なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「Yellow: le cugine」 (1969)

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監督:ジャンフランコ・バルダネッロ
原案:アウグスト・フィノッキ
   ヴィットリオ・メッツ
脚本:アウグスト・フィノッキ
撮影:ルチアーノ・トラサッティ
編集:ブルーノ・マッテイ
音楽:ラッロ・ゴリ
出演:リサ・シーグラム
   マウリツィオ・ボヌリア
   カテリーナ・バルベロ
   レナート・デ・カルミネ
   フランコ・リッチ
   アッティリオ・ドッテシオ
イタリア映画/89分/カラー作品




<あらすじ>
由緒正しい名門ガルビーニ家の当主が逝去した。その葬儀を取り仕切るのは、長年に渡って当主の世話をしてきた孫娘マルタ(リサ・シーグラム)。そこへ、もう一人の孫娘でマルタにとっては従妹に当たるヴァレンティナ(カテリーナ・バルベロ)が、新婚の夫ピエール(マウリツィオ・ボヌリア)を連れてやって来る。
生真面目で堅物なマルタと自由奔放で無責任なヴァレンティナは昔から犬猿の仲。しかも、自称・彫刻家のフランス人ピエールは妻ヴァレンティナの金を食い物にするヒモで、なにかとマルタにも色目を使ってくる。そんな2人に平穏な日常をかき乱されるのが、マルタには我慢ならなかった。
やがてガルビーニ家の弁護士によって、祖父の遺言が明かされる。それによると、屋敷の所有権はヴァレンティナに、屋敷の使用権はマルタに相続されるとのことだった。自分が新たな当主になることを期待していたマルタにはショックだったが、屋敷よりも現金が欲しいヴァレンティナにとっても迷惑な話。マルタの了承なしで勝手に売り払うことが出来ないからだ。とりあえず、僅かばかりの現金は数日後に用意できるとのことで、ヴァレンティナとピエールはそれを受け取ったら屋敷を出ていくつもりだった。
その晩、些細なことからヴァレンティナとピエールは口論となり、酔っぱらったピエールは森の中の水車小屋で一夜を明かす。翌朝、その水車小屋のそばでヴァレンティナの死体が発見された。後頭部を鈍器で殴られたことによる他殺だ。ピエールは泥酔して眠り込んだため記憶がないと警察に証言。一方、マルタは夫の後を追うヴァレンティナを、水車小屋の近くまで車で送り届けたことを警察に明かす。
状況的に自分が疑われると考えたピエールは、一刻も早く屋敷を出て遠くへ行こうと考えるが、マルタがそれを引き留める。実は、彼女に忠実な庭師ロモロ(アッティリオ・ドッテシオ)が凶器のハンマーを発見していた。秘かにピエールに対する欲望を膨らませていたマルタは、出ていくなら警察に通報すると彼を脅迫する。
それ以来、夜となく昼となくピエールの肉体を求めるマルタ。男嫌いで独身を貫いてきた彼女は、まるで人が変わったように愛欲の日々に溺れていく。だが、そんなマルタとピエールの周辺を警察のサッカラ警部(レナート・デ・カルミネオ)が調べ始め、2人は徐々に追い詰められていくこととなる…。

'60年代半ばから'70年代にかけて大量生産されたイタリア産サスペンス映画、通称ジャッロ。ジャッロとはイタリア語で「黄色」を意味する。もともと、イタリア国内で出版されたサスペンス&ミステリー小説の表紙デザインが黄色で統一されていたことから、いつしか映画を含めたジャンルそのものがジャッロと呼ばれるようになったのだ。そのジャッロ映画にも大きく分けて2つのタイプがある。

まずは正体不明の犯人が次々と殺しを重ねていく猟奇サスペンス型。セックスとバイオレンスの両方を兼ね備えつつも、どちらかというと血生臭いホラーの要素が濃厚だ。マリオ・バーヴァの『モデル連続殺人』('64)やダリオ・アルジェントの『歓びの毒牙』('69)がその代表と言えよう。そしてもう1つは、美しきヒロイン(たいてい金持ちの熟女)が恋愛やセックスに絡んで犯罪へ巻き込まれていくエロティック・サスペンス型。こちらは美人女優の官能的なヌードシーンやベッドシーンが主な売りとなるため、あまりホラー的な恐怖要素は重視されないことが多い。キャロル・ベイカー主演の『デボラの甘い肉体』('68)や『殺意の海』('69)などがこれに当たる。

で、そのものズバリの「黄色」とタイトル付けられた本作(翻訳すると『黄色:いとこ同士』)。いわゆるエロティック・サスペンス型のジャッロである。主人公は、よく見ると美人だけど神経質でガチガチに堅物な独身の年増女マルタ。若い頃に好きだった男からレイプされた経験があり、そのせいで男性およびセックスを毛嫌いしている。そんな彼女の天敵が、年の離れた若い従妹ヴァレンティナ。自由奔放で無軌道で派手好きな浪費家のヴァレンティナを、マルタは目の敵にして見下しているのだが、一方のヴァレンティナもヴァレンティナで、なにかと口うるさくて偉そうなマルタを煙たがってバカにしている。ま、要するに犬猿の仲ってことですな。

そんな従姉妹同士の骨肉の争いがストーリーの主軸。2人とも由緒正しい名門一家の令嬢で、共に一族の大豪邸で育てられたのだが、成長してからの人生は明と暗。マルタが長いこと当主である祖父の身の回りの世話をしてきたのに対し、ヴァレンティナは放蕩三昧で屋敷に近寄りすらしなかった。ところが、祖父が亡くなって遺言書の蓋を開けてみると、一番の財産である大豪邸は実質的にヴァレンティナとマルタが共同で所有・管理することに。当然、身を粉にして祖父に尽くしてきたマルタにとっては納得がいかないし、ヴァレンティナも遺産相続で大金が転がり込むと期待していたのにガッカリ。2人の仲はより一層のこと険悪になってしまう。

で、さらに事態をややこしくするのが、ヴァレンティナと結婚したばかりの夫ピエールだ。いかにも軽薄でチャラチャラとしたフランス人のプレイボーイ。彫刻家を自称しているものの、実際はただの無職のヒモである。派手好きで贅沢好きで女好き。なので妻の従姉であるマルタにも積極的に色目を使い、すきあらば強引にセックスを迫ってくる。当然のことながら拒絶反応を示すマルタだが、しかし溜まりに溜まった性の欲望は抑えがたく、次第に女の本能に目覚めていく…というわけだ。

まさにドロドロの三角関係。そんな折、ヴァレンティナが他殺体で発見される。マルタとピエールのどちらにも動機あり。これが数多のジャッロ映画であれば、ここから犯人捜しが始まり、カギを握る関係者が次々と殺されていく…ってなことになりそうなものなのだが、本作の場合はさにあらず。発見された凶器をネタにマルタがピエールを脅迫し、彼を屋敷に留まらせて性のはけ口にしてしまうのである。アタシのものにならなけりゃアンタを犯人として警察に突き出すわよと。これはちょっと珍しい展開かもしれない。

ということで、ストーリーの後半は性欲の歯止めが利かなくなった熟女マルタが、ひたすらピエールとやりまくる。まさに遅咲きの狂い咲き(笑)。一応、最後の最後にちょっとした犯人捜しの推理とどんでん返しは用意されているものの、あくまでも刺身のつまといった感じだ。監督はフランク・G・キャロルの変名でマカロニ西部劇を撮っていたジャンフランコ・バルダネッロ。ジャッロを手掛けたのは後にも先にもこれ一本だけだが、まあ、良くも悪くもそつがないという印象だ。舞台となる自然に囲まれた風光明媚な大豪邸のロケーションもゴージャスだし、ラッロ・ゴリによるスウィートでグルーヴィーな音楽スコアもお洒落。演出そのものは単調で芸がないものの、当時のスウィンギンでサイケなトレンドの雰囲気はそれなりに捉えている。なお、後のエログロ映画監督ブルーノ・マッテイが編集を手掛けているのも要注目だ。

主演はハリウッドのB級セクシー女優リサ・シーグラム。アメリカではテレビドラマの色添え程度だった人だが、イタリアでの出稼ぎ仕事は一発目でいきなり主演。恐らくキャロル・ベイカーの柳の下の泥鰌を狙ったのだろう。実際、『狂った蜜蜂』('68)なんかと似た雰囲気の映画だしね。ただ、残念ながらベイカーのような成功を手に入れることはできず、本作以降はイタリアでも色添え専門女優に逆戻りしてしまうのだけど。

プレイボーイのピエール役を演じているのは、ジャッロの隠れた名作『Il profumo della signora in nero(黒衣の女の香り)』('74)でミムジー・ファーマーの相手役を演じていたマウリツィオ・ボヌリア。フランコ・ネロ主演の『夜の刑事』('68)や『新・殺しのテクニック/次はお前だ』('70)にも顔を出していた。また、ヴァレンティナ役でお色気サービスショットをたっぷり見せてくれるカテリーナ・バルベロは、キャロル・ベイカー主演の『新・課外授業/禁断のセックス』('76)にもチラリと出ていたが、それ以外ではあまり顔を見かけたことのない女優だ。

評価(5点満点):★★★☆☆
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参考ブルーレイ情報(ドイツ盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.50:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:ドイツ語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:89分/発売元:VIP
特典:スチル・ギャラリー/レストア前後比較/イタリア版フォト・コミック採録


by nakachan1045 | 2018-02-04 00:44 | 映画 | Comments(0)

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