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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「天使のいたずら」 Prudence and the Pill (1968)

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監督:フィルダー・クック
製作:ケネス・ハーパー
   ロナルド・カーン
原作:ヒュー・ミルズ
脚本:ヒュー・ミルズ
撮影:テッド・ムーア
美術デザイン:ウィルフレッド・シングルトン
衣装デザイン:ジュリー・ハリス
音楽:バーナード・エビングハウス
出演:デボラ・カー
   デヴィッド・ニーヴン
   ロバート・クート
   イリナ・デミック
   イーディス・エヴァンズ
   ジョイス・レッドマン
   ジュディ・ギーソン
   キース・ミシェル
   デヴィッド・ダンダス
   ヴィッカリー・ターナー
   ヒュー・アームストロング
   マイケル・ホーダーン
イギリス映画/88分/カラー作品




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<あらすじ>
ロンドンの大手銀行の頭取を務めるジェラルド(デヴィッド・ニーヴン)とプルーデンス(デボラ・カー)のハードキャッスル夫妻は、大豪邸で優雅な暮らしを送っているものの、夫婦関係はすっかり冷え切っている。お互いに無関心なので喧嘩することもなく、ある意味で平和な毎日だ。しかも、ジェラルドにはエリザベス(イリナ・デミック)というフランス人の愛人もいる。完全なる仮面夫婦だった。
一方、ジェラルドの兄ヘンリー(ロバート・クート)と妻グレイス(ジョイス・レッドマン)は、弟夫婦とは正反対で結婚20年になる今も熱々のラブラブ。ある晩、夫婦揃って映画を見て気分の盛り上がったヘンリーとグレイスは、夫婦水入らずでイチャイチャしようと早めに帰宅したところ、年頃の娘ジェラルディン(ジュディ・ギーソン)が恋人トニー(デヴィッド・ダンダス)とベッドインしている現場に遭遇してしまう。
ビックリ仰天して怒り心頭の両親に、わたしだってもう子供じゃないんだから!と反論するジェラルディン。避妊対策だってちゃんとしているという彼女だが、実は母親が医師に処方してもらった避妊薬セノールを、こっそりアスピリンと入れ替えてちょろまかしていたのだ。その結果、グレイスは思いがけず妊娠してしまう。
兄から事の顛末を聞いたジェラルドは、思わずハッ!とする。妻プルーデンスの部屋でセノールのボトルを見かけたことがあったからだ。もはや夫婦間の性交渉はゼロなのに避妊薬だと?妻の浮気を疑う彼に、あなたもジェラルディンの真似をしたら?とエリザベスが言う。そこで、妻のセノールとアスピリンを入れ替えるジェラルド。浮気をしていれば、そのうち妊娠するはずだ。そうなれば妻を悪者にして三下り半を突き付け、世間に恥じることなくエリザベスと再婚できるからだ。
その頃、ハードキャッスル家のメイド、ローズ(ヴィッカリー・ターナー)と運転手テッド(ヒュー・アームストロング)は主人夫婦に隠れて付き合っていたのだが、バレてはいけないので妊娠なんかしたらまずい。そこで、信心深いローズのためにテッドはビタミン剤と偽ってセノールを飲ませるのだが、そうと知らないローズはプルーデンスの寝室で見つけたセノールと入れ替えて服用する。それがジェラルドの入れ替えたアスピリンだとは全く気付かないまま。
それから数か月後、ローズの妊娠が発覚する。ハードキャッスル家は大騒ぎで、とりあえずローズとテッドを結婚させることでひと段落。しかし、なぜプルーデンスではなくローズが妊娠したのか?首をかしげるジェラルドだったが、双方から詳しい事情を聴いて合点がいった。妻はローズの入れ替えたセノールを飲んでいたのだ。
そこで、再び妻のセノールのボトルをアスピリンと入れ替えるジェラルド。ところが、いつまでも日陰の身のエリザベスが痺れを切らして去ってしまい、その別れの手紙をプルーデンスが見つけてしまう。一方、テッドから妻が頻繁に医者の元へ通っていると聞かされたジェラルドは、彼女の浮気相手がヒューイット医師(キース・ミシェル)であることを突き止める。お互いの裏切りの証拠を掴み、離婚を巡って対立する夫婦だったが…。
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これはなかなか面白かった。それまでタブー視されがちだったセックスについて、人々がオープンに語り始めた'60年代後半。当時はちょうど避妊用ピルも出回り始め、セックスの在り方そのものが大きく変わる。妊娠の心配などすることなく、男女がセックスを楽しめるようになったからだ。おのずと人々の性に対する考え方も多様化していくわけだが、一方で当然ながら従来の保守的で堅苦しい価値観もまだまだ社会に根強く残っている。そんな「セックス革命」過渡期とも呼べる時代を背景に、避妊用ピルをアスピリンとこっそり入れ替えたことから、世間体ばかり気にする上流階級の偽善が次々と暴かれていく様子をコミカルに描いた英国産セックスコメディである。
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主人公は大豪邸に暮らす銀行頭取ジェラルドと妻プルーデンスのハードキャッスル夫妻。一見すると美男美女でお似合いの中年カップルだが、2人の間には子供もなく夫婦関係は冷え切っており、もはやお互いに喧嘩をする気力すらないほど。子供は欲しいけどあなたの子供は要らないと寝室を別にする妻、それならばと外にセクシーなフランス人の愛人を囲う夫。当時の上流社会で離婚はまだまだ人聞きが悪いため、とりあえず表向きは仲睦まじさを装っている。完全な仮面夫婦だ。
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で、彼らと正反対なのがジェラルドの兄ヘンリーの夫婦。はたから見ると恥ずかしくなるくらいラブラブのベタベタ。避妊用ピルを上手く使って、いまだに夜の夫婦生活はお盛んだ。しかし、年頃の娘ジェラルディンが処女ではないと知った途端、自分たちのことはすっかり棚上げにして「けしからん!」「なんてふしだらなの!」と大騒ぎ。そうかと思えば、娘の彼氏が由緒正しい貴族のお坊ちゃんだと分かると、「まあ、あの有名な?」なんて皮算用の本音がポロッと出てしまう。そんな大いなる偽善の罰が当たったのか、娘がこっそり避妊用ピルをアスピリンとすり替えて盗んでいたことが判明し、「いい年をして子供を妊娠」という世間的な赤っ恥をかくことになる。
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そんな兄から騒動の顛末を知らされたジェラルドは、避妊用ピルの名前「セノール」を聞いてハッとする。妻の寝室で同じ名前の薬が入ったボトルを見かけたことがあったからだ。夫婦間の性交渉は長いことご無沙汰なのに、なぜ妻は避妊薬を持っているのか?そりゃ浮気しているからに違いない!ということで、彼は妻の不倫を立証するため、ジェラルディンの真似をしてセノールの入ったボトルの中身をアスピリンと入れ替える。離婚は不名誉で世間体が悪いけれど、妻の浮気が原因となれば話は別だ。自分の名誉はちゃんと守られる上に、正々堂々と愛人エリザベスと再婚できる。まさに願ったり叶ったりというわけだ。
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ところが、ジェラルドにとって計算外の事態が発生する。ハードキャッスル夫妻に隠れて付き合っているメイドのローズと運転手のテッドだったが、万が一ローズが妊娠でもしたらハードキャッスル家の名誉に傷が付つくし、2人とも即刻クビになってしまう。テッドはセノールをローズに服用させようとするのだが、なにしろ当時はまだ避妊用ピルを神に対する冒涜だと考えるクリスチャンも多く、敬虔な信者であるローズが素直に飲んでくれるとは思えない。そこで彼はセノールをビタミン剤だと偽って彼女に渡すのだが、ローズはローズで秘かに妊娠を心配しており、渡されたビタミン剤(実はセノール)の中身をプルーデンスのセノール(実はアスピリン)と入れ替えてしまったのだ。その結果、プルーデンスではなくローズが妊娠してしまったのである。
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そこからまた、てんやわんやの珍騒動が次々と引き起こされ、最終的に主要女性キャラ5人の全員が妊娠する(ご高齢のベイツ夫人は除く)という不測の事態に。人間なら誰だって性欲はあるし、好きな人と結ばれたいと願うことだって当たり前。どちらも全く恥ずかしいことじゃないし悪いことでもない。むしろ、体面ばかりを気にしてうわべを取り繕ったり、隠し事をしようとすることの方が不自然で、物事を無駄にややこしくしてしまう。一番大切なのは愛の結晶たる子供たち。それに比べたら、世間体なんてまるで取るに足りません!という教訓が皮肉たっぷりに描かれる。まあ、当時の社会風俗や価値観を知らないとピンとこない部分は多々あるので、そういう意味では時代に色褪せた感が否めないものの、時代に逆行するようなガチガチのモラル原理主義者が台頭する昨今にあって、今の観客でも少なからず共感できる点はあるはずだ。
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監督は軽妙洒脱な西部劇コメディ『テキサスの五人の仲間』('65)で知られるアメリカ人監督フィルダー・クック。ポップでグルーヴィーなラウンジ・ミュージックと、カラフルでメルヘンなアニメーションを駆使した、オープニングのタイトル・クレジットからして'60年代的なお洒落感が炸裂で、風刺の効いたセリフが機関銃のようにポンポン飛び出すアップテンポな演出といい、ゴージャスなセットやロケーションを存分に生かした流麗なカメラワーク(カメラマンは'70年代まで007シリーズの大半を手掛けた名匠テッド・ムーア)といい、どれもこれもが実に粋で洗練されていて痛快だ。ただし、プロデューサーと意見の相違の多かったクック監督は途中で降板してしまい、最終的な仕上げは大御所ロナルド・ニームに任されたらしい。
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主演は『悲しみよこんにちは』('57)など数々の名作でコンビを組んだデヴィッド・ニーヴンとデボラ・カー。これが5度目にして最後の共演作となったのだが、まさに阿吽の呼吸とも呼ぶべき絶妙な名コンビぶりを発揮している。そのニーヴンのセクシーで茶目っ気のある愛人役にはフランス女優イリナ・デミック。20世紀フォックスの社長ダリル・F・ザナックの愛人としてゴリ押しされた人で、そのわりには(というか、それだからかもしれないが…)あまり大成しなかったのだが、本作では憎めないクール・ビューティなコメディエンヌぶりを発揮して悪くない。
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また、ジェラルディン役のジュディ・ギーソンも超絶にキュートでチャーミング。当時は『いつも心に太陽を』('67)で売れっ子になったばかりだった。その恋人トニー役には、後にロック歌手として大成功するデヴィッド・ダンダス。そんな2人を応援して、偽善的な親世代を叱咤する自由気ままでちょっと惚けた貴族の老女ベイツ夫人役で、英国演劇界の誇る伝説的な舞台女優イーディス・エヴァンズが場をかっさらう。
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そのほか、『天国への階段』('46)でもニーヴンと共演した名脇役ロバート・クート、『トム・ジョーンズの華麗なる冒険』('63)などでオスカー候補になったジョイス・レッドマン、テレビ『ジェシカおばさんの事件簿』の宝石泥棒デニス役でも知られるキース・ミシェル、ウォーレン・オーツの奥様だったヴィッカリー・ターナー、カルト・ホラー『地獄のサブウェイ』('72)の人喰い殺人鬼役で知る人ぞ知るヒュー・アームストロング(当時はまだ若くて爽やか!)など、キャストもまた実に賑やかだ。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(イギリス盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:2/時間:88分/発売元:Odeon Entertainment Group/20th Century Fox
特典:デヴィッド・ニーヴンのインタビュー集(約50分) ※裏ジャケにはスチル・ギャラリー収録とされているが実際は未収録



by nakachan1045 | 2018-02-09 02:54 | 映画 | Comments(0)

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