なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「超人アーゴマン」 Come rubare la corona d'Inghilterra (1967)

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監督:テレンス・ハサウェイ(セルジョ・グリエコ)
製作:エドモンド・アマーティ
脚本:ディノ・ヴェルデ
   ヴィンチェンツォ・フラミーニ(ヴィンチェンツォ・マンニーノ)
撮影:ティノ・サントーニ
衣装デザイン:ガイア・ロマニーニ
美術:アルベルト・ボッチャンティ
音楽:ピエロ・ウミリアーニ
出演:ロジャー・ブラウン
   ドミニク・ボシェーロ
   エドゥアルド・ファヤルド
   ディック・パーマー(ミンモ・パルマーラ)
   ナディア・マーロワ
   リチャード・ピータース(ニノ・ダル・ファブロ)
   エドワード・ダグラス(エドゥアルド・トニオーロ)
   アンドレア・ボシック
   トム・フェレーギ
イタリア映画/93分/カラー作品




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<あらすじ>
中国の人民解放軍によって処刑されようとしていた超人アーゴマンだが、得意のテレキネシスを使って敵を壊滅させ脱出に成功する。その頃、ソビエトのクレムリンでは共産党幹部がアーゴマンの処刑を祝っていた。中国の核兵器を破壊するようアーゴマンに仕向けさせ、人民解放軍に捕まるよう仕組んだのはソビエトだったのだ。そこへ颯爽と登場したアーゴマンは、罰としてエメラルドがはめ込まれたピョートル大帝の宝石箱を奪って姿を消すのだった。
世界的な泥棒として指名手配されているアーゴマンの正体は、超の付く金持ちでプレイボーイの放蕩貴族サー・レジナルド(ロジャー・ブラウン)。頭脳明晰な彼はロンドン警察の犯罪コンサルタントを務めており、インド人の忠実な執事チャンドラ(エドゥアルド・ファヤルド)や小悪魔的な魅力の美人助手サマンサ(ナディア・マーロワ)を従え、これまでに様々な難事件を解決してきた。もちろん、彼がアーゴマンだと知るのはこの2人だけだ。
そんなある日、ロンドン塔に展示されていたエドワード懺悔王の王冠が何者かによって盗まれ、捜査に当たるロンドン警察のローレンス警部(ニノ・ダル・ファブロ)はアーゴマンの仕業を疑っていた。一方、暇を持て余していたサー・レジナルドはテレキネシスを使い、海岸沿いの自宅豪邸の近くでホバークラフトを運転していた美女レジーナ(ドミニク・ボシェーロ)をナンパ。甘いひと時を過ごしていた。
その後、世界の女王ジェナベルを名乗る謎の人物からロンドン警察宛に王冠が返還され、その代わりとして6時間以内に「ムラドフA-4」を引き渡すよう要求する手紙が届く。「ムラドフA-4」とは欧米先進国の間で最高機密とされている特殊な宝石のこと。これに反射させた光を浴びると、どんな物質でも一瞬で柔らかくなってしまう。現在はフランスの科学研究所が保管しており、NATO各国は軍事目的に役立てようとしていた。
ロンドン塔の監視カメラに映った写真の中にレジーナの姿を発見したサー・レジナルドは、彼女こそが犯人ジェナベルであることを確信。対策を練るためフランスへ向かったローレンス警部を追い、彼もまたチャンドラとサマンサを連れてパリに到着する。指輪に仕込んだ放射能測定器でジェナベルの行方を捜すサー・レジナルド。というのも、実は自宅でレジーナに微量の放射能を含んだ特殊なタバコを吸わせていたのだ。その結果、フランス中央銀行を襲撃したジェナベル一味を追い詰めるものの、寸でのところで取り逃がしてしまう。
ジェナベルが大量の紙幣を空からばら撒いたせいでフランの貨幣価値が暴落。「ムラドフA-4」を渡さねばさらに紙幣を撒いてインフレを起こさせると脅迫する。そこで、サー・レジナルドはジェナベル一味を追跡するものの、反対に捕らえられて秘密基地へ連行されてしまう。サマンサも相手の捕虜になっていた。アーゴマンに変身して敵のロボットを倒し、サマンサを救い間一髪で脱出するサー・レジナルド。しかしフランス政府は「ムラドフA-4」をジェナベルに引き渡し、彼女はそれを使って恐ろしい計画を実行に移す…。
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'60年代後半にイタリアでちょっとしたブームになった覆面ヒーロー映画の一つである。代表格はなんといっても、巨匠マリオ・バーヴァの傑作『黄金の眼』('68)。ほかにもウンベルト・レンツィ監督の『Kriminal』('66)シリーズやハリウッド俳優レイ・ダントンを招いた『地獄のランデブー』('66)、名優ピエル・パオロ・カッポーニがノーマン・クラーク名義で主演した『インターポール大捜査網』('67)、ルッジェロ・デオダート監督の『電撃!秘宝強奪指令/地獄のシンジケート』('68)などなど、個性豊かな覆面スーツに身を包んだヒーローたちが、短期間ではあったもののイタリア映画界を席巻したのである。
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しかし、なぜ当時のイタリアで覆面ヒーロー映画が流行ったのか。最大の理由はフランス映画『ファントマ』シリーズの大ヒットであろう。ジャン・マレー演じる覆面の怪盗ファントマの活躍を描いた『ファントマ/危機脱出』('64)。もともと20世紀初頭にフランスで大流行し、サイレント時代から幾度となく映画化されてきた連続犯罪小説「ファントマ」シリーズを、当時世界的にブームだった『007』シリーズ風にアレンジして蘇らせた同作は、ヨーロッパのみならず日本や共産圏でも大ヒットを記録してシリーズ映画化された。売れている映画は何でもパクる、時代の流行には何でも便乗するのが信条だった当時のイタリア映画界が、この「ファントマ」人気にあやかろうと考えたのも無理はないだろう。
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さらに、もともとイタリアには覆面ヒーロー映画が受ける土壌もあった。それがフメッティ・ネリ(黒いコミック)と呼ばれるアダルトコミックだ。これは「ファントマ」と似たような覆面犯罪者がアンチヒーローとして活躍する大人向けのヒーローコミックで、実際にジャンルの原点とされる「ディアボリク」シリーズは「ファントマ」の影響を受けたとされる。その「ディアボリク」を映画化したのが『黄金の眼』。それ以外にも、日本の黄金バットみたいな髑髏マスクの「クリミナル」シリーズや女バットマン的な「サタニク」シリーズなども、この覆面ヒーロー映画ブームの際に映画化されている。
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で、テレキネシスのパワーを自在に操る覆面ヒーロー、アーゴマンを主人公にした本作。ロンドン警察の犯罪コンサルタントを務めるハンサムでリッチで女たらしの貴族サー・レジナルドが、世界中の美術品や骨とう品を狙う怪盗アーゴマンとして各国を暗躍しつつ、世界征服を目論む女犯罪者ジェナベルの野望を打ち砕くべく大活躍を繰り広げる。さながら『ファントマ』+『バットマン』+『007』+『シャーロック・ホームズ』。原作ものではないオリジナルの覆面ヒーローだが、フメッティ・ネリ的なアンチヒーローをアメコミ風の明朗快活な軽いノリで描いているのが特徴と言えるだろう。
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なので、基本路線はかなり奇想天外かつ荒唐無稽。まるで子供向けの特撮ヒーロー番組みたいだ。とりあえず大人向けのお色気や暴力の描写もふんだんに盛り込まれているが、その一方でストーリー展開は短絡的でご都合主義満載だし、科学やハイテクの描写もまるっきりいい加減。例えば、悪女ジェナベルが狙う「ムラドフA-4」なる宝石に光を反射させると、その反射光を浴びた物質が柔らかくなってしまうという設定は、まあ、百歩譲ってそんな鉱物もあるかもしれないねと受け入れることも出来るのだが、しかしその光をロボットに当てたら人間と寸分たがわぬクローン人間が出来上がってしまうというのは…いやはや、なんとも。んなわけねーだろ!としか言いようがない(笑)。
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ほかにも、テレキネシスが万能すぎてアーゴマンの絶体絶命に危機感がない、ストーリーの流れを「偶然」と「たまたま」に頼りすぎているなど、いろいろと突っ込みどころは満載。ただ、脚本に携わっているディノ・ヴェルデが、もともとテレビのバラエティ番組でコントやパロディを担当する放送作家だったことからも推測できるように、恐らく初めからパロディ的なノリのバカバカしいコメディを目指していたに違いない。セックスしてから6時間はスーパーパワーが使えなくなるなど、思わず「アホやな~」と言いたくなるおバカな設定も多々あり。さしずめ覆面ヒーロー版『オースティン・パワーズ』みたいなものか。
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全編に散りばめられた、ポップでカラフルでモダンな美術セットや衣装も大きな見どころ。この'60年代らしいスペースエイジ感は素晴らしく魅力的。さすがはファッションとアートの国イタリアである。アーゴマンの秘密基地を兼ねた、サー・レジナルドのハイテク豪邸なんかムチャクチャお洒落だしね。『黄金の七人』('65)や『女性上位時代』('68)で知られるガイア・ロマニーニのデザインした、悪女ジェナベルのスウィンギン・ロンドンなコスチュームの数々もキッチュで面白い。当時のイタリア産B級映画としては予算も潤沢だったらしく、ロンドンやパリでの贅沢なロケもふんだんに盛り込まれている。監督のセルジョ・グリエコは、数あるイタリア版なんちゃって007映画の中でも特に筆者がお気に入りな『077』シリーズを手掛けているが、この手のお洒落で洗練されたアクション映画は得意だったのかもしれない。
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さらに、何よりも素晴らしいのはピエロ・ウミリアーニによるキャッチーでグルーヴィな音楽スコアですよ。ノリは完全に「マナ・マナ」。男女のスキャット・コーラスを多用したポップなメロディは、映画を見ながら思わず口ずさんでしまうほどカッコいい。'60年代のウミリアーニ作品はかなりCD復刻されているものの、本作のサントラはなぜか当時ですらレコード発売された形跡がないので、DigitmoviesかBeat Records辺りのサントラ専門レーベルが音源を発掘してくれることを切に願うばかりだ。
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なお、主演はアスリート専門の理学療養士としてクライアントに付き添ってローマを訪れたところ、そのハンサムなルックスを買われて映画俳優になったという変わり種のアメリカ人ロジャー・ブラウン。悪女ジェナベルには、当時イタリア産スパイ映画のヒロインとして引っ張りだこだったイタリア系フランス人女優ドミニク・ボシェーロが扮している。『シャーロック・ホームズ』のワトソン博士と『バットマン』のアルフレッドを足して割ったようなアーゴマンの執事チャンドラを演じるのは、『続・荒野の用心棒』('65)などマカロニ西部劇の悪役として有名なスペイン俳優エドゥアルド・ファヤルド。また、スペクタクル史劇やマカロニ西部劇の2番手ヒーローや憎まれ役で活躍したマッチョ俳優ミンモ・パルマーラが、ジェナベルの腹心カート役として顔を出している。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(ドイツ盤)※1000枚限定プレス(シリアルナンバー入り)
カラー/ワイドスクリーン(2.20:1)/音声:1.0ch Dolby Digital Mono/言語:ドイツ語・英語・イタリア語/字幕:ドイツ語/地域コード:2/時間:93分/発売元:Picture Lake Films
特典:オリジナル劇場予告編/ドイツ劇場公開用短縮版(84分)/フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2018-09-10 13:21 | 映画 | Comments(0)

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