なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「妖婆」 The Possessed (1976)

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監督:今井正
製作:永田雅一
製作協力:徳間康快
原作:芥川龍之介
脚本:水木洋子
撮影:宮川一夫
音楽:真鍋理一郎
出演:京マチ子
   稲野和子
   児玉清
   江原真二郎
   志垣太郎
   神保美喜
   大滝秀治
   内藤武敏
   北林谷栄
   初井言榮
   東恵美子
特別出演:三国連太郎
日本映画/95分/カラー作品




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<あらすじ>
大正8年の東京。裕福な実業家の娘・お島(京マチ子)は、新三(江原真二郎)というハンサムな青年を婿養子に迎え、盛大な結婚式が執り行われた。お島には3つ年上のさわ(稲野和子)という従姉がおり、2人は幼い頃から実の姉妹のようにして育ったが、しかしさわは財産にも美貌にも才能にも恵まれたお島に人知れず激しい嫉妬心を抱いていた。
初夜の晩、さわの祈祷によって新三はお島と結ばれることが出来なかった。以来、新三はお島の体が「普通ではない」として彼女を遠ざけ、代わりに言い寄ってきたさわを妾にする。憤慨したお島の両親(大滝秀治・東恵美子)が雲竜(三国連太郎)という行者に相談すると、お島には邪霊が取り憑いているという。だが、雲竜は除霊の儀式と称してお島の肉体を凌辱し、結局お島と新三は離婚することとなった。
大正13年に関東大震災が発生し、お島は両親も家も失って一人だけ生き残ってしまう。避難する最中に井原(児玉清)という紳士に助けられた彼女は、北海道に妻子のある井原と結ばれる。ところが、それから2か月後、井原の幼い娘・千鳥が謎の溺死を遂げ、お島は千鳥の怨霊と井原の妻の生霊に呪われる。お腹の中にいる井原との子供を堕ろすことにしたお島。すると、呪術に詳しい産婆(北林谷栄)が除霊効果のある数珠をお島にくれた。
それから10年後、浅草でも名うての仕立て屋となったお島のもとに、その評判を聞きつけたさわが訪れる。女手一つで育てた一人娘・お敏(神保美喜)の着物を仕立てて欲しいというのだ。だが、さわには身勝手な下心があった。お敏が良家の跡取り息子・新蔵(志垣太郎)と婚約したため、娘の後ろ盾としてお島の名声を利用しようと考えていたのだ。そこで、彼女は信仰する邪教・婆裟羅大神の祈祷師(初井言榮)に頼み、お島が過去の恨みを忘れて自分の思い通り動くよう呪文をかけさせる。
しかし、お島が産婆から貰った数珠が呪文の邪魔となった。そこで、さわはお島の目を盗んで数珠を盗み焼いてしまう。すると、今度は婆裟羅大神がお島の体を乗っ取ろうとする。日に日に生気を吸われて弱っていくお島。ついには婆裟羅大神に体を支配され、その姿も醜い老婆へと変貌してしまう…。
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『エクソシスト』('73)の世界的な大ヒットに端を発する'70年代のオカルト映画ブーム。日本でも東映が“日本初のオカルト映画”という触れ込みで『犬神の悪霊(たたり)』('77)というカルトな怪作を発表しているが、実はそれよりも一足早く、しかも『オーメン』('76)の日本上陸直後という絶好のタイミングで封切られたものの、あまり話題にもならず埋もれてしまった作品がこの『妖婆」だ。
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注目すべきは、これが今井正監督と京マチ子のコンビ作であることだろう。今井正と言えば、『また逢う日まで』('50)や『ひめゆりの塔』('53)、『にごりえ』('53)、『ここに泉あり』('55)などなど、数々のヒューマニズム溢れる名作で知られる日本映画界の巨匠。京マチ子も『羅生門』('50)や『雨月物語』('53)、『地獄門』('53)など、世界の映画史に残る大傑作に主演した日本を代表する大女優だ。しかも、脚本を手掛けたのは今井正監督作品に欠かせない水木洋子である。撮影も黒沢映画や溝口映画で有名な大御所・宮川一夫。プロデュースは大映のカリスマ社長だった永田雅一。文字通り日本映画黄金期を牽引した豪華な顔ぶれが揃う。それにも関わらず、なぜ埋もれてしまったのか?答えは至極簡単、どこからどう見ても凡庸なB級ホラー映画なのだ。
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舞台は大正時代から昭和初期にかけて。何不自由なく育った裕福な実業家の一人娘・お島(京マチ子)は、新三(江原真二郎)という美青年を婿養子に迎えるのだが、なぜか初夜の晩に新三が気分を悪くしてしまう。それ以降も、お島の体を見るたび嫌悪感をもよおす新三。しまいには「お前の体は普通じゃない」とまで言われ、深く傷ついた若き処女妻・お島は医者に相談するが、もちろん彼女の体には何ら異常な点はない。それもそのはず、実はお島の遊び相手として育った従姉のさわ(稲野和子)が、嫉妬のあまり彼女に呪いをかけていたのである。で、夫婦仲が拗れたのをこれ幸いに、新三を誘惑してちゃっかり妾となるさわ。一方のお島は、藁をも掴む思いで雲竜(三国連太郎)なる行者にすがるのだが、こいつがとんでもない生臭坊主で、除霊の儀式と称してお島の処女を奪ってしまう。
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で、時は移って大正13年の関東大震災。たった一人生き残ったお島は井原(児玉清)という紳士に助けられ、いつしか妻子ある彼の愛人となるのだが、今度は溺死した井原の幼い娘の亡霊と妻の生霊にたたられ、せっかくお腹に宿った井原との子供を堕ろしてしまう。さらに10年の時が過ぎ、着物の仕立て屋として成功したお島のもとへ、あの宿敵さわが再び姿を現す。女手一つで育てた娘のために着物を仕立てて欲しいと懇願するさわ。しかし、その裏ではお島の名声を自分のために利用しようと、邪教の祈祷師に頼んで呪いをかけていた。ところが、この婆娑羅大神なる邪教の神様、さわのかけた呪いの代償としてお島の肉体を要求。どうやら人間の体に乗り移って生きながらえているらしく、次なる受け皿としてお島を選んだというのだ。
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いやいや、それだったら依頼人のさわに代償を支払わせるのが筋ってもんだろ!と思うのだが、どうにもこうにも理屈の通じない勝手気ままな神様らしく、みるみるうちにお島は醜い老婆の姿へと変貌することに。しまいにはすっかり婆娑羅大神によって体を乗っ取られてしまい、次なる器としてさわの愛娘・お敏(神保美喜)を誘拐。その恋人の勇敢な若者・新蔵(志垣太郎)が救出に乗り出す…ってなわけだ。
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一言でまとめるなら、邪霊と邪教に人生を狂わされた女性の転落物語。芥川龍之介の原作小説は、妖術を使う老婆に魅入られた若い娘をその恋人が救い出すというだけの短編なので、全体の3分の2以上は映画版のオリジナルストーリーだ。とりあえず、女性の社会的地位が低かった当時の世相風俗を織り交ぜてはいるものの、しかしそんなフェミニズム的要素もストーリーの上では殆ど意味をなしていない。それ以前に、水木洋子の脚本自体が極めて退屈。とても、小林正樹監督の傑作『怪談』('65)を手掛けた人の仕事とは思えない。
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昔ながらの怪談映画の伝統を踏襲した、今井正監督による恐怖演出も古色蒼然といった印象だ。所々で洋画的なモダンホラーを意識しており、僅かながらもハッとさせられるようなシーンがないでもないのだが、しかし全体的には中途半端な仕上がりと言わざるを得ないだろう。お島が邪神に肉体を蝕まれていく過程の描写も、恐らく製作サイドとしては『エクソシスト』を再現したかったのだろうが、しかし実際にやっていることは新東宝の怪猫映画とほとんど変わらず。当時の日本映画界の予算不足と技術力不足も足かせとなっているように思う。
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ただし、文字通り体を張った京マチ子の大熱演はいろんな意味で見ものだ。当時52歳の堂々たる熟女・京マチ子が、花も恥じらう18歳の生娘から特殊メイクで醜い老婆となるまでのヒロインお島に扮する。しかも、おっぱいポロリのサービスショットまであり。はだけた両胸を江原真二郎にむんずと掴まれ、乳首を吸われて顔を赤らめる京マチ子。'70年代の日本映画において女優のヌードは必須。当時まだ新人だった神保美喜も脱いでいるが、しかし京マチ子ほどのベテラン大女優が脱ぐというのは、それ相当の覚悟を感じると同時に一抹の寂しさみたいなものも覚える。そこまでせにゃならんかったのかねえ…と。
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そんなこんなで、日本映画界を代表する超一流のスタッフがズラリと揃い、京マチ子という日本映画史に燦然と輝く大女優を主役に据えながら、なぜか結果としてグラインドハウス臭漂うB級エクスプロイテーション映画になってしまった珍品。決しておススメというわけではないが、しかし好事家の映画ファンであれば一度くらい見ておいても損はないかもしれない。
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評価(5点満点):★★☆☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:95分/発売元:株式会社KADOKAWA
特典:フォトギャラリー



by nakachan1045 | 2018-10-13 21:11 | 映画 | Comments(0)

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