なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「デボラの甘い肉体」 Il dolce corpo di Deborah (1968)

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監督:ロモロ・グエリエリ
製作:ミーノ・ロイ
   ルチアーノ・マルティーノ
製作主任:セルジョ・マルティーノ
原案:エルネスト・ガスタルディ
   ルチアーノ・マルティーノ
脚本:エルネスト・ガスタルディ
撮影:マルチェロ・マスチオッキ
編集:エウジェニオ・アラビソ
音楽:ノラ・オルランディ
出演:キャロル・ベイカー
   ジャン・ソレル
   ジョージ・ヒルトン
   イヴリン・スチュワート(イーダ・ガリ)
   ルイジ・ピスティッリ
   ミシェル・バルディネ
   レナート・モンタルバーノ
   ミレッラ・パンフィリ
イタリア・フランス合作/96分/カラー作品





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<あらすじ>
スイス出身の男性マルセル(ジャン・ソレル)と結婚したアメリカ人の富豪令嬢デボラ(キャロル・ベイカー)は、新婚旅行で彼の故郷ジュネーヴを訪れる。そこでマルセルは古い友人フィリップ(ルイジ・ピスティッリ)と再会するも、元恋人スザンヌ(イヴリン・スチュワート)が自殺したことを告げられ、お前のせいだと罵られる。
かつてスザンヌと深く愛し合っていたマルセルだったが、借金の返済で彼女に助けてもらったことから、このままではダメだと考えて一念発起、経済的に自立するためアメリカへ渡ったのだという。しかし、そこでデボラと恋に落ちてしまい、スザンヌのことを捨ててしまったのだ。
それ以来、マルセルとデボラの周辺で不可解な出来事が起きる。「マルセルの罪はデボラの命で贖ってもらう」と正体不明の脅迫電話。廃墟となったスザンヌの屋敷に響き渡るピアノの演奏。スザンヌに横恋慕していたフィリップの嫌がらせかもしれない。怯えるデボラのためフランス行きを決めたマルセルだったが、航空券を買った帰りにフィリップと談笑するデボラを偶然見かける。
フランスのニースへ到着した2人。フィリップと密会していたことを問い詰めるマルセルだが、デボラの返答は要領を得ない。ボクシングを観戦した2人は、会場でフィリップらしき人物を見かける。人混みを離れたいと考えたデボラは、ニースの郊外にある豪華な別荘を借りることにした。
久しぶりに2人だけの甘い時間を過ごすデボラとマルセル。ただ、隣に住む怪しげな画家ロバート(ジョージ・ヒルトン)が気がかりだ。マルセルはナイトクラブでロバートと親しげに踊るデボラを見かける。ロバートはデボラに一目惚れしたらしく、マルセルの留守中に自宅へ入り込んで彼女を口説こうとする。
そんなある晩、奇妙な物音にデボラは気付く。様子を見に行くマルセル。そこへ現れたのは、ナイフを手にしたフィリップだった。揉みあいの末、フィリップを刺し殺すマルセル。2人は彼の死体を裏庭に埋めた。
翌朝、ここを離れようと航空券を手に入れるためマルセルは出かける。一人で残されたデボラが外を見ると、そこには死んだはずのフィリップの姿が。さらには、屋敷の物陰からスザンヌが姿を現す。恐怖に凍りつくデボラだったが…。
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大物製作者ジョセフ・E・レヴィンとパラマウント映画を敵に回したせいで、ハリウッド業界を干されてしまったセックス・シンボル、キャロル・ベイカー。当時2番目の夫と離婚したばかりで、2人の子供を育てなければならなかった彼女は、意を決して活動の拠点をイタリアへ移すことにする。'60年代のイタリア映画界は黄金時代。ハリウッドを筆頭に世界中から映画人が仕事を求めて集まっていた。そんなキャロルにとって、イタリアでの成功を決定づけたのが、この『デボラの甘い肉体』である。
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初期ジャッロの代表作の一つとも言われる本作。それはそうなのだが、むしろ官能サスペンスと呼んだ方が分かりやすいだろう。新婚旅行でアメリカからヨーロッパへやって来たカップルが、夫の元恋人の死を巡る不可解な出来事に巻き込まれる。殺人予告の脅迫電話に奇妙な怪現象。正体不明の何者かが、デボラとマルセルの夫婦を追い詰めようとする。そんなサスペンスの定番的ストーリーを、主演キャロル・ベイカーのヌードやベッドシーンをたっぷり交えながら描く。
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まあ、この手のサスペンスの定番として、夫か妻のどちらかが黒幕だったりするのだが、本作は幾つかの可能性を示唆しながらストーリーが展開していく。まずは、夫マルセルの可能性。動機は大富豪である妻デボラの財産だ。とはいえ、デボラもだいぶ怪しい。マルセルに隠れてコソコソと動いているし、そもそも彼女は夫に多額の生命保険をかけている。ただ、彼女が仕組むには物理的に不可能な点も多い。すると、マルセルに恨みを持つフィリップの罠とも考えられる。こうした伏線が複雑に絡み合う物語の構成は面白い。
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とはいえ、論理的に考えると強引で不自然な点も少なくない。特に、終盤のどんでん返しに次ぐどんでん返しは出来過ぎだ。都合が良すぎてリアリティに著しく欠ける。脚本はイタリア映画界きっての多作で知られるエルネスト・ガスタルディ。マカロニ西部劇からポリスアクション、SFからホラーまで、まさになんでもござれの娯楽職人だったが、中でもジャッロは得意中の得意分野だった。セルジョ・マルティーノの『影なき陰獣』('72)やルチアーノ・エルコーリの『ストリッパー殺人事件』('73)といった秀作をモノにしているが、そんなガスタルディのフィルモグラフィーの中でも本作は平均点といったところかもしれない。
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監督はイタリアン・アクションの巨匠エンツォ・G・カステラーリ監督の叔父に当たるロモロ・グエリエリ。彼自身もバイオレンスたっぷりのマカロニ西部劇やポリスアクションを得意とした人で、この手のジャッロを手掛けることは比較的珍しい。バーヴァやアルジェント、レンツィといったジャッロの名手と比べると、いい意味でも悪い意味でも演出にはソツがないという印象。映像的な遊びもあまり見られない。
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それでも、それなりに見栄えの良い作品に仕上がっているのは、ひとえに優秀なスタッフに恵まれた当時のイタリア映画界の繁栄があってのことだろう。美術セットも衣装も小道具も、全てが優雅で洗練されていてお洒落。スイスやフランスのロケーションもゴージャスで美しい。もちろん、モリコーネ組としてお馴染みの女性作曲家ノラ・オルランディによるジャジーでムーディな音楽スコアもステキだ。巧みなコーラスを絡めたアレンジなんぞ、まさに彼女ならではと言えよう。
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本作をきかっけにジャッロの女王として引っ張りだこになるキャロル・ベイカーは、恐らくこの頃が最も女優として熟れ時だったのではないだろうか。どことなく小悪魔的な妖しさを醸し出す佇まいが実にセクシーで、大胆なヌードシーンは勿論のこと、次々とオートクチュールのハイファッションを着こなして魅力的だ。マルセル役には当時ヴィスコンティやブニュエルなど巨匠の作品に起用されて人気だった、フランスの二枚目俳優ジャン・ソレル。彼もまた、本作を契機にジャッロ映画の常連組となった。
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さらに、謎めいた隣人ロバート役として、当時マカロニ西部劇のヒーローとして活躍していたジョージ・ヒルトンが登場。彼もこれ以降はジャッロ映画の看板スターとなる。マカロニと言えば、スザンヌ役のイヴリン・スチュワート(本名イーダ・ガリ)とフィリップ役のルイジ・ピスティッリも、マカロニ西部劇には欠かせない顔だった。マカロニからジャッロへ。イタリア映画界のドル箱ジャンルが移り変わっていく、その境目に位置していた作品でもあったわけだ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(ドイツ盤2枚組)※限定プレス
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:イタリア語・ドイツ語/字幕:ドイツ語・英語/地域コード:ALL/時間96分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:イタリア語・ドイツ語/字幕:ドイツ語・英語/地域コード:ALL/時間95分
発売元:X-Rated
特典:映画評論家マルクス・スティグレッガーの解説(ドイツ語・約9分)/ドイツ語版オープニング&エンディング・クレジット/ドイツ版ポスター&スチル・ギャラリー/フランス版ポスター&スチル・キャラリー/イタリア版オリジナル劇場予告編/プロダクション・ノート(ドイツ語・テキスト)/封入フルカラー解説書(ドイツ語)


by nakachan1045 | 2017-12-14 00:03 | 映画 | Comments(0)

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