なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「捕われの町」 The Captive City (1952)

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監督:ロバート・ワイズ
製作:セロン・ワース
原案:アルヴィン・M・ジョセフィ・ジュニア
脚本:カール・カム
   アルヴィン・M・ジョセフィ・ジュニア
撮影:リー・ガームス
編集:ロバート・スウィンク
音楽:ジェローム・モロス
出演:ジョン・フォーサイス
   ジョーン・カムデン
   ハロルド・J・ケネディ
   マージョリー・クロスランド
   ヴィクター・サザーランド
   レイ・ティール
   マーティン・ミルナー
   ジェラルディン・ホール
   ハル・K・ドーソン
特別出演:エステス・キーフォーヴァー上院議員
アメリカ映画/91分/モノクロ作品




<あらすじ>
対組織犯罪の上院特別委員会(キーフォーヴァー委員会)で証言するため、首都ワシントンD.C.へ向かっていた新聞記者ジム・オースティン(ジョン・フォーサイス)と妻マージ(ジョーン・カムデン)は、その途中で命の危険を感じて警察署へと駆け込む。護衛のパトカーを待つ間、ジムは万が一の場合に備えて、これまでのあらましをテープレコーダーに録音する。
中西部の平和な田舎町ケニントンで小さな地方新聞社を共同経営するオースティンは、自ら編集長と記者も兼ねていた。ある日、彼のもとに地元の私立探偵ネルソン(ハル・K・ドーソン)から連絡が入り、重要な情報があるから相談に乗ってほしいという。ネルソンは何かを強く警戒しており、町の図書館で落ち合うこととなった。
ネルソンによると、町一番の名士で裕福な実業家シラク氏(ヴィクター・サザーランド)が、秘かに違法賭博を営んでいるという。シラク夫人(マージョリー・クロスランド)から離婚調停のための身辺調査を依頼された彼は、その過程でシラク氏の裏ビジネスに気付いて深く掘り下げたのだ。ところが、それ以来警察からマークされて妨害を受けるようになり、さらには探偵のライセンスまで取り上げられたという。
平和な日常の裏側が犯罪に蝕まれている。きっと警察もグルに違いない。新聞社で悪事を暴く手伝いをして欲しい。そう訴えるネルソンだったが、オースティンは協力を断る。警察のジレット署長(レイ・ティール)は友人として信頼しているし、まさかこんな田舎町で大都会のような犯罪や汚職行為が行われているなど信じられなかったからだ。
それから数週間後、オースティンのもとにネルソンから命の危険を訴える電話がかかってくる。その直後、ネルソンは轢き逃げにあって死亡し、警察はただの事故として処理する。オースティンの脳裏に疑念が沸き上がった。そこで彼はネルソンの残したメモをもとに違法賭博の胴元を調べていくと、地元のレストランや雑貨店などあらゆる場所で組織的に行われていることが判明する。その過程で、彼は怪しげなよそ者の姿を見かけた。
どこかで見覚えのある顔だ。疑問に思ったオースティンが会社の資料を当たったところ、全米に組織網を広げるマフィアのボス、ファブレッティだった。なぜ彼がこんな田舎町にいるのか。きっとシラク氏と関係があるに違いない。そう踏んだオースティンは、ファブレッティを見かけた倉庫の周辺に若手報道カメラマン、フィル(マーティン・ミルナー)を張り込ませる。相手はなかなか尻尾を出さなかったが、ついにファブレッティの姿を撮ることに成功。しかしその直後、フィルが暴漢に襲われ証拠写真を奪われてしまう。
こうした調査を始めて以来、ネルソンのようにオースティンもまた警察から様々な妨害を受けるようになり、自宅周辺で怪しげな州外ナンバーの車を見かけるようになる。妻マージは不安を訴えた。さらには、地元名士の友人たちから助言という名の警告を受け、広告の依頼が減り始めたことから共同経営者ドン(ハロルド・J・ケネディ)からも手を引くよう求められる。彼の想像以上に多くの住民が違法賭博に関わっていたのだ。
そんなある晩、オースティンの自宅にシラク夫人がやって来る。ようやく重い口を開くことにしたのだ。彼女によると、シラク氏の違法賭博はマフィアによって乗っ取られ、今では彼らの資金源になっているという。裁判で証言台に立つことを約束したシラク夫人だったが、その翌日自宅にて死体で発見され、またもや警察は自殺として処理をする。追い詰められたオースティンだったが…。

かつての古き良きアメリカでは、マフィアなどによる組織犯罪はニューヨークやロサンゼルス、シカゴなどの物騒な大都会に限られており、平和な地方都市や田舎町には関係がないものと一般的には考えられていた。しかし、'40年代末頃から地方社会における組織犯罪および政治汚職の深刻な蔓延が大手マスコミで報じられるようになり、アメリカ全土から政府に対して対策を求める声が一気に高まっていく。そうした強い訴えを受け、'50年に上院議会で発足したのが「州間通商における組織犯罪に関する特別委員会」だった。

委員長であるエステス・キーフォーヴァー上院議員の名前を取って、通称「キーフォーヴァー委員会」とも呼ばれた同委員会。各地で開かれた公聴会はアメリカ国民の高い関心を集め、テレビの生中継放送は全米で3000万人が視聴したとも言われている。結局、マフィアによる全米にまたがった大規模な組織犯罪を立証することは出来なかったものの、少なくとも彼らの影響力が地方社会の隅々にまで行き渡っているという現実は白日のもとに晒された。もはや誰もが犯罪とは無関係でいられない。当時のアメリカ市民の受けた衝撃は想像に難くないだろう。映画界もこのニュースにすぐさま飛びつき、組織犯罪の実態を暴く!と称した実録犯罪映画が立て続けに製作される。その代表作とも呼べるのが、この『捕らわれの町』だ。

なぜ本作が代表作なのかというと、当のエステス・キーフォーヴァー上院議員によるお墨付きを得ているからに他ならない。実際、プロローグではキーフォーヴァー議員の署名入りで組織犯罪の蔓延に警鐘を鳴らすコメント文書が挿入され、エピローグではキーフォーヴァー議員本人がスクリーンに登場して「組織犯罪の撲滅には善良な市民の協力が必要不可欠である」と訴える。さながら「キーフォーヴァー委員会」のプロパガンダ映画だ。

今のハリウッドではとても考えられないことだが、かつてこの種の「啓蒙プロパガンダ映画」は必ずしも珍しくなかった。例えば、マフィアによる紙幣偽造の実態を暴いたアンソニー・マン監督の犯罪映画『Tメン』('47)はアメリカ財務省が全面協力しており、当時の財務省高官エルマー・リンカーン・アイリーがプロローグとエピローグに出演して市民に警戒を呼び掛けている。サイレントの時代から映画はプロパガンダとして有効な手段であり、政府機関や政治家が直接かかわることの良し悪しは別としても、いまだに世界中で映画が何かしらのプロパガンダに利用されていることは否定できない事実だ。そもそも突き詰めて考えれば、そこに何らかの主義主張やメッセージがある限り、あらゆる映画がプロパガンダと成りうるであろう。その是非を判断するのはあくまでも観客だ。

で、肝心の本作だが、なにしろお題目がハッキリしているのでストーリーも極めて分かりやすい。舞台は中西部の風光明媚な田舎町。住民の殆どが中流階級の白人層で、一見すると犯罪とはまるで縁のない日常を送っている。アメリカのどこにでもある平凡な地方都市だ。ところが、そんな町で秘かに違法賭博が組織的に行われており、どうやら警察までもがグルらしい。私立探偵から情報を得たローカル新聞社のオーナー兼編集長オースティンだったが、とてもそんな話を信じることなど出来ない。なにしろ、殺人や強盗はおろか、スリや置き引きすら滅多にない町だ。住民の大半は知り合いだし、誰もが善良な人々ばかり。警察の署長だって親しい友人だ。この町で犯罪や汚職が横行するなんてあり得ない…というわけだ。

しかし、その私立探偵が車の轢き逃げで死亡し、状況的に不可解な点が多いにも関わらず警察が事故で処理したことから、さすがのオースティンも疑いを持つようになる。調べていくと、確かに違法賭博の組織網は存在していた。しかも、マフィアらしき怪しげな連中の姿を見かけるようになり、その中には悪名高い大物ボスも含まれていた。徐々に真相へと迫っていくオースティン。だが、それに伴って警察からの嫌がらせとしか思えない妨害行為を受けるようになり、正体不明の車が自宅周辺を監視したり、外出時には尾行したりするようになる。明らかに彼はマークされていた。

そればかりか、新聞社のスポンサーが次々と広告を取り下げて無言の圧力をかけてくる。友人たちからは「町の評判を落とすつもりか」「世間体を考えろ」「誰だって賭け事くらいするだろう、それの何が悪い?」「いい大人なんだからわきまえろ」などと、助言という名の警告を次々と受ける始末。いずれも町の有力な名士ばかりだ。しまいには、共同経営者で親友のドンまでもが「俺たちの仕事は警察の真似をすることじゃない、新聞を発行することだ」と言い出して、オースティンに取材をやめさせようとする。「そうじゃない、俺たちの仕事は真実を報道することだ」とやり返すオースティンだが、しかし会社の経営危機ばかり心配するドンには「馬の耳に念仏」でしかない。「広告のついでにニュースを掲載するのが君の言う新聞か?」というオースティンのセリフは、21世紀の現在でも十分に通用する重みがあると言えよう。

当時「タイム」誌の専属記者だったアルヴィン・M・ジョセフィ・ジュニアが、自身のローカル新聞社勤務時代の実体験を元に原案を手掛け、脚本にも参加したという作品。名作『カーネギー・ホール』('47)や『ネブラスカ魂』('48)のカール・カムが共同で脚本を執筆しているものの、犯罪映画としてあまりにもオーソドックスなストーリー展開は簡単に先が読めてしまう。マスコミ報道の在り方や市民モラルの腐敗に踏み込んだメッセージ性には見るべきものがあることは確かだが、しかし全体的な脚本の出来栄えはあまり芳しいものではない。プロパガンダ色が前面に出過ぎていることもマイナス要素だ。

ただ、スピーディでパワフルなロバート・ワイズ監督の演出はなかなかのもの。ストーリーの凡庸さやご都合主義を、勢いに任せて乗り切ってしまおうといった感じだ。少々強引なやり方ではあれど、本作の場合はそれが少なからず功を奏している。後に『ウエストサイド物語』('61)や『サウンド・オブ・ミュージック』('65)などを手掛ける巨匠ワイズだが、もともとは低予算だが良質のB級娯楽映画で重宝された一流の職人監督だった。本作もそんな彼の職人技が光る一本だと言えるだろう。お世辞にも彼の代表作の一本とは呼べないが、平均点の脚本をたったの3週間という短さで、しかも低予算で撮りあげるという悪条件を考えれば、この出来栄えは大健闘である。

主人公オースティン役を演じているのは、テレビ『チャーリーズ・エンジェル』のチャーリー役や『ダイナスティ』のブレイク・キャリントン役でお馴染みのダンディな名優ジョン・フォーサイス。これが映画初主演作だった。そのほかのキャストも大半が無名俳優ばかりで、それが作品全体にドキュメンタリー的なリアリズムを与えている。ただし、シラク氏役を演じているヴィクター・サザーランドはサイレント映画時代に人気を博した二枚目スター。若手報道カメラマンのフィルに起用されたマーティン・ミルナーは、本作の8年後に人気ドラマ『ルート66』に主演して大ブレイクし、その後も長きに渡ってテレビ界の人気スターとして活躍する。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:91分/発売元:Kino Lorber/MGM/20th Century Fox
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-02-14 01:36 | 映画 | Comments(0)

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