なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」 Goodbye - Goody Day (1959)

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監督:市川崑
制作:武田一義
原作:久里子亭(市川崑、和田夏十)
脚本:久里子亭(市川崑、和田夏十)
   船橋和郎
撮影:小林節雄
美術:下河原友雄
音楽:塚原哲夫
主題歌:川村淳 和田弘とマヒナスターズ
出演:京マチ子
   野添ひとみ
   若尾文子
   菅原謙二
   川口浩
   船越英二
   佐分利信
   石井竜一
   柴田吾郎(田宮二郎)
   三明凡太郎
   浦辺粂子
   倉田マユミ
   三好栄子
   潮万太郎
   星ひかる
   桂小文治
日本映画/87分/カラー作品




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<あらすじ>
東京の日産自動車でデザイン課に勤務する青田和子(若尾文子)は、社内でも評判の才媛だが浮いた話は一切なし。国際線スチュワーデスの妹・通子(野添ひとみ)はわがままな甘えん坊だし、男やもめの父親・伍介(佐分利信)も家の中のことはからっきしダメで、しかも窓際族に嫌気がさして会社を辞めてしまった。青田家は和子がいなければ回らないし、仕事だってやり甲斐があって面白い。とても恋愛にかまけてなどいられないのだ。
そんな和子にも実は親の決めた許婚がいる。大阪に転勤したサラリーマンの半次郎(菅原謙二)だ。といっても所詮は親同士の口約束なので、幼馴染以上恋人未満の宙ぶらりん状態。そろそろケジメを付けなきゃいけないと考えた和子は、大阪から商用で上京してきた女学校時代の先輩で大親友の梅子(京マチ子)に、婚約解消を半次郎に伝えて欲しいと頼んでおく。
大阪で老舗料亭「与太呂」を切り盛りする女性経営者の梅子。和子から伝言を頼まれて「よっしゃ、任せとき」とばかりに半次郎の会社へ乗り込んだ彼女は、思いがけず自分が半次郎に惚れてしまう。これに困惑したのが、梅子の血のつながらない兄・虎雄(船越英二)だ。勝手に梅子を自分の嫁にと考えていた彼は、それまで恋愛にも結婚にも興味のなかった梅子の心変わりに心中穏やかではない。また、一方的に和子からの婚約解消を伝言された半次郎も納得できず、梅子の猛烈アタックにも迷惑する。
その頃、半次郎の母親まさ(三好栄子)からの電話で婚約解消を知った伍介はビックリ。和子の意志が固いと知った彼は、それならばと別の縁談を持ってくるが、いざとなるとお見合いの邪魔をして破談にさせてしまう。そんな父親に呆れつつも内心は嬉しい和子。独り身の父親を残したまま、よそへ嫁に行くことなど出来ないと考えていたのだ。そんな和子に秘かな想いを寄せるのが、青田家に出入りしている苦学生の哲(川口浩)。しかし、弟みたいな哲を和子は異性として意識していない。
やがて、出張で大阪へ行くことになった和子は、この際に面と向かって半次郎に気持ちを伝えようと考える。ところが、梅子が半次郎に惚れたと知って心が揺らいでしまう。彼女もまた、決して半次郎が嫌いなわけではなかったのだ。しかし、改めて直接話をしてみて、真面目だが鈍感な半次郎と結婚しても幸せになれないことを悟る。
東京に帰ってみると、今度は通子から「哲と結婚したい」と伝えられる和子。しかし、本人にはまだ気持ちを打ち明けていないという。和子からの呼び出しに心浮き立つ哲は、要件が通子との縁談と知ってガッカリするのだが、結局のところ彼の気持ちを知らない和子に押し切られ、申し出を受けることにする。半次郎と梅子の結婚も決まった。周囲が次々と幸せになっていくことに、一抹の寂しさを感じる和子だったが…。
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いやはや、なんとも愉快で面白い風俗コメディである。大映時代の市川崑と言えば、『野火』('59)に『おとうと』('60)に『黒い十人の女』('61)にと、野心的で優れた映画群を次々と世に送り出し、長いキャリアで最も脂の乗った時期だったと言えるが、これはそれらと比べても全く遜色のない隠れた名作だ。
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主人公は東京で日産自動車に勤務するキャリアウーマンの和子(若尾文子)と、大阪で由緒正しい老舗料亭を営む女性経営者の梅子(京マチ子)。どちらも妙齢の女性だが、今のところ仕事一筋で結婚する気などまるでない。商いに忙しい梅子に「結婚どころやあらへんな」と和子が冗談めかして言うと、すぐさま「あれは能なしの女のすることや。私やあんたが結婚してはったら神様が笑はる、仏様が泣きはる」と梅子が即答し、2人して思わずニンマリ。そんな和子の妹・通子(野添ひとみ)も国際線のスチュワーデスとして空を飛び回っている。女性の社会進出が目立ち始めた昭和30年代らしい設定だ。
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しかし商売がトントン拍子の梅子はともかくとして、和子が結婚に前向きになれないのは仕事ばかりが理由じゃない。自分が嫁に行ったら、残された家族はどうなってしまうのか?中でも彼女の心配の種は男やもめの父親・伍介(佐分利信)だ。いかにも伝統的な日本のお父さん。家の中じゃ偉そうにしているくせに、家事などまるっきりダメで生活力は限りなくゼロに近い。「寂しい哀しそうなお父さんなんて嫌、あたし。お父さんにはいつも威張っていてもらいたい」と呟く和子の言葉がジンと胸に沁みる。ほんと、いい娘だよ。
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そうした和子の切ない娘心も知らず、なにかにつけ「早く結婚して親を安心させてくれ」と口うるさい伍介。父親が勝手に決めた許婚・半次郎(菅原謙二)との婚約を和子が破棄すると、今度はよそから縁談を持ってきて押し付ける。ところが、お見合いの当日になると仮病を使って娘を足止めさせ、せっかくの縁談をおじゃんにさせてしまう。「ま、どうせろくな男じゃないさ」とうそぶく伍介だが、やはり本音では娘を嫁になんかやりたくない。自分では気付いていないけど、まるで子離れができていないのだよね。しかも、その中途半端な依存心が和子を苦しめていることにも無自覚。いわば無邪気な毒親だ。
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そもそも、本作に出てくる男たちは揃いも揃って身勝手で鈍感で情けない。伍介なんかはまだ全然マシな方である。真面目なだけが取り柄で繊細な女心にはまるで無頓着な半次郎、店の経営を任せっきりにしておきながら一人前に旦那面している血のつながらない兄・虎雄(船越英二)、和子に横恋慕しつつも本気でぶつかる勇気などなく流されるまま通子と婚約する若者・哲(川口浩)。どいつもこいつも、男という立場に胡坐をかいておきながら、実際のところは女性に依存してばかりだ。
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そのくせして、いざフラれると「女は得体が知れない」だの「女が偉くなるとろくなことない」だの、自分の不甲斐なさを棚に上げて文句をたれる。いまだに少なからずいるよね、こういう残念な日本の男たちって。偏見を偏見とも思っておらず、それどころか解消されない男女不平等を無視して、女ばかり贔屓されている!男性差別だ!などと騒いでいる勘違いな輩どもが。本作から60年近く経っているけど、あまり進化しているとは言えまい。というか、むしろ当時より退化しているかも。
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そんな旧態依然とした男たちを尻目に、自らの人生を鮮やかに切り開いていこうとする女性たちを生き生きと描く市川崑。今見ても全く色褪せることのない人間描写、世相描写は、まさに先見の明と言えるだろう。しかも、あえて俳優たちに無機質でつっけんどんな芝居をさせ、辛辣なセリフの応酬をスピーディに畳みかけることで、独特の軽妙なテンポとブラックな笑いを構築していく。その洗練されたモダンな演出センスは秀逸だ。
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また、しばしば小津安二郎作品のパロディやオマージュとして語られる本作だが、確かに佐分利信や三好栄子の起用を含めて小津映画との共通点はとても多い。和子を巡る家族ドラマや結婚騒動などは、まさにその好例だろう。伝統的な日本の家族の日常風景として小津映画のシチュエーションを拝借しつつ、そこに近代的なひねりを加えることで戦後日本社会への風刺を込めたとも受け取れる。嫁入りしてメデタシメデタシ…とはならないラストなど、その象徴ではないだろうか。
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でもって、若尾文子である。とにかく本作の若尾文子の超絶な可愛らしさときたら!眼鏡をかけたクールなキャリアウーマンの和子、眼鏡をはずした無防備でけなげな和子。その相対する二面性は、今で言うツンデレみたいなところもあって素晴らしく魅力的だ。もちろん、色っぽさと可愛らしさを兼ね備えた京マチ子も素敵だし、自由奔放で溌溂とした野添ひとみもチャーミング。男優陣も好演だが、中でも川口浩の茶目っ気たっぷりな爽やかさは格別だ。また、駆け出しの頃の田宮二郎が、柴田吾郎名義でオープニングに顔を出しているのも見逃せない。
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評価(5点満点):★★★★★

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:87分/発売元:株式会社KADOKAWA
特典:劇場予告編/スタッフ・キャスト解説/フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2018-04-19 10:44 | 映画 | Comments(0)

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