なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「ボディ・ダブル」 Body Double (1984)

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監督:ブライアン・デ・パルマ
製作:ブライアン・デ・パルマ
原案:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ロバート・J・アヴレック
   ブライアン・デ・パルマ
撮影:スティーブン・H・ブラム
美術デザイン:アイダ・ランドム
音楽:ピノ・ドナッジョ
出演:クレイグ・ワッソン
   グレッグ・ヘンリー
   メラニー・グリフィス
   デボラ・シェルトン
   ガイ・ボイド
   デヴィッド・ハスケル
   アル・イスラエル
   レベッカ・スタンレイ
   バーバラ・クランプトン
アメリカ映画/114分/カラー映画




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<あらすじ>
舞台はロサンゼルス。売れない俳優ジェイク・スカリー(クレイグ・ワッソン)は、低予算のB級ホラー映画でヴァンパイア役を演じていたが、撮影の途中で閉所恐怖症の発作を起こしてクビになってしまう。しかも、同棲する恋人キャロル(バーバラ・クランプトン)の浮気現場に遭遇。アパートの部屋は彼女のものだったため、ジェイクは友人の家を転々とすることになる。
そんなある日、彼はオーディション現場でよく見かける俳優サム(グレッグ・ヘンリー)と親しくなる。ジェイクの窮状を知ったサムは、自分が留守の間に家の管理を頼めないかと相談を持ち掛ける。そこはL.A.一帯を見渡せる豪華な邸宅。本来の持ち主は、ヨーロッパへ旅行中の金持ちなのだという。ただ、植物の水やりが毎日欠かせないため、友人であるサムが留守番を任されていたのだが、仕事で巡業へ出なくてはならないため困っていたのだ。
宿なしのジェイクにとっては願ってもない話。まるで宇宙船のような建物から眺めるL.A.の夜景に見とれていると、サムが望遠鏡を覗いて見るように勧める。言われた通りの方角を望遠鏡で眺めると、近所の豪邸でストリップダンスを踊る女性(デボラ・シェルトン)の姿が。薄暗くて顔はよく見えないが、かなりの美人であることは間違いない。サムによると、彼女は毎晩きっちり同じ時刻に踊っているという。
かくして、一人で豪邸に住むこととなったジェイク。例のストリップダンスをこっそり眺めるのが日課となった。そんなある日、彼は怪しげなインディアンの男が女性の家を見張っていることに気付く。その翌日、たまたま女性の家の前に車で通りかかったジェイクは、そのインディアンの男が彼女の車を尾行する現場を目撃。思わず自分も彼らの後を追いかける。
ショッピングモールから海沿いのモーテルへと、インディアンの男の不穏な動きを監視しつつ、女性の行く先を延々とつけて回るジェイク。すると、インディアンの男が女性のハンドバッグを奪って走り去る。必死になって追いかけるジェイク。しかし、トンネルに差し掛かったところで、ジェイクは再び閉所恐怖症の発作を起こしてしまい、ハンドバッグから何かを抜き取ったインディアンの男を取り逃がしてしまう。
女性の名前はグロリア・レヴェル。再びグロリアの自宅を望遠鏡で覗いていたジェイクは、侵入したインディアンの男に襲われている彼女の姿を目撃する。慌てて彼女の家へ助けに駆け付けるジェイクだったが、既にグロリアはドリルで殺されていた。
警察の現場検証に立ち会うジェイク。マクリーン刑事(ガイ・ボイド)は大富豪であるグロリアの資産を狙った夫による犯行の線を疑っていた。しかし、ジェイクの目撃証言によれば犯人は正体不明のインディアン。捜査は難航することが必至だった。
ショックと罪悪感で酒浸りになったジェイクだったが、放心状態で眺めていたテレビの映像に目を奪われる。新作ポルノ映画の予告編に出てくる女性の独特なストリップ・ダンスが、グロリアのものと全く一緒だったのだ。そこでポルノ映画の撮影現場に潜入した彼は、ダンスを踊る人気ポルノ女優ホリー・ボディ(メラニー・グリフィス)に接近。彼女を家に招いた彼は、ホリーがある人物からの依頼でグロリアの自宅へ上がり込み、ボディ・ダブル=替え玉を演じていたことを知る…。
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ヒッチコキアンとして知られるブライアン・デ・パルマ監督。『愛のメモリー』('76)や『殺しのドレス』('80)、『ミッドナイト・クロス』('81)でもヒッチコック作品を引用していたが、しかしこの『ボディ・ダブル』ほど敬愛するヒッチコック監督からの影響が濃厚な作品は他にないだろう。劇場公開当時は散々に酷評された本作。当時デ・パルマ作品の大ファンだった高校生の筆者も、期待を胸に映画館へ足を運んだものの、少なからずガッカリさせられた記憶がある。それ以来、徐々にデ・パルマ熱は冷めてしまったのだが、このたび海外の4Kレストア版ブルーレイを手に入れて再見したところ、意外にも当時受けた印象ほど悪い映画ではなかった。
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ストーリー的には『裏窓』('54)と『めまい』('58)を足して『ダイヤルMを廻せ!』('54)で割ったような感じ。主人公が極度の閉所恐怖症を抱えていて、それがいざという時の弱点になってしまうのは、『めまい』における高所恐怖症のバリエーション。望遠鏡で殺人事件を目撃してしまう展開は『裏窓』の設定そのままだ。『ダイヤルMを廻せ!』の要素については、謎解きの種明かしにも深く関わるので明言を避けるものの、これまた分かりやすい引用だと言えよう。前半と後半でヒロインが入れ替わるのは『サイコ』('60)か。いずれにせよ、元ネタは誰が見ても一目瞭然。ここまでくると半ばパクリに近い。
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ただ、上手いこと応用出来ていれば、パクリでも何でも一向に構わない。芸術作品において他者からの影響は避けられない宿命だ。そう考えると、ヒッチコック各作品の要素をキーポイントで散りばめた本作は、アリかナシかと言われれば十分にアリだろう。問題はそれらを盛り込んだ脚本の出来栄えだ。
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正直なところ、本作はストーリー的に唐突でご都合主義的な展開が非常に多い。例えば主人公ジェイクと美女グロリアのラブ・シーン。インディアン男を取り逃がしたジェイクが、後から追ってきたグロリアにトンネル内から助けられ、閉所恐怖症の発作が落ち着いたところでいきなりキスし始め、カメラが2人の周囲をグルグル回って濃密な抱擁が展開する。これがヒッチコックの『トパーズ』へのオマージュなのは分かるのだが、あまりにも強引過ぎるゆえ違和感が拭えない。デ・パルマによると、当時のアメリカの一般試写では、このシーンで客席から笑いが漏れてショックを受けたというが、確かにそれは理解できる。んなバカな!ってことだろう。後にこのシーンはジェイクとポルノ女優ホリーとの抱擁シーンに重ねられ、彼女がグロリアのボディ・ダブルだったことが暗示されるのだが、そうした映像的なトリックやテクニックを見せるための道具としてしかストーリーや設定が機能していない。主人公ジェイクの行動が終始に渡って不可解なのも、ご都合主義優先でキャラクターの心理的な描写や動機的な裏付けがないがしろにされているせいだろう。
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とはいえ、その手の脚本における欠陥はダリオ・アルジェントのジャッロ映画にも通じるところはあるので、個人的にはさほど目くじらを立てるほどのことでもないとは思うのだが、しかし肝心の見せ場がどれも使い古されているのはちょっと頂けない。要するに、既にデ・パルマ自身が散々やってきたものばかりなのだ。『トパーズ』のオマージュは『ミッドナイト・クロス』のラストで実験済みだし、ショッピング・モール内でジェイクがグロリアのあとを延々と追いかけるシーンは『殺しのドレス』の美術館シーンでも試みられている。オープニングが映画内映画で始まるのも『ミッドナイト・クロス』と全く同じだ。しかも、いずれの見せ場も前出の作品の方が効果的な使われ方をしている。劇場公開当時に覚えたガッカリ感の原因は恐らくこれだ。
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その一方で、セックスとバイオレンスを前面に押し出したいかがわしい雰囲気はとても魅力的だ。いかにも'80年代らしい軽薄な煌びやかさが、舞台となるロサンゼルスのイメージに違和感なく重なる。当時のデ・パルマは、臆面もない性描写や暴力描写でやり玉に挙げられることが多かった。バイオレンスに関しては前作『スカーフェイス』の方が圧倒的に強烈だが、セックスの露骨な過激さはなんといっても本作がダントツ。ジェイクがポルノ業界に潜入する本編後半では、リンダ・ショウやセカ、パメラ・ウェストンなど本物のハードコア女優まで動員されている。
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そもそも、デ・パルマ監督はヒロインのホリー役として、当時ポルノ映画の女王として日本でも人気だった女優アネット・ヘヴンを起用するつもりだった。なにしろ、ストリップ・シーンやオナニー・シーンなど脱ぎまくらねばならない役柄なので、ハリウッドで引き受けてくれる女優がいるとはとても考えられなかったからだ。実際に本人と会って話をしたデ・パルマ監督は、頭も切れるしセリフの覚えもいいし演技も上手いヘヴンにいたく感心して出演をオファー。デ・パルマが何者か知らなかったヘヴンは、当初は会ってもくれなかったらしいが、関係者の仲介でミーティングが実現し、本人も出演に乗り気だった。ところが、ヘヴンがポルノ女優だということを知ったコロンビア映画上層部の猛反対で白紙撤回されることに。そんな窮地を救ったのがメラニー・グリフィスだった。
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当時俳優スティーブン・バウアーの妻だったメラニーは、夫が『スカーフェイス』に出演していたこともあって、デ・パルマ監督ともプライベートで親しい間柄だったという。デ・パルマ本人から『ボディ・ダブル』のヒロイン探しに困っていると聞いた彼女は、「だったらあたしがやる!」とその場で名乗りを上げたのだそうだ。まさに灯台下暗しである。結果的に、これが絶妙なキャスティングだった。『殺しのドレス』や『ミッドナイト・クロス』のナンシー・アレンに相当するような役柄で、少女のように無邪気でキュートな親しみやすさを残しながら、一方でセックスには自由奔放かつ大胆。コメディエンヌとしての勘の良さも垣間見せるメラニーは素晴らしい好演で、全米批評家協会賞では見事に助演女優賞を獲得している。これを機に、それまで女優としていまひとつ芽の出なかった彼女は一気に注目されるようになった。メラニー本人も、本作がなければ『サムシング・ワイルド』('86)や『ワーキング・ガール』('88)の成功はなかっただろうと語っている。
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また、たびたび主役が地味過ぎるという批判を受ける本作だが、しかしジェイク役のクレイグ・ワッソンもサム役のグレッグ・ヘンリーも役柄のイメージにはピッタリだ。確かにどちらもスターではないものの、だからこそ本作の売れない俳優という設定にはドンピシャ。これが例えばジョン・トラヴォルタやアル・パチーノのようなスターだったら全くもって説得力がない。残念ながらワッソンはその後『エルム街の悪夢3/惨劇の館』('87)くらいしか代表作はないが、ヘンリーは『レイジング・ケイン』('92)や『ファム・ファタール』('02)でもデ・パルマと組み、最近では『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの祖父役としてもお馴染みだ。
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個人的に当時お気に入りだったのは、グロリア役を演じているデボラ・シェルトン。元ミスUSAのビューティー・クィーンで、正直なところ演技力に関しては及第点。本作でもセリフはヘレン・シェイヴァーに吹き替えられているのだが、とりあえず目が覚めるほどの抜群の美人なので問題なし(笑)。主人公ジェイクを無我夢中にさせてしまう女性として十分すぎるほどの役割を果たしている。『ネメシス』('92)の女サイボーグ役も良かった。
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なお、本作は'80年代半ば当時のロサンゼルスを堪能できるという点も大きな見どころ。冒頭でジェイクがホットドッグを買い食いするのは、ロサンゼルスの観光名所として今も健在の店テイル・オー・ザ・パルプ。その向こう側には大型ショッピング・モール、ビバリーセンターが見える。今ではその前に別の建物が出来てしまい、さらには高層ホテルのソフィテルも建っているため、あの場所からビバリーセンターが背景に映ることはもはや不可能だろう。また、ジェイクがグロリアを追跡してランジェリーの試着室を覗き見するのは、超高級ショッピング街ロデオ・ドライヴにあるショッピング・モール、ロデオ・コレクション。あそこに入っている店はどこも敷居が高く、とても庶民が気軽に買い物を出来る場所ではない。ジェイクが住むことになる豪邸は、ハリウッド・ヒルズに実在するケモスフィアと呼ばれるモダン建築で、ロサンゼルスの歴史文化記念物に指定されている。ほかにも、今はなきタワー・レコードのビデオ店や、当時とほぼ変わらないままのファーマーズ・マーケットなども出てくるので、ロサンゼルス好きならば必見だろう。
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ちなみに、本作はフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの大ヒット曲「リラックス」が劇中でミュージック・ビデオ風に使用され、リード・ボーカリストのホリー・ジョンソンらバンド・メンバーも出演していることでも当時話題になった。また、劇中のポルノ映画シーンでは後にスクリーム・クィーンとして有名になるB級映画女優ブリンク・スティーヴンスが登場。当時はメジャー映画の脱ぎ役エキストラとして引っ張りだこだった彼女だが、実は『サイコ3』('86)などでボディ・ダブルの仕事も請け負っていた。ある意味、奇遇(笑)。あと、『ゴーストバスターズ』('84)の破壊神ゴーザを演じていた女優スラヴィトザ・ジャヴァンが、ジェイクを怪しんで警備員に通報するショップ店員役で顔を出しているのも要注目だ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)※3000枚限定プレス
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM・5.1ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:114分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital・5.1ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:114分
発売元:Powerhouse Films/Columbia Pictures
特典:クレイグ・ワッソンのテレビ・インタビュー(1984年当時・8分)/助監督ジョー・ナポリターノのインタビュー(2015年撮影・38分)/メイキング・ドキュメンタリー「The Seduction」(2002年制作・17分)/メイキング・ドキュメンタリー「The Setup」(2002年制作・17分)/メイキング・ドキュメンタリー「The Mystery」(2002年制作・12分)/メイキング・ドキュメンタリー「The Controversy」(2002年制作・6分)/オリジナル劇場予告編/サウンドトラック単独再生機能



by nakachan1045 | 2017-11-20 03:59 | 映画 | Comments(0)

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