なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「悪魔が棲む少女・謎の超能力連続殺人」 The Spell (1977)

監督:リー・フィリップス
製作:デヴィッド・マンソン
製作総指揮:ディック・バーグ
チャールズ・フライズ
脚本:ブライアン・タガート
撮影:マシュー・F・レオネッティ
編集:デヴィッド・ニューハウス
音楽:ジェラルド・フリード
出演:リー・グラント
スーザン・マイヤーズ
ジェームズ・オルソン
レリア・ゴルドーニ
ヘレン・ハント
ジャック・コルヴィン
ジェームズ・グリーン
ライト・キング
アメリカ映画(テレビ用)/86分/カラー作品
<あらすじ>
西海岸の平凡な町に暮らす裕福なマチェット一家。父親グレン(ジェームズ・オルソン)は忙しいビジネスマンで、母親マリリン(リー・グラント)はしっかり者の専業主婦。夫婦には15歳のリタ(スーザン・マイヤーズ)と13歳のクリス(ヘレン・ハント)という2人の娘がいる。一見すると恵まれた生活を送る彼らだったが、一家の悩みの種は長女リタだった。
反抗期に入ったリタは、聡明だが人一倍自尊心が強くて自意識過剰な少女。しかも、成長するに従って体重が増えてしまい、学校ではたびたび肥満体型をバカにされるため、その不満を両親や妹にぶつけている。常に怒りを抱えてピリピリとしたリタ。そんな彼女を父グレンは腫れ物に触るように扱い、妹クリスは疎ましく思っていた。リタが唯一心を許すのは愛情深い母マリリン。なんとか娘の気持ちを理解したいマリリンだったが、親の愛情を試すようなリタの我がままは手に負えないことが多かった。
そんなある日、率先してリタをイジメていたクラスの人気者ジャッキー(ドニー・オートマン)が、体育の授業中に事故で首の骨を折ってしまう。それ以来、なぜかクラスメートはリタのことを恐れるようになる。無断で家族の約束を破って外出したリタに、父グレンが夕飯抜きの罰を与えたところ、外出先で錯乱した友人スタン(ジェームズ・グリーン)がグレンを車で轢き殺そうとした。さらに、一家と親しいベラミー夫婦の妻キャスリーンがマリリンの目の前で焼死し、そのショックで夫ライアン(ライト・キング)も死亡する。
相次ぐ不可解な出来事の裏にリタの影を見るマリリン。そんな彼女の前に超心理学者デイル・ボイス(ジャック・コルヴィン)が現われ、すぐに家族を連れて町を出るよう警告する。バラバラになりかけた家族をなんとかまとめようとするマリリンだったが、クリスが水泳の授業中に溺れかけるという事故が発生し、事態は彼女が考える以上に深刻であることを悟る。クリスによると、学校の生徒たちがリタを恐れる理由は、ジャッキーの事故を彼女が予め警告していたからだった。さらに、リタは新任の体育教師スタンディッシュ(レリア・ゴルドーニ)の自宅に出入りし、2人で秘かに呪文のようなものを唱えているという。その現場を目撃したのがクリスとキャスリーン・ベラミーだった。
ある晩、父グレンはリタをイギリスの寄宿学校へ送ることを宣言する。もはや彼女の反抗的な態度には耐えられなかった。しかし、リタは激しく猛反発する。今こそ私が彼女を守らねば。そう考えたマリリンは、リタと一対一で向き合うため、グレンにクリスを連れて友人スタンの家に一泊するよう頼む。すると、リタはこっそりと家を抜け出してどこかへ出かける。行き先はスタンディッシュ先生の家だ。
窓からこっそりと中を覗くマリリン。実は、リタには強大な超能力が備わっており、その才能に気付いた超能力者のスタンディッシュ先生に使い方を学んでいたのだ。数々の不可解な出来事も2人の仕業だった。これ以上娘に過ちを犯させてはならない、正しい道へ教え導かねばならない。意を決したマリリンは、今や支配的なスタンディッシュ先生をも超能力で倒し、自信たっぷりに勝ち誇るリタの前に立ちはだかる。
しばしば、『キャリー』('76)の亜流やパクリだと呼ばれるテレビ・ムービー。確かに似ている部分は少なくない。思春期の少女が超能力を使って周りに復讐する、という基本プロットはほぼ一緒。母親と体育教師がストーリーの鍵を握る点も似ているし、オープニングが体育の授業で始まるところも『キャリー』を彷彿とさせる。まあ、パクリだと呼ばれても仕方ないとは思うのだが、しかしよーく見ていくと、むしろ本質的には『積み木くずし』に近い作品であることが分かる。要するに、思春期の反抗的な娘を抱えた家族の苦悩と葛藤、そして家庭崩壊からの再生を描いたファミリー・ドラマなのだ。
そもそも、脚本家のブライアン・タガートによると、本作の脚本はスティーブン・キングの『キャリー』が出版される以前に完成しており、それは脚本家組合の記録にも残されているという。たまたま偶然、似てしまっただけだというのだ。当初はウール・グロスバードらのプロデュースで、コロムビア映画配給の劇場用映画として制作されるはずだったのだが、そんな折にキングの『キャリー』が出版されてベストセラーとなってしまう。内容が似ていることから、おのずと映画の企画は中止されることに。そのままお蔵入りかと思われたが、映画版『キャリー』が大ヒットした余波でテレビ映画化されることになったというわけだ。そう考えると、もともとの脚本はともかくとして、このテレビ映画版自体は『キャリー』の柳の下の泥鰌を狙って作られたことに間違いはないだろう。ちなみに、当初の脚本は『She's Different』というタイトルだったそうだ。
『キャリー』との最大の違いは主人公リタのキャラクターである。確かに学校では肥満体型をバカにされて傷ついているが、しかし黙って一方的にイジメられているようなか弱い少女ではない。誰よりも自尊心が高くて自己主張も強く、しかも早熟で頭がいいため同世代の少女たちとは相容れない。むしろ、私はあんなバカでチャラチャラした子供たちとは違うと、明らかに周囲のクラスメートを見下している。それゆえイジメの対象になっていることは否めないだろう。
それでいて、周りから認められたい、もっと愛されたいという承認欲求も人一倍強いため、大切にしてくれる親には我がままし放題。自分の要求が通らねば癇癪を起して暴れるし、親の愛情を試すような無理難題も吹っかけるし、頭がいいので口ごたえも親の痛いところをバンバン突いてくる。しかも、両親が決して自分を見捨てないと見透かしているため、どこまでも残酷になれてしまう。極めて気難しい少女だ。もちろん、だからといって悪い子ではない。本人が思春期の精神や肉体の変化についていけず、自分でもどうしていいのか分からないのである。
そんな第二反抗期の迷える少女リタの心の隙間につけ込むのが、体育教師のスタンディッシュ先生だ。実は超能力を操る魔女であるスタンディッシュ。リタの秘められた才能にいち早く気付いた彼女は、超能力の使い方を彼女に伝授し、邪魔者に対して復讐するよう言葉巧みに仕向けていく。実際は自分の邪まな目的のためにリタを利用しようとしているだけなのだが、しかしまだまだ未熟なリタにとって自分の特別な才能を認めてくれる大人のスタンディッシュは唯一の理解者。それになによりも、自分にとって目障りな人間に超能力で罰を与えたり、排除していくのはこの上なく気持ちいい。
まず手始めにいじめっ子のジャッキーを授業中の事故で大怪我させた彼女は、しつけに厳しい父親や誰からも愛される妹クリス、詮索好きな隣人ベラミー夫人らを標的にしていく。次々と起きる怪現象に戦々恐々とし、やがてリタに疑惑の目を向けるクラスメートや近隣住民。しかし、周囲が彼女を恐れれば恐れるほど、リタは自信満々に勝ち誇っていく。やはり私は特別な人間なのだと。そんな彼女の前に立ちはだかるのが母親マリリンだ。
実はこの母親マリリンこそが、本作の実質的なヒロインだと言えよう。厳しくも優しく、聡明で母性愛に溢れた女性。夫グレンが反抗的で気難しいリタよりも従順で可愛いクリスを贔屓にしがちなのに対し、どちらも血を分けた自分の大切な娘だとして、分け隔てなくありったけの愛情を注いでいる。リタの我がままや反抗には毅然とした態度で接しつつも、彼女の言い分にもちゃんと耳を傾けてその心情を理解しようとするのだが、それゆえに苦悩や挫折も大きい。そのマリリンがリタの秘密と正体を知るに至って、我が身を呈して真正面から娘と向き合おうとする。道を踏み外しかけた未熟な娘に、物事の道理や善悪の区別を教えることが出来るのは、母親である自分しかいないと。
こうした思春期の少女特有の迷いや屈折などの複雑な心の揺れ動き、そんな我が子を正しく教え導き家族の絆を守ろうとする母親の深い愛情を、丁寧かつリアルに描いた脚本家ブライアン・タガートの鋭くも繊細な人間描写は素晴らしく秀逸だ。実は彼自身の家族がモデルとなっているらしいのだが、綺麗ごとではない親子や夫婦の率直な気持ちを吐露したセリフなどは実に生々しくて説得力がある。ラストの親子対決で明かされる、どんでん返し的な衝撃の真実も、「母と娘の宿命的な絆」を際立たせる上で効果は抜群。その後『面会時間』('82)や『放課後』('84)などの優れたサスペンス・ホラーを残しているタガートだが、その片鱗は本作でも十分に伺える。
ただ、創意工夫を凝らし過ぎて意味不明になってしまった部分もある。特に、マリリンの前に現れて意味深な警告をする超心理学者デイル・ボイスの存在は、恐らく科学的な視点を入れることで超能力の設定に信憑性を与えようとしたのだろうが、結局のところ説明不足が多すぎて中途半端に物語をかき乱すだけで終わっている。ぶっちゃけ、キャラクターごとそっくり削ってしまったほうが良かったように思う。
監督は俳優出身のリー・フィリップス。『青春物語』('57)でラナ・ターナー扮するシングルマザーと惹かれあう新任の校長マイケル・ロッシ役を演じていた人だ。役者としてはいまひとつ頭打ちで、'60年代半ばよりテレビの監督へと転向。『ミセスと幽霊』や『ママは太陽』などの人気ドラマを手掛けつつ、テレビ・ムービーの仕事もかなり多かった。本作もいかにもテレビ的な演出が目立つものの、しかしその一方でホラー・シーンのショック演出はなかなかのもの。特に隣人ベラミー夫人が自然発火的に焼死するシーンは、地味ながらも効果的な特殊メイクのおかげもあって、まさにトラウマ級の衝撃的な仕上がりだ。'70年代当時のテレビ界において、これはかなりの挑戦だったに違いない。
俳優陣では母親マリリン役のオスカー女優リー・グラントがダントツで素晴らしい。文字通り体当たりの大熱演。反抗期の暴走する娘に人としての手本を示すべく、真正面から立ち向かっていく姿なんて、惚れ惚れとするくらいにカッコいい。対する娘リタ役のスーザン・マイヤーズも好演。撮影当時に実際幾つだったのかは不明だが、あどけない少女の面影を残しつつも、大人びた聡明さとふてぶてしさを醸し出す辺りはまさにはまり役だ。
父親グレン役には『アンドロメダ…』('71)や『コマンド―』('85)の渋い名優ジェームズ・オルソン。次女クリス役には子役時代のヘレン・ハントが扮している。また、体育教師スタンディッシュ役には、ジョン・カサヴェテス監督の『アメリカの影』('59)のヒロイン役で有名なレリア・ゴルドーニ。『アリスの恋』('74)の親友役も印象深い。繊細で精神的に脆い女性を演じることの多い人だが、その物憂げな暗い雰囲気は意外と悪役にも向いているのだなと思わせられる。
評価(5点満点):★★★☆☆
参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:86分/発売元:Scream Factory/MGM/20th Century Fox
特典:テレビ映画研究者アマンダ・リースの音声解説/脚本家ブライアン・タガートのインタビュー(約13分)
by nakachan1045
| 2018-01-05 05:42
| 映画
|
Comments(0)
以前の記事
2026年 02月2026年 01月
2025年 12月
2025年 11月
2025年 10月
2025年 09月
2025年 08月
2025年 07月
2025年 06月
2025年 05月
2025年 03月
2025年 02月
2025年 01月
2024年 12月
2024年 11月
2024年 10月
2024年 09月
2024年 08月
2024年 07月
2024年 06月
2024年 05月
2024年 04月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
最新のコメント
| この映画はデンマーク軍が.. |
| by na at 08:27 |
| ランドマスターは本当にか.. |
| by na at 17:53 |
| > にこらさん コメン.. |
| by nakachan1045 at 01:32 |
| なかざわ様 前にあった.. |
| by にこら at 19:32 |
| DVDリリースされてまし.. |
| by ken at 22:53 |
| > kenさん 書.. |
| by nakachan1045 at 16:23 |
| チプリアーニの作品中でも.. |
| by ken at 11:36 |
| ひでゆきさん、ありがとう.. |
| by na at 16:19 |
| naさん 書き込み有難.. |
| by nakachan1045 at 15:28 |
| 2011年に見つかった原.. |
| by na at 17:32 |
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
ハリウッド映画(543)70年代(355)
ホラー映画(287)
60年代(267)
80年代(215)
イタリア映画(185)
アクション(135)
ドラマ(119)
50年代(107)
イギリス映画(107)
サスペンス(105)
ダンス(105)
ポップス(104)
カルト映画(95)
30年代(68)
ロマンス(60)
40年代(59)
日本映画(57)
70年代音楽(57)
2020年代音楽(50)
SF映画(46)
コメディ(45)
ノワール(41)
フランス映画(41)
90年代(40)
ジャッロ(39)
80年代音楽(38)
1920年代(37)
西部劇(35)
K-POP(34)
香港映画(32)
ソウル(31)
エロス(28)
ドイツ映画(26)
スペイン映画(26)
ファンタジー(22)
サウンドトラック(21)
ミュージカル(21)
歴史劇(21)
ワールド映画(21)
2010年代音楽(20)
戦争(20)
アドベンチャー(19)
メキシコ映画(18)
イタリア映画音楽(18)
テレビ(18)
ラテン(17)
アニメーション(16)
2000年代音楽(15)
ルーマニアン・ポップス(15)
1910年代(14)
スパイ(13)
ロシア映画(12)
アナウンス(11)
ラウンジ(9)
フィリピン映画(9)
カナダ映画(9)
ロック(9)
60年代音楽(9)
ロシア音楽(8)
90年代音楽(8)
青春(7)
ジャズ(7)
バルカン・ポップス(7)
シットコム(5)
連続活劇(4)
2010年代(4)
LGBT(3)
パニック(3)
J-POP(3)
2000年代(3)
イタロ・ディスコ(3)
韓国映画(2)
フランス映画音楽(2)
アンダーグランド(2)
カントリー・ミュージック(2)
オーストラリア映画(2)
トルコ映画(2)
文芸(1)
民族音楽(1)
ブラジル音楽(1)
1920年代音楽(1)
フレンチ・ポップ(1)
シャンソン(1)
サルサ(1)
ギリシャ音楽(1)
ギャング(1)
インド映画(1)
音楽DVD(1)
音楽ライブ(1)
伝記映画(1)
2020年代(1)
ブログパーツ
最新の記事
| 「Get Mean」 (19.. |
| at 2026-02-09 16:39 |
| 「豪快!マルコ・ポーロ」 M.. |
| at 2026-02-04 20:54 |
| 「Quando l'amor.. |
| at 2026-01-29 22:23 |
| 「アラジンと魔法のランプ」 .. |
| at 2026-01-28 12:15 |
| 「シンデレラ」 Aschen.. |
| at 2026-01-27 16:36 |

