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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「火の森」 Le regine (1970)

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監督:トニーノ・チェルヴィ
製作:ラウール・カッツ
原案:トニーノ・チェルヴィ
   ベネデット・ベネデッティ
脚本:アントニオ・トロイジオ
   ラウール・カッツ
   トニーノ・チェルヴィ
撮影:セルジョ・ドフィッツィ
ドレスデザイン:ジャン・ブーカン
ウィッグデザイン:アルド・コッポラ
メイクデザイン:ウェイン・フィンケルマン
音楽:フランチェスコ・ラヴァニーノ
出演:エデ・ポリトフ
   シルヴィア・モンティ
   イヴリン・スチュアート(イーダ・ガリ)
   レイモンド・ラヴロック
   ジャンニ・サントゥッチョ
   グイド・アルベルティ
イタリア・フランス合作/85分/カラー作品




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<あらすじ>
バイクに乗って自由気ままな旅を続けるヒッピーの若者デヴィッド(レイモンド・ラヴロック)。ある晩、彼は故障で立ち往生している高級車と遭遇し、身なりのいい運転手の中年紳士(ジャンニ・サントゥッチョ)に助けを求められる。タイヤ交換を手伝うデヴィッドに、「近ごろの若者は浮浪者みたいに髪を伸ばしてだらしがない」「自由だ平和だと甘いことばかり言っている」などと文句を並べて去っていく紳士。あきれ返ったデヴィッドがふと見ると、先ほどの紳士がバイクのタイヤに釘を刺していた。
バイクのタイヤを交換し、気を取り直して旅を再開するデヴィッド。すると、例の高級車が前を走っている。ちょっと仕返しのつもりで煽り運転したところ、高級車は道路脇の木にぶつかって大破してしまった。デヴィッドが駆け付けると、運転席の紳士は血まみれで息もない。そのまま走り去るデヴィッド。すぐ先にパトカーの姿が見えたため、近くの森の中へと入っていたデヴィッドは、たまたま見つけたあばら家で一晩を過ごすことにする。
翌朝、デヴィッドが目を覚ますと彼の目の前に3人の美しい女性が現れる。長女ビビアナ(イヴリン・スチュアート)、次女サマンタ(シルヴィア・モンティ)、三女リヴ(エデ・ポリトフ)の姉妹だ。3人姉妹は隣接する屋敷に住んでおり、あばら家は彼女たちの倉庫だったのである。
姉妹から豪勢な朝食に招かれたデヴィッド。すぐに立ち去るつもりだったが、なぜか屋敷を離れる気にならず、しばらく滞在することにする。三者三様に妖艶で魅惑的な姉妹に惹かれ、至れり尽くせりの日々に時間がたつのを忘れるデヴィッド。だが、彼女たちはどこか不思議なところがあった。今までそこにいたはずなのに次の瞬間には姿を消している、どこからともなく突然目の前に姿を現す。贅の限りを尽くした食事を誰が作っているのかも分からないし、そもそもこんな辺鄙な田舎でどうやって生活を維持しているのかも謎だ。
そんなある晩、夕飯を終えたデヴィッドが寝床のあばら家へ向かったものの、すぐに考え直して屋敷へ戻ったところ、一瞬にして中がもぬけの殻になっていた。キツネにつままれたような気分の彼は、3人姉妹の行方を捜して森の中へと迷い込んだところ、そこで驚くべき光景を目の当たりにする。さらに、森のはずれにある怪しげな古城に住む大富豪が、姉妹とデヴィッドをパーティへ招待。その大富豪こそ、事故で死んだはずの高級車の中年紳士だった…。
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なんとも不思議な味わいのイタリア映画である。一応、ジャンル的にはオカルトやホラーに分類されるのだろうが、しかし数多あるイタリアン・ホラーのガイドブックや研究書でも言及されることは少なく、そもそもある時期までは滅多に見ることのできない幻の作品だった。日本でも劇場公開こそされているものの、その後テレビで放送された形跡は殆どなく、レンタルビデオブームの際にもなぜかビデオ化されずに終わってしまったのである。
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筆者が本作の存在を知ったのは高校生の頃。当時のホラー映画ファンのバイブル「スクリーン臨時増刊 THE HORROR MOVIES 」(近代映画社刊)シリーズのパート2に、『火の森』の簡単な作品紹介が掲載されていたのだ。といっても、2分の1ページの解説文にはあらすじしか記されておらず、面白いんだかなんだかサッパリ分からなかったのだが、とりあえず写真に写っている女優たちの妖艶な美しさは強く印象に残った。さらに、大学時代になるとイタリア映画を貪るように見るようになり、おのずと『火の森』も「見たい映画リスト」の一本に急浮上するわけだが、しかしいつまで経っても一向に巡り合う機会がなく。海外のホラー映画関連の書籍や資料を読んでも滅多に出てこないので、これはやっぱり相当にレアな映画なのだろう、もしかすると死ぬまでに見るチャンスはないかもしれない、と半ば諦めていたのだ。
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しかし、である。21世紀に入ってまさかの日本盤DVDリリース。ついに長年の念願が叶って、ようやく見ることのできた映画『火の森』は、なんというか、少なからずこちらの予想を裏切るような内容だった。なるほど、これをホラー映画と呼ぶにはちょっと微妙だよね…?と。確かにスーパーナチュラルな要素はあるものの、どちらかというと大人向けのダークなおとぎ話という印象。それも、世界中で学生運動や左翼革命の嵐が吹き荒れた'60年代末~'70年代初頭の、不穏な時代の空気をたっぷりと吸い込んだ作品だと言えよう。
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主人公は自由と平等を愛してルールや束縛を嫌い、古い保守的な価値観を否定する反権力的なヒッピーの若者デヴィッド。スズキのバイクに乗って気ままな旅を続けていた彼は、ヒッピーを嫌う金持ち風の中年紳士を誤って交通事故で死なせてしまい、パトカーを避けようと近くの森の奥深くへと逃げ込んだところ、人里離れた屋敷で暮らす美しき3人姉妹と出会う。妖しげな美女たちの誘惑に負け、一緒に暮らし始めるデヴィッド。だが、彼女たちの正体は森に棲む魔女だった。
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食べきれないほど出される豪勢な食事、湖のほとりでの長閑な日光浴、美人姉妹たちによる至れる尽くせりの様々なサービス。すっかり時の経つのも忘れ、夢のような毎日を楽しく過ごすデヴィッドは、いつしかこの場所から離れられなくなり、3人姉妹と一緒に暮らせるなら自由を奪われてもいい、束縛されたって構わないと考えるようになる。実はそれこそが、魔女たちの真の狙いだったのである。
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やがて不可解なことに気付き始めるデヴィッド。気まぐれで謎めいた3人姉妹は、まるで瞬間移動の能力があるかのように神出鬼没。1日のうちに何度も髪形やメイクや衣装をコロコロと変えていく。朝昼晩とテーブルに乗りきらないほどの食事が出されるものの、買い物をした形跡もなければキッチンで料理をした形跡もない。そもそも、これだけ贅沢な暮らしをどうやって維持しているのか?3人姉妹が何か重大な秘密を隠していると勘付くデヴィッドだが、しかし時すでに遅く…。
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というわけで、なるべくネタバレを避けるようにしながら説明すると、この世には世界情勢を左右する黒魔術的なカルト集団が存在し、実は3人姉妹の魔女たちもその仲間。彼らは特権階級による封建的な支配構造の維持を強く望み、古い秩序を破壊するリベラル思想の台頭をなんとしてでも阻止しようとしている。要するに、デヴィッドはその罠にかかってしまったのだ。
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監督と脚本を手掛けたトニーノ・チェルヴィは、もともとミケランジェロ・アントニオーニやベルナルド・ベルトルッチのプロデューサーだった人物。革命闘争の嵐が吹き荒れる当時の世相を背景に、自由と平等を求める新世代を力で押さえつけようとする旧世代に対する批判を、シュールなダーク・ファンタジーという形で表現する辺り、なるほどそれっぽい感じがしないでもない。なので、ストレートなホラー作品を期待するのは禁物だが、しかし実験的な試みとしてはなかなか面白いと思う。ショッキングなラストもインパクト強し。とはいえ、それでもチェルヴィ監督の演出力不足は否めないため、必ずしもその試みが十分に成功しているとは言い難いのだけれど。
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主人公デヴィッド役には、当時『ガラスの部屋』('69)で大ブレイクしたばかりの若手二枚目レイモンド・ラヴロック。海外ではイタリア産のB級アクションやホラーで活躍したカルト俳優というイメージの強い人だが、日本ではアイドルスターとして女性ファンから圧倒的な人気を得ていた。恐らく、本作もそのブームの勢いに乗って劇場公開されたのだろう。劇中ではボブ・ディランもどきのフォークソング風主題歌も披露。これの歌詞がまた珍妙で面白い。
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3人の魔女姉妹を演じるのは、マカロニ・ウエスタンの名物女優だったイーダ・ガリことイヴリン・スチュアート、ジャン=ポール・ベルモンド主演『大頭脳』('69)の妖艶な悪女役で知られるシルヴィア・モンティ、エリック・ロメール監督の『コレクションする女』('67)などに主演したエデ・ポリトフという顔ぶれ。彼女たちのサイケでスウィンギンでゴージャスなヘアメイクや衣装も大きな見どころだ。また、フェデリコ・フェリーニやフランチェスコ・ロージなどの作品でお馴染みの名バイプレイヤー、グイド・アルベルティが、終盤に老神父役で顔を出している。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.78:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:イタリア語/字幕:日本語/地域コード:2/時間:85分/発売元:映像文化社/オルスタックソフト
特典:オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-08-13 13:56 | 映画 | Comments(0)

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