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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「嵐を呼ぶプロ・ファイター」 Perche Uccidi Ancora (1965)

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監督:ホセ・アントニオ・デ・ラ・ローマ
製作:アルフォンソ・バルカザール
脚本:グレン・ヴィンセント・デイヴィス(ヴィンチェンツォ・ムソリーノ、エドゥアルド・ムラルギア)
撮影:ヴィタリアーノ・ナタルッチ
美術デザイン:ヴィンチェンツォ・ムソリーノ
音楽:フェリーチェ・ディ・ステファーノ
出演:アンソニー・ステファン
   ジョセフ・カルヴォ(ホセ・カルヴォ)
   イヴリン・スチュワート(イーダ・ガリ)
   ジェニファー・クロウ(ジェンマ・クエルヴォ)
   ヒューゴ・ブランコ
   スタンリー・ケント(ステリオ・カンデッリ)
   フランク・キャンベル(フランコ・ペスチェ)
   リチャード・マクムーア(アルド・ベルティ)
   ペドロ・サンチェス(イグナチオ・スパッラ)
   ホセ・トーレス
イタリア・スペイン合作/88分/カラー作品




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<あらすじ>
メキシコ国境の小さな町。独裁者ロペス(ホセ・カルヴォ)とその手下たちによって農園主マクドゥガルが虐殺される。その知らせを受け、マクドゥガルの息子スティーブン(アンソニー・ステファン)は騎兵隊を脱走して故郷へ戻ってきた。復讐に燃える彼は、不意討ちをかけてきたロペスの刺客を皆殺しにする。ロペスの娘でスティーブンの元恋人ピラール(ジェンマ・クエルヴォ)は、これ以上の殺し合いは無意味だとして、彼に復讐を思いとどまるよう説得するものの、スティーブンの怒りは収まらない。
翌朝、ロペスの息子マヌエル(ヒューゴ・ブランコ)が手下を率いてスティーブンを襲撃。しかし、農園に爆弾を仕掛けていたスティーブンの罠にはまって一網打尽となり、マヌエルも一騎打ちで射殺される。息子を失ったロペスは怒り狂い、殺し屋グリンゴ(アルド・ベルティ)の一味を雇う。だが、酒場でスティーブンに絡んだグリンゴの兄(リノ・デスモンド)が殺されてしまった。
その頃、脱走兵であるスティーブンの行方を捜して騎兵隊が町に到着する。スティーブンの妹ジュディ(イーダ・ガリ)や友人の葬儀屋サム(フランコ・ペスチェ)らは事の経緯を騎兵隊に説明するが、その居場所については一貫して口を閉ざす。一方、兄を殺されて怒りに燃えるグリンゴはマクドゥガル家の農園を襲撃。見張り役の騎兵隊員とスティーブンの叔父を殺害し、ジュディを人質として連れ去った。
スティーブンの居場所を聞き出すためジュディを拷問するグリンゴ一味。見るに見かねたピラールは彼女を助けようとする。目撃情報をもとにスティーブンを追跡するグリンゴだが、またしても出し抜かれてしまった。度重なる失敗に苛立つロペスはグリンゴをクビにするが、頭にきたグリンゴはロペスとピラールを殺害し、ジュディを人質にしてメキシコへ逃亡しようとする。その後を追いかけるスティーブンだったが…。
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B級マカロニ俳優アンソニー・ステファンの初主演映画である。『荒野の用心棒』('64)に始まるクリント・イーストウッドの大成功を受けて、当時ハリウッドでくすぶっていた多くの若手俳優がイタリアへ渡って西部劇に出演したが、一方でイタリア国内の若手俳優たちも次々とブームに便乗して西部劇スターを目指した。その代表格が『続・荒野の用心棒』('66)で大ブレイクしたフランコ・ネロだったわけだが、それに先駆けて西部劇に進出したイタリア人俳優がアンソニー・ステファンだった。
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もともと本名を短くしたアントニオ・デ・テッフェという名前で、'50年代半ばに映画デビューしたステファン。折からのスペクタクル史劇ブームに乗って頭角を現したところ、今度はマカロニ・ウエスタンのブームが到来したことから、新たにアングロサクソン風のアンソニー・ステファンと改名して売り出されたというわけだ。いまひとつ地味で華に欠けるため、フランコ・ネロやテレンス・ヒル、バド・スペンサーほどのトップスターにはなれなかったものの、それでも低予算の小品を中心に数多くの西部劇に主演した。
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ちなみに、彼の家系はプロイセンにルーツを持つ由緒正しい貴族(爵位は伯爵)で、父親はフォーミュラ・ワンにも優勝した元カーレーサーにしてブラジル外交官。その父親がブラジル大使としてローマ赴任中に生まれた。つまり本当はイタリア人ではなくブラジル人なのだが、第二次世界大戦の勃発でイタリアに留まったのだ。実は生粋のお坊ちゃまだったというのは意外だが、しかし戦時中は少年兵としてパルチザンに加わってナチスと戦い、戦後はヴィットリオ・デ・シーカ監督のメッセンジャー・ボーイからスタートして映画界で身を立てたという苦労人でもあった。
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そんな彼がアンソニー・ステファン名義で初めて出演した西部劇は西ドイツ映画『夕陽のモヒカン族』('65)だったが、しかしマカロニ西部劇への出演はこの『嵐を呼ぶプロ・ファイター』が初めて。単独で主演に起用されたのも本作が初だ。ただ、日本での劇場公開はだいぶ後になってしまった。なので、邦題も直前に公開された『荒野のプロ・ファイター』('66)に因んだだけ。恐らく、日本の配給会社が勝手にステファン主演作を『プロ・ファイター』シリーズと命名しようとしたのだろう。実際、別の配給会社はステファン主演作を『プロガンマン』シリーズとして売り出している。ま、結果的に日本でのステファン人気は大して盛り上がらなかったので、どちらも2本づつで終わっているのだけど。
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本作でステファンが演じるのはアメリカ騎兵隊の兵士スティーブン。厳密な時代設定は分からないが、劇中に出てくる青地に黄色のラインが入った制服から察するに、恐らく南北戦争時の南軍騎兵隊だろう。テキサスの故郷に住む父親が、地元を牛耳る大地主ロペスに惨殺されたと知った彼は、勝手に騎兵隊を離脱して帰郷。妹や叔父の止めるのも聞かず、怒りの衝動に任せてロペスの一味を片っ端から殺していく。で、可愛い息子をスティーブンに殺されたロペスも復讐の鬼と化し、卑劣な殺し屋グリンゴを雇って反撃。そのグリンゴも兄をスティーブンに殺されて憤怒。かくして、血で血を洗う壮絶な殺し合いが繰り広げられていくことになるわけだ。
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ということで、憎しみに目がくらんだ男たちがひたすら殺し合うという話。冒頭からいきなりスティーブンの父親マクドゥガル氏がハチの巣にされるシーンから始まり、その後も余計な説明を極力省きながらテンポ良くストーリーが展開していく。人物関係もストーリーの流れに沿って徐々に明かされる、もしくは示唆されるので、それなりに集中力や読解力が必要とされる作品だ。
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そればかりか、そもそもなぜロペスはマクドゥガル氏を殺したのか?という根本的な理由についても、どうやらマクドゥガル氏のせいでロペスは半身不随になったらしいということはセリフで触れられるが、しかしその発端などの原因は最後まで全く明かされない。恐らく、もはや彼らにとって過去の原因などどうでも良くなってしまったのだろう。スティーブンにしたって父親の復讐という目的はだんだんと曖昧になっていき、しまいにはロペス一味を皆殺しにすること自体が目的と化していく。原題のPerche Uccidi Ancoraとは「なぜまだ殺すのか?」という意味だが、これはまさに、そんな終わりなき憎しみの連鎖のもたらす悲劇を描いた作品だと言えよう。
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監督のホセ・アントニオ・デ・ラ・ローマは、どちらかというと映画監督よりも脚本家として有名な人物だが、セリフの説明に頼ることなく物語を構築していく演出に、脚本家出身らしからぬビジュアリストぶりを発揮する。ただ、惜しむらくはラストがありきたりなハッピーエンドになってしまったことか。もうちょっとダークで悲壮感のある終わり方をすれば、憎しみの連鎖という重いテーマがより明確になったのではないかと思う。そういう意味では、落としどころの甘さは否めないだろう。
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西部劇ファンにとって重要なガンプレイも総じて平凡。サディスティックなバイオレンス・シーンは満載だが、マカロニお得意のギミック的な武器やアクションが少ないのは物足りなく感じられるかもしれない。ただ、スティーブンが実家の敷地に地雷のごとく爆弾を仕掛けておくという戦術は、確かナタリー・ポートマン主演の西部劇『ジェーン』('16)でも使われていた。まさか、ギャヴィン・オコナー監督が本作を参考にした…わけではなかろうな、やっぱり(笑)。あと、シネスコのワイド画面をめいっぱい使って、ロケ地であるスペインはラ・フランハ地方の雄大な自然を捉えた、ダイナミックでスケールの大きなカメラワークは意外と見応えがある。
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また、本作で印象的なのはフェリーチェ・ディ・ステファーノによる音楽スコア。哀愁の漂うメロディと壮大なサウンドはなかなか聴き応えがある。当時のイタリア映画界は数々の偉大なマエストロたちがしのぎを削る戦国時代で、その中で埋もれてしまった感のある作曲家だが、本作などはさすがにモリコーネとまでは言わないまでも、それこそルイス・バカロフやフランチェスコ・デ・マージにも引けを取らない立派な仕事ぶりだ。まあ、ひっきりになしに使われているので若干くどく感じられるけれど(笑)。
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悪の親玉ロペスを演じているのは、『荒野の用心棒』の宿屋の主人シルヴァニート役で有名なスペイン人俳優ホセ・カルヴォ。ヒロインを演じるマカロニ西部劇唯一の女性スター、イヴリン・スチュアートことイーダ・ガリは、今回は主人公の恋人役ではなく妹役。その代わりとして、スペインの有名なテレビスター、ジェンマ・クエルヴォが、愛するスティーヴと父親ロペスの間で苦悩する女性ピラールを演じている。
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そのほか、『西部悪人伝』('70)などサバタ・シリーズでお馴染みのペドロ・サンチェスことイグナチオ・スバッラ、『殴り込み兄弟』('67)のヒューゴ・ブランコ、『皆殺しのジャンゴ/復讐の機関銃(ガトリングガン)』('68)の裏切者役が強烈だったホセ・トーレス(ここでは完全に狂った殺し屋)など、マカロニ西部劇の常連俳優が勢ぞろい。なお、スティーブンになにかと力を貸す素っ頓狂な葬儀屋の老人サムを演じているフランコ・ペスチェ(本作ではフランク・キャンベルとクレジット)は、戦中戦後の大衆喜劇で活躍した名脇役俳優で、マカロニ西部劇でもたびたび変わり者の老人を演じて愛された人だ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:イタリア語・英語/字幕:日本語/地域コード:2/時間:88分/発売元:エルディ
特典:なし




by nakachan1045 | 2018-05-09 02:48 | 映画 | Comments(0)

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