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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ジーンズ・ブルース 明日なき無頼派」 Jeans Blues: No Future (1974)

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監督:中島貞夫
企画:日下部五朗
   佐藤雅夫
脚本:中島貞夫
   金子武郎
撮影:増田敏雄
音楽:井上忠夫
主題歌:梶芽衣子
出演:梶芽衣子
   渡瀬恒彦
   内田良平
   堀越陽子
   橘真紀
   室田日出夫
   菅貫太郎
   川谷拓三
日本映画/91分/カラー作品




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<あらすじ>
繁華街の怪しげなナイトクラブ。雇われママとしてオーナーの男にこき使われている聖子(梶芽衣子)は、目の前で繰り広げられる乱交パーティを眺めながら、こんな生活に飽き飽きとしていた。突然、彼女は思い立ったように売上金を手にして店を飛び出し、駐車場にあった他人の車で夜道をひた走る。
その頃、どんな仕事も長続きせず職を転々とする若者・次郎(渡瀬恒彦)は、悪い仲間に誘われて闇仕事に関わってしまう。それは、人殺しの依頼だった。しかし、仲間たちが相手の高利貸しをなぶり殺している様子を見た次郎は、その場で恐怖に固まってしまう。リーダーの本郷(内田良平)らは、下っ端の次郎も一緒に口封じのため殺してしまうつもりだった。そうと気付いた次郎は、高利貸しから巻き上げた500万円を手に、通りがかりの車を奪って夢中で逃走する。
田舎道の交差点で聖子と次郎の車が激突する。最初はお互いにいがみ合った2人だが、なんとなくウマが合うような気がした。タバコに火をつけた次郎がマッチを放り投げると、漏れだしたガソリンに引火して2人の車が燃え上がってしまう。別の車を奪った2人はそのままハイウェイを走らせる。本郷は手下の早川(室田日出夫)と石松(川谷拓三)に次郎を追いかけさせたが、炎上する車を見た彼らは次郎が死んだものと誤解する。
世の中に不満を抱えた聖子と次郎は、お互いに共鳴しあうものを感じた。胡散臭い中古車販売店で手頃な車を買った次郎は、聖子を伴ってあてどのない旅へと出る。しかし、その姿を目撃した人物から、次郎がまだ生きていることを知らされた本郷は、手下や美人局役のマリ(橘真紀)を連れてその行方を追う。
モーテルに泊まった聖子と次郎。次郎は彼女の肉体を求めようとするが、セックスに辟易としていた聖子はそれを拒絶する。むしゃくしゃした次郎は夜の町へ飛び出すが、うっかり歩道橋の上から500万円を落としてしまう。現金を奪い合う通行人の群れ。そこへ警察官が駆け付け、次郎は聖子の運転する車に飛び乗って再び逃走する。
とあるレストランに到着した2人だったが、そこで本郷ら一味と運悪く鉢合わせてしまった。コンテナに逃げ込んだ聖子と次郎。そのまま閉じ込められた2人は、舞鶴まで運ばれてしまった。舞鶴でバイクを奪って逃亡した彼らは、湖のほとりでハンターから猟銃を奪う。猟銃を試し撃ちする2人。かつてなく気分が高揚とした。
すっかりタガの外れてしまった聖子と次郎は、猟銃を手にガソリンスタンドや賭博場を襲撃して強盗を重ねる。次郎は、奪った現金の一部を故郷の妹・百合子(堀越陽子)に届けるつもりだった。しかし、新聞報道で次郎たちの足取りを知った本郷らは、次郎が故郷へ向かっていることに気付いて先回りする…。
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いわば日本版『俺たちに明日はない』('67)である。金の亡者ばかりの殺伐とした現代の日本。社会の底辺で世の中に対する強い不満を抱えた若い男女2人が、ふとしたことで知り合ってお互いに深いシンパシーを覚え、やがてその持て余したエネルギーを社会に対する暴力で発散させていく。こんなクソみたいな日本、いっそのことぶち壊してやるとばかりに。明日への夢なき若者たちの暴走と破滅。中島貞夫監督にとっては、ATGで撮った『鉄砲玉の美学』('73)の延長線上にある作品だとも言えよう。
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とにかくこの映画、主人公2人以外は文字通りクズみたいな人間しか出てこない。金のためなら平気で人を殺す本郷らチンピラ一味は言わずもがな、中古車販売店の店主夫婦は車検切れのボロ車をぼったくり価格で売りつける強欲ジジイとババアだし、暇と金を持て余した有閑マダムは乱交パーティで肉欲に溺れまくるし、次郎の妹・小百合だって兄の優しさにつけこんで金をせびってはヒモ男に貢ぐバカ女だし。逃避行の先々ですれ違う市井の人々も、みな一様に冷たくて乱暴で利己的だったりする。経済成長の狂乱に浮かれて人間らしさを失ってしまった日本人。それが中島監督の見つめる現代日本社会の風景だ。
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もちろん、主人公の聖子と次郎だって清廉潔白な善人などではない。ただ、他者への優しさや労わりを捨てきれないだけだ。なので、世間に流されるがままに生きようとも、どこかで「これで本当にいいのか?」という疑問が拭えず、なんとなくワルになり切れないでいる。その結果、なりふり構わず欲望のままに走る連中ばかりがのさばり、聖子や次郎のような人間がワリを食ってしまうというわけだ。そんなやり切れなさとわだかまりを抱えた2人が出会い、薄汚れた社会に反逆の銃弾を次々とぶっ放す。当然のことながら、彼らの行く先に待ち構えるのは破滅しかない。
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本作が公開されたのは1974年。'60年代末から盛り上がった学生運動はとうの昔に敗北し、度重なる内ゲバ事件や連合赤軍事件で新左翼は国民からの支持や共感をすっかり失い、テロ組織と化した日本赤軍は海外を拠点に武装ゲリラ活動を繰り返していた。そんな当時の若者を取り巻く暗澹たる時代の空気を映し出した作品と言えるが、しかし「ボニーとクライド」をそのままモデルにしたストーリーはいまひとつ面白みに欠ける。なんというか、分かりやす過ぎるのだ。残酷で生々しい暴力描写とセックス描写、ロックを多用したエッジーなサウンドトラック、悲壮感溢れる衝撃のクライマックス。どれも魅力的ではあるものの、『鉄砲玉の美学』のような無軌道な破壊力には乏しい。正直、物足りないという印象は否めないだろう。
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ただ、ヒロインの聖子を演じる梶芽衣子は文句なしに素晴らしい。タフなようでいて繊細、突き刺すように鋭い孤独な眼差しに優しさを秘めたクール・ビューティ。ただそこにいるだけで、ヒロインの内に抱えた怒りや悲しみがひしひしと伝わって来る。ふとした表情が実に雄弁だ。全身黒づくめのレザー・ファッションがまた、惚れ惚れとするくらいスタイリッシュでカッコいい。梶芽衣子を堪能するための映画と言ってもいいくらいだ。
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そんな梶と『銀蝶渡り鳥』('72)でもコンビを組んだ渡瀬恒彦も、『鉄砲玉の美学』の主人公・小池清とも相通じるような、バカで不器用で短絡的だけど人が良くて憎めない若者・次郎役を好演。生まれてこのかた運に見放された若者の、やり場のない絶望と悲しみを体現する。少年のように無邪気な笑顔がかえっていじらしい。ある部分で世間を達観した聖子が、この男を守りたい、助けたいと思う気持ちがよく分かる。
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脇役で強烈なインパクトを残すのは、なんといっても川谷拓三だろう。どもりが強すぎて何を喋っているんだか分からず、そのフラストレーションからなのか、いつもカッカしていきり立った時限爆弾みたいなチンピラ。ボス役の超コワモテな内田良平や、手下仲間のゴリラみたいな室田日出夫も見るからに狂暴そうだが、川谷の一種異様な存在感には敵わない。また、次郎の妹・小百合を演じる堀越陽子のハスッパぶりも意表を突く。田舎に残してきた妹を想う次郎の気持ちなどどこへやら。どんな可愛い妹が出てくるのかと思ったら、チンピラ一味も舌を巻くような場末のゲス女なんでビックリした(笑)。こんな妹のために命を張った次郎が不憫でならない。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:91分/発売元:東映ビデオ株式会社
特典:フォトギャラリー/予告編



by nakachan1045 | 2017-11-18 14:34 | 映画 | Comments(0)

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