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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「悲しい奴」 La mano de un hombre muerto aka The Sadistic Baron von Klaus (1962)

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監督:ジェフ・フランク(ジェス・フランコ)
原作:デヴィッド・クーン(ジェス・フランコ)
脚本:ジェフ・フランク(ジェス・フランコ)
脚色:ルネ・セビーユ
撮影:ゴドフレード・パチェコ
音楽:ダニエル・ホワイト
出演:アンナ・アスター(アナ・カストル)
   ハワード・ヴァーノン
   パウラ・マルテル
   ジョルジュ・ロラン
   ユーゴ・ブランコ
   ゴゴ・ロビンス(ゴゴ・ロホ)
   フェルナンド・デルガド
   アンヘル・メネンデス
スペイン・フランス合作/100分/モノクロ作品




<あらすじ>
中央ヨーロッパの古い町ホルフェン。ここには忌まわしい伝説が残されている。17世紀の初代領主フォン・クラウス男爵は残虐なサディストで、地元の若い娘をさらっては拷問を加えて殺害していた。悪事がバレたことから、城近くの沼に身を沈めて亡くなった男爵だったが、しかしその亡霊は今もなお付近を彷徨っていると噂されていた。
その証拠に、以降も町では忘れかけた頃に若い娘たちが殺されるという事件が発生している。最後に起きたのは50年前。先々代のフォン・クラウス男爵が犯人とされ、警察によって追い詰められたものの、祖先と同じく沼に身を沈めて自らの命を絶ったのである。
そして現在。ホルフェンで立て続けに2人の若い娘が死体で発見される。いち早く情報をつかんだ事件記者カール(フェルナンド・デルガド)が急行すると、町の人々はフォン・クラウス男爵の亡霊が再び甦ったとの話題で持ちきりだった。
その頃、独身のマックス(ハワード・ヴァーノン)が当主を務めるフォン・クラウス家では、高齢の姉エリサ(マリア・フランシス)が病で危篤に陥り、その息子であるルドウィグ(ユーゴ・ブランコ)が婚約者カリーヌ(パウラ・マルテル)を伴って屋敷へ戻っていた。カールはフォン・クラウス家の人々を怪しむが、警察のボロフスキー警部(ジョルジュ・ロラン)によると、マックスにもルドウィグにも動かぬアリバイがあった。
その晩、今度は地元ホテルのバーで働く女性歌手が殺害され、最後に彼女と接触した宿泊客カルマン医師(アンヘル・メネンデス)が疑われる。しかし、彼にはやはりアリバイがあった。すると、犯行の翌朝にホテルをチェックアウトした謎の人物がいるという。偽名を使って宿泊していたその人物は、特徴のあるステッキを持っていた。だが、そのステッキがフォン・クラウス家の書斎で発見され、マックスが容疑者として逮捕される。
これで一件落着かと思いきや、地元ホテルの女性経営者リーダ(アナ・カストル)が警察へ出頭し、事件の晩マックスが彼女と密会していたことを証言する。2人は以前から恋人同士だったのだが、リーダと前夫の離婚協議が成立していないことから、人目を忍んで逢瀬を続けていたのだ。
その帰り道、リーダは警察署から尾行してきた何者かによってホテルで襲われる。物音に気付いたカルマン医師が大声で叫び、慌てた犯人は逃亡を図る。町の人々と共に犯人を追いかけるカール。すると、その人物はフォン・クラウス一族の墓地で姿を消した。
やはり男爵家が怪しい。しかし、マックスの潔白は既に証明された。おのずと、カールはルドウィグに疑惑の目を向けるのだったが…。

スペインの生んだカルト映画の鬼才ジェス・フランコ監督が、大ヒットした『美女の皮をはぐ男』('61)に続いて手掛けたホラー映画第2弾。今回はドイツないしオーストリア辺りの小さな町で起きる美女連続殺人事件を軸に、由緒正しいフォン・クラウス男爵家に脈々と受け継がれる呪われた血の真相に迫っていく。'70年代以降のフランコ監督は安上がりのエログロ映画を大量生産して悪名を馳せ、しかもその大半がゴミみたいな映画だったりするのだが、少なくとも'60年代当時の彼は真っ当な娯楽映画を撮る職人肌の監督だった。もちろん、本作も御多分に洩れず。モノクロながらもマリオ・バーヴァを彷彿とさせる、ムーディなゴシック怪奇譚に仕上げている。

まず驚かされるのは、洗練されたスタイリッシュなカメラワークである。フランコ監督と言えば、早撮りするためにやたらと役者のクロースアップを多用するイメージが強いのだが、本作ではシネスコサイズのワイド画面いっぱいに人物や建物、大道具に小道具を配置し、きっちりと全体の構図を計算しながら撮影しているのだ。陰影のコントラストを強調したシンボリックな照明も巧み。カメラの動きも滑らかで流麗だ。特に印象的なのはナイトシーン。真夜中のチェイスシーンなどは『第三の男』さながらの見事な仕上がりである。

内容は典型的なゴシック・ホラーのシチュエーションに、エドガー・ウォレス的な犯罪サスペンスの要素を加えたもの。舞台は現代。中世ヨーロッパの風情が残る小さな町で若い美女が次々と惨殺され、かつて地元の領主だった名家フォン・クラウス男爵一族に疑惑の目が向けられる。というのも、300年以上前に死んだ初代男爵は残酷なサディストで、町の若い娘たちをさらっては地下の拷問室で殺していたのだ。それ以来、町では忘れかけた頃に同様の連続殺人が発生し、死んだフォン・クラウス男爵の亡霊による仕業だとの噂が囁かれてきた。しかも、最後に起きた事件の犯人は先々代の男爵家当主だ。果たして、50年ぶりに再び繰り返された今回の惨劇、犯人は本当にフォン・クラウス男爵の亡霊なのか、それともその血を受け継いだ現在の男爵家の誰かなのか…?ということで、事件記者のカールと地元警察が捜査に乗り出すわけだ。

全体的なストーリーの流れは非常にスローペース。特に前半は亡霊伝説の詳しい説明や、ミステリアスな雰囲気作りに多くの時間を割いているため、なかなか話が前に進んでくれない。中盤を経過した辺りでようやくエンジンがかかり始めるのだが、そこからはむしろ反対に話の展開がちょっと早過ぎるという印象。ビジュアル的な完成度は文句なしに高いものの、脚本はいまひとつバランスが良くないように思う。亡霊伝説もなんだかんだで早々にうやむやとなってしまうのだが、それでも見るからに怪しげな男爵家の現当主マックスと、その甥っ子の若くて颯爽とした次世代当主ルドウィッグの、まるで正反対な2人に疑惑を二分させて観客の目を欺こうとする手法は悪くない。

恐らく最大の見どころは終盤の拷問SMシーンだろう。バストも露わなトップレスの美女が、真犯人に凌辱され恍惚の表情を浮かべ、やがて鞭でビシビシ叩かれ悶絶する。'60年代初頭の映画において、これほど露骨な性描写と暴力描写は極めて稀だ。実際、当時はほとんどの国でこのシーンが丸々削除され、短縮版でリリースされている。ノーカットで公開されたのは映画の審査基準が緩かったフランスのみ。現在は完全な形で復元されているものの、恐らく問題のシーンは状態の悪いプリントしか残されていないのだろう、そこだけ明らかに画質が落ちている。いずれにせよ、後のエログロ監督ジェス・フランコの片鱗が垣間見える貴重なシーンと言えるだろう。

なお、原作はデヴィッド・クーンなる人物の小説ということになっているが、これは『美女の皮をはぐ男』でも使用されたジェス・フランコ自身のペンネームで、なおかつ前作同様に原作本が出版された痕跡は全くない。恐らく映画に箔をつけるための出まかせなのだろう。そういう胡散臭いところは若い頃から変わってないのだよね(笑)。もちろん、全然悪いことじゃない。だって、映画は人を騙して楽しませるのが商売なんだから。

主演はホテル経営者リーダ役のアナ・カストル(クレジット上はアンナ・アスター)とマックス役のハワード・ヴァーノンとなっているが、実際のところどちらもストーリー上は単なる脇役に過ぎない。まあ、ヴァーノンは前作『美女の皮をはぐ男』のオーロフ博士役で有名になったばかりなので、彼のネームバリューやイメージを当てにする気持ちは分からなくもないのだが、出番そのものが少ないカストルの名前がトップに来るのはいまひとつ解せないところだろう。

実質的な主人公はユーゴ・ブランコの演じるルドウィグ。ブランコはマカロニ・ウエスタンで活躍した俳優だ。また、新聞記者カール役のフェルナンド・デルガドもヒーロー的な立ち位置なのだが、なぜだか本編クレジットには一切名前がない。これまた不思議。拷問シーンでヌードを披露するゴゴ・ロホはアルゼンチンの出身で、姉エテルとのコンビでキャバレーのヌードダンサーとして有名だった人らしい。ボロフスキー警部役のジョルジュ・ロランは40年代に活躍したフランスの俳優だ。

評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:フランス語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:100分/発売元:Redemption/Kino Lorber
特典:オリジナル劇場予告編




by nakachan1045 | 2018-01-07 07:43 | 映画 | Comments(0)

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