なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「狼男アメリカン」 An American Werewolf in London (1981)

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監督:ジョン・ランディス
製作:ジョージ・フォルシー・ジュニア
脚本:ジョン・ランディス
撮影:ロバート・ペインター
特殊メイク:リック・ベイカー
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:デヴィッド・ノートン
   ジェニー・アガター
   グリフィン・ダン
   ジョン・ウッドヴァイン
   ライラ・ケイ
   フランク・オズ
アメリカ・イギリス合作/97分/カラー作品




<あらすじ>
イギリス北部のヨークシャーをヒッチハイクで旅するアメリカ人の若者デヴィッド(デヴィッド・ノートン)とジャック(グリフィン・ダン)。とある満月の晩、2人は片田舎のパブを出た後、野原のど真ん中で迷子になってしまい、狼のような怪物に襲われてしまう。駆け付けた地元住民によって怪物は銃撃され、デヴィッドは辛うじて一命を取り留めたものの、ジャックは殺されてしまった。意識が遠のいていく中、デヴィッドが銃殺された怪物の方を見ると、そこには全裸の男の死体が横たわっていた。
デヴィッドはロンドンの病院で目を覚まし、ジャックの死を知らされ混乱する。警察によると2人は狂人に襲われたことになっていた。そうではない、自分たちを襲ったのは何か巨大な動物だと訴えるデヴィッドだったが、事情聴取に訪れた刑事たちはまるで取り合わず、担当医ハーシュ(ジョン・ウッドヴァイン)もショックによる錯覚だと言う。困惑を隠しきれないデヴィッド。夜な夜な奇妙な悪夢を見る彼の前に、今度は死んだはずのジャックが現れた。狼男に殺されたため成仏できないのだという。お前もいずれ狼男になる、僕のような犠牲者をこれ以上出してはいけない。そう語るジャックは、狼男に変身する前に自殺をするようデヴィッドに勧める。
これも事件の後遺症による幻覚だと考えたデヴィッドだが、次第に病院食を受け付けなくなるなど体調が変化していく。そんな彼を心配した看護婦アレックス(ジェニー・アガター)は、病院から退院した彼を自分のアパートに住まわせる。いつしか2人は愛し合うようになっていた。だが、そこにもジャックのゾンビが姿を現し、デヴィッドに警告する。狼男になる前に死ぬんだと。そしてアレックスが夜勤に出かけた満月の晩、遂にデヴィッドは狼男へと変身し、ロンドンの街へ飛び出して殺戮を繰り広げる。
その頃、デヴィッドの様子に疑問を持ったハーシュ医師はヨークシャーへ向かっていた。地元警察が実はろくに捜査を行っていないこと、ジャックの検死もいい加減であることを知って驚くハーシュ医師。しかも、地元の人々は本気で狼男伝説を信じて恐れている。ハーシュ医師はそうした状況がデヴィッドに心理的な悪影響を及ぼし、狼男になってしまうという強迫観念に取りつかれてしまったのではないかと考える。このままいくと、デヴィッドは他人に危害を加えることになるかもしれない…と。
ロンドンに戻ったハーシュ医師は、デヴィッドを病院に連れてくるようアレックスに指示する。しかし、6人の犠牲者を出した猟奇連続殺人事件のニュースを知ったデヴィッドは、愛するアレックスを巻き込んではいけないと逃走。自殺をしようにも死にきれず、ピカデリー広場のポルノ映画館へ迷い込むのだったが…。

ホラー映画の歴史において、『13日の金曜日』の公開された1980年がスラッシャー映画ブームの元年だったすれば、その翌年の1981年は、さしずめ「人狼映画復活の年」だったと言えるだろう。なにしろ、その年の4月に『ハウリング』、7月に『ウルフェン』、そして8月に本作『狼男アメリカン』と、相次いで3本ものジャンル映画が全米で劇場公開されたのだから。まあ、『ウルフェン』だけは蓋を開けてみれば人狼映画ではなく、高度な知性を持つ狼が人間を襲うという動物ホラーだったのだが、それにしても当時既に半ば忘れかけられたジャンルが突如として復活し、少なくともそのうち『ハウリング』と『狼男アメリカン』の2本が大ヒットを記録したというのは、なかなか印象深い出来事だった。

現在まで続く人狼映画のルーツとされるのは、ユニバーサル製作の『倫敦の人狼』('35)。これは大きな成功に至らなかったものの、続く第2弾『狼男』('41)はジャック・ピアースのインパクト強烈な特殊メイクや悲劇的なストーリーの面白さもあって大ヒットし、主人公ローレンス・タルボットを演じたロン・チェイニー・ジュニアは人気スターとなった。狼人間は満月の晩に変身する、噛まれた犠牲者もまた狼人間になってしまう、銀の弾丸で殺すことが出来るなど、今ではお馴染みとなった人狼映画の約束事は、いずれも一連のユニバーサル作品がルーツだ。

その後、オリヴァー・リードが主演したイギリスのハマー・ホラー作品『吸血狼男』('61)や、スペイン映画『吸血鬼ドラキュラ対狼男』('68)に始まるポール・ナッシー主演のワルデマール・ダニンスキー・シリーズなどが人気を集めたものの、リアリズムを重視したモダン・ホラーの時代になると、その他のクラシック・モンスターたちと同様に、人狼映画は急速に過去のものとなっていく。やはり最大のネックは、人間から人狼へ変身する際の映像表現にあったと言えよう。昔の原始的な特殊メイク技術では表現方法に限界があり、どうしても子供だましになってしまうことは避けられなかったのである。

そんな人狼映画最大の弱点を克服し、特殊メイクの世界に革命をもたらしたのが『ハウリング』と『狼男アメリカン』だった。どちらも、当時の最先端技術を使って人間から人狼への変身をリアルに表現。中でも、暗闇で細部をごまかした『ハウリング』に対して、人体が次第に変形して四つ足の怪物になっていく様を、明るい照明のもとで克明に描いた『狼男アメリカン』の特殊メイクは衝撃そのもの。今見てもインパクトは十分に強烈。担当したリック・ベイカーが、新設されたアカデミー賞の特殊メイクアップ賞の第1回受賞者となったのも納得というほかない。

そもそも、ジョン・ランディス監督が最初に本作のアイディアを思いついたのは'68年のこと。当時、戦争映画『戦略大作戦』('68)のスタッフとしてユーゴスラヴィアに滞在していたランディスは、たまたま現地のジプシーが葬儀の際に行う死者復活を封じる儀式を目撃し、その様子がユニバーサル映画『狼男』に出てくるジプシーとそっくりであることに興味を抱いたという。そこからインスパイアされた彼は、少なくとも翌年には本作の草稿を完成させていたものの、しばらくは企画を温存することとなる。

その後、監督デビュー作『シュロック』('71)でリック・ベイカーと組んだランディス監督。本作の企画を打ち明けたところベイカーが興味を示したことから、映画化へ向けて本格始動することになる。だが、あちこちに脚本を持ち込んだものの、当時は誰からも見向きされなかったという。その間にランディス監督は『ケンタッキー・フライド・ムービー』('77)と『アニマル・ハウス』('78)、『ブルース・ブラザース』('80)を立て続けにヒットさせ、ハリウッドで最もホットな映画監督の仲間入りを果たす。特に『ブルース・ブラザース』の爆発的な大ヒットは監督自身に大きな興行的価値をもたらし、ここへきてようやく『狼男アメリカン』映画化の目処が立つこととなったのである。

一方、最初にランディス監督から企画の話を聞いて以来、狼人間の変身シーンの特殊メイクを研究していたリック・ベイカーだったが、何年経っても動き出す様子がないことから、もはや映画化が実現することはないだろうと諦めていたようだ。そこへ、ジョー・ダンテ監督から『ハウリング』のオファーが入り、このチャンスを逃す手はないと考えたベイカーは即答で引き受けてしまったという。もちろん、ランディス監督には内緒で(笑)。

ところが、『ハウリング』の制作に取り掛かった段階で、ランディス監督から『狼男アメリカン』のゴーサインが出たとの連絡が入る。なんという運命のいたずら(笑)。裏切りやがったな!と激怒するランディス監督に平身低頭のベイカー。そこで、彼は『ハウリング』の特殊メイクを愛弟子ロブ・ボッティンに引き継ぎ、コンサルタントとしてそちらの技術面をサポートしつつ『狼男アメリカン』を担当することとなる。まさに苦肉の策ですな。

そんなわけで、どちらもリック・ベイカー絡みの人狼映画という意味で、親戚関係にあるとも言える『ハウリング』と『狼男アメリカン』。両方とも大好きな映画だけど、特殊メイクの出来栄えに関していえば、やはり『狼男アメリカン』に軍配が上がるかな。機械仕掛けの精巧なダミーヘッドやダミーボディを駆使したトランスフォーメーションの見事な仕上がり、しかもそれを明るい照明のもとで見せてくれるというサービス精神。当時、日進月歩で進化していた特殊メイク技術だが、それにしても本作におけるリック・ベイカーの仕事は画期的だった。ただ、変身後の姿に関していう言えば、四つ足の本作よりも二つ足の『ハウリング』の方が、いかにもモンスター然としていてカッコいいので好みだけど。

また、恐怖と悲劇と喜劇を絶妙なバランスでブレンドした、ジョン・ランディス監督のトラジックコメディ的な語り口も魅力だ。基本的にはストレートなホラー。人狼伝説の残る英国北部を旅するアメリカ人の若者2人が狼男に襲われるわけだが、一人だけ生き残ったデヴィッドはわけの分らぬまま不条理な状況に放り込まれ、やがて自身も狼男へと変身して他者を血祭りにあげていく。そんな彼の前に現れるのは、死んでゾンビとなった親友ジャック。まさに生きるも地獄、死ぬも地獄。しかも、この呪いという名の負の連鎖に終止符を打つためには、元凶である狼男、つまりデヴィッドが自ら死を選ばねばならない。とはいえ、死にたくてもなかなか死ねないのが、人間の性(さが)というものなのだよね。

見知らぬ土地でとんだ災難に遭ってしまった人間の孤独、極限下で愚かな行動を取ってしまう人間の可笑しさ、そして破滅的な運命から逃れることの出来ない人間の哀しみ。それらが混然一体となった独特のペーソスこそ本作の醍醐味だとも言えよう。随所に挿入される悪夢シーンのシュールな味わいもユニークだし、ピカデリー・サーカスを舞台にした終盤のパニック・シーンも見ごたえあり。『ブルース・ブラザース』の残酷バージョンとも言うべき、過激なカークラッシュの阿鼻叫喚は迫力満点だ。また、ボビー・ヴィントンの『ブルー・ムーン』やヴァン・モリソンの『ムーンライトダンス』など、月をテーマにしたBGMのセンスの良い使い方もランディス監督ならではである。

主演のデビッド・ノートンはドクター・ペッパーのテレビCMでブレイクし、主演ドラマの主題歌「Makin' It」を歌って全米チャート5位の大ヒットを記録した人物。映画での大役はこれが唯一となったわけだが、いかにも人の好さそうな普通の若者といった風情が役柄にはピッタリだった。まあ、それゆえに大成しなかったとも言えるのだけれど。親友ジャック役のグリフィン・ダンは、その後マーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』('85)で評価され、一時は結構な売れっ子俳優となった。デヴィッドに好意を寄せる看護婦アレックスを演じたジェニー・アガターは、『美しき冒険旅行』('71)や『エクウス』('77)などで有名なイギリスのスター女優。最近でもマーベル映画『アベンジャーズ』シリーズに顔を出しているが、やはりこの頃の彼女は抜群に綺麗で魅力的だった。

なお、本作は初めてDVD化された頃から、画質に難ありとしてファンの間では評判芳しくなく、その問題はブルーレイになっても完全に解消されたとは言い難かった。なんというか、フィルムグレイン…つまりフィルム粒子のざらつきが全体的に濃すぎて目障りなんだよね。黒味も弱いためナイトシーンは見づらい。DVDよりは高画質だけどブルーレイとしては明らかに及第点。まあ、古い映画ゆえに仕方ないのか、現存するフィルムの状態が悪いのかと思っていたら、'16年に突然「修復版」ブルーレイが米ユニバーサルよりリリースされた。

これがですね、今までのバージョンはなんだったのか?と言いたくなるほどの高画質。フィルムグレインは殆ど分からないほど最小限に抑えられており、おかげで全体の色合いまで一皮むけたようなナチュラルな仕上がりだ。まあ、フィルムらしさが若干失われたことは否めないものの、過去のブルーレイ版に比べれば格段の進歩と言えよう。やれば出来るじゃん、ユニバーサル!って感じだ。

ただ、残念ながら今のところ日本盤のリリースはなし。基本的にユニバーサルのブルーレイは世界共通仕様が一般的で、国外盤にも日本語字幕の入っている場合が多いのだが、手元にある『狼男アメリカン』の修復版BDには英語およびフランス語の字幕のみ収録で、吹替えもフランス語だけ。そもそも現時点でアメリカ盤しか出ていないので、各国でのリリースは現地支社の独自判断にお任せしますってことなのだろう。

評価(5点満点):★★★★★

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio (English)・2.0ch DTS Dolby Digital (French)/言語:英語・フランス語/字幕:英語・フランス語/地域コード:ALL/時間:97分/発売元:Universal Home Entertainment
特典:俳優デヴィッド・ノートンとグリフィン・ダンによる音声解説/メイキング・ドキュメンタリー「Beware the Moon」(2009年制作・98分)/リック・ベイカーのインタビュー「I Walked with a Werewolf」(2009年制作・約8分)/テレビ用メイキングビデオ「Making An American Werewolf in London」(1981年制作・約5分)/ジョン・ランディス監督インタビュー(2001年制作・約18分)/リック・ベイカー インタビュー(2001年制作・約11分)/特殊メイク舞台裏ビデオ「Casting of the Hand」(1981年制作・約11分)/アウトテーク集(約3分)/ストーリーボード(約2分)/写真ギャラリー



by nakachan1045 | 2018-05-04 05:47 | 映画 | Comments(0)

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