なかざわひでゆき の毎日が映画&音楽三昧
「Ruby」 (1977)

監督:カーティス・ハリントン
製作:ジョージ・エドワーズ
製作総指揮:スティーヴ・クランツ
原案:スティーヴ・クランツ
脚本:ジョージ・エドワーズ
バリー・シュナイダー
撮影:ウィリアム・ウェンデンホール
音楽:ドン・エリス
出演:パイパー・ローリー
スチュアート・ホイットマン
ロジャー・デイヴィス
ジャニット・ボールドウィン
サル・ヴェッキオ
フレッド・コーラー・ジュニア
アメリカ映画/84分/カラー作品

<あらすじ>
1935年のマイアミ。名うてのプレイボーイであるギャング、ニッキー・ロッコ(サル・ヴェッキオ)が組織の仲間に粛清され、その殺害現場に居合わせた妊娠中の情婦ルビー・クレア(パイパー・ローリー)は、ショックのあまり産気づいて子供を出産する。
時は移って1951年。16年前の事件のせいで前途有望だった歌手としてのキャリアを断たれたルビーは、同じように組織壊滅へと追い込まれたギャングたちを雇ってドライブイン・シアターを経営していた。一人娘レスリー(ジャニット・ボールドウィン)は無事に成長したが、しかし生まれてこのかた一言も喋らない。最愛の人ニッキーに瓜二つの娘に対して、ルビーは愛憎入り混じる感情を抱いていた。
そんなある晩、仕事中の映写技師が謎の死を遂げる。警察沙汰を避けたいルビーは、経理担当ヴィンス(スチュアート・ホイットマン)に命じて死体を秘密裏に処分させたのだが、それ以来、一人また一人と元ギャングのスタッフたちが怪死する。さらに、ルビー自身も死んだニッキーの幻影や幻聴に悩まされるようになっていた。
人知の及ばぬ何かが起きていると感じたヴィンスは、かつて刑務所で世話になった精神科医ケラー(ロジャー・デイヴィス)を呼び寄せる。というのも、ケラーには強い霊感が備わっており、死者と交信する能力があったのだ。すると、言葉を一切発することのなかったレスリーが突然喋り始めた。だが、その声は明らかにニッキーのものだった。
かくして、16年前に死んだニッキーの怨霊が、成長した娘レスリーに憑りついて復活を遂げた。果たして、その目的は自分を殺したギャングたちへの復讐なのか、それとも…?

一言で言うならば、『エクソシスト』('74)×『キャリー』('76)である。当時の映画界はオカルト・ブームの真っただ中。『エクソシスト』や『オーメン』('76)の二番煎じ映画が数えきれないほど作られたが、本作は思春期の少女が悪霊に憑依されるという『エクソシスト』の基本プロットを踏襲しつつ、そこに母親と娘の歪んだ確執という要素を盛り込むことで、前年に大ヒットしたばかりの『キャリー』までをもパクっているのである。

しかも、その母親役を演じているのがパイパー・ローリー。そう、『キャリー』で娘を虐待する宗教原理主義者のシングルマザー役を演じて映画界復帰し、当時アカデミー助演女優賞候補になって話題を呼んだ女優である。本作では最愛の男性を殺された過去のトラウマに憑りつかれ、我が娘に愛憎入り混じる感情をぶつけるシングルマザーという、明らかに『キャリー』の延長線上にある毒親役。実際、本作の企画そのものが、当初からパイパー・ローリーの主演を想定していたようだ。

物語の始まりは1935年。当時売り出し中のクラブ歌手だったルビーは、恋人のギャング、ニッキーと夜のデートを楽しんでいたが、そこに仲間のギャングたちが現れてニッキーをハチの巣にしてしまう。実は、ニッキーの先輩格ジェイクもルビーに横恋慕しており、恋敵にあらぬ濡れ衣を着せて粛清したのだ。妊娠中だったルビーはショックのあまり、その場で産気づいて出産。ハリウッド映画デビューも決まっていた彼女は、この一件で芸能界でのキャリアを失い、組織も壊滅に追い込まれてしまった。

それから16年後の1951年。ルビーはジェイクの金でドライブイン・シアターをオープンし、組織の元メンバーたちをスタッフとして雇っている。ビジネスは大盛況。ただし、娘のレスリーは生まれてこのかた一言も喋ったことがなく、母親に対しても全く心を開かない。最愛の人ニッキーの思い出に今も囚われたままのルビーは、彼と瓜二つの娘に対して複雑な感情を抱いており、心の底では愛しながらも厳しく当たってしまうのだった。

そんなある日、ドライブイン・シアターの映写技師が死体で発見される。それも、大量のフィルムに首を絞められ宙吊りになった状態で。これを皮切りに、次々と元ギャングのスタッフたちが怪死していく。そればかりか、ルビーの周囲では奇妙な怪現象が次々と続発。実は、娘レスリーの体にニッキーの怨霊が憑りついていたのだ…!というわけで、以降は非業の死を遂げた亡霊による復讐劇と霊能者による悪魔祓いが展開していくことになる。

監督は『ナイト・タイド』('61)や『悪魔のくちづけ』('67)、『ヘレンに何が起こったのか?』('71)など、ホラー&ミステリーのジャンルで数々の秀作を残している隠れた名匠カーティス・ハリントン。もともとケネス・アンガーとのコラボレーションでアヴァンギャルドな実験映画を撮っていたハリントンは、ヴァル・リュートンやアンリ=ジョルジュ・クルーゾーに影響された詩的な映像美と丹念な心理描写で評価の高い人なのだが、しかし残念ながら本作は即席で撮られたドライブイン・シアター向けの安易なパクリ映画という印象が否めない。

それはハリントン監督自身も認めるところで、彼にとっては悔いの残る作品だったようだ。実際、撮影そのものがトラブルの連続だったという。そもそも現場の右腕となる撮影監督ウィリアム・ウェンデンホールとの折り合いが悪かったのだが、なにより最大の問題は脚本の原案を書いた製作総指揮者のスティーヴ・クランツだったらしい。アニメ界の巨匠ラルフ・バクシのプロデューサーとしても知られるクランツは、使用する撮影機材の選択から演出方法にまでいちいち口を挟み、しまいにはハリントン監督に無断で別の監督と俳優を雇って撮ったラストシーンまで無理やり追加してしまった。

さらに、テレビ放送の際には制作会社が新たに別の監督と脚本家を雇って追加シーンを撮影し、勝手な再編集によってストーリーまで変えてしまう。憤慨したハリントン監督は制作会社相手に訴訟を起こすことになるのだが、いずれにせよ彼の作家性や持ち味が十分に活かされた作品だとは言い難い。まあ、そこは雇われ監督の哀しさであろう。

前半は元ギャングたちが悪霊によって次々と殺されていくスラッシャー映画風味、後半は悪霊に憑依された少女レスリーが狂ったように暴れる『エクソシスト』風味。奇想天外な趣向を凝らした殺害方法はバラエティに富んでいるものの、なにしろ予算も時間も限られているだけに仕上がりは極めてチープだ。それは悪魔憑きシーンも同様で、『エクソシスト』の安上がりなコピーに終始している。あえて直接的な恐怖描写を避け、情感や深層心理に重きを置くハリントン監督の作品とは思えぬ安直さだ。

ただし、随所にハリントン監督らしさを垣間見ることも出来る。ハリウッド黄金期の怪奇幻想映画やノワール映画に多大な影響を受けた彼は、自作でも'30~'50年代を舞台に選ぶことが多いのだが、そうした時代描写の表現力は本作でも少なからず発揮されている。また、どこか芝居がかったパイパー・ローリーのドラマチックな演技には、ハリントンが愛してやまないグロリア・スワンソンやベティ・デイヴィスなど往年の大女優の影を感じるし、そんな彼女の姿を象徴的なスポットライトで浮かび上がらせる演出は、ハリントンが最も敬愛する巨匠ジョセフ・フォン・スタンバーグへのオマージュと見ていいだろう。

とはいえ、よっぽど予算が少なかったためなのだろう、エキストラのヘアメイクや衣装は必ずしも時代考証が徹底されておらず、どうしても'70年代っぽさがチラついてしまう。また、劇中のドライブイン・シアターでは伝説のカルト映画『妖怪巨大女』('58)が上映されているのだが、しかし本作の舞台設定は1951年。まだ『妖怪巨大女』は作られていない。これもどうやらハリントン監督のチョイスではなく、製作総指揮者スティーヴ・クランツの注文だったらしい。実際、『妖怪巨大女』をこよなく愛したクランツは、後にリメイク版の制作を企画しているものの、結局は実現までに至らなかった。

なお、脇役のキャストについても触れておこう。ルビーの右腕としてドライブイン・シアターを仕切る男ヴィンスを演じているのは、ガイ・グリーン監督の『愛の絆』('61)でアカデミー主演男優賞候補になったスチュアート・ホイットマン。当時は『シャッター』('72)や『ビッグ・マグナム77』('76)など、B級アクションへの主演が多かった。ルビーの娘レスリー役のジャニット・ボールドウィンは、リーマーヴィン主演の『ブラック・エース』('71)で人身売買組織に捕らわれた少女ヴァイオレットを演じていた女優。霊感を持つ精神科医ケラー役には、ジャクリン・スミスの元旦那として知られるロジャー・デイヴィスが扮している。また、盲目となった元ギャングの老人ジェイクには、'30年代のB級西部劇映画スター、フレッド・コーラー・ジュニア。ただし、もともとハリントン監督自身はこの役に、'30年代のギャング映画スター、ジャック・ラ・ルーを希望していたらしい。

というわけで、正直なところ欠点だらけの作品ではあるものの、あちらこちらから溢れ出てくるハリントン監督の映画愛には少なからず感じ入るものがある。言うなれば、嫌いになれないポイントだ。なお、これまでアメリカでは幾度となくビデオソフト化されてきた本作。'14年に米VCI社からリリースされたブルーレイ&DVDの2枚組セットは、35ミリのオリジナルネガ・フィルムから2Kリマスターされたとのことだが、さすがに同時代のメジャー作品に比べると、画質的に古ぼけたような印象は否めない。

評価(5点満点):★★★☆☆
参考ブルーレイ&DVD情報(アメリカ盤)
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:84分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:84分
発売元:VCI Entertainment
特典:カーティス・ハリントン監督と女優パイパー・ローリーによる音声解説/評論家デヴィッド・デル・ヴァルとナサニエル・ベルによる音声解説/カーティス・ハリントン監督と評論家デヴィッド・デル・ヴァルの対談(2001年制作・約59分)/カーティス・ハリントン監督と評論家デヴィッド・デル・ヴァルのテレビ対談1(1988年制作・約28分)/カーティス・ハリントン監督と評論家デヴィッド・デル・ヴァルのテレビ対談2(1988年制作・約29分)/オリジナル劇場予告編
by nakachan1045
| 2018-06-16 13:23
| 映画
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