なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

「夜の蝶」 Night Butterflies (1957)

f0367483_11313570.jpg
監督:吉村公三郎
製作:永田雅一
企画:川崎治雄
原作:川口松太郎
脚本:田中澄江
撮影:宮川一夫
美術:間野重雄
出演:京マチ子
   山本富士子
   船越英二
   芥川比呂志
   小沢栄太郎
   山村聰
   近藤美恵子
   川上康子
   八潮悠子
   藤田佳子
   穂高のり子
   川崎敬三
   高松英郎
   叶順子
   田宮二郎
日本映画/90分/カラー作品




f0367483_22582535.jpg
<あらすじ>
東京は夜の銀座。高級バー「フランソワ」のマダム、マリ(京マチ子)は銀座きってのやり手として有名で、政財界の名士たちも常連として通っていた。だが、そんな彼女も近頃は気もそぞろだ。というのも、京都で有名なバーを経営する舞妓上がりのおきく(山本富士子)が、この銀座に新しいバーを出店するというのだ。既に、マリの妹分けい(穂高のり子)が経営するバー「リベラ」には、おきくが挨拶に訪れていた。どうやら「フランソワ」への挨拶は最後になる模様。きっと当てつけに違いないと、マリは対抗心をめらめらと燃やす。
実は、マリとおきくには因縁深い過去があった。大阪出身のマリは、かつて京都の薬問屋の倅に嫁入りしたのだが、その時に旦那が囲っていた妾がおきくだったのだ。その旦那の死後、マリは東京へ出て水商売の世界に入り、銀座で一流のバーを持つまでになり、一方のおきくも京都の夜の世界で成功していた。そして、満を持して東京へ進出しようというのである。
そんなおきくが頼ったのは、銀座で女給の斡旋をしている音楽家くずれの男・秀二(船越英二)。新しい店で働く女給を紹介してくれというのだ。しかし、秀二はけいの恋人兼ヒモで、マリとも古い付き合いだ。最初はためらっておきくの依頼を断る秀二だったが、結局は根負けして弟分の花屋ジミー(川崎敬三)に女の子たちを見繕わせる。
すっかり銀座界隈で話題沸騰となったマリとおきくの戦い。そんな折、関西の大手百貨店「堂島デパート」の社長・白沢(山村聰)が東京へやってくる。デパートのオープンが相次ぐ激戦区・東京へ進出するべく、百貨店協会の理事・木嶋(小沢栄太郎)の協力で商談に訪れたのだ。実は以前から白沢に惚れていたマリだったが、その白沢はおきくのパトロンとして東京の店に出資しており、しかも結婚を望むほどまでおきくに入れ込んでいた。しかし、おきくは年下の若い医学生・原田(芥川比呂志)にぞっこんで、彼の学費や生活費を貢いでいる。また、木嶋はマリに夢中で、内心白沢に嫉妬していた。
かくして、オープンしたおきくの店は大繁盛。「フランソワ」も「リベラ」も客を取られてしまう。しかし、その一方で原田との結婚を望んでいたおきくだったが、同僚の君子(近藤美恵子)と婚約した原田にあっさりフラれてしまう。また、白沢も木嶋の裏切りで東京進出を阻まれてしまった。そうと知ったマリは、白沢に急接近して彼を自分のパトロンにしてしまう。勝ち誇って高笑いするマリ。2人が白沢の別荘へ向かったと聞いたおきくは、嫉妬と復讐心に燃えて泥酔したまま夜道に車を走らすのだったが…。
f0367483_22583683.jpg
日本一の繁華街・銀座を舞台に、誇り高き夜のマダムたちの熾烈な争いを描くドロドロの愛憎ドラマである。しかも、主演は大映が誇る2大看板女優、京マチ子と山本富士子。監督は『安城家の舞踏会』('47)や『偽れる盛装』('51)などで知られる女性映画の巨匠・吉村公三郎。この顔ぶれで面白くないわけがなかろう。
f0367483_23070503.jpg
主人公は政界や財界の重鎮が足繁く通う高級バー「フランソワ」のやり手マダム、マリ。粋で華やかで気風がよく、どんな大物でも手のひらで転がす切れ者の美女。まさに夜の銀座の顔とも言うべき女性なのだが、そんなマリの前に強力なライバルが現れる。京都からやって来た元舞妓のおきくだ。こちらは一転して、はんなりとした淑やかで上品な京美人。とはいえ、彼女もまた大御所を手玉にする手練手管は超一流。祇園で経営するバーは東京でも有名だ。そんな彼女が銀座に新しい店を出すというのだから、マリならずとも銀座マダムたちは戦々恐々。しかもこの2人、一筋縄ではいかない過去の因縁がある。
f0367483_23071719.jpg
というのも、かつておきくはマリの夫の妾だったのだ。その恨みをいまだに忘れられないマリ。それを承知の上で、開店前の挨拶回りでマリの店を一番後回しにするおきく。しかも、蓋を開けてみれば「フランソワ」の常連客をごっそりと持っていってしまう。マリにとってみればまさに踏んだり蹴ったり。だが、そこは転んでもただでは起きない「夜の蝶」。そうこうしているうちに、まんまと相手の寝首をかくことになる。
f0367483_23073271.jpg
で、さらに事をややこしくするのが2人を囲む男関係。マリは関西の百貨店王・白沢に岡惚れしているのだが、その白沢はおきくのパトロンで、彼女と本気で結婚を考えているくらい夢中だ。しかし、おきくはおきくで年下の若い医学生・原田にぞっこんで、彼の学費やら生活費やらを貢ぎまくり、いつかは彼のお嫁さんにと勝手に夢見ている。ところが、原田には同じ医学生の君子という婚約者がおり、おきくだけがそのことを全く知らない。さらに、東京進出を目論む白沢には百貨店協会の理事・木嶋という助っ人がいるのだが、この木嶋は「フランソワ」の常連客でマリにぞっこん。もちろん、マリが白沢に惚れていることは百も承知なのだが、それでも諦めきれず秘かに白沢のことを妬んでいる。いやあ、本当にグッチャグチャですな。三角関係ならぬ五角関係・六角関係といった感じ。いつどこで何がこじれてもおかしくない。
f0367483_23072874.jpg
原作は恋愛小説の古典「愛染かつら」であまりにも有名な作家・川口松太郎が、雑誌「中央公論」に連載していた同名小説。川口といえば当時、作家の傍らで大映の専務も務めていて、息子の川口浩が二枚目俳優として同社からデビューしてブレイクしたばかりだった。それはともかくとして、この原作、当時実際に銀座で人気を二分していたクラブのマダムたちをモデルにして書き上げられたのだとか。成瀬巳喜男監督とのコラボレーションで知られる女流脚本家・田中澄江が映画版の脚色を手掛けているのだが、銀座の華やかな表舞台だけでなく、ボーイさんや酒屋さん、花屋さんなど様々な裏方のひしめき合う賑やかな人間模様や風俗が、実に生き生きと描きこまれていて面白い。相当に綿密な取材や下調べをしているはずだ。
f0367483_23070978.jpg
さらに、船越英二演じる女給斡旋業の秀二を狂言回しとした、吉村公三郎の軽妙洒脱かつ滑らかな語り口も絶妙。中村伸郎や宮口精二、十朱久雄、高松英郎ら芸達者な名優たちをちょい役として配し、彼らの何気ないセリフやリアクションによって、複雑に入り組んだ人間関係を分かりやすく紐解いていく辺りの巧みさも心憎い。説明臭さが全くないんだよね。モノクロのフラッシュバックも繋ぎ方がすごく洗練されているし、ロングショットとクロースアップの使い分けもちゃんとストーリー上の意味があって計算されている。90分というコンパクトな尺を感じさせないボリューム感は、スピーディで的確で無駄のない演出の賜物だと言えよう。
f0367483_23074140.jpg
また、撮影では銀座のロケとスタジオセットを使い分けているのだが、今は失われた古き良き夜の銀座の風景もさることながら、スタジオセットの美術デザインがまた素晴らしい。さすがは安定の大映クオリティ。バー店内のゴージャス感溢れる洗練されたインテリアも見ものだ。
f0367483_23075093.jpg
もちろん、主演の京マチ子と山本富士子の火花散る演技合戦も役柄さながら。お互いに余裕綽々でエレガントに振舞いつつも、笑顔の下でメラメラとライバル心を燃やし、隙あらば背中から刺さんとする。そんな女同士の緊張感あふれる意地の張り合いを、ある時は優雅で上品に、ある時は下世話で生々しく演じており、見ていて痛快ですらある。この堂々たる大人の色香と貫禄は、この時代の大女優にしか出せないだろう。少なくとも、'80年代以降のスターでは絶対に無理だ。
f0367483_23075480.jpg
また、夜の銀座をフラフラしているうち女給を斡旋して金を稼ぐようになり、ずるずるとマリの妹分けいのヒモをやっている秀二を演じる船越英二の、いつもながらの二枚目ダメ男ぶりもハマリ役。それもただのダメ男ではなく、実は戦争で手を怪我して音楽家の道を諦めたという、哀しい過去を背負った役どころで、そこはかとなく漂う哀愁に味がある。そうそう、ダメ男といえば、おきくに骨抜きにされっぱなしの白沢役の山村聰も、ダンディな紳士なのにちょっと情けないところが人間味を醸し出す。あと、どちらかというと高尚な芸術映画や文芸映画のイメージが強い芥川比呂志が、おきくに散々貢がせた挙句に捨ててしまう独善的な貧乏医学生を演じているのも珍しい。
f0367483_23074587.jpg
ちなみに、まだデビュー直後の新人だった叶順子がバー「フランソワ」の女給役で、同じくまだエキストラ時代の田宮二郎が秀二の旧友役で、それぞれチラリと顔を出している。それと、秀二の弟分ジミー役を演じている当時24歳の川崎敬三もチャーミングでハンサムだ。
f0367483_23073716.jpg
評価(5点満点):★★★★★

参考DVD情報(日本盤)
カラー/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:90分/発売元:株式会社KADOKAWA
特典:劇場予告編/スタッフ&キャスト・プロフィール/フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2018-02-07 00:36 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

すいません!その通りです..
by nakachan1045 at 13:12
直人の子分に曽根晴美とあ..
by Django at 02:25
いまみると、北斗の拳のバ..
by ドゴラ at 14:14
昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

最新の記事

「細雪」 The Makio..
at 2018-09-18 21:20
「離愁」 Tomorrow ..
at 2018-09-17 10:53
「ビッグ・ボス」 Capon..
at 2018-09-16 09:11
「悪魔の密室」 De Lif..
at 2018-09-13 07:16
「超人アーゴマン」 Come..
at 2018-09-10 13:21

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター