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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「怪談おとし穴」 The Ghostly Trap (1968)

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監督:島耕二
企画:塚口一雄
脚本:船橋和郎
撮影:小原譲治
特撮:金子友三
音楽:大森盛太郎
出演:成田三樹夫
   船越英二
   渚まゆみ
   三条魔子
   早川雄三
   見明凡太郎
   片山明彦
日本映画/78分/モノクロ作品




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<あらすじ>
現代の大都会・東京。大手貿易会社の秘書課に勤める倉本治夫(成田三樹夫)は、文書部のタイピスト、西野悦子(渚みどり)と秘かに交際していた。貧しい家庭に生まれ育ち、夜学を卒業して独学で英語を習得した彼は人一倍野心が強く、自らの出世のためには恋人の悦子に夜の接待を強要することも厭わない。それもこれも、かつて自分のことを貧乏だとバカにした連中を見返してやりたいからだった。
そんな彼の優秀な仕事ぶりに感銘を受け、全幅の信頼を置くようになった湯川社長(見明凡太郎)は、愛娘・道子(三条魔子)との縁談を倉本に持ち掛ける。社長令嬢と結婚すれば出世は間違いない。少なくとも部長の座は確定だ。このまたとないチャンスを倉本が逃すはずはなかった。ところが、嫉妬に狂った悦子が自分との関係や夜の接待の件を社長に暴露すると脅迫。それが嫌なら社長令嬢との縁談を断って自分と結婚しろと迫る。
ひとまず縁談を破棄するふりをして悦子を落ち着かせる倉本。しかし、今度は悦子が妊娠したと言い出す。このままでは自分のキャリアが台無しにされると考えた倉本は、綿密な計画を練って悦子を殺害し、会社ビルのパイプシャフトに死体を放り込む。ここならば誰にも発見される心配がないからだ。
めでたく社長令嬢の道子と結婚して業務部長となり、ハネムーンで2か月の世界一周旅行へ出かけた倉本。ところが、帰国して久しぶりに出社すると、社内で妙な噂が飛び交っていた。深夜無人の文書室からタイプライターを打つ音が聞こえる、失踪した悦子の席に座った女子社員が次々と体調不良を訴える。きっと悦子は既に死んでいて、その幽霊が化けて出ているのではないか…というのだ。
初めのうちは「そんなバカな」と聞き流していた倉本だが、しかしやはり気になってしかたない。ある晩、残業を口実に終業後の会社に残って、社内の見回りをすることにした。すると、時計が悦子を殺した時間をさすと、確かに文書部からタイプを打つ音が聞こえてくる。だが、室内を見渡しても誰もいない。と次の瞬間、倉本は恨めし気な様子でこちらを睨む悦子の亡霊を目撃する。
それ以来、倉本はだんだんとノイローゼになっていく。もともと愛情のない妻・道子にも辛く当たるようになった。そんな折、悦子の兄・文雄(船越英二)が会社を訪れ、妹の行方を尋ねてくる。知らぬ存ぜぬで冷たくあしらう倉本だったが…。
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古典怪談映画の傑作『牡丹灯籠』('68)の同時上映作品として製作された現代版怪談映画である。伝統的に大映の怪談映画というのは京都撮影所の十八番だったが、丸の内の高層オフィスビル街を舞台にした本作は東京撮影所での製作。怪談物の定番『東海道四谷怪談』のストーリーを下敷きにしつつ、立身出世のため殺人にまで手を染めてしまう企業戦士の狂気と因果応報を描いた恐怖譚である。
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主人公は大手貿易会社に勤務するサラリーマン倉本。貧しい家庭に育ったため子供の頃からバカにされ、アルバイトで生活費を稼ぎながら夜間学校を卒業し、独学で英語をマスターして一流企業に就職したという苦労人だ。恵まれない生い立ちゆえにコンプレックスが強く、出世のためなら一切の手段を選ばないような冷血漢。そんな長年の努力が実り、社長令嬢との縁談という千載一遇の出世のチャンスにも恵まれるのだが、たった一つだけ大きな問題があった。同じ会社に勤務する恋人・西野悦子の存在だ。
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是が非でも別れようとしない悦子に手を焼く倉本。そればかりか、縁談を破棄しなければ自分たちの関係はもちろん、大口の契約を取るため悦子に枕営業させたことまで社長に暴露してやるという。困った倉本はさんざん考えあぐねた末、綿密な計画を立てて悦子を殺害し、誰にも見つからぬよう死体をビルのパイプシャフトへと放り込む。これで一件落着。晴れて社長令嬢と結婚して業務部長の座を手に入れ、夢だった出世コースに乗ることが出来たと思った倉本だが、それ以来会社では不可思議な出来事が相次ぐ。
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人気のない深夜のオフィスビルに鳴り響くタイプライターの音。失踪した悦子の席に座って体調不良を訴える女子社員たち。にわかに不穏な噂が社内で広まる。あれは西野悦子の幽霊に違いない、きっと殺されてしまったんだ…と。平静を装いつつも内心穏やかではない倉本。しかも、悦子の兄までもが会社に現れ、その足取りを調べ始めていた。このままではいつか犯行がバレるんじゃないのか。これまでの苦労と努力が水の泡になってしまう。焦った倉本は幽霊騒動の真偽を確かめようとするのだが、そんな彼の周辺に鬼の形相をした悦子の亡霊が出没するようになり、やがて倉本は精神のバランスを崩していく。
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あまりにも身勝手で自己中な冷血漢・倉本は、さながら『東海道四谷怪談』の伊右衛門といったところだが、しかしエリートが幅を利かす一流企業でノンキャリアの彼が出世するためには、さすがに殺人はともかくとしても、ありきたりな倫理観などに縛られてはなかなか勝ち目がない。そこには、豊かさと引き換えに大切なものを失った、高度成長期の日本社会のダークサイドみたいなものも垣間見えることだろう。
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なので、貧しかった自分をバカにしたやつらを見返してやりたい、それにはなんとしてでも社長令嬢と結婚して出世しなければと、なりふり構わず野心を燃やす倉本というキャラクターは、にわかに共感は出来ずとも理解はできるはずだ。言うなれば、昭和の企業戦士の悪しきお手本みたいなもの。恐らく当時は、こういう人間がいてもおかしくないというリアリティがあったのではないか。本作が『東海道四谷怪談』のお岩に当たる悦子ではなく、あくまでも伊右衛門=倉本を物語の主軸にしている理由もそこにあるだろう。そうしたピカレスクロマン的な要素は本作独特の面白さだ。
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監督は『次郎物語』('41)や『銀座カンカン娘』('49)などの名匠・島耕二。伝統的な怪談映画のスタイルとモチーフを、深夜のオフィスビルという現代的な状況設定に上手く落とし込んでいるが、さすがに今となっては演出的に古臭く感じられることも否めない。むしろ、本作は『きけ、わだつみの声』('50)や『兵隊やくざ』シリーズで知られる脚本家・舟橋和郎の戦後左翼リベラル的な持ち味が生かされた作品のようにも思う。
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主演の成田三樹夫は、端正で冷たいルックスとニヒリスティックな個性が倉本役としてピッタリ。対する渚まゆみは悦子の激しい情念や執念を全力で熱演しているものの、どこか演技に硬さが残ることは否めない。なんというか、いまひとつ凄みに欠けるのだ。幸薄い美人という雰囲気は十分出ているのだけれどね。ちなみに、島耕二監督の『夕やけ小やけの赤とんぼ』('61)で主演デビューした彼女が、同監督にとって最後の劇場用映画となった本作でヒロインを演じていることは興味深い。なお、悦子の兄を演じている船越英二は、配役順だと2番目に当たるものの、実際は出番が少なく特別ゲスト的な扱いだ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
モノクロ/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:78分/発売元:株式会社KADOKAWA
特典:劇場予告編/フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2018-02-17 01:49 | 映画 | Comments(0)

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