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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「La morte non ha sesso」 aka A Black Veil For Lisa (1968)

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監督:マッシモ・ダラマーノ
製作:ジャンカルロ・マルケッティ
原案:ジュゼッペ・ベリ
脚本:ジュゼペ・ベリ
   ヴィットリアーノ・ペトリッリ
   マッシモ・ダラマーノ
   オードリー・ノーラ
撮影:アンジェロ・ロッティ
編集:ダニエレ・アラビソ
音楽:ジョヴァンニ・フスコ
   ジャンフランコ・レヴェルベリ
出演:ジョン・ミルズ
   ロベルト・ホフマン
   ルチアナ・パルッツィ
   レナーテ・カスチェ
   トゥリオ・アルタムラ
   カルロ・ヒンテルマン
   エンツォ・フィエルモンテ
   ロリス・バゾッキ
   ジュゼッペ・テラノヴァ
   ロドルフォ・リカーリ
イタリア・西ドイツ合作/88分/カラー作品




<あらすじ>
インターポールのハンブルグ支局で麻薬捜査を担当するブーロン警部(ジョン・ミルズ)は、麻薬組織を牛耳る大富豪ハリー・シュルマンの尻尾を掴もうと狙っていたが、手掛かりとなる証人が次々と殺されてしまう。犯行の手口から察するに、同一犯のプロによるものと思われた。
その一方で、ブーロン警部には別の心配事があった。親子ほど年の離れた若い美人妻リザ(ルチアナ・パルッツィ)だ。人一倍嫉妬深いブーロン警部は妻の浮気が心配でたまらず、仕事の合間に何度も家に電話しては妻が独りで自宅にいることを確かめ、彼女が外出しようものなら誰とどこで何をしていたのか執拗に問い詰める。そのため、リザとの間には喧嘩が絶えなかったが、彼女なしで生きていけないブーロン警部は別れるつもりもなかった。
ある時、盛り場の手入れで補導された若い女性マリアンネ(レナータ・カスチェ)の証言から、ハンス・ミュラー(ベルナルディーノ・ソリタリ)という若い麻薬売人が捜査線上に浮上する。シュルマンへ繋がる手掛かりと踏んだブーロン警部はその行方を追うものの、あと一歩というところでミュラーもまた殺された。その殺人現場で、彼は1枚の1ドル銀貨を発見する。
1ドル銀貨の持ち主はハンサムなフランス人の若者マックス(ロベルト・ホフマン)。彼はシュルマンに雇われたプロの殺し屋だった。過去のガサ入れ映像を見ていたブーロン警部は、1ドル銀貨を手にするマックスを発見。その仲間を追跡して隠れ家のホテルにたどり着いた彼は、そこで高飛びの準備をしていたマックスを逮捕する。
マックスを連行するブーロン警部。その途中で彼は、何者かが運転する赤いポルシェに乗って走り去る妻リザを見かける。浮気相手の車に違いない。そう考えたブーロン警部は激しい嫉妬に駆られ、見逃す代わりに妻を殺すようマックスに命じる。
ところが、部下の報告で赤いポルシェの持ち主がリザの女友達であることが判明。浮気が誤解だったことに気付いたブーロン警部は、慌ててマックスに連絡しようとするものの、既にホテルからは姿を消していた。その頃、警部の自宅にはマックスの姿が。何も知らないリザは、保険勧誘員を名乗る彼を家に招き入れる…。

巨匠セルジョ・レオーネ監督の傑作西部劇『荒野の用心棒』('64)と『夕陽のガンマン』('65)の撮影監督として名を成し、自身もマカロニ・ウエスタン『バンディドス』('67)で映画監督へと転身したマッシモ・ダラマーノ。ジャッロ映画の隠れた名作『ソランジェ 残酷なメルヘン』('72)の監督としても知られる彼が、初めて撮ったジャッロ映画とされている本作だが、実際のところはジャッロというよりもフィルムノワール的な犯罪サスペンスと呼ぶべき作品だ。


主人公はインターポールで麻薬捜査を指揮する初老のベテラン警部ブーロン。麻薬汚染の広がるドイツのハンブルグで、組織のボスを追い詰めようとするブーロンだったが、その鍵となる証人が次々と殺されていく。夜道で物陰から犠牲者を狙う、黒い手袋をはめた正体不明の暗殺者。まさに王道的ジャッロの趣きといったところだが、実はこの麻薬捜査も連続殺人も本作の主軸ではない。

主人公のブーロン警部が寝食を忘れるほど情熱を注ぐ麻薬組織撲滅と同じくらい、いやむしろそれ以上にのめり込んでいるのが愛妻リザの存在である。ブーロン警部とは親子ほど年が離れた若妻で、しかも目の覚めるような抜群の美人。どうやら、もともとパラノイア気質があるらしい(というか、そうとしか思えない)ブーロン警部は、そんな妻が自分の知らないところで浮気でもしているんじゃないかと気が気ではなく、勝手に妄想を膨らませて暴走しまくる。仕事の最中でも暇さえあれば自宅への電話連絡をかかさず、妻が出なければ何度でもしつこくかけ直し、彼女が昼間外出していたと知れば根掘り葉掘り質問攻めにし、そこで名前の出た友人の素性まで部下に調べさせる。外出先の妻を尾行したり、寝室を覗き見したりなんかも当たり前。もはや完全に病気だ。

我慢の限界に達したリザが「そこまで疑うんだったら本当に浮気してやるから!」とブチ切れると、ショックで目に涙を浮かべながら逆上して平手打ち。かとおもえば、「そんなに私が嫌いか?別れたいのか?」と弱々しくうなだれ、「お前なしでは生きていけない」と泣きながら妻にすがりつく。英国演劇界の重鎮ジョン・ミルズによる、繊細さの中に狂気を秘めた豊かな感情表現に舌を巻く。オスカーに輝く『ライアンの娘』('70)に勝るとも劣らぬ大熱演である。

で、ある時街中で妻が他人の運転する赤いポルシェに乗るところを目撃したブーロン警部は、もはや妻の浮気に疑いの余地なし!と瞬時に思い込み、たった今逮捕したばかりの殺し屋マックスに妻殺しを依頼する。ついに人としての一線を越えてしまったわけですな。ところが、このマックスという殺し屋。二枚目の優男で大の女好きなもんだから、ブーロン警部の思惑とは裏腹にちゃっかりリザとデキてしまう。

そうなると、妻と愛人が秘かに結託して嫉妬深い夫を罠にはめる…という展開になりそうなところだが、そうは問屋が卸さないところが本作の見どころ。少なからず意表を突く展開は本編を見てのお楽しみだが、このリザという女性が実はけっこうな食わせ物で、しかも無自覚に周りの男を狂わせる天性のファム・ファタールなわけですよ。演じるのは『007/サンダーボール作戦』('65)の悪女ボンドガールとして有名なイタリア女優ルチアーナ・パルッツィ。淑女でも悪女でもない、本能の赴くがままに生きるトロフィーワイフの危なっかしさを上手いこと演じており、トップレスのヌードも辞さない大胆な濡れ場にも挑戦している。

殺し屋マックス役には『目をさまして殺せ』('66)や『イタリア式愛のテクニック』('66)などのイタリア映画で活躍した、オーストリア出身の二枚目俳優ロベルト・ホフマン。この手のチャラい遊び人的な優男役は彼の十八番だ。

ただ、巧妙に練られた脚本の面白さに比べると、マッシモ・ダラマーノの演出はわりと凡庸だ。所々のスタイリッシュなカメラワークには光るものがある。そこはさすが超一流のカメラマン出身。森の中をスピーディに駆け巡る追跡アクションを、広角レンズを使った移動カメラで捉えるあたりなんか抜群にセンスがいい。しかし、全体的にはストーリー運びに切れがなく、サスペンスも緊張感もなかなか盛り上がらない。

また、筆者が視聴したのは英語バージョンなのだが、ジョン・ミルズのセリフに関しては撮影現場で拾った同録音声を使用しているのに対し、それ以外のキャストは全て別人の声優がスタジオでアフレコしている。そのため、同じシーンでも音声の質感がセリフによってチグハグになってしまい、どうにも違和感を覚えずにはいられないのだ。まあ、もともと昔のイタリア映画は吹替音声のクオリティに問題は多かったので、仕方ないと言えば仕方ないのだけれど。

さらに特筆しておきたいのは、モダンジャズ・タッチのクールでお洒落なラウンジ風サウンドトラック。本編ではリチャード・マーコウィッツとクレジットされているが、実際に音楽スコアを担当したのは『情事』('60)や『太陽はひとりぼっち』('62)などアントニオーニ作品で知られるジョヴァンニ・フスコと、『皆殺しのジャンゴ/復讐の機関砲(ガトリングガン)』('68)のメロディがナールズ・バークレイの大ヒット曲「Crazy」でサンプリングされたことで有名なジャンフランコ・レヴェルベリ。女声によるため息交じりの「リッザァァァ~」という呟きを効果的に使った官能的なスコアがすこぶる印象的だ。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:88分/発売元:Olive Films/Paramount Pictures
特典:なし



by nakachan1045 | 2017-11-21 01:11 | 映画 | Comments(0)

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