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なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「特殊警察部隊スタント・スクォード」 La polizia è sconfitta (1977)

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監督:ドメニコ・パオレッラ
製作:テオドロ・アグリーミ
原案:ダルダノ・サケッティ
脚本:ドメニコ・パオレッラ
   ダルダノ・サケッティ
撮影:マルチェロ・マスチオッキ
美術:カルロ・リーヴァ
スタント:セルジョ・ミオーニ
音楽:ステルヴィオ・チプリアーニ
出演:マルセル・ボズッフィ
   ヴィットリオ・メッツォジョルノ
   リカルド・サルヴィーノ
   クラウディア・ジャンノッティ
   フランチェスコ・フェラッチーニ
   アンドレア・アウレリ
   ネロ・パッザフィーニ
   アルフレド・ザンミ
   パスクワーレ・バジーリ
イタリア映画/97分/カラー作品




<あらすじ>
舞台はボローニャ。狂犬のような若者ヴァーリ(ヴィットリオ・メッツォジョルノ)が率いる新興マフィアは、一般の商店や飲食店から高額の見ケ〆料を脅し取り、支払いを拒否する店には爆弾を仕掛けて木っ端みじんにするというテロ行為を重ねていた。イタリア警察の鬼警視正グリフィ(マルセル・ボズッフィ)は、ヴァーリ一味の仕業だと目星をつけているものの、誰もが報復を恐れて証言をしたがらない。そればかりか、彼らの犯行を目撃した者は容赦なく抹殺されるため、警察はヴァーリ一味の尻尾を掴めずにいた。
業を煮やしたグリフィ警視正は、上司を説得して腕に覚えのある私服警官で構成された特殊バイク部隊、通称「スタント部隊」を結成する。とはいえ、彼らを訓練するための時間が必要だし、その活動にはどうしても法律上の制限が付いて回る。そうこうしている間にもヴァーリ一味は凶行を重ね、遂にはグリフィ警視正の腹心マルケッティ署長(パスクワーレ・バジーリ)までもが、白昼堂々レストランでヴァーリに殺されてしまった。
マルケッティ署長殺害には目撃者が多数いたため、警察は一斉にヴァーリ逮捕に動き出す。そこでヴァーリは高飛びを計画。その逃走資金を入手するため、手下に命じて銀行強盗を決行し、その際に警官が犠牲になってしまう。さらに、ヴァーリは恋人アンナ(クラウディア・ジャンノッティ)と一緒にいるグリフィ警視正を襲撃。ますますヴァーリの行動は凶悪化していく。
そこで、グリフィ警視正はヴァーリの手下チュニジア(ネロ・パッザフィーニ)を脅迫し、その隠れ家を突き止めるものの、あと一歩で逃がしてしまう。その報復としてチュニジアが惨殺され、ヴァーリは逃走の手助けをする裏社会のボスまで虐殺する。もはや手が付けられないと感じた警察上層部は、グリフィ警視正に強硬手段を取ることを許可。「スタント部隊」によるヴァーリ一味の掃討作戦が決行される。だが、ヴァーリ自身の所在は依然として掴めなかった。
そんな時、グリフィ警視正が頼りにする「スタント部隊」メンバー、ブロジ(リカルド・サルヴィーノ)が、麻薬密売のルートを辿っていったところヴァーリの隠れ家を発見。すぐさま警視正に通報した彼は、そのままヴァーリの尾行を続けるのだが、一般市民も乗るバスの中で勘付かれてしまう…。

'70年代のイタリアでは、ポリッツィオテスキと呼ばれる犯罪アクション映画が大流行した。これはもともと、『ブリット』('68)や『ダーティハリー』('71)、『フレンチ・コネクション』('71)といったハリウッドの犯罪アクションに影響を受けたジャンルなのだが、そこはやはりイタリア映画、より過激なバイオレンスとセックスをふんだんに盛り込み、さらにはイタリアならではの社会問題を背景に投影させることで、ハリウッドとは一味違う独自の進化を遂げたのである。

政情不安定だった当時のイタリアでは、極右や極左の過激派グループによるテロ事件が繰り返され、経済の悪化によってマフィアによる強盗や誘拐、殺人などの凶悪犯罪が日々頻発していた。市民を守るはずの警察でも汚職が横行。富裕層の中には身の危険を感じて国外へ脱出する人々も少なくなかった。映画というのは時代を映す鏡。イタリアでは多くの映画人が、そうした暗い世相を犯罪アクションやサスペンスなどの娯楽映画に昇華させ、一般大衆の熱い支持を得ていたのである。

そして、本作もまたその典型的なポリッツィオテスキの一つだと言えよう。法の目をかいくぐって凶悪犯罪を重ね、まるで軍隊のような武器を揃えた新興マフィア勢力に対抗するため、警察が選り抜きの精鋭ばかりを集めた特殊バイク部隊「スタント部隊」を結成する。さながらイタリア版『ワイルド7』といったところだろうか。劇中でも言及されているが、当時のイタリア警察は職員の数こそ多かったものの、その大半が事務担当などの内勤の警察官で、凶悪犯罪に対応できる実戦訓練を積んだ人材が不足していた。しかも、軍隊ばりの武器を揃えたマフィアやテロ組織に比べ、警察官は与えられる武器も貧弱だし、法律によって制限されている行為も多い。その解決策が、現実には存在しない警察の超法規的な精鋭集団「スタント部隊」というわけだ。

とはいえ、これまたイタリア映画ならではの事情ゆえなのだが、「スタント部隊」が本領を発揮するようなスタントシーンはことのほか少ない。当時のイタリア産娯楽映画の鉄則は、低予算かつ短期間で撮りあげること。アクションの大規模なスタント撮影に金や時間を費やす余裕などなかったのである。なので、メンバーが訓練を重ねるシーンは比較的たっぷりと出てくるが、肝心のカーチェイスやバイクチェイスを披露するシーンはほんのわずか。終盤では「スタント部隊」によるマフィア組織の掃討作戦が展開するものの、敵をサクサクと逮捕していくばかりで肩透かしだ。ハリウッド映画のような壮絶スタントを期待してはいけない。

だが、そうした弱点を補って余りあるのが、徹底したリアリズムによる血生臭いバイオレンスである。邪魔者は片っ端から殺しまくる新興マフィアのボス、ヴァーリの予測不能なサイコパスぶりは圧巻。冒頭から爆弾テロによって多くの市民が次々と犠牲になり、辛うじて生き残った目撃証人も看護師に成りすました殺し屋によって血みどろに惨殺される。機関銃でハチの巣にする、爆弾で木っ端みじんにする、ナイフで喉元を切り裂く、男性器を切断するなどの過激なシーンの連続。しかも、劇中のスライド写真で使用されている本物の事件現場の凄惨な状況を見ると、これらが必ずしも誇張されたものではないことが分かる。なるほど、一般市民が震え上がって警察の捜査に協力することを躊躇するわけだ。

そんないかにも'70年代的なウルトラ・バイオレンス映画を、当時すでにキャリア40年の大ベテラン、ドメニコ・パオレッラ監督が手掛けているという事実も興味深い。'37年に戦前の巨匠カルミネ・ガローネの助監督としてキャリアをスタートしたパオレッラは、フェリーニやヴィスコンティらとほぼ同年代の、いわば旧世代に当たる映画人だ。本作の撮影時は60代。当時の60代といえば立派なご老人だが、そこはさすが叩き上げの娯楽映画監督。マカロニ西部劇や尼僧ポルノまでこなしていた人だけあって、時代感覚を的確につかんだ演出のセンスは、親子ほど年の離れたポリッツィオテスキの中心的人物セルジョ・マルティーノやウンベルト・レンツィに全く引けを取らないほど若い。

原案と脚本を手掛けたのは、パオレッラ監督よりも37歳年下のダルダノ・サケッティ。『サンゲリア』('79)や『ビヨンド』('81)など一連のルチオ・フルチ作品で知られ、'80年代のイタリア産B級娯楽映画には欠かすことのできない脚本家だったサケッティだが、当時はダリオ・アルジェントやマリオ・バーヴァのジャッロ映画で頭角を現してきた新進気鋭の若手だった。父親世代のパオレッラ監督との共同作業は、ジェネレーション・ギャップを埋めるという意味で大変だったという。いわゆる王道的なポリス・アクションを想定していた古参のパオレッラに対し、左翼革命の洗礼を受けた若い世代のサケッティは、政治色を含めた社会派的なアプローチを推進して押し切った。中でも、まるで当時のイタリア庶民の腐敗した社会に対する怒りや不満がマグマのごとく噴き出すような、あっと驚く凄惨かつ皮肉極まりないクライマックスは本作の白眉である。

また、イタリア映画界最強のメロディメーカー、ステルヴィオ・チプリアーニによる、そこはかとなく哀愁を漂わせたファンキーでグルーヴィーな音楽スコアも秀逸。爆弾事件の負傷者が口封じのため病室で殺されるシーンの、不安に怯える犠牲者の心臓の鼓動とマッチしたサスペンスフルなスコアは見事なくらい効果的だ。

主演はフランスの名脇役俳優マルセル・ボズッフィ。イタリアのポリッツィオテスキは『フレンチ・コネクション』からの影響が最も大きかったと言われるが、その同作で悪役を演じて有名になったボズッフィは、イタリア産犯罪アクション映画でも引っ張りだこの人気スターとなった。本作では「スタント部隊」を指揮する警視正というヒーロー役だが、悪を倒すという強い信念ゆえ暴走しかねないという、コインの表と裏のような人物像で個性を発揮している。ちなみに、彼は本作の前年にも『復讐警部・白昼の凶悪爆破魔』('76)なる作品で、マフィアの連続爆破テロ事件に対抗するべく警察の特殊バイク部隊を組織する鬼警部という似たような役を演じている。

そんなボズッフィの右腕的存在の刑事を演じるのが、名作『流されて』('74)でマリアンジェラ・メラートの旦那役を演じていたリカルド・サルヴィーノ。当時はB級アクション映画への出演も多く、先述した『復讐警部・白昼の凶悪爆弾魔』でもボズッフィと共演している。小悪党チュニジア役のネロ・パッザフィーニも、マカロニ西部劇やポリッツィオテスキでお馴染みのタフガイ俳優だ。

しかし、本作で最も強烈に異彩を放っているのは、何をしでかすか誰も分からない最狂のサイコパス、ヴァーリ役を演じているヴィットリオ・メッツォジョルノであろう。その後、ジャン=ジャック・ベネックスの『溝の中の月』('82)やダニエル・シュミットの『デ・ジャ・ヴュ』('87)、ピーター・ブルックの『マーハーバラタ』('89)などでイタリアを代表する名優となり、'94年に52歳という若さでこの世を去ってしまったメッツォジョルノだが、本作の当時はまだクセの強い若手俳優としてB級娯楽映画にも多数出演していた。それにしても、やはり鬼才は若いころから鬼才なのだなと思わせられる。ヴァーリの尋常ではなくらいに歪んだ狂気と衝動を、時として思わず惹かれてしまうくらい魅力的に、と同時に背筋が凍るほどリアルに体現して素晴らしい。一度見たら忘れられない個性的なマスクと、危険な男性的フェロモンの溢れるセックスアピールも当時から健在だ。

なお、イタリアに本社を持つRaro Videoが発売したアメリカ盤ブルーレイは、新たにHDリマスターされた本編映像を使用。タイトルクレジットなど一部の映像は濃厚なフィルムグレインが目立つものの、それ以外は40年以上前に作られた映画とは思えないほどピッカピカの超高画質である。



評価(5点満点):★★★★☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:2.0ch リニアPCM/言語:イタリア語・英語/字幕:英語/地域コード:ALL/時間:97分/発売元:Raro Video
特典:『ユーロクライム』監督マイク・マロイによるイントロダクション(約6分)



by nakachan1045 | 2018-08-18 00:38 | 映画 | Comments(0)

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