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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「ダイヤモンド作戦」 Operation Amsterdam (1959)

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監督:マイケル・マッカーシー
製作:モーリス・ゴーワン
原作:デヴィッド・E・ウォーカー
脚本:マイケル・マッカーシー
   ジョン・エルドリッジ
撮影:レジナルド・ワイヤー
美術:アレックス・ヴェチンスキー
音楽:フィリップ・グリーン
出演:ピーター・フィンチ
   エヴァ・バルトク
   トニー・ブリットン
   アレクサンダー・ノックス
   マルコム・キーン
   クリストファー・ローズ
イギリス映画/100分/モノクロ作品




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<あらすじ>
欧州本土でナチス・ドイツ軍のオランダ侵攻が始まり、英国ではウィンストン・チャーチルが首相に就任した1940年5月10日。その12時間後、ロンドンのとある建物の一室で、英国政府と在英オランダ臨時政府による共同の極秘作戦が計画されていた。それは、アムステルダムに残された大量の工業用ダイヤモンドを、ドイツ軍の手に渡る前に秘密裏にイギリスへ輸送するというもの。実行部隊にはオランダの有力な宝石商人の息子ヤン・シュミット(ピーター・フィンチ)とその友人のカイザー(アレクサンダー・ノックス)、そして英国軍諜報部のディロン少佐(トニー・ブリットン)の3人が選ばれた。
軍艦からボートへ乗り移り、秘かにオランダの港へと到着した一行。迎えの軍艦が再び来港する14時間後までに任務を完了せねばならない。国外へ避難しようという市民で港が混乱する中、ヤンたちは自殺を図ろうとした女性アンナ(エヴァ・バルトク)を救う。戦争で行方不明になった恋人の両親を船で国外へ逃がそうとしたアンナは、ドイツ軍の空爆に遭って彼らを死なせてしまったことから、自責の念に駆られて死を選ぼうとしたのだ。アムステルダムまでの移動手段が必要だった彼らは、アンナの運転する車で送り届けてもらうことにする。
アムステルダムはまるで死の街だった。市民の多くはドイツ軍の侵略を免れるため脱出したが、錯綜する情報に混乱して留まったままの人々もいる。街のいたるところにオランダ軍の兵士が警備に当たっているものの、その中には敵方へ寝返った裏切者たちも紛れているし、オランダ兵に変装したドイツ軍のバラシュート部隊が大量に流入しているとの噂もある。誰が敵で誰が味方なのか、誰にも分からない状況だ。
そうした中、一行はヤンの父親ヨハン(マルコム・キーン)と合流。その足で宝石商の集まる紳士クラブへ出向き、彼らが所有する工業用ダイヤモンドを英国政府に預けるよう願い出る。だが、決して強要することは出来ない。ダイヤモンドが英国政府の手に渡ったことがドイツ軍にバレた場合、報復を受けるのは彼ら宝石商たちだからだ。協力希望者は自由意志で夕刻までにヨハンのオフィスへ来るよう言い残し、ひとまず一行はその場を去ることにする。
その頃、アンナはオランダ軍の司令部にいた。ディロン少佐は彼女がドイツ側のスパイではないかと疑うが、実はアンナはオランダ軍大佐と旧知の仲で、ヤンたちが無事に任務遂行できるよう協力を得ていたのだ。
次に、一行は銀行襲撃の下調べに向かう。というのも、工業用ダイヤモンドの一部は銀行に保管されているのだが、タイマーで管理された金庫が開くのは24時間後であるため、ドイツ軍の侵攻をかい潜りながら爆破せねばならなかった。レジスタンスに協力を仰ぎに行くディロン少佐、予め銀行の周辺を調べるヤンとカイザー。その途中でオランダ軍兵士に襲われる彼らだったが、アンナの機転で上手く逃げおおせる。
やがて夕刻が訪れた。宝石商たちが次々とオフィスへ集まり、手持ちのダイヤモンドをヤンたちに預ける。それを受け取った彼らは、オランダ軍大佐の指揮する兵士たちに援護されて銀行へ。レジスタンスと交流して金庫の爆破に挑むのだが、そこへ別のオランダ軍部隊が来襲して銃撃戦となってしまう…。
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英国産実録戦争スパイ映画の隠れた名作である。時は1940年5月10日、戦乱の嵐吹き荒れる欧州ではナチス・ドイツがオランダ、ベルギー、ルクセンブルグへの侵攻を開始し、イギリスでは挙国一致体制へ向けてウィンストン・チャーチルが首相に就任。その12時間後から物語は始まる。イギリス政府と在英オランダ臨時政府が協力して、アムステルダム市内に残された大量の工業用ダイヤモンドを秘密裏に英国へ持ち出し、ナチス・ドイツの手に渡ることを未然に防ごうというのだ。
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実はこれ、第二次世界大戦初期に英国政府主導で決行された本当の極秘ミッションを下敷きにしている。どこまでが実際に起きた出来事で、どこからがフィクションなのかは不明だが、作品を見る限りにおいて恐らく、登場人物の設定には少なからず創作が含まれているだろう。また、劇中では英国側に協力するレジスタンス部隊が登場して大掛かりな市街戦が展開するものの、まだオランダ侵攻が始まったばかりの段階で組織的なレジスタンスが存在していたとは考えにくい。それなりに事実を脚色していることは想像に難くない。
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主人公は有力なオランダ人宝石商の息子ヤンとその友人カイザー、そして英国軍諜報部のディロン少佐。彼らは漁港からオランダへ上陸してアムステルダムへ向かい、現地の宝石商や銀行が保管している工業用ダイヤモンドを回収してロンドンへ持ち帰ることとなる。作戦そのものは非常にシンプルだ。しかし、現地はドイツ軍の攻撃による混乱の真っただ中。一触即発の状況で何が起きるか分からない。非常に危険な任務だと言えよう。
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まず本作で驚かされるのは、その非情なまでに徹底したリアリズム志向だ。とりあえず、ロンドンの一角で作戦会議が行われるオープニングは意外なくらいのどか。なにしろ、当時のイギリスはまだ本格的な対独戦に踏み切っていなかったし、ドイツ空軍によるロンドンへの空襲が始まるのも約4か月後のことだから仕方あるまい。しかし、一行がオランダの漁港へ上陸した瞬間、たちまち映画の空気は一変する。
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国外へ脱出しようと港へ殺到する大勢のオランダ市民、そこへめがけて容赦なく爆撃や一斉掃射を仕掛けるドイツ軍の戦闘機。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。その様子をカメラはまるでドキュメンタリーのように淡々と捉えていく。これが戦争というものだ!と言わんばかりの圧倒的な臨場感だが、その光景を見つめる眼差しは極めて淡々と冷徹だ。それは主人公たちも同様で、血まみれで倒れた犠牲者たちを尻目にアムステルダム市内を目指す。彼らには何よりも最優先すべき任務がある、人命救助は別の誰かの仕事だ。自殺しようとした女性アンナを助けたのも、彼女が運転する車を必要としたからに過ぎない。
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そうした戦時下の残酷な現実は、アムステルダムへ到着してからもなお続く。いや、彼らはより一層のこと非情な決断を迫られていく。宝石商たちを集めて工業用ダイヤを自分たちに預けるよう説得するヤンたち。だが、その多くがユダヤ人である宝石商たちにとって、それは生死を分ける選択ともなりかねない。ナチス・ドイツがアムステルダムを制圧するのも時間の問題。もはや避けることは出来ないだろう。ドイツ軍がやって来た際にダイヤモンドがあれば、命の保証と交換条件に利用することも出来る。しかしダイヤモンドがなくなっていることが分かれば、その場で殺されるか強制収容所行きである。
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本来であれば宝石商たちも一緒に助けたいところだが、しかし極秘任務ゆえに大勢での移動は不可能。それが彼らにとって死刑宣告にも等しいことはヤンたちも分かっている。だが、それでもなお協力を願わねばならない。せめて妻だけでもイギリスへ連れて行ってくれないかという老宝石商に、まとめ役を頼まれたヤンの父親が言う。「それを許してしまったら、その他の人々も救わねばならなくなる」と。なんとも胸を締め付けられる瞬間だ。
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一方、工業用ダイヤは街中の銀行にも眠っている。だが、今日は日曜日。タイマー仕掛けの金庫は月曜日の朝にならないと開かない。現地レジスタンスの協力を得て金庫爆破を計画する一行だが、しかしドイツ空軍による攻撃は街のいたるところで続いているうえ、どこにスパイが潜伏しているか知れない。そもそも、街中にはあちこちでオランダ軍兵士が警備に当たっているのだが、その中には早々とドイツ側に寝返った部隊もいれば、オランダ兵に化けてアムステルダムへ降り立ったドイツ軍のパラシュート部隊も紛れている。誰が味方で誰が敵なのか全く判別がつかないのだ。
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そんな混沌とした状況をリアルに捉えるため、本作では余計な説明の一切をあえて省いている。つまり、主人公たちと同じく観客もまた、誰が敵で誰が味方なのか分からないのだ。相手のオランダ兵がドイツのスパイだと勘違いして攻撃してくるのか、それとも既にドイツ側へ寝返った裏切者部隊なのか、最後までほとんど明らかにされないまま。とにかく、生き残ってダイヤを国外へ持ち出さねばならない。相手の素性を確かめる暇も、こちらの素性を説明する余裕も一切なし。邪魔する者は片っ端から殺すしかない。そんな一寸先は闇とも言うべきカオスのど真ん中に、観客自身も容赦なく放り込まれてしまうのである。
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兵隊が点在するだけでもぬけの殻となったアムステルダムの大通り、同じ軍服を着た兵士同士が銃撃し合う市街戦、その数ブロック先では僅かに残った市民がカフェでコーヒーを飲んでいる。そのあまりにもシュールな光景が、日常の延長線上にある戦争という非日常の不気味さを物語って秀逸だ。戦闘シーンにおける生々しいバイオレンスもインパクト強烈だし、運河の張り巡らされた市内を縦横無尽に駆け巡る激しいカーチェイスも迫力ある。主人公ヤンとアンナの関係が、決してロマンスへ発展しないところも潔い。
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監督は英国産ノワール映画を得意としたマイケル・マッカーシー。なるほど、本作のダークで非情なタッチは、やはりハードボイルドのジャンルで培われたものだったのか。残念ながら日本での公開作はこれ一本だけで、しかも42歳という若さで急逝してしまい、結果的に本作が遺作となってしまった。これはあまりにも惜しい。これ一本だけしかまだ見ていないので断言は出来ないものの、恐らく生きていればイギリス版のドン・シーゲルやサム・ペキンパーのような存在になっていたかもしれないし、それこそハリウッドへ進出することだって出来たかもしれない。改めて再発見すべき映画監督であろう。
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主演は後に遺作『ネットワーク』('76)でアカデミー主演男優賞に輝く名優ピーター・フィンチ。ちょうどオードリー・ヘプバーン共演のハリウッド映画『尼僧物語』('59)で、世界的なスターへの階段をのぼり始めたばかりの頃だ。そのほか、ウィルソン大統領役を演じた『ウィルソン』('44)でアカデミー主演男優賞候補になったアレキサンダー・ノックス、『ジャッカルの日』('73)でイギリス警察のトーマス警視を演じたトニー・ブリットン、サイレント時代のヒッチコック作品の常連だったマルコム・キーンなど渋い顔ぶれが揃う。
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そして、紅一点のヒロインを演じるのが、ハンガリー出身の国際的なスター女優エヴァ・バルトク。イギリスや西ドイツ、イタリアなど各国の映画で活躍した人だが、恐らく最も有名な作品はマリオ・バーヴァ監督の元祖ジャッロ映画『モデル連続殺人』('64)だろう。イタリアで撮影されたディーン・マーティン主演の『Ten Thousand Bedrooms』('57)にも出演したが、本格的なアメリカ進出には至らなかった。どこか憂いを含んだ大人の魅力がある、とてもいい女優である。
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評価(5点満点):★★★★☆

参考DVD情報(イギリス盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.33:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:なし/地域コード:ALL/時間:100分/発売元:Strawberry Media/ITV Studios
特典:なし

by nakachan1045 | 2018-05-01 04:19 | 映画 | Comments(0)

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