なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

「ビッグ・ボス」 Capone (1975)

f0367483_21554033.jpg
監督:スティーヴ・カーヴァー
製作:ロジャー・コーマン
脚本:ハワード・ブラウン
撮影:ヴィリス・ラペニークス
音楽:デヴィッド・グリスマン
出演:ベン・ギャザラ
   ハリー・ガーディノ
   スーザン・ブレイクリー
   ジョン・カサヴェテス
   シルヴェスター・スタローン
   フランク・キャンパネラ
   ジョン・オーチャード
   ジョン・デイヴィス・チャンドラー
   ロイヤル・ダーノ
   ディック・ミラー
   マーティン・コーヴ
   マリオ・ギャロ
アメリカ映画/101分/カラー作品




<あらすじ>
1918年のニューヨーク。ブルックリンで強盗を目撃した若者アル・カポネ(ベン・ギャザラ)は、それをこっそりと警察に通報するのだが、しかしなぜか到着した警官に暴行を働いてわざと逮捕される。マフィアのボス、フランキー・イェール(ジョン・カサヴェテス)に注目されるためだ。もちろん、そのことはイェールと盟友ジョニー・トリオ(ハリー・ガーディノ)もお見通しで、2人はカポネの野心と根性を気に入り雇うことにする。
その1年後、シカゴを根城にするジョニーは新たな禁酒法に乗じて闇商売を拡大させるため、ニューヨークからカポネを呼び寄せる。手始めに密造酒ビジネスに反対するボス、ビッグ・ジム(フランク・キャンパネラ)をカポネに暗殺させたジョニーは、彼を自分の右腕として育てるべく、裏社会の重鎮や政治家らと対等に渡り合うための所作を叩き込んでいく。
禁酒法の時代に入ると、マフィア同士の抗争が激化した。そこでジョニーは各組織の縄張りを明確に定め、無益な殺し合いをやめて共存共栄の道を探るものの、それに納得しないオバニオン(ジョン・オーチャード)一味が暴走を続ける。手下を使って次々とライバルを血祭りにあげていくオバニオン。我が身も危ないと感じたカポネは腹心フランク・ニッティ(シルヴェスター・スタローン)らに命じ、愛人の大富豪令嬢アイリス(スーザン・ブレイクリー)とゴルフへ出かけている間にオバニオンを暗殺させる。
だが、オバニオンの後継者ワイス(ジョン・デイヴィス・チャンドラー)は相変わらずライバルへの攻撃を続け、ジョニーはカポネのせいで裏社会の和平協定が困難になってしまったと考えていた。そこで彼は自分の縄張りの一部をワイスに譲ることで、彼らの暴走を食い止めようと考える。それを知って怒ったカポネはとニッティは、ジョニーの居場所をワイス一味に密告して彼を襲撃するよう仕向ける。予想に反してジョニーは一命を取りとめたものの、抗争を止められない自分の力に限界を感じた彼は、カポネに縄張りを譲って引退することを決意した。
かくして組織のボスとなったカポネ。ワイス一味との血で血を洗う殺し合いはますます激しくなり、ほかのライバル組織もカポネの首を狙うようになる。部下の助言にも耳を貸さず、狂気に駆られていく独裁者カポネに、やがてニッティらは不安を覚え始めるのだった…。

ずばり、B級映画の帝王ロジャー・コーマン製作による低予算版『ゴッドファーザー』である。一応、内容は伝説の犯罪王アル・カポネの半生を題材にした実録ギャング映画だが、イタリアン・マフィアであるカポネの30年近くに渡る栄枯盛衰を暴力描写たっぷりに描いたストーリーといい、ニノ・ロータそっくりの哀愁たっぷりな音楽スコアといい、本作が『ゴッドファーザー』の影響下で作られたことはまず間違いないだろう。そもそも、大ヒット映画を片っ端からパクることで有名なコーマン御大のこと、愛弟子コッポラの代表作にちゃっかりと便乗したって何ら不思議ではない。

もちろん、両者のスケールの違いは一目瞭然だ。なんたって『ゴッドファーザー』の予算620万ドルに対して、『ビッグ・ボス』はたったの97万ドル(それでも通常のコーマン作品よりは多めだけど)である。あちらはニューヨークやラスベガス、シチリア島にまで足を延ばしてロケ撮影しているが、こちらは大半がロサンゼルスのユニバーサル・スタジオでのセット撮影。実はシカゴにもニューヨークにも行っていない。全体的に小ぢんまりとした印象を受けるのは、予算の少なさに加えて屋内・屋外のセット撮影に起因する、映像空間の物理的な限界も理由として挙げられるだろう。なので、本質的には『ゴッドファーザー』よりも、'30年代にハリウッドで大量生産されたB級ギャング映画に近いのである。

演出を任されたのはコーマン門下生のスティーヴ・カーヴァー。前年に同じく禁酒法時代を舞台にした犯罪アクション映画『ビッグ・バッド・ママ』('74)を大ヒットさせた実績を買われてのことだろう。決して芸術的な才能のずば抜けた映画監督ではないものの、大衆向けB級娯楽映画を手堅く作れる職人肌であり、本作でも血みどろバイオレンス満載のアクションシーンにその手腕を発揮している。場面転換を血のように真っ赤な静止画で繋いでいく一風変わった演出もユニーク。ただ、そのグラインドハウス的なカーヴァーのジャンクな演出スタイルが、リアリズム志向を打ち出した実録ドキュメント路線の脚本と今一つかみ合っていないようにも思える。

実は本作以前に、アル・カポネを題材にした犯罪映画『聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ』('67)を、本作と同じ20世紀FOXで監督・製作したことのあるロジャー・コーマン。その脚本を担当したのが本作のハワード・ブラウンだった。もともとパルプ小説雑誌の編集者兼作家で、カポネと同時代のユダヤ系ギャング、ダッチ・シュルツの栄光と転落を描いた映画『ギャングの肖像』('62)の脚本を手掛けたこともあるブラウン。本作ではカポネの人生におけるターニングポイント的な出来事を順番に抽出し、その年月日や場所を一つ一つ折り目正しく明示しながら、まるで犯罪事件ファイルを紐解くかのようにカポネの栄枯盛衰を綴っていく。

そのため、カポネのバックグランドや深層心理を掘り下げることも殆どナシ。あくまでもノンフィクション的な客観性に比重が置かれる。これがフランチェスコ・ロージやエリア・カザンの芸術映画ならばともかく、純然たるB級エンターテインメント映画の脚本としては著しく面白みに欠けると言えよう。『聖バレンタインの虐殺~』でもその嫌いはあったものの、あちらはロジャー・コーマン監督のセミドキュメンタリー風な演出が、ブラウンの少々真面目過ぎる脚本に上手いことマッチしていた。それに対し、残念ながら本作は演出と脚本の相性があまり良くない。

ちなみに、カポネの半生を史実に沿って再現したかのような印象を受ける本作だが、実はかなりの部分を独自の解釈で脚色している。例えば、劇中では一介のチンピラに過ぎなかったカポネが自らギャングのボス、フランキー・イェールとジョニー・トリオに売り込んで手下になるが、実際は組織犯罪活動の拠点としてナイトクラブをオープンしたばかりのイエールが、当時イタリア系ストリート・ギャングのメンバーだったカポネを用心棒として雇ったのが始まりだ。

また、カポネの恩師トリオが暴力を好まない穏健派のギャングだったことは確かだが、劇中でカポネの単独指示とされるオバニオン暗殺にはトリオも一枚噛んでいるし、彼の指示でビッグ・ジムを殺害したのもカポネではなくイェールだし、彼がライバル組織の襲撃を受けて殺されかけた事件にカポネが関与していたという事実もない。もちろん、腹心ニッティの密告でカポネが逮捕されたという展開も、実際にニッティ自身も逮捕されて実刑を受けた事実を踏まえれば現実的ではない。

それもこれも、ボスを裏切って組織の頂点に立った者が、いずれは自分の部下に裏切られて転落するという、作品全体を貫く因果応報のドラマを描くための創作だ。まさに驕れる者久しからず。こうした事実の改変には賛否両論あるだろうが、しかし栄華を誇ったギャングの哀れな末路を際立たせる、裏社会を美化することなくその弱肉強食な非情さを強く印象付けるという意味において、これはこれで全然アリだろうとは思う。

カポネ役を演じるのは、ジョン・カサヴェテス作品の常連として有名な知性派俳優ベン・ギャザラ。これは少なからず意外なキャスティングだ。当時40代半ばのギャザラが20代のカポネを演じる本編前半はさすがに無理があるものの、その一種芝居がかったカポネの大袈裟なキャラ造形は『アンタッチャブル』('86)のロバート・デ・ニーロを彷彿とさせて興味深い。なお、盟友カサヴェテスもフランキー・イェール役で登場するが、冒頭にちょっと顔を出すだけの特別ゲスト的な扱いだ。

カポネの恩師で穏健派のボス、ジョニー・トリオ役には、これまた都会派の渋い盟友ハリー・ガーディノ。『刑事マディガン』('68)のボナーロ刑事といい、『ダーティハリー』('71)シリーズのブレスラー警部といい、暴走しがちな主人公のストッパーになる役回りは彼の十八番だ。また、カポネの愛人になる社交界の花形で無鉄砲なお嬢様アイリス役には、『タワーリング・インフェルノ』('72)で社長令嬢役を演じた女優スーザン・ブレイクリー。本作では大胆なヘアヌードにも挑んでいる。結局、映画界ではあまり大成せず、その後テレビで売れっ子に。最近では人気ドラマ『THIS IS US 36歳、これから』('17~)にセミ・レギュラーとして出演していた。

映画ファンにとって要注目なのは、カポネの右腕ニッティ役を無名時代のシルヴェスター・スタローンが演じていることだろう。これが意外と出番も多く、特に終盤では重要な役割を果たしている。そのスタローンと『ランボー/怒りの脱出』('85)で再共演するマーティン・コーヴが、ライバル組織のヒットマン、ピート・グセンバーグを演じているのも見逃せない。彼はドラマ『刑事キャグニー&レイシー』('82~'88)のタフガイ刑事ヴィクター役で有名になり、映画『ベスト・キッド』('84)シリーズの憎まれ役コーチでもお馴染みに。一時期はB級アクション俳優として主演作もあった。

そのほか、ロジャー・コーマン映画には欠かせない名脇役ディック・ミラーがカポネを強請る汚職警官を、『大砂塵』('54)や『白鯨』('56)の名優ロイヤル・ダーノがシカゴ市長役を、主演作『機関銃を捨てろ』('61)で実在の殺し屋ヴィンセント・コールに扮して強烈な印象を残したジョン・デイヴィス・チャンドラーが狂犬ワイスを演じている。

なお、なぜか本国アメリカでは未だブルーレイ化されておらず、日本とヨーロッパのみでブルーレイ発売されている本作。画質的には中の上といった印象だ。フィルム素材の状態は概ね良好だが、恐らくデジタル化に際しての修復作業は行われておらず、部分的に画像の粗さが目立つところもある。まあ、そもそもがマイナーなタイトルだし、少なくともDVDよりは格段に向上しているので、ブルーレイで出してくれただけでも御の字であろう。

評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(1.85:1)/1080p/音声:1.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語・日本語/字幕:日本語・英語/地域コード:A/時間:101分/発売元:20世紀フォックス
特典:オリジナル劇場予告編




by nakachan1045 | 2018-09-16 09:11 | 映画 | Comments(0)

カテゴリ

全体
映画
音楽
未分類

お気に入りブログ

なにさま映画評

最新のコメント

すいません!その通りです..
by nakachan1045 at 13:12
直人の子分に曽根晴美とあ..
by Django at 02:25
いまみると、北斗の拳のバ..
by ドゴラ at 14:14
昔、NHKで見たので記憶..
by さすらい日乗 at 12:59
> さすらい日乗さん ..
by nakachan1045 at 10:21
これは、公開時に今はない..
by さすらい日乗 at 07:33

メモ帳

最新のトラックバック

venussome.co..
from venussome.com/..
venuspoor.co..
from venuspoor.com/..
venuspoor.com
from venuspoor.com
http://while..
from http://whileli..
http://while..
from http://whileli..
http://www.v..
from http://www.val..
オペラ・ブッファの傑作で..
from dezire_photo &..

ライフログ

検索

ブログパーツ

外部リンク

ファン

ブログジャンル

映画
ライター