なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「離愁」 Tomorrow Is Forever (1946)

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監督:アーヴィング・ピシェル
製作:リチャード・ルイス
原作:グウェン・ブリストウ
脚本:レノア・コフィー
撮影:ジョー・ヴァレンタイン
衣装デザイン:ジャン・ルイ
音楽:マックス・スタイナー
出演:クローデット・コルベール
   オーソン・ウェルズ
   ジョージ・ブレント
   ルシール・ワトソン
   リチャード・ロング
   ナタリー・ウッド
   ジョン・ウェングラフ
   サニー・ハウ
アメリカ映画/104分/モノクロ作品




<あらすじ>
第一次世界大戦が終焉を迎えた1918年。新婚1年で最愛の夫ジョン(オーソン・ウェルズ)をヨーロッパの戦地へ送り出した妻エリザベス(クローデット・コルベール)は、これでようやく夫と再会出来ると心躍らせていたものの、そんな彼女のもとへ届いたのは終戦間際にジョンがドイツ戦線で死亡したという通知だった。
大きなショックを受けたエリザベスは勤務先で倒れるが、そんな彼女を独身の社長ローレンス(ジョージ・ハミルトン)が手厚く看護してくれる。エリザベスの境遇に同情したローレンスの叔母ジェシカ(ルシール・ワトソン)も親身になってくれた。やがてジョンとの間の息子ドリューを出産した彼女に、兼ねてから秘かに想いを寄せていたローレンスがプロポーズする。心から愛する男性はジョン一人だけと、その申し出を一度は断ったエリザベスだったが、我が子のようにドリューを可愛がってくれるローレンスに心動かされて再婚を決意。その後、彼との間に次男ブライアンも授かる。
ところが、実はジョンは戦死してなどいなかった。ドイツで爆撃に遭ったものの一命を取りとめていたのだ。しかし、顔に深い傷を負って整形手術が必要となり、なおかつ右腕が不自由になってしまった彼は、愛するエリザベスにこんな惨めな姿を見せるくらいなら死んでしまった方がいいと考え、ドイツ人の担当医ルドウィッグ(ジョン・ウェングラフ)に頼んで赤の他人の身分を手に入れる。そして、オーストリア人の化学者ケスラーとして、アメリカに帰国せずヨーロッパで生きていくことを選ぶのだった。
それから20年後。ヨーロッパでは戦争の足音が聞こえ始めていた。ナチスに歯向かって殺された恩人ルドウィッグの娘マーガレット(ナタリー・ウッド)を養女に引き取ったジョンは、アメリカの化学薬品会社ハミルトンの開発責任者として雇われ、久しぶりに故郷ボルティモアの土を踏む。だが、そのハミルトン社の社長こそエリザベスの再婚相手ローレンスだった。
そうとは知らず社長宅の晩餐会に招かれたジョンは、そこで社長夫人となったエリザベスと再会して衝撃を受ける。だが、整形手術で顔が変わった上に、ケスラーと名前まで変えたジョンのことをエリザベスは気付かなかった。さらに、ハミルトン家の長男ドリューが自分の息子であることを察するジョン。しかし、笑顔と愛情に包まれたハミルトン家の幸せを壊すわけにはいかないと、自らの正体をひた隠しにするのだった。
一方、20歳の立派な青年となったドリューはヨーロッパ情勢に関心を寄せ、ナチス・ドイツの脅威から自由世界を守るため兵役を志願するようになる。だが、それを知ったエリザベスは烈火のごとく怒り猛反対する。先の大戦で最愛の夫を失った彼女は、その息子まで奪われるわけにはいかなかったのだ。そんなドリューに理解を示すケスラーに嫌悪の目を向けるエリザベス。しかし、彼のことを慕うドリューの姿を見て、彼女はケスラーが死んだはずの夫ジョンではないかと疑い始める…。

恐らくオーソン・ウェルズ出演作の中でも、世間的に最も見る機会の少ない映画の一つであろう。ご存知の通り、アメリカ演劇界の寵児として名を馳せ、'38年のラジオドラマ『宇宙戦争』で全米に衝撃を与え、監督・脚本・主演を兼ねた『市民ケーン』('41)を引っ提げ鳴り物入りで映画界入りした希代の天才オーソン・ウェルズ。しかし、今でこそ映画史上屈指の傑作とされる『市民ケーン』も、主人公のモデルとなった新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストから猛反発を受け、ハースト系新聞各紙やハーストの御用聞きジャーナリストから痛烈に攻撃され、さらには映画会社RKOへの政治的な圧力もあって、当時は興行的な惨敗を喫してしまう。これでハリウッドでの影響力を失った彼は、自らの映画企画を実現することが難しくなり、その合間を縫って生活のために様々な仕事を引き受ける。この『離愁』も、そうした小遣い稼ぎの一つだった。

内容は極めて通俗的な戦争メロドラマ。第一次世界大戦で最愛の夫ジョンを失った女性エリザベスが、今度は第2次世界大戦で息子を戦場へ送り出さねばならなくなる。ナチス・ドイツの横暴を食い止めなければとの信念に突き動かされて兵役を志願する息子ドリュー、ジョンの忘れ形見まで戦争で失うわけにはいかないと猛反対するエリザベス。すると、そこへ20年前に死んだはずの夫ジョンが別人となって現れる。戦争で負傷して顔を整形し、片腕が不自由になってしまった彼は、愛する妻に惨めな姿を見せたくないと自らの死を偽装していたのだ。己の素性を隠したまま妻子との交流を深め、「人は時として理想のために難しい決断をせねばならない」と説くジョン。かくして、考えを改めたエリザベスは、一人前の男性に成長した我が息子を誇らしい思いで戦争へ送り出す…というわけだ。

第二次世界大戦の終戦から約半年後に全米で封切られた本作。愛する家族を戦争に取られたくないというヒロインの心情に一定の理解を示しつつも、ナチス・ドイツのような絶対悪を阻止するため命を懸けて戦うのは人間として崇高な行いである、成人した息子が戦うことを決意したのなら涙を押し殺して笑顔で送り出すのが母親の務めであるという内容には、戦勝国アメリカならではの偏った戦争観が貫かれていると言えるだろう。今となってはあまり賛同できないメッセージだが、当時のアメリカの価値観の一端を知るという意味においては、それなりに興味深いものがある。

このような母と息子の葛藤と並行して描かれるのが、生き別れになった夫婦の葛藤である。正義の理想をもって第一次世界大戦に志願した夫ジョン、そんな彼の意思を尊重して送り出した新妻エリザベス。しかし戦場で深い傷を負ったジョンは、こんな姿を妻には見せられないと自らの死を偽装する。つまり、妻への愛情よりも自らの男性としての誇りを選んだのだ。そして、本作はそのジョンの選択を全面的に肯定する。まるで、男のプライドは命よりも尊く大切なものだ、生きて帰ってくれればそれでいいなんてプライドを知らない愚かな女の我がままだと言わんばかりに。これまた今となっては共感するのが極めて難しく、20年後に再会した2人の想いが交錯するお涙頂戴シーンにも、いやはや、どうしてそうなるのかねえ…と正直興ざめしてしまう。

というわけで、時代に色褪せてしまった映画であることは否めない。いや、そもそも見る機会が少ないということは、恐らく当時ですら高くは評価されなかったのだろう。それでもなお本作が一見に値するのは、過剰なまでのオーバーアクトで生き別れた夫ジョンの苦悩を体現する、オーソン・ウェルズのほとんど狂気にも似た芝居と存在感ゆえであろう。なんか、いろんな意味で凄いのですよ。歯の浮くようなメロドラマ調の臭いセリフを、まるでシェークスピア劇のごとき格調高さと気迫で演じ切るオーソン・ウェルズ。一人で異彩を放ちまくりだ。

ただし、整形で別人になったジョンに妻エリザベスも全く気付かない…という設定はちょっと頂けません。だって、メイクで髭を生やして顔色を悪くしただけで、どこからどう見たってオーソン・ウェルズなんだもん(笑)。今だったら特殊メイクで別人みたいに変身させられるかもしれないが、まあ、当時はこれが限界だったのかな。それにしてもやっぱり、見分けがつかないくらい変わったとは全く思えない。そこもストーリーが嘘っぽく思えてしまう理由の一つだろう。

妻エリザベス役には当時のハリウッドを代表する大女優クローデット・コルベール。彼女と再婚する心優しき社長ローレンスには、グレタ・ガルボやバーバラ・スタンウィックなど大女優の相手役が多かった二枚目俳優ジョージ・ブレント。その世話焼きな叔母役には『ラインの監視』('43)でアカデミー助演女優賞候補になった名脇役ルシール・ワトソン。いずれも可もなく不可もなく、いつも通りの手堅い仕事をしている。

また、長男ドリューにはその後『サンセット77』や『バークレー牧場』などのテレビドラマで人気スターになるリチャード・ロング。彼は本作で共演したオーソン・ウェルズにいたく気に入られ、続く彼の監督作『ストレンジャー』('46)でロレッタ・ヤングの弟役を演じている。さらに、養女マーガレット役には当時まだ8歳だったナタリー・ウッドが扮しており、これが天使のような可愛らしさで大人の共演者を完全に食いまくり。この愛くるしい少女が、その後大人になって謎の死を遂げると考えると、ちょっぴり切なくなってしまう。

監督は人間狩り映画の原点にして傑作『猟奇島』('32)や、特撮アドベンチャー映画の古典『洞窟の女王』('35)で有名なアーヴィング・ピシェル。全体的にソツのない演出に終始しているが、しかし回想シーンの導入部分を鏡に映し出し、そこからカメラが鏡の中へ入り込んで過去へ戻っていくという手法はなかなか面白く、ジャンル映画を得意とした監督ならではのアイディアに思わずニンマリとさせられる。晩年は赤狩りでハリウッドを追われたことが惜しまれる。

なお、本作は数少ないインターナショナル・ピクチャーズ製作映画でもある。20世紀フォックスの元社長ウィリアム・ゴーツが、'43年に設立した独立系映画会社インターナショナル・ピクチャーズ。しかし、'46年にユニバーサルと合併してユニバーサル=インターナショナルとなったため、たったの3年弱しか存在しなかった幻のスタジオだった。製作本数も9本だけでかなり少なかったが、フリッツ・ラングの『飾り窓の女』('44)やロバート・シオドマクの『暗い鏡』('46)といったフィルムノワールの名作を残している。

評価(5点満点):★★☆☆☆

参考ブルーレイ情報(アメリカ盤)
モノクロ/スタンダードサイズ(1.37:1)/1080p/音声:2.0ch DTS-HD Master Aduio/言語:英語/字幕:英語/地域コード:A/時間:104分/発売元:Classic Flix/MGM
特典:音楽スコア修復担当者レイ・ファイオーラによる音声解説/スチル・ギャラリー/音楽スコア単独再生機能



by nakachan1045 | 2018-09-17 10:53 | 映画 | Comments(0)

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