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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「デジレ」 Désirée (1954)

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監督:ヘンリー・コスター
製作:ジュリアン・ブロースタイン
原作:アンネマリー・セリンコ
脚本:ダニエル・タラダッシュ
撮影:ミルトン・クラスナー
美術:ライル・ウィーラー
   リーランド・フラー
衣装デザイン:ルネ・ヒューバート
音楽:アレックス・ノース
出演:マーロン・ブランド
   ジーン・シモンズ
   マール・オベロン
   マイケル・レニー
   キャメロン・ミッチェル
   エリザベス・セラーズ
   シャーロット・オースティン
   キャスリーン・ネスビット
   イヴリン・ヴァーデン
   イソベル・エルソム
   キャロリン・ジョーンズ
アメリカ映画/110分/カラー作品




<あらすじ>
フランス革命後の1794年。マルセイユに住む裕福な絹物商の娘デジレ・クラリー(ジーン・シモンズ)は、たまたま知り合ったコルシカ島出身の青年ジョゼフ・ボナパルト(キャメロン・ミッチェル)と意気投合し、彼とその弟を翌日のディナーに招待する。そこで彼女はジョセフの弟ナポレオン・ボナパルト(マーロン・ブランド)と初めて会い、たちまち恋に落ちる。またデジレの姉ジュリー(エリザベス・セラーズ)もジョゼフと愛し合うようになり、2人は結婚することとなった。
フランス軍の将軍でありながら貧しいナポレオンは、クラリー家の財産をあてにしていた。そのことを隠さない彼にむしろ好感を抱くデジレだったが、兄エティエンヌ(リチャード・ディーコン)は猛反対する。デジレと結婚の約束を交わし、任務のためパリへ赴いたナポレオン。しかし、そのまま半年以上も音沙汰がなかった。
そこで、ナポレオンに会うため一人でパリへ向かったデジレ。そこで彼女は、ナポレオンと社交界の花形ジョセフィーヌ(マール・オベロン)の婚約パーティを知る。彼は己の野心のため、クラリー家よりもさらに裕福なジョセフィーヌに乗り換えたのだ。ショックを受けたデジレはセーヌ川に身投げしようとするが、ナポレオンの右腕で紳士的な軍人ベルナドット(マイケル・レニー)に止められる。
1797年、イタリア大使となってローマに住むジョゼフと姉ジュリーのもとに身を寄せていたデジレだったが、異国の地に馴染めず一人でパリへ戻ることに。そこで彼女はジョセフィーヌと結婚したナポレオンと再会し、心の古傷をえぐられる。そんな彼女を慰めたのがベルナドットだった。彼の誠実さと優しさに心動かされたデジレは、ベルナドットと結婚することとなる。
1799年、デジレは息子オスカルを出産し、ベルナドットとの幸福な結婚生活を送っていた。ナポレオンはフランス大統領となったものの、子宝に恵まれないことからジョセフィーヌを疎みがちで、ジョセフィーヌは家庭に恵まれたデジレを羨む。そして1804年、ナポレオンはフランス皇帝の座に就いた。
しかしそれから5年後、ナポレオンは子供の出来ないジョセフィーヌと離婚し、19歳のオーストリア皇女マリー・ルイズと結婚する。デジレは今や友人となったジョセフィーヌを慰めるのだった。さらなる戦争を繰り広げてヨーロッパ全土を手中に収めようとするナポレオンに対し、内心反発を強めていく平和主義者のベルナドット。そんな折、スウェーデンの特使が彼のもとを訪れる。
世継ぎのない老齢のスウェーデン国王が、跡継ぎのスウェーデン王太子としてベルナドットを指名したのだ。ナポレオンの強い反対を押し切って申し出を受け入れるベルナドット。デジレもそんな夫を全面的に支持したが、しかし、内心では王妃になることへの不安がいっぱいだった。
家族とともにストックホルムへ移り住んだデジレ。だが、やはり彼女は異国の地に馴染めず、パリへ戻ってきてしまう。そこで彼女はまたもやナポレオンと再会。そんな折、ナポレオンの野心を阻止すべくベルナドットがスウェーデンとロシアの同盟を結んだことから、デジレはナポレオンの人質となってしまう…。

映画出演2作目『欲望という名の電車』('51)から4年連続でアカデミー主演男優賞にノミネート('54年の『波止場』で受賞)され、たちまちハリウッドの新世代を代表するスーパースターとなったマーロン・ブランド。各メジャースタジオが競うようにして彼の主演映画を製作したわけだが、ブランドに2度目のオスカー候補をもたらした『革命児サパタ』('52)を成功させた20世紀フォックスは、当時同社が推し進めていたシネマスコープ映画の歴史スペクタクル大作『エジプト人』の主演に再び彼を抜擢する。

ところが、リハーサル段階で突然ブランドは作品を降板し、精神科医に診てもらうためと称してニューヨークへと去ってしまう。一説によると『エジプト人』の共演女優ベラ・ダーヴィを嫌っていた(彼女は演技素人ながらフォックス社長ザナックの愛人としてゴリ押しされ、浮気癖や浪費癖、ギャンブル癖などなにかと評判のよろしくない女性だった)ことが降板の本当の理由だと言われているが、同時に当時の彼がいわゆるハリウッド的な娯楽大作よりも作家性の強い小品を好む傾向にあったことも心理的に影響していたかもしれない。いずれにしても、これは明らかに契約違反だった。20世紀フォックスはブランドを相手取って200万ドルの損害賠償を求め、その結果、ブランドが別のシネマスコープ作品への出演に同意することで示談が成立する。それが絢爛豪華な歴史大作『デジレ』だった。

タイトルとなっているのは、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの元婚約者にして、スウェーデン国王カール14世ヨハンの王妃となったデジレ・クラリー。本作は初恋の男性ナポレオンと最愛の夫ベルナドット(後のカール14世ヨハン)との間で揺れ動くデジレ、という三角関係の恋愛ドラマを軸としながら、18世紀末~19世紀初頭の激動するヨーロッパの政情を背景に、時代の波に翻弄された女性の数奇な運命を描く歴史大河ロマンとして仕上げられている。

ただし、必ずしも史実に忠実というわけではない。原作はオーストリア出身のベストセラー作家アンネマリー・セリンコが'52年に出版した同名の歴史小説。あくまでも、その映画化である。大まかな歴史の流れは事実に沿っているものの、その細部についてはロマンティックかつドラマティックな脚色が施されている。例えば、本作ではデジレが姉ジュリーとナポレオンの兄ジョゼフを引き合わせ、たまたま一緒についてきたナポレオンと恋に落ちて婚約したことになっているが、実際はデジレとジョゼフがもともと婚約していたものの、ナポレオンの提案によってジョゼフはジュリーと結婚することとなり、その代わりにナポレオン自身がデジレと婚約したのだそうだ。なんだかとても事務的。恐らく、初めからクラリー家とボナパルト家による政略結婚の色が濃かったのだろう。でも、それでは小説としても映画としても味気がないため、偶然の出会いが引き寄せた「運命の恋」へと仕立てられたわけだ。

同様に、クラリー家よりも裕福なジョセフィーヌに鞍替えしたナポレオンに捨てられたデジレが、失意のあまり自殺しようとしたところをナポレオンの右腕ベルナドットに救われ、彼の一途な愛情と誠実な姿勢に心打たれたデジレが結婚を決意するという展開も、実際は大きく異なっている。ナポレオンに捨てられたデジレは確かに傷ついたものの、もともとそれほど結婚に対して真剣ではなかったらしく、けっこうあっさりと立ち直ったと言われている。ベルナドットとの出会いも、姉ジュリーと結婚したナポレオンの兄ジョゼフを介して。しかも、デジレの方が相当彼に入れあげていたようだ。ナポレオンとは、あくまでも親戚としての付き合いだけだった様子。でも、それではストーリーの核をなす三角関係が成立しないので、ここでもまた事実が大胆に脚色されている。

一方で、いつまでも少女のように無邪気で純粋で、しきたりに縛られることを嫌って自由に行動し、社会的地位よりも家族との絆を大切にする本作のデジレは、歴史の記録で伝えられる彼女の実像に限りなく近い。これを演じるのがイギリス出身の清純派スター、ジーン・シモンズ。記念すべきシネマスコープ第1弾『聖衣』('53)をはじめ、曰くの『エジプト王』('54)や『スパルタカス』('60)など、数々のハリウッド製歴史スペクタクル大作で、意志の強い可憐なヒロインを演じた彼女にとって、これはまさに適役だったと言えよう。

さらに、ナポレオン役のマーロン・ブランドもなかなかいい仕事をしている。先述したように、契約上の義務として本作の出演に合意したブランドだが、その一方でナポレオンを演じるチャンスに前向きだったとも言われている。なるほど、それまでにもアントニウスやサパタといった歴史上のアンチヒーローを演じたブランドが、怪物ナポレオン役に強く惹かれたとしても何ら不思議ではない。ブランド自身は後に「私の人生で最も恥ずべき演技」と本作の演技を後悔していたらしいが、野心家で策略家で権力志向の強い冷酷な軍人でありながら、それでいて情熱的で正直で人間味に溢れるナポレオン像を見事に演じている。なにより、本来の見た目はあまり似ていないにも関わらず、数々の肖像画で我々がよく知るナポレオンそっくりに成りきっている。その徹底した役作りには敬服するばかりだ。

むしろ、本作で問題なのはヘンリー・コスター監督の演出であろう。『オーケストラの少女』('50)や『気まぐれ天使』('47)、『ハーヴェイ』('50)など、心温まる人情ドラマやコメディで抜群の手腕を発揮する名匠なのだが、本作のような大作映画になると途端に語り口が大味になってしまう。なんというか、スケールの方ばかりに気を取られて人間描写がなおざりにされているのだ。実は、もともと『うたかたの恋』('35)や『追想』('56)などの歴史ロマンに定評の高いアナトール・リトヴァクが監督に予定されていたものの、実際にヨーロッパでの現地ロケを要求するばかりか、シネマスコープではなくスタンダードサイズでの撮影を主張するリトヴァクに、フォックス社長ザナックがキレてしまったらしい。そのため、既に大ヒットした『聖衣』でシネマスコープの経験があるコスター監督が代役として起用されたわけだが、恐らくリトヴァクの方が題材的に適任だったように思う。

あと、美術セットやコスチュームなどは絢爛豪華で大掛かりなのだが、それでもなお大作映画としていまひとつ盛り上がりに欠ける。というのも、ナポレオンの戴冠式以外にこれといったスペクタクルな見せ場が存在しないのだ。エジプト遠征もロシア遠征もすべてセリフで語られるのみ。それゆえ、必要以上に説明的な会話が多いことも否めない。確かに画家ジャック=ルイ・ダヴィッドの描いた「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠」を細部まで忠実に再現した戴冠式シーンには思わず息を呑むが、ビジュアル的なハイライトがそれだけというのは何とも物足りない。

なお、ナポレオンの最愛の女性ジョセフィーヌ役には、ローレンス・オリヴィエと共演した『嵐が丘』('39)で名高い美人女優マール・オベロン。'30年代に絶頂期を極めた彼女も、本作の当時は既に人気も美貌も衰え気味だったのだが、それが年齢ゆえにナポレオンの子供を産むことが出来ず、捨てられてしまう哀れなジョセフィーヌ像と絶妙に重なり、より一層のこと観客の同情を誘うような仕掛けとなっている。『ディミトリアスと騎士』('54)や『炎と剣』('54)など、当時スペクタクル史劇の立派な軍人や貴族を演じて引っ張りだこだったマイケル・レニーも、ベルナドット役として適役。ジョセフィーヌの大親友でパリ社交界の花形だったタリアン夫人を、カルト女優キャロリン・ジョーンズがノークレジットで演じているのも要注目だろう。

そんなこんなで、出来栄えには少なからず不満が残るものの、興行成績では20世紀フォックスにとって『愛の泉』に次ぐ1954年度最大のヒットを成し遂げた本作。マーロン・ブランドは同じ年の『波止場』でアカデミー主演男優賞に輝き、批評的にも『波止場』の方が圧倒的に評価が高かったのだが、それでも興行面では『デジレ』に遠く及ばないという皮肉な結果となったのである。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.55:1)/1080p/音声:4.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:110分/発売元:Twilight Time/20tu Century Fox
特典:オリジナル劇場予告編/音楽トラックのみの再生機能



by nakachan1045 | 2018-02-12 16:42 | 映画 | Comments(0)

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