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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「マックQ」 McQ (1974)

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監督:ジョン・スタージェス
製作:ジュールズ・レヴィ
   アーサー・ガードナー
製作総指揮:マイケル・ウェイン
脚本:ローレンス・ロマン
撮影:ハリー・ストラドリング・ジュニア
編集:ウィリアム・ジーグラー
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:ジョン・ウェイン
   エディー・アルバート
   ダイアナ・マルドア
   アル・レッティエリ
   コリーン・デューハースト
   クルー・ギャラガー
   デヴィッド・ミドルストン
   ジム・ワトキンス
   ジュリー・アダムス
   ロジャー・S・モスリー
   ウィリアム・ブライアント
アメリカ映画/111分/カラー作品




<あらすじ>
明け方の大都会シアトル。早朝勤務の警官が相次いで殺される。犯人は警察のボイル刑事(ウィリアム・ブライアント)。しかし、彼もまた何者かによって狙撃される。シアトル警察のコスターマン警部(エディー・アルバート)は、一連の警官殺しおよびボイル刑事狙撃事件を左翼過激派の犯行と決めつけて一斉検挙にかかった。
一方、ボイル刑事の相棒だったベテランのマックQ警部補(ジョン・ウェイン)は、自分自身もプロの殺し屋に命を狙われたことから、シアトルを牛耳る麻薬王サンチャゴ(アル・レッティエリ)が犯人ではないかと睨む。というのも、マックQとボイルの2人は以前から市内の麻薬ルートを捜査していたからだ。
相棒が警官殺しの犯人だと知らぬまま、病院で生死の境を彷徨うボイルを見舞い、彼の妻ロイス(ダイアナ・マルドア)に真相究明を誓うマックQ。用心深くサンチャゴの身辺を探り始めるものの、テレビのニュースでボイルが死亡したことを知って怒りが爆発し、レストランのトイレでサンチャゴを半殺しにしてしまう。
暴行沙汰が問題視され事務仕事を言い渡されるマックQ。以前からコスターマン警部や警察上層部とは折り合いの悪かった彼だが、組織の体面ばかり気にする彼らにほとほと嫌気がさし、同僚トムズ(クルー・ギャラガー)が止めるのも聞かず辞職してしまう。
引き続き事件を捜査するため、古い付き合いの私立探偵ピンキー(デヴィッド・ミドルストン)のパートナーとして探偵のライセンスを取ったマックQは、タレコミ屋からサンチャゴ一味が警察の押収した麻薬を狙っているとの情報を得る。輸送チームを尾行して監視したマックQだったが、しかしまんまと麻薬を強奪されてしまった。その用意周到な手口から見て、警察内部に協力者がいると考えられた。
もはや誰も信用できない。やがて、情報提供者の女性マイラ(コリーン・デューハースト)が殺害され、マックQ自身も暗殺されかかるに至って、彼は思いもよらない衝撃的な真相へとたどり着くこととなる…。

ずばり、ジョン・ウェイン版『ダーティハリー』である。一説によると、以前に『ダーティハリー』のオファーを断ったことを後悔していたウェインが、その代わりとして本作の主演を引き受けたのだとか。まあ、これは半ば都市伝説みたいなもので、実は彼がハリー・キャラハン役をオファーされたという確たる証拠もないらしいのだが、少なくとも本作が『ダーティハリー』の大成功に触発されて作られたであろうことは、主人公マックQのアンチヒーロー的な一匹狼ぶりやハードなバイオレンス描写を見れば一目瞭然であろう。

さらに言えば、警察内部の汚職が絡んだストーリーなんぞも、当時公開されたばかりの『ダーティハリー2』('73)と似ていなくもない。ただ、振り返ってみれば、'70年代の映画界は『ダーティハリー』効果というか、世界中で似たような柳の下の泥鰌が大量生産されていた。西部劇映画が衰退の一途をたどる中、天下の西部劇スター、ジョン・ウェインが『ダーティハリー』路線の刑事アクションに挑むのも、時流を考えれば当然の成り行きだったと言えよう。そういう時代だったのである

170本にも及ぶ出演作の半数以上が西部劇だったジョン・ウェイン。西部劇で保安官役を演じることは多くても、現代劇で刑事役を演じるのは本作が初めてだった。ただ、悪い奴は問答無用で成敗!俺こそが法律だ!みたいな主人公マックQは、デュークが数多の西部劇映画で演じてきたヒーローたちと共通するものがある。そう考えると、むしろ元祖ダーティ・ハリーはジョン・ウェインだったのかな、とも思えたりして(笑)。

とはいえ、撮影時のウェインは66歳。今と違って当時は立派な後期高齢者である。監督のジョン・スタージェスも「まともに走れやしない」と不満を漏らしていたと伝えられているが、さすがのデュークもそれ以前から肉体の衰えを隠しきれておらず、本作におけるアクションの立ち回りなどもかなりおぼつかない。辛うじて貫禄と存在感でカバーしているという印象だ。劇場公開時はその点がだいぶ批判の対象になったようだが、まあ、確かにアクション映画のヒーローとして心もとないことは否めないだろう。

ただ、それもまた本作の“味”である。そもそも主人公マックQというのは、さながら西部のガンマンのごとき昔気質の一匹狼刑事。時代の変化に抗い続けてきた絶滅危惧種だ。それゆえに警察組織内の出世街道からは外され、妻子には家を出て行かれ、今は自宅代わりのヨットで寂しく寝起きしている。そんな時代に取り残された化石のような老いぼれ刑事が、腐りきった現代社会に喝を入れるというわけだ。年老いた西部劇スター、ジョン・ウェインにとって、これはまさにうってつけの役柄である。

物語もそんなマックQの孤独と悲哀を滲ませつつ、決して周囲に迎合しない頑固一徹な老刑事の誇りと意地に焦点を当てていく。そういう意味で、本作は単なる『ダーティハリー』の二番煎じではなく、真っ当なジョン・ウェイン映画として成立していると言えるだろう。監督は『OK牧場の決斗』('57)や『荒野の七人』('60)、『大脱走』('63)などでお馴染み、西部劇&アクション映画の巨匠ジョン・スタージェス。これが唯一のジョン・ウェインとのコラボレーションだったことは惜しまれるが、デュークの体現する古き良き西部劇ヒーロー像をきっちりと現代劇アクションへ落とし込んでいるところなどはさすがだ。女の盛りを過ぎた中年ウェイトレス、マイラとマックQのささやかな心の触れ合いも秀逸。強面の渋い名女優コリーン・デューハーストとマッチョなジョン・ウェインの顔合わせが、ほろ苦くも切ない老いらくの恋の味わいを醸し出す。若い小娘なんぞを引っ張り出してこないところがいい。

そんなこんなで、アクションよりも人間ドラマやサスペンスに比重の置かれた本作だが、その一方で『ブリット』('68)ばりのハードなカーチェイスも盛りだくさん。これならデュークも座っているだけで済むし、実際の運転はスタントマンに任せればいいしね(笑)。そのカースタントシーンでは、後に『キャノンボール』シリーズなどのカーアクション映画を監督するハル・ニーダムがスタントマンとして参加。霧がかった砂浜を猛スピードで疾走するクライマックスのカーチェイスなどは、ハイレベルなスタントそのものの迫力も然ることながら、ビジュアル的にもなかなかインパクトのあるシーンに仕上がっている。巨匠エルマー・バーンスタインによるジャズ・ファンクな音楽スコアがまた、'70年代アクションらしいワクワクするような雰囲気を盛り上げてくれる。

先述したコリーン・デューハーストのほか、マックQと同世代ながら器用に出世したコスターマン警部役に『ローマの休日』('54)のエディー・アルバート、なにかとマックQの味方をする同僚トムズには『殺人者たち』('64)のクルー・ギャラガー、麻薬王サンチャゴ役には『ゴッドファーザー』('72)のアル・レッティエリ、マックQの別れた女房役には『大アマゾンの半魚人』('54)のジュリー・アダムスと、脇役陣にはなかなか渋い顔ぶれが揃う。相棒ボイルの妻でマックQに秘かな想いを寄せる女性ロイスに、テレビ女優ダイアナ・マルドアというのはちょっと意外なキャスティングだが、当時の彼女は人気ドラマ『警部マクロード』の恋人役が大好評だったので、その知名度にあやかったのかもしれない。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio Mono(英語)・2.0ch Dolby Digital Mono(日本語)/言語:英語・日本語/字幕:英語・日本語/地域コード:A/時間:111分/発売元:ワーナー
特典:撮影の舞台裏(1974年・7分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-01-14 15:30 | 映画 | Comments(0)

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