なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「世界が燃えつきる日」 Damnation Alley (1977)

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監督:ジャック・スマイト
製作:ジェローム・M・ザイトマン
   ポール・マスランスキー
原作:ロジャー・ゼラズニー
脚本:アラン・シャープ
   ルーカス・ヘラー
撮影:ハリー・ストラドリング・ジュニア
特殊効果:ミルト・ライス
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演:ジャン=マイケル・ヴィンセント
   ジョージ・ペパード
   ドミニク・サンダ
   ポール・ウィンフィールド
   ジャッキー・アール・ヘイリー
   キップ・ニーヴン
   ロバート・ドナー
アメリカ映画/91分/カラー作品




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<あらすじ>
大陸間弾道ミサイルを格納するカリフォルニア砂漠の米空軍基地。ある日突然、ソビエトから全米主要都市へ向けて核爆弾が発射される。第三次世界大戦の勃発だ。たまたま当直だったオペレーターのデントン大佐(ジョージ・ペパード)とタナー中尉(ジャン=マイケル・ヴィンセント)は迎撃ミサイルを発射するものの、全体の4割しか撃ち落とすことが出来なかった。
それから2年後。地球は核戦争で地軸がズレてしまったせいで大きな気候変動に見舞われ、放射能の影響から多くの生物が突然変異で巨大化し、文明は滅んでしまっていた。タナーと親友のキーガン(ポール・ウィンフィールド)は空軍を除隊し、荒れ果てた世界で気ままな生活を送っている。そんな折、タバコの火の不始末による大爆発で空軍基地の大半が吹き飛んでしまい、タナーとキーガン、ペリー大尉(キップ・ニーヴン)、そしてデントン大佐の4人だけが生き残った。
そこで、彼らは空軍の巨大な水陸両用装甲車ランドマスター2台に分乗して、ニューヨーク州のオールバニを目指して旅に出ることにする。空軍基地が受信した唯一のメッセージ信号の発信地だからだ。しかし出発して早々、彼らは大きな砂嵐に巻き込まれてしまい、片方のランドマスターが大破してペリー大尉が死亡してしまう。キーガンも左足に重傷を負った。
残りのランドマスターに乗って再び旅へ出た3人。廃墟と化したラスベガスへ到着した彼らは、カジノで生存者のフランス人女性ジャニス(ドミニク・サンダ)と遭遇。彼女も旅路に加わることとなる。次にソルトレイク・シティへ寄った彼らだが、そこでは巨大化した食人ゴキブリの大群に襲われ、キーガンが食い殺されてしまった。さらに、孤児の少年ビリー(ジャッキー・アール・ヘイリー)を仲間に加えた彼らは、立ち寄ったガソリンスタンドで武装した住民に襲われるも、間一髪で敵を撃退してガソリンスタンドを爆破する。
いよいよ旅も残り僅かとなってきたが、ランドマスターの故障が目立ってきたことから、一行は部品交換のためデトロイトへ立ち寄ることにする。ところが、そこで大規模な天変地異が発生。巨大な嵐とともに津波が彼らを襲う…。
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かつて、地上波テレビの洋画番組でたびたび放送されていたSF終末パニック映画である。舞台は核戦争によって崩壊した世界。米空軍基地の僅かな生存者たちが特別装甲車ランドマスターに乗り、安住の地を求めて無線メッセージの発信源へ向けて旅立つも、その道中で放射能の影響による巨大生物や異常気象に次々と襲われる。いわゆるモンスター映画としての魅力も兼ね備えている作品だ。
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といっても、なにろ今から40年以上も前の映画なので、原始的な特撮技術も含めて突っ込みどころは多々あり。しかも、当時としてはかなり巨額の1700万ドルという製作費を投じているはずなのに、本編を見たところではそれほどの大作感が伝わってこない。むしろ、同じ20世紀フォックスが同時期に製作した『スター・ウォーズ』('77)の方が、バジェットこそ本作に及ばないものの、仕上がりのスケール感は遥かに大きい。実際、『世界が燃えつきる日』を同社のSF大作映画の目玉としていた20世紀フォックスは、2番手のはずだった『スター・ウォーズ』の予期せぬ高い完成度と爆発的な大ヒットに慌てたらしく、直前になって公開日を延期して再編集を指示したという。生存者たちの人間ドラマが極端に希薄であること、『ジョーズ』('75)の市長役で知られるマレー・ハミルトンの演じる将軍が一言のセリフもないままあっという間に消えることの理由はそれだ。
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そもそも、本作は最初に監督として白羽の矢を立てた巨匠ロバート・ワイズにオファーを断られている。理由は、当時の撮影技術では映像化が不可能だから。その代わりとして、航空パニック超大作『エアポート'75』('75)を大ヒットさせたベテラン職人ジャック・スマイト監督が起用され、原作小説に忠実だったルーカス・ヘラー(『特攻大作戦』)の脚本もアラン・シャープ(『バイオレント・サタデー』)によって改変されたのだが、それでもなお撮影には技術的な課題が多かった。
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例えば、放射能の影響で巨大化した生物たち。砂漠にウヨウヨする巨大タランチュラは、当初は実物大のクリーチャー・モデルを製作したものの、実際に撮影してみるとハリボテにしか見えなかったためボツとなり、結局は別撮りした本物のタランチュラを後から合成するというショボい方法でしか対処できなかった。この実物大タランチュラは、当時の宣材用スチル写真で確認することが出来る。また、巨大化した殺人ゴキブリも、とりあえずはマダガスカルに生息する巨大ゴキブリを使用することで解決できるかに思われたが、さすがに物理的な問題で大量のゴキブリを動員するわけにはいかず、クロースアップ用以外は偽物で代用することに。そのため、ゴキブリの大群が襲い来るシーンでは、マットレスか何かに偽物を敷き詰めて一斉に動かしているのがバレバレで、なんともお粗末な仕上がりになってしまった。
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ただ、それでもなお本物の巨大ゴキブリは見た目的にインパクト強烈だし、ゴキブリに食い殺された白骨死体を発見するシーンや、ポール・ウィンフィールド演じるキーガンが食い殺されるシーンも印象的。少なくとも、当時本作をテレビで見た筆者世代の子供たちにとっては、ある種のトラウマ映画として長く記憶されるに十分だったと言えよう。本作が劇場公開時には批評的にも興行的にも大コケしながら、後にカルト映画として秘かな人気を集めるようになった理由も、まさしくそこにあるはずだ。なので、筆者は本作が著しく不完全な映画であることを認めつつも、決して嫌いにはなれないのである。
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それに、もしも本作が'50年代のSF怪獣映画ブームの際に作られていたとしたら、恐らく巨大タランチュラも実物大のハリボテで十分通用していたはずだし、オモチャのゴキブリを使ってもそれほど違和感は覚えなかったはずだ。『2001年宇宙の旅』('68)がSF映画における特撮技術および映像表現のハードルを一気に押し上げ、当時は観客の映画を見る目も格段に肥えていた。昔ながらの特撮技術はもはや通用しないものの、かといって新たなテクノロジーも発展途上にある。当時のSFXマンの全員が、ダグラス・トランブルやトム・ハワードのような技術やアイディアを持ち合わせていたわけではない。
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まあ、そうは言っても、1700万ドルの製作費をかけたように到底思えないような見た目は確かに問題。恐らく、先述したような巨大タランチュラの撮り直しなど、見えないところで無駄に経費がかさんでしまったのかもしれない。また、核戦争後の地球における異常な空模様をオプチカル効果で表現するため、フィルムの加工作業に実は10か月近くを費やしているらしいので、そこにも結構なお金がかかっていることは想像に難くないだろう。「サウンド360」と呼ばれる独自のサラウンド上映システムも本作のために開発されたが、蓋を開けてみれば音質がイマイチということで、以降は汎用されることもないままに消えてしまった。これなんかは完全な無駄遣いですな(笑)。そうそう、製作費をかけたといえば、本作の目玉ともいえるスーパーメカ、ランドマスターの存在も忘れてはなるまい。
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水陸両用で生活設備からミサイル兵器まで完全装備した夢の巨大装甲車ランドマスター。当時の映画界の常識であれば、既存の装甲車なりトラックなりにハリボテの装飾を施した偽物を使いそうなところだが、なんと本作では30万ドルの費用をかけて実際に走行可能な本物をイチから作ってしまったのである。これがですね、とにかくムチャクチャかっこいいんですよ!もはやランドマスターなくして『世界が燃えつきる日』は語れないと言っても良いほど。デザインおよび制作を手掛けたのは、『007/ダイヤモンドは永遠に』('71)の月面車や、テレビ版『グリーン・ホーネット』の愛車ブラック・ビューティを作ったディーン・ジェフリーズ。あのジェームズ・ディーンも愛車のカスタマイズを依頼したという、カスタムカー・デザインの第一人者だ。とりあえず、このランドマスターの雄姿を堪能するだけでも、本作は一見の価値があると言えよう。
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主演は当時ハリウッドで飛ぶ鳥を落とす勢いだった若手スター、ジャン=マイケル・ヴィンセント。役者の格としてはジョージ・ペパードの方が上なのだが、なにしろ当時のペパードは失敗作続きで落ち目だったため、後輩のヴィンセントに主演の座を譲らねばならなかった。人気商売の辛いところである。翌年の『ビッグ・ウェンズデー』('78)でスターダムに上り詰めたヴィンセントは、しかしそれも長続きせずテレビへ移行し、『超音速攻撃ヘリ エアウルフ』('84~'86)でプチ再ブレイク。一方、『バナチェック登場』('72~'74)で一度テレビに挑んだことのあるペパードも、同時期に『特攻野郎Aチーム』('83~'87)でテレビに再チャレンジし、見事に人気復活を成し遂げた。ちょっとした運命の奇妙なめぐりあわせだ。
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また、本作はヴィスコンティやデ・シーカ、ベルトルッチなどヨーロッパ映画界の巨匠たちに愛された美神ドミニク・サンダの、本格的なハリウッド進出作としても映画ファンの間では少なからず話題となった。厳密にいうと、彼女のアメリカ映画初出演は『マッキントッシュの男』('73)なのだけど、あれはイギリスとの合作でロケ地もヨーロッパ。純然たるハリウッド資本の映画は本作と『太陽のエトランゼ』('79)だけだった。まことに不運としか言いようがない(笑)。
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そのほか、『ターミネーター』('85)の黒人刑事役でお馴染みのポール・ウィンフィールド、『がんばれベアーズ』シリーズの子役スターとして売れっ子だった頃のジャッキー・アール・ヘイリーが登場。また、『ダーティハリー2』('73)の白バイ警官や『狙われた夜/血に染まる大晦日のロック・パーティ』('80)の連続殺人鬼役で知られ、当時ジャック・スマイト監督作品の常連だったキップ・ニーヴンも顔を出している。ま、あっという間に死んじゃうけど。
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というわけで、核戦争後の大気汚染された世界で人間だけが全く放射能の影響を受けていない、勝手に地球の地軸が元に戻って世界が救われるなど、特撮以外にもいろいろと突っ込みどころ満載の作品ではあるものの、それゆえに愛すべきカルト映画となったことも否めないだろう。やはり、映画ファンにはこういう作品を楽しめるような余裕もあって欲しいもんです。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(イギリス盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:1.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:B/時間:91分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:1.0ch Dolby Digital/言語:英語/字幕:英語/地域コード:2/時間:88分
特典:映画評論家ポール・タルボットによる音声解説/製作者ポール・マスランスキーによる音声解説/脚本家アラン・シャープのインタビュー(約11分)/製作者ジェローム・M・ザイトマンのインタビュー(約13分)/ランドマスター制作者ディーン・ジェフリーズのインタビュー(約10分)/ポスター&スチル・ギャラリー/テレビスポット/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-02-25 21:31 | 映画 | Comments(1)
Commented by ドゴラ at 2018-05-17 14:14 x
いまみると、北斗の拳のバットが子供バージョンと大人バージョンが同時に出てる映画・・・

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