だ。ドナルド・プレザンスやチャールズ・グレイ、フィリップ・ノワレ、ハリー・アンドリュースといった英仏の名優陣も、そこに顔を並べるだけでワクワクするものがある。そういえば、プレザンスとグレイの2人は共に、『007』シリーズの別々の作品で宿敵ブロフェルドを演じている。そういう意味でも興味深いキャスティングだ。
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なお、ガブラー将軍夫人エレノアを演じているコーラル・ブラウンはヴィンセント・プライスの奥様。有名なシャンソン歌手ジュリエット・グレコが酒場シーンで歌を披露するほか、『去年マリエンバートで』('61)や『インフェルノ』('80)が印象的な怪優サシャ・ピトフがワルシャワの殺人事件現場で死体を検視するドクター役、ジェス・フランコ監督作品の常連として有名なハワード・ヴァーノンが戦後のハンブルグで発生した事件の容疑者役として顔を出している。また、クリストファー・プラマーが名将ロンメル元帥役でゲスト出演。映画では『砂漠の鬼将軍』('51)と『砂漠の鼠』('53)でロンメルを演じたジェームズ・メイソンのイメージが強いが、実物と似ているのはプラマーの方かもしれない。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:日本語・英語/地域コード:2/時間:144分/発売元:株式会社ハピネット
特典:関連作品予告編集



by nakachan1045 | 2017-11-12 02:51 | 映画 | Comments(0)

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