なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「唐獅子警察」 Lion Enforcer (1974)

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監督:中島貞夫
企画:日下部五郎
   松平乗道
   田岡満
原作:かわぐちかいじ
   滝沢解
脚本:野上龍雄
撮影:赤塚滋
音楽:広瀬健次郎
出演:小林旭
   渡瀬恒彦
   安藤昇
   志村喬
   河津清三郎
   渡辺文雄
   賀川雪絵
   橘真紀
   藤浩子
   室田日出夫
   北村英三
   曽根晴美
   川谷拓三
   志賀勝
   誠直也
   アンジー・ストーム
   成瀬正孝
日本映画/90分/カラー作品




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<あらすじ>
舞鶴の貧民街に生まれ育った若者・松井拓(渡瀬恒彦)は、腹違いの兄・片岡直人(小林旭)が町を出てヤクザになったのとは対照的に、自分と直人それぞれの母親の面倒を見るため地元に残った。死んだ父親は町中の嫌われ者だった飲んだくれのクズ。その妾の子として生まれた拓も、子供の頃からバカにされて育ち、今も怒りや不満を抱えながら暮らしていた。
一方、兄の直人は東京に縄張りを持つ暴力団・大成会の幹部となり、自らも片岡組を率いて羽振りの良い生活をしている。しかし、大成会は東京への進出を目論む関西の暴力団・三友会と対立しており、直人自身も久しぶりに故郷へ戻った際に三友会の刺客に襲われ、間一髪のところを拓に助けられる。
裏社会に通じる政治家・扇田代議士(河津清三郎)は、直人と三友会幹部・栗原友雄(安藤昇)を呼んで仲裁を図るも、それぞれが譲らず話し合いは決裂。そんな折、突然上京した拓が片岡組に転がり込む。兄の派手な暮らしぶりに羨望と嫉妬を覚え、ことあるごとに強く反発する拓。ある日、扇田代議士の愛人・亮子(橘真紀)に手を出そうとした拓は、彼女を預かっている直人の部下たちに袋叩きにされ、それを逆恨みして出て行ってしまう。
街の愚連隊を集めて松井組を結成し、大成会の縄張りを荒らし始める拓。武器密売人の朝倉(室田日出夫)を拉致・拷問した彼は、片岡組が買うはずだった拳銃一式を強奪する。さすがにここまで来ると大成会も見過ごすことは出来ず、苛立つ久留島会長(志村喬)や先輩幹部・上田(渡辺文雄)に指示され、拓を説得しようとする直人。しかし、既に松井組は栗原組と杯を交わし、三友会の傘下に入っていた。
かくして、大成会と三友会の縄張り争いを背景にした、腹違いの兄弟同士の熾烈な抗争が勃発する。白昼から繰り広げられる片岡組と松井組の銃撃戦。ところが、それも扇田代議士の仲介によって大成会と三友会の手打ちが成立したことで、呆気なく終焉を迎えてしまう。
松井組の縄張りも栗原組が仕切ることに。この理不尽な処遇に怒りを爆発させた拓は、報復のため会食中の栗原と上田を襲撃して射殺。その足で故郷の舞鶴へと逃げる。腹違いの兄として、落とし前を付けねばならなくなった直人は、拓を追って舞鶴へと戻るのだが…。
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『鉄砲玉の美学』('73)や『ジーンズ・ブルース明日なき無頼派』('74)の名コンビ、中島貞夫監督と渡瀬恒彦が、日活から東映へ移籍した大スター、小林旭とタッグを組んだ任侠バイオレンス・アクション。お互いに愛憎半ばする感情を抱いた腹違いの兄弟が、それぞれ敵対する暴力団に属して激しい死闘を繰り広げる。
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原作は「週刊漫画TIMES」に連載されていた同名の劇画。あの『沈黙の艦隊』で有名なかわぐちかいじの初期作品だ。ただし、どうやら原作からはタイトルを頂戴しただけで、中身的にはストーリーも設定もまるで違うものになっている様子。まあ、『ドーベルマン刑事』など当時の劇画実写化作品にありがちなパターンですな。映画会社的には「コミックの映画化」という宣伝文句が欲しいだけ。なので、中身は監督や脚本家が好き勝手にバンバンと改変してしまうってやつだ。
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ただ、筆者個人的には、それでも完成した映画が面白ければ基本的に結果オーライ。よっぽど原作に特別な思い入れがない限りは気にしない。ましてや、これなどは原作コミックを見たことも聞いたこともない。果たして、実写化が売りになるほど有名だったのかも不明だ。とはいえ、唐獅子も警察もストーリーと一切関係がないってとこだけは、ちょっとばかり引っかかるけれど(笑)。
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というわけで、ヤクザになった腹違いの兄弟同士の確執を主軸とした本作のストーリーは極めて単純。『鉄砲玉の美学』や『暴動島根刑務所』('75)などでも中島監督と組んだ野上龍雄の脚本は、あまり奇をてらうことなくストレートだ。兄の直人はクールで賢いビジネスマン・タイプ。頑固で融通の利かない部分はあるものの、基本的には組織での上手い立ち回り方をよく分かっており、決して無茶なことはしない。それゆえ親分からも一目置かれて幹部にまで出世した。それとは対照的に、弟の拓は血気盛んなやんちゃ坊主タイプ。後先のことなど全く考えず感情に任せて暴走するので、いつ何をしでかすのか皆目見当がつかないのだ。
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そんなまるで正反対な兄弟による骨肉の抗争劇。だいたい辿り着く先は見当がつくし、実際ほぼその通りになるのだから、正直なところあまり意外性はない。むしろ、本作は彼らの生い立ちや確執の原因にこそ目を向けるべきであろう。舞鶴の貧民街に生まれ育った異母兄弟の父親は、直人曰く「乞食同然の貧乏人」だった飲んだくれの暴力男。ただでさえ町一番の嫌われ者である上に、貧乏なくせして妾まで持ったもんだから、隣近所からは馬鹿にされ嘲笑の対象だった。ちなみに、正妻の息子が直人、妾の息子が拓である。
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で、最期は酔っぱらって足を滑らせて死んでしまった父親。その無様な死体を見て大笑いする町の住民は、残された2人の息子たちにも容赦がなかった。周囲の人々から後ろ指を指され、石を投げられ、バカにされ続けた異母兄弟。耐えきれなくなった兄・直人は故郷も家族も捨てて東京へ飛び出し、ヤクザの世界へ入って立身出世を遂げたが、弟の拓は2人の母親の面倒を見るため舞鶴に残り、己の恵まれない境遇を呪いながら耐え続けた。この明と暗に分かれた運命が兄弟間の確執を生むわけだが、しかしもとをただせば、狭い地域社会に蔓延る深刻な格差と差別こそが、そもそもの元凶だと言えるだろう。
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家族のことなどキッパリ捨てたと割り切りつつも、弟に対する後ろめたさを内心どこかで引きずっている直人。自分ばかり貧乏くじを引かされたと恨みながらも、そんな兄に認めてもらいたいあまり強く反発してしまう拓。そんな彼らがヤクザ同士の抗争の中で敵味方に分かれ、血を分けた兄弟でありながら凄まじい殺し合いを繰り広げる。その根底に日本的な村社会の闇を投影している点が、本作の面白さとも言えるかもしれない。
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そんな異母兄弟を演じる小林旭と渡瀬恒彦の壮絶バトルが最大の見どころだろう。中でも、煮えたぎるマグマのような渡瀬恒彦の暴れん坊ぶりは出色だ。常に怒りと不満を抱えており、いったん爆発したら誰の手にも負えない。もはやヤンチャなんて生易しいもんじゃない。当時はこの手の怒れるチンピラ役の多かった渡瀬だが、その中でもこれは最強と言えるかもしれない。一方、日活時代の全盛期に比べて恰幅の良くなった小林旭は、腰の据わった兄貴役として十分な貫禄だが、しかしこめかみに血管を浮き立たせた渡瀬の圧倒的な体当たり演技に、若干食われ気味であることも否めないだろう。
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脇役陣で光るのは、兄弟の幼馴染である女性キヨを演じた賀川雪絵。どちらかというと蓮っ葉な不良娘役の多かった女優さんだが、本作では珍しく純情でけなげで逞しい女性という役どころで、これがまたとても魅力的なのだ。また、拓の後ろ盾につく三友会幹部・栗原を演じる安藤昇も、さすが「本物」ならではの迫力で存在感抜群。あの志村喬が大成会の会長というのは意外に思われるかもしれないが、でもよくよく考えると東映任侠映画にもちょいちょい出ていたのだよね。どこか人情味のあるお父さん的味わいが、志村喬ならではといったところだろうか。同じベテラン勢としては、戦前の人気映画スター、河津清三郎が、暴力団と繋がった悪徳代議士役を演じており、若い愛人・橘真紀のオッパイに無我夢中でむしゃぶりついている(笑)。
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そうそう、拓の一味に拉致られて拷問される室田日出夫も凄惨!なんたって、顔や体に電極を当てられての電気ショック責めだからね。しかも、終いには股間に電極当てられて悶絶。ありゃ酷い(笑)。そのほか、愚連隊上がりの拓の子分には川谷拓三に成瀬正孝(なぜかスキンヘッド!)、直人の子分にはアカレンジャーこと誠直也に志賀勝、直人の命を狙う刺客に曽根晴美と、当時の東映やくざ映画ではお馴染みの面々が勢ぞろい。また、アンジー・ストームなる外人タレントがストリッパー役で登場し、渡瀬恒彦にビンタされながらのベッドシーンも演じている。
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なお、『夜のヒットスタジオ』のアレンジャーとしても有名な広瀬健次郎が担当した音楽スコア。全体的には東映アクションらしいファンキーな仕上がりなのだけど、オープニングのタイトルクレジットに流れる寂しげなテーマ曲だけが妙に浮いており、しかも何度聞いたって男性版『夜明けのスキャット』にしか聞こえない(笑)。やはり、オマージュということでよろしいんでしょうか…ね?
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語:字幕:なし/地域コード:2/時間:90分/発売元:東映ビデオ
特典:フォトギャラリー/予告編



by nakachan1045 | 2018-03-11 06:34 | 映画 | Comments(2)
Commented by Django at 2018-07-25 02:25 x
直人の子分に曽根晴美とありますが、曽根の役は冒頭で
直人を狙い、拓に返り討ちにされ海に遺棄された
センバ組の残党だったはずですが。
Commented by nakachan1045 at 2018-08-02 13:12
すいません!その通りです!これは誠に申し開きようのないミスで…。ご指摘ありがとうございます!直しておきます。

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