なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「未来から来たハンター/ヨオ」 Il mondo di Yor aka Yor, the Hunter from the Future (1983)

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監督:アンソニー・M・ドーソン(アントニオ・マルゲリティ)
製作:ミケーレ・マルサラ
原作:フアン・ザノット
   レイ・コリンズ
脚本:ロバート・ベイリー
   アンソニー・M・ドーソン(アントニオ・マルゲリティ)
撮影:マルチェロ・マスチオッキ
特撮:エドワード・マルゲリティ(エドゥアルド・マルゲリティ)
   トニー・マルゲリティ(アントニオ・マルゲリティ)
音楽:ジョン・スコット
追加音楽:グイド&マウリツィオ・デ・アンジェリス
出演:レブ・ブラウン
   コリンヌ・クレリー
   ジョン・スタイナー
   カロル・アンドレ
   アラン・コリンズ(ルチアーノ・ピゴッツィ)
   アイーシェ・ギュル
   アイテキン・アッカーヤ
   マリーナ・ロッキ
   セルジョ・ニコライ
イタリア・フランス・トルコ合作/89分/カラー作品




<あらすじ>
原始時代のような荒野をひたすら走る未開人の若者ヨオ(レブ・ブラウン)。孤児として育った彼は、物心ついた時から持っている黄金のペンダントを手掛かりに、自分のルーツを探していた。恐竜に襲われた若い女性カラー(コリンヌ・クレリー)と老人パグ(ルチアーノ・ピゴッツィ)を助けたヨオは、彼らの仲間が暮らす小さな村に招き入れられる。カラーは父親を亡くした王女で、パグはその忠実な家来だった。
ところが、ヨオを歓迎する宴の最中に、悪党ウカン(アイテキン・アッカーヤ)の率いる青い肌を持つ蛮族の集団が乱入。年寄りと子供たちは皆殺しにされ、若い男女が奴隷として連れ去られてしまう。辛うじて逃げたヨオとカラー、パグの3人だったが、その途中でウカンら一味に再び襲撃され、ヨオの大切なペンダントを奪われた上にカラーをさらわれてしまった。
蛮族たちの住む洞穴へとたどり着いたヨオとパグ。巨大蝙蝠の羽を使って敵陣に飛び込んだヨオは、カラーとペンダントを奪い返すことに成功。逃走する最中に発見した溜池の堰止めをを外し、洞穴を洪水で満たして敵を壊滅させる。かくして、ヨオたちは山の向こうの砂漠を目指すことに。そこには彼と同じペンダントを胸に下げ、同じように金色の髪を持つ女性が女神として崇拝されているらしい。
ミイラのような恰好をした砂漠の民に捕らえられ、女神ロア(アイーシェ・ギュル)のもとへ連れて行かれるヨオ。彼女もまた自らの出自を知らなかったが、幼い頃に大きな城のある奇妙な島に住んでいた記憶があるという。砂漠の民によって処刑されそうになったヨオだったが、駆け付けたカラーやパグの助けで敵を一網打尽にし、ロアを加えて旅を続けることにする。
しかし、ヨオとロアがお互いに惹かれ合うことを快く思わないカラーは、ヨオが目を離したすきにロアを殺そうとする。すると、そこへウカン率いる蛮族の残党が現れた。女性たちの悲鳴を聞いて駆けつけるヨオとパグ。なんとか蛮族を皆殺しにしたヨオたちだったが、残念ながらロアが犠牲になってしまった。彼女の言っていた奇妙な島を探そうと海岸へ向かった一行。そこで彼らは、恐竜に襲われた若い娘と子供たちを助ける。
若い娘の名前はタリタ(マリーナ・ロッキ)。彼女の住む村へと招かれたヨオたちだったが、そこに奇怪な飛行物体が現れて村人が虐殺されてしまう。その飛行物体は嵐に守られた奇妙な島からやって来たらしい。それこそが自分たちの目指す島だと直感したヨオは、辛うじて生き残ったタリタからボートを譲り受けて島を目指すが、その途中で嵐に巻き込まれてボートが難破してしまう。
気が付くと島の支配者・帝王(ジョン・スタイナー)に捕らえられていたヨオ。実は、この島に住むのは核戦争を生き延びたエリート集団の末裔だったのだ。科学技術を悪用してアンドロイドを開発し、自らが新世界の独裁者となった帝王。それに反発したヨオの両親は島を脱出したものの、幼いヨオだけが生き残ったのだった。自らの出自を知ったヨオ。そんな彼を女性科学者エナ(カロル・アンドレ)が助ける。実は、エナは秘かに帝王の打倒を目指して反乱軍を組織していたのだ。かくして、帝王率いるアンドロイド軍団と反乱軍の戦争が勃発。ヨオとカラー、パグの3人も反乱軍に加わることとなる…。

タイトルそのものが完全なるネタバレという、まことにトホホなイタリア産B級ヒロイック・ファンタジーである。大ヒットしたハリウッド映画をパクるというのは、かつてイタリア映画界の十八番芸みたいなものだったが、本作の元ネタはずばりシュワちゃん主演の『コナン・ザ・グレート』('82)。そもそも、当時はアメリカでも『勇者ストーカー』('83)シリーズやら『ミラクルマスター/七つの大冒険』('82)シリーズやらと、柳の下の泥鰌を狙ったパチモノ映画がバンバンと作られていた。節操がないと言えばその通りかもしれないが、それだけ低予算娯楽映画のマーケットに活力がある、いい時代だったとも言えよう。

もちろん、パチモノ映画大国イタリアだって負けちゃおりません。『世紀末戦士アトー/炎の聖剣』('82)シリーズに『怒りの戦士/グレート・トア』('83)、『SFコンクエスト/魔界の征服』('83)、『超人ヘラクレス』('83)シリーズなどなど、マカロニ版なんちゃって『コナン』映画を文字通りの大量生産。その中の1つが、この『未来から来たハンター/ヨオ』だったわけだ。

とはいえ、実を言うと本作にはちゃんとした原作本がある。それが、1974年から'83年まで通算48巻も出版された、アルゼンチンの人気コミック「Henga, el cazador(狩人ヘンガ)」。もともと主人公の名前はヘンガだったらしいのだが、'75年にイタリアで翻訳出版された際にヨオへと変更されたようだ。これがイタリアでも大変な評判を呼び、その翻訳版を読んで気に入っていたイタリア映画界随一の娯楽職人アントニオ・マルゲリティ監督が、『コナン・ザ・グレート』ブームの際に便乗する形で映画化したというわけである。

しかも、どういうわけかハリウッド大手のコロムビア・ピクチャーズがアメリカでの配給権を獲得。どうやら、米国内だけでも300万ドル近い興行収入を記録したらしい。これは予算20万ドル、30万ドルなんて珍しくない当時のイタリア産B級娯楽映画としては、ぶっちゃけ結構なスマッシュ・ヒット。マルゲリティ監督自身、本作の予算は限りなくゼロに近かったと語っているので、恐らくだいぶ儲かったに違いない。

そんなプチ・メジャー級のヒットを飛ばした本作だが、内容的にはテレビの子供向け特撮ドラマと大して変わらないと言えよう。主人公はブロンドのマッチョなバーバリアン・ヒーロー、ヨオ。カツラを被っているのが丸分かりなのはご愛敬として、とりあえずこのブロンドというのが一つのポイントとなる。なぜなら、この原始時代と思しき本作の世界において、ブロンドの髪を持つ人間は彼ただ一人だけなのだ。なんで俺だけ髪が金色なんだ?なんで俺には両親がいないんだ?なんで俺は子供の頃から変な金メダルを首からぶら下げているんだ?次から次へと疑問を抱いた彼は、自分のルーツと正体を探るべく放浪の旅に出る。何一つとして当てはないのだけど(笑)。

で、その旅の途中で焼きもち焼きの元プリンセス、カラーとその従者である老人パグと親しくなったヨオは、恐竜やら蝙蝠のお化けやら蛮族やらと戦いながらも、ようやく己が生まれた謎の要塞島へとたどり着く。そこで彼が知った衝撃の真実とは…?って、タイトルでほぼネタバレしているので正直に申し上げましょう。実は、この島の住民は核戦争を生き延びたエリート集団の末裔。つまり、太古の原始時代かと思われたこの世界は、核戦争で文明が滅び去った後の未来だったというわけだ。

それって『猿の惑星』じゃねえかよ!という突っ込みもほどほどに、旧世界のハイテク技術を維持して文明的な生活を送っているエリート人類。ブロンドの白人=優秀な文明人ってことみたいですが、今だったらこの設定、完全にアウトですな(笑)。と、それはともかく、この島を支配する独裁者・帝王のいで立ちがまんま『スターウォーズ』シリーズのダース・シディアスなのにはズッコケる。ご丁寧に、フォースもどきな超能力まで使えるしね。しかも、そんな彼が従える邪悪なアンドロイド軍団が、これまたダース・ベイダーくりそつときたもんだ。で、美しき女性科学者エナをリーダーとする反乱軍が決起し、まさしく『スターウォーズ』さながらのレーザービーム飛び交う一大バトルが繰り広げられる。

ってなわけで、『コナン・ザ・グレート』のみならず『猿の惑星』に『スターウォーズ』までパクった、なんとも贅沢で欲張りな逸品(?)。ついでに、クィーン風のテーマ曲はまるっきり『フラッシュ・ゴードン』である。ま、実際のスケール感はご想像の100万分の一くらいだと思ってよろしいかと存じますが(笑)。とりあえず、セットも特撮も超激安。公開当時の劇場用ポスターには円盤型の宇宙船が何機も描かれているが、本編に出てくるのはUFOらしき飛行物体の一部のみ。しかも飛んでいない。海辺の村がUFOに襲撃されるシーンだって、見えるのはレーザービームだけで飛行物体そのものはフレームの外。終盤のアンドロイド軍団と反乱軍のバトルも、どこぞの工場施設内をグルグルと走り回っているだけだ。

とはいえ、スピーディでバラエティ豊かなストーリー展開は意外と飽きない。敵の蛮族を一網打尽にするついでに味方の村人まで皆殺しにしてしまう、初めて見るはずのコンピューターやレーザー銃を次の瞬間には使いこなしているなど、お前ら深いこと一切考えていないよな!?と言いたくなる脚本は突っ込みどころのオンパレードだが、そういう適当ないい加減さもまた、なんだか見ていて妙に微笑ましい。トルコのカッパドキア周辺でロケをした屋外シーン、実寸大のハリボテを使った恐竜や巨大蝙蝠など、予算がない中で創意工夫した見せ場の数々も悪くない。本作がラジー賞で3部門の候補になるなど圧倒的に酷評されながらも、カルト映画として長年に渡って人気を集めている理由であろう。言うなれば、愛すべきポンコツ映画なのだ。

主演はジーン・ハックマン主演の戦争映画『地獄の7人』('83)で、爆発物担当のベトナム帰還兵ブラスター役を演じたアメリカ人俳優レブ・ブラウン。テレビ映画『超人キャプテン・アメリカ』('79)のキャプテン・アメリカ役でも知られる、元アメフト選手のタフガイだ。彼によると、当初は4週間の予定だった撮影期間が最終的に6か月にまで延びたという。アクションシーンのスタントも全て自身でこなしたため、撮影が終わった頃には体重が30ポンド(約14キロ)近くも落ちていたという。

それでも、半年間の撮影を共に乗り切ったスタッフ・キャストとはかなり親しくなったらしく、パグ役のルチアーノ・ピゴッツィや帝王役のジョン・スタイナーとは撮影終了後も交友が続いたそうだ。また、コロムビア・ピクチャーズが配給権を買ったことで彼のギャラも跳ね上がり、帰国の際にはスーツケースいっぱいの現金を渡されたのだとか。そのギャラでロサンゼルスの自宅とBMWを購入したらしい。彼にとって、本作にまつわる思い出は良いものばかりだという。これが劇場用映画の初主演だった彼は、その後も『ストライク・コマンドー』('87)や『サイバーロボ』('88)などのイタリア産B級映画に主演している。

ヒロインのカラー役を演じるのは、『O嬢の物語』('75)で有名な'70年代のセックス・シンボル、コリンヌ・クレリー。パグ役のアラン・コリンズことルチアーノ・ピゴッツィ、帝王役のジョン・スタイナーは共にマルゲリティ監督作品の常連俳優。どちらも同時期にトルコで撮影されたマルゲリティ作品『アドベンチャー・アーク/アポロンの秘宝』('83)にも出演している。また、女性科学者エナ役のカロル・アンドレはイタリアを拠点に活躍したフランス人女優で、巨匠ヴィスコンティの名作『ベニスに死す』('71)にも娼婦役で出演していた。

なお、上映時間はイタリア公開版の98分に対してアメリカ公開版は89分。かつて日本発売されたVHS版も、今年アメリカでリリースされた35周年記念盤ブルーレイも、どちらもアメリカ公開版を収録している。ブルーレイの画質は、古いイタリア産B級映画ということを考えればかなり上等。修復作業はされていないので部分的なチラつきは散見されるが、全体としては十分にクリアでクリスプだ。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:89分/発売元:Mill Creek Entertainment/Columbia Pictures
特典:俳優レブ・ブラウンによる音声解説/アメリカ版オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-07-19 18:11 | 映画 | Comments(0)

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