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なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画&音楽レビュー日記
by なかざわひでゆき
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「スラッグス」 Slugs, the Movie (1988)

「スラッグス」 Slugs, the Movie  (1988)_f0367483_19012688.jpg
監督:フアン・ピケール・シモン
製作:ホセ・アントニオ・エスクリヴァ
   フランチェスカ・デ・ラウレンティス
   フアン・ピケール・シモン
原作:ショーン・ハトソン
脚本:ロン・ガントマン
撮影:フリオ・ブラガード
特殊効果:エミリオ・ルイス
特殊メイク:カルロ・デ・マルキス
音楽:ティム・スースター
出演:マイケル・ガーフィールド
   キム・テリー
   フィリップ・マクヘイル
   アリシア・モロ
   サンチャゴ・アルヴァレス
   ジョン・バッタリア
   エミリオ・リンデル
   クリス・マン
   キャリ・ローズ
   コンチャ・クエトス
   パティ・シェパード
特別出演:シルヴァーナ・マンガーノ
スペイン・アメリカ合作/89分/カラー作品




<あらすじ>
ニューヨーク州ののどかな田舎町。ある日、アル中で一人暮らしの老人が、半ば白骨化した無残な死体で発見される。野生動物かなにかに食い散らかされたようだった。町の保健衛生局職員マイク・ブレディ(マイケル・ガーフィールド)と水道局職員ドン・パーマー(フィリップ・マクヘイル)は、住民の苦情で下水道を調べたところ、多数の動物の死骸を発見する。その頃、家庭菜園を楽しむ老夫婦がナメクジの大群に襲われて食い殺され、ガスの引火で老夫婦の自宅が爆発するという事件も起きた。
学校教師の妻キム(キム・テリー)に指摘され、自宅前の花壇にナメクジが大量発生していることに気付いたマイク。しかも、ナメクジは触ろうとしたマイクの指を噛んだ。肉食のナメクジなんて聞いたことがない。不可解に思ったマイクは、テリーの学校に勤務するイギリス人の生物学教師ジョン・フォーリー(サンチャゴ・アルバレス)にナメクジの調査を依頼する。
その後、高校生のボビー(クリス・マン)とドナ(キャリ・ローズ)のカップルが、寝室でやはり全身を食いちぎられた状態で見つかる。マイクは人喰いナメクジが原因だと訴えるが、リース保安官(ジョン・バッタリア)はまともに取り合おうとしない。さらに、マイクの親友デヴィッド・ワトソン(エミリオ・リンデル)が、レストランで無数のナメクジの幼虫に体を食い破られる。前日に食べた妻モーリーン(アリシア・モロ)お手製のサラダに、人喰いナメクジが紛れ込んでおり、体内で幼虫が孵化してしまったのだ。
ドンが調べたところによると、ナメクジが下水道で大量発生している近辺の住宅地は、20年前まで有害なゴミの廃棄場所だった。恐らく、その有害物質の影響でナメクジが突然変異してしまったのだ。イートン市長(マヌエル・デ・ブラス)に対策を訴えるマイクだったが、地域の土地開発計画を進める市長は聞く耳を持たない。その傍らで、次々と町の住民がナメクジに食い殺されていく。
もはや自分たちで手を打つしかない。そう考えたマイクとドンは、フォーリーがヒ素を用いて作った駆除剤をタンクに詰め、人喰いナメクジを一網打尽にするべく下水道へと降りていくのだったが…。

スペインの生んだホラー&ファンタジー映画の鬼才フアン・ピケール・シモン。その持ち味と言えば、センセーショナリズムをとことんまで追求した、いかも胡散臭い見世物小屋的なB級エンターテインメントだ。中でも得意だったのは、日本映画的な着ぐるみやパペットを用いたチープな特撮アドベンチャー映画、そして特殊メイクを駆使した残酷描写てんこ盛りの血みどろスプラッター映画。本作は『ブラッド・ピーセス/悪魔のチェーンソー』('83)と並ぶ後者の代表作であり、恐らく'80年代ホラー屈指のゲテモノ映画である。

ストーリーは基本的に『ジョーズ』('74)の焼き直し。アメリカの平穏な田舎町で、突然変異した人喰いナメクジが大量発生し、次々と住民が犠牲になっていく。保健衛生局に勤める主人公マイクは、いち早くその危機に気付いて対策を練ろうとするものの、土地開発計画に目のくらんだ町長や保安官は彼の警告を無視。さらなる被害が拡大していくこととなる…ってな感じ。あまりにも手あかの付き過ぎたお話だと言えよう。また、黒いナメクジの大群がウジャウジャと湧き出る辺りは『スクワーム』('76)を彷彿とさせる。内容的には王道の動物パニック・ホラーだ。

そんな本作の最大の見どころは、人間が見る見るうちナメクジに食い尽くされていく衝撃のスプラッターである。特殊メイクを担当したのは、カルロ・ランバルディの相方として『キング・コング』('76)や『未知との遭遇』('77)、『エイリアン』('79)などのクリーチャー・エフェクトを手掛けたカルロ・デ・マルキス。これがもう、徹底的なまでにエグいんですわ。中でも、マイクの親友デヴィッドがナメクジの幼虫に体を食い破られるシーンは強烈。ナメクジの幼虫が目玉を突き破ったり、肉の下から骨が剥き出すなど特殊メイクの芸も実に細かい。そのあまりの残酷さゆえ、一部の地域では上映禁止になったらしいが、それも分からなくはないだろう。

また、主人公マイクが自宅の庭でナメクジを触ろうとしたところ、一匹のナメクジがグワッと牙をむいて指を噛むシーンもなかなかショッキングだ。実はこれ、アニマトロニクスを使って撮影されている。つまり、巨大サイズの機械仕掛けのナメクジに、やはり巨大サイズの模型の指を噛ませているのだ。これがまた実に良く出来ている。なお、大量に出てくるナメクジは大半がオモチャで、表面に本物を散らばせることでリアルな感じを出している。また、ナメクジの幼虫はクロコ、つまりウナギの稚魚だ。

ロケ地はスペインのバルセロナとニューヨーク州の田舎町ライオンズ。基本的に町中の屋外シーンはアメリカで、それ以外は全てスペインでの撮影だ。プロダクション・スーパーバイザーを務めた女性ラリー・アン・エヴァンズの故郷がライオンズだったことから選ばれたとのこと。デヴィッドが壮絶な死を遂げるイタリアン・レストラン、トロンビーノも実在しており、現在も同地で営業を続けているという。

ただし、アメリカとスペインの両方の撮影に参加した役者は、マイク役のマイケル・ガーフィールドと妻キム役のキム・テリー、水道局員ドン役のフィリップ・マクヘイルの3人のみ。なので、屋内シーンに出てくるスペイン人の俳優は屋外シーンには一切出てこないし、逆に現地のライオンズでスカウトした地元俳優はスペインで撮影された屋内シーンには出てこない。セリフもスペイン人俳優だけはアフレコで吹き替えられている。

主要キャストはほとんど無名俳優で固められているものの、ドンの妻マリア役としてスペインの有名な脇役女優コンチャ・クエトスが登場。また、ポール・ナッシー主演のホラー映画『ワルプルギスの夜/ウルフVSヴァンパイア』('70)の女吸血鬼役で知られるスペイン在住のアメリカ人女優パティ・シェパードが、町長に土地開発計画を持ち掛ける金持ち夫婦の妻役として顔を出している。

しかし、何よりもビックリするのは、イタリアを代表する大女優シルヴァーナ・マンガーノの出演である。といっても、レストラン・トロンビーノの客として一瞬だけ顔がどアップになるだけなのだが。それにしても、いったいなぜヴィスコンティ映画のミューズでもあるマンガーノが、こんなB級ゲテモノ映画に出たのか。その答えは簡単、監督のフアン・ピケール・シモンが彼女の娘婿だからだ。シモン監督夫人はフランチェスカ・デ・ラウレンティス。そう、世界的な大物製作者ディノ・デ・ラウレンティスとマンガーノの三女である。本作ではフランチェスカが初めて製作にも携わっているため、恐らくご祝儀的な意味合いでのカメオ出演だったのだろう。

ちなみに、冒頭で湖のボートに乗った若い男女が、水中に潜む何かに殺されるシーンが登場するが、これはどう考えたっておかしい。というのも、ナメクジは水中生物ではないし、泳いだりすることも出来ないので、人間が水中に引き込まれて殺されるという設定は無理があり過ぎる。つまり、犯人がナメクジであるはずがない。ということは、ナメクジ以外の人食い生物が湖に潜んでいるということなのか?だとしたら、これ以降、劇中で一切出てこないのはなぜか?謎は深まる…って、いや、単に作り手が何も考えていないだけだとは思うのだけどね(笑)。

てなわけで、映画としては明らかにB級以下の代物だが、壮絶なスプラッター描写の数々はホラー映画ファンならば必見。ナメクジの紛れ込んだレタスをザクザク切ってサラダにする場面も地味に気持ち悪い。そんなシーンのオンパレードゆえ、食事をしながらの鑑賞はくれぐれもご注意を。

評価(5点満点):★★★☆☆



参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)※2Kレストア版
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:89分/発売元:Arrow Films
特典:原作者ショーン・ハトソンによる音声解説/ファンゴリア元編集長クリス・アレクサンダーによる音声解説/俳優エミリオ・リンデルのインタビュー(約8分)/特殊メイク担当カルロ・デ・マルキスのインタビュー(約11分)/美術監督ゴンザロ・ゴンザロのインタビュー(約12分)/プロダクション・スーパーバイザー、ラリー・アン・エヴァンズのインタビューとロケ地訪問(約21分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2017-11-24 00:26 | 映画 | Comments(0)

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