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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「群衆の中の殺し屋」 The High Commissioner (1968)


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監督:ラルフ・トーマス
製作:ベティ・E・ボックス
原作:ジョン・クリアリー
脚本:ウィルフレッド・グレートレックス
撮影:アーネスト・スチュワード
美術デザイン:アンソニー・ウーラード
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ロッド・テイラー
   クリストファー・プラマー
   リリー・パルマー
   カミラ・スパーヴ
   ダリア・ラヴィ
   クライヴ・レヴィル
   リー・モンタギュー
   イードリック・コナー
   カルヴィン・ロックハート
   ダーレン・ネスビット
   バート・クウォーク
   ケン・ウェイン
特別出演:フランチョット・トーン
イギリス映画/102分/カラー作品




<あらすじ>
オーストラリアの田舎町に勤務する刑事スコビー・マローン(ロッド・テイラー)は、ある日突然シドニーへと呼び出される。彼を待ち受けていた大物政治家フラナリー(レオ・マッカーン)は、イギリス在住のオーストラリア人高等弁務官クエンティン卿(クリストファー・プラマー)を逮捕するよう命じる。フラナリーによるとクエンティン卿は偽名を使っており、その正体は25年前に妻を殺して逃亡した犯人ジョン・コーリスだというのだ。
しかし、クエンティン卿は国際的にも名の知られた大物だ。同席した警視総監リーズ(ラッセル・ネイピア)は慎重になるべきだと助言するが、フラナリーは確たる証拠を独自に入手したと主張して譲らない。漠然とした疑問を拭えず気が進まないマローンだったが、仕方なくロンドンへ向かうこととなる。
丁度その頃、クエンティン卿はアフリカ大陸の和平を目的とした東西の講和条約を締結するため、その仲介人として奔走していた。ロンドンへ到着して真っ直ぐにクエンティン邸へと赴いたマローンは、事情を説明した上で自分と一緒にオーストラリアへ戻るようクエンティン卿に申し出る。
意外にも、クエンティン卿はすんなりとマローンの要請を受け入れたが、しかし講和条約締結の目処が立つまで数日間だけ待ってくれという。この条約には世界平和がかかっているからだ。紳士的で誠実なクエンティン卿の人柄に少なからず感銘を受けたマローンは、本国の了解を得て帰国までの間クエンティン卿を監視することにする。
表向きはクエンティン卿の護衛任務でやって来たことにして、クエンティン邸の客人として滞在することとなるマローン。だが、クエンティン卿の秘密を知っており、その身の上を誰よりも案じている最愛の妻シーラ(リリー・パルマー)や、クエンティン卿を尊敬して忠誠を誓っている秘書リサ(カミラ・スパーヴ)は、マローンが何か隠していることに薄々勘付いて疑惑の目を向ける。
その晩、パーティの最中にクエンティン卿はアメリカ大使タウンセンド(フランチョット・トーン)に呼び出される。ところが、クエンティン卿が公用車に乗り込もうとしたところ、待ち受けていた暗殺者集団に銃撃された。マローンの機転で一命を取り留めたクエンティン卿。さらに、講和条約の内容の一部が事前にリークされたことも判明する。何者かが講和条約の締結を阻止するため、そのキーマンであるクエンティン卿の命を狙っていると直感したマローンは、リサの協力を得て独自の捜査に乗り出す。
そんなマローンに接近する妖艶な謎の貴婦人マダム・ショロン(ダリア・ラヴィ)、皮肉屋のアメリカ大使館職員ジャマイカ(カルヴィン・ロックハート)、周囲を詮索するクエンティン邸の執事ジョセフ(クライヴ・レヴィル)などの怪しげな人々。やがて、さらなる暗殺者の魔手がクエンティン卿とマローンに次々と忍び寄る…。

オーストラリア出身の世界的なベストセラー作家ジョン・クレアリーによる、人気犯罪ミステリー小説「スコビー・マローン」シリーズの第1作『The High Commissioner』の映画化である。巨匠フレッド・ジネマン監督作『サウダウナーズ』('60)やトム・セレック主演作『ハイ・ロード』('83)の原作者としても知られるクレアリーだが、通算20作を数える「スコビー・マローン」シリーズはその代表作。それにも関わらず、なぜか同シリーズの映画化作品は本作を含めてたった3本しかない。

主人公の熱血刑事スコビー・マローンを演じるのは、オーストラリア生まれの大物ハリウッド・スター、ロッド・テイラー。ほかにもクライヴ・レヴィルやレオ・マッカーンなど、オーストラリア出身の国際的な名優を脇に配している。原作ではシドニー警察に勤務する都会派刑事のマローンだが、この映画版ではちょっとばかり粗野だが正義感が強くて人間味のある田舎者刑事へとキャラ設定を変更。二枚目タフガイ俳優のテイラーがオーストラリア訛り丸出しで演じているが、ロンドンの上流社会に馴染むためサヴィル・ロウでスーツを新調し、ジェームズ・ボンドばりのダンディなジェントルマンに大変身する。まあ、すぐ頭に血がのぼる喧嘩っ早い性格は相変わらずなのだけど(笑)。

で、ストーリーの基本は政治的な陰謀を描いたポリティカル・サスペンス。25年前に最初の妻を殺してイギリスへ逃亡し、偽名を使って高等弁務官にまで上り詰めた名士クエンティン卿を逮捕するため、大物政治家の命を受けてロンドンへと乗り込むマローン。だが、実際に会ったクエンティン卿は損得を考えず国際平和に尽力する真面目で誠実な紳士だった。さらに、彼が推し進める東西間の講和条約が妨害され、クエンティン卿自身にも闇組織の仕向けた暗殺者の魔手が忍び寄る。果たして、敵の目的と正体は何なのか、そして25年前の殺人事件の真相とは…?というわけだ。

ただ、映画のノリとしては明らかに当時の『007』ブームの影響下にあるスパイ・アクション・タッチに仕上がっている。さすがに『007』のようなガジェットは出てこないものの、どこに潜んでいるか分からない暗殺者やスパイとの頭脳戦、体を張った肉弾アクションにカーアクション、数々の謎を巡るミステリアスな美女たちの存在などなど、'60年代スパイ映画ならではの魅力が存分に詰まっている。

惜しむらくは、全体的にこじんまりとまとまってしまったことだろうか。なんというか、ジョン・ル・カレとイアン・フレミングの中間を狙った結果、どっちつかずの不完全燃焼に終わってしまったという印象。監督のラルフ・トーマスは『キッスは殺しのサイン』('66)という、やはり『007』に影響された痛快なスパイ・アクション映画の佳作を残しているが、残念ながら本作ではいまひとつ切れが悪い。スタジオでのセット撮影が中心で、屋外ロケを最小限に抑えているのもスケール感を削いでいる。さすがに、背景が思いっきり書き割りだとバレバレなのはちょっと興覚めだ。

また、これはあえてなのだろうが、原作にあった明確な政治色を薄めてしまったこともマイナスに作用している。原作だとクエンティン卿はベトナム戦争の和平協定に携わっており、彼を狙う組織の背後には北ベトナムにソビエト、中国の共産主義陣営の存在がある。ところが、この映画版ではアフリカ大陸の和平を巡る東西の講和条約と曖昧な設定に変更されており、その内容もほとんど説明されない。組織の黒幕も最後まで不明だし、彼らの目的も明かされないまま終わってしまう。

とりあえず、マローンをロンドンに派遣する大物政治家フラナリーは、犯罪組織との繋がりが噂されたニュー・サウス・ウェールズ州の首相ロバート・アスキン卿をモデルにしているらしく、政敵であるクエンティン卿に対するフラナリーの陰謀を若干匂わせてはいるものの、それもまた最後までハッキリとはしない。そもそも、なぜ片田舎でくすぶっている刑事マローンに、わざわざこのような大役を任せたのかという理由も不明瞭。脚本に大きな欠陥があることは間違いないだろう。

とはいえ、豪華な俳優陣を揃えたキャスティングは大きな魅力だ。ショーン・コネリーとはまた一味違う野性味とダンディズムを兼ね備えたロッド・テイラーはカッコいいし、『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐のイメージそのままに、ハンサムで高潔な理想主義者のクエンティン卿を演じるクリストファー・プラマーも抜群に素敵だ。いかにも英国的な堅物執事に扮したクライヴ・レヴィルも、そこかしこでいつもの芸達者な怪優ぶりを覗かせるし、カルヴィン・ロックハートやバート・クウォークといった玄人好みの名優たちにもしっかりと見せ場が用意されているのも嬉しい。

そしてなんといっても、ボンド・ガールならぬマローン・ガールたちである。リリー・パルマーにカミラ・スパーヴ、ダリア・ラヴィと、ヨーロッパ出身の美しき名花たちが勢揃い。まあ、当時54歳の名女優リリー・パルマーをガールと呼ぶのは憚られるが、しかし依然としてその高貴な美しさは健在だし、なによりも芝居の上手いことと言ったら!本作の隠れたテーマはクエンティン卿と後妻シーラの揺るぎない夫婦愛にあるのだが、我が身を呈してでも夫を守ろうとする妻の愛と決意と不安を体当たりで演じており、思いがけず感動させられる。当時スパイ映画で引っ張りだこだったカミラ・スパーヴも惚れ惚れとするほど美しいし、妖艶でエキゾチックなダリア・ラヴィの堂々たる悪女ぶりにもため息が出る。彼女たちを見るだけでも十分に価値のある一本だ。

なお、アメリカ盤ブルーレイの画質は概ね良好。暖かみのある落ち着いた色調や、適度なフィルム・グレインが古き良き時代の映画らしい雰囲気を際立たせる。オープニングのクレジット・シークエンスは若干粗くボケているように感じるものの、それ以降はピカピカにクリアな高画質。まあ、その代わり屋内セットの作り物感が強調され、背景のマットペイントも目立ってしまうのだが。



評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.66:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語/字幕:なし/地域コード:A/時間:102分/発売元:Kino Lorber
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-07-22 03:07 | 映画 | Comments(0)

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