なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
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「ザ・トレイン」 Beyond the Door Ⅲ (1989)

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監督:ジェフ・クイニー
製作総指揮:オヴィディオ・G・アッソニティス
脚本:シーラ・ゴールドバーグ
撮影:アドルフォ・バルトーリ
特殊メイク:ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ
美術デザイン:マリオ・モーリ
音楽:カルロ・マリア・コルディオ
出演:メアリー・コーナート
   ボー・スヴェンソン
   サヴィーナ・ゲルサック
   ヴィクトリア・ジニー
   サラ・コンウェイ・チミネーラ
   ウィリアム・ガイガー
   ルネ・ランコート
   ジェレミー・サンチェス
   アレックス・ヴィターレ
   ロン・ウィリアムズ
   イーゴル・ペルヴィッチ
イタリア・ユーゴスラヴィア合作/94分/カラー作品




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<あらすじ>
ロサンゼルスからやって来た7人の男女高校生が、ユーゴスラヴィアの首都ベオグラードの空港へ降り立つ。出迎えたのは現地の大学教授アンドロモレク(ボー・スヴェンソン)。一行の目的は、ウフィルと呼ばれる村で2000年以上前から行われている古代宗教の受難劇を見ることだった。
そのウフィルという村は、セルヴィア系の血を引く女子高生ビヴァリー(メアリー・コーナート)の父親の出身地だった。アンドロモレク教授から古代宗教のマークをかたどったバッジを渡された高校生たちは、それがビヴァリーの体に生まれつきある赤いアザとそっくりであることに驚く。
船に乗って辿り着いたウフィル村は、人々が中世そのままの暮らしを続けている場所だった。学生たちが眠りにつくと、怪しげな老女ヴェスナ(オルガ・ポズナトフ)はビヴァリーが処女であることを確認する。一方、そのほかの生徒たちが宿泊するあばら家では、村人たちがドアを封鎖して火を放った。命からがら逃げだす若者たち。ビヴァリーも彼らに合流したが、男子学生リチャードが逃げ遅れて犠牲になる。
森を抜けた一行は、ちょうど通りがかった機関車に飛び乗るものの、メラニーとラリーの2人が取り残される。ビヴァリーたちは車掌に事情を説明するものの、機関車には通信手段がないため、翌朝到着予定の次の停車駅に着くまで待たねばならない。車掌室には言葉の喋れない若者マリウス(イーゴル・ペルヴィッチ)、貨物車両には女泥棒サヴァ(サヴィーナ・ゲルサック)が乗っていた。
その晩、機関車が真夜中に急停車。運転手や車掌が次々と変死を遂げ、客室車両を切り離した機関車は勝手に動き出す。異変に気付いたビヴァリーの耳に、アンドロモレク教授の声がこだまする。お前は悪魔の花嫁になる運命なのだと。実はウフィル村の住人達は悪魔崇拝者で、今回の旅は悪魔に捧げる処女=ビヴァリーをおびき出すための罠だったのだ。
かくして、呪いをかけられた機関車はウフィル村へ戻るために暴走を開始。線路のない沼地までも突っ切って突進していく。その間、一人また一人と悪魔に殺されていく若者たち。一方、機関車の異変に気付いた鉄道当局は、なんとかして暴走を食い止めようとするのだったが…。
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『デアボリカ』('74)に『テンタクルズ』('76)、『殺人魚フライング・キラー』('81)など数多くのB級ホラー映画を手掛け、他にもステルヴィオ・チプリアーニのテーマ曲も名高い悲恋ドラマの名作『ラストコンサート』(’76)や、“愛の妖精”ことアニー・ベル主演のソフトポルノ『卒業生』('76)、レナート・チェステ少年の名演に日本中が涙したメロドラマ『メリーゴーランド』('74)などなど、イタリアを拠点にありとあらゆるジャンルの映画をヒットさせたギリシャ人製作者オヴィディオ・G・アッソニティス。そんな希代の商売人による異色のオカルト・ホラーである。
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一応、アメリカをはじめとする一部地域では、アッソニティスが共同監督を兼ねた『デアボリカ』、マリオ・バーヴァ監督による『ザ・ショック』('76)に続く、”Beyond the Door”シリーズの第3弾として配給された本作だが、いずれの映画もストーリー的な関連性は一切ない。そもそも『ザ・ショック』はアッソニティスのプロデュース作品ですらなかったしね。あくまでも、配給会社の要望で決まったタイトル。なので、はじめから単独の映画として企画された作品だった。
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主人公はロサンゼルスに住むセルビア系の女子高生ビヴァリー。ただでさえ根暗でクラスでも浮いた存在の彼女は、つい最近父親を亡くしたことから一層のこと気分が落ち込んでいるのだが、そんな折に学校の修学旅行で両親の故郷ユーゴスラヴィアを訪れることとなる。その目的は、セルビアのウフィルという村で2000年以上続いている「受難劇」を体験するためだ。普通、「受難劇」と言えばイエス・キリストの受難を指すが、こちらはキリスト教が誕生する前から存在する古代宗教の伝統行事。そのルーツは定かでないものの、どうやら若い処女の受難をテーマにしているらしい。
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ベオグラードの空港に降り立った学生たちを出迎えたのは、その「受難劇」に詳しい地元の大学教授アンドロモレク。一見したところ温厚そうな中年紳士だが、アメリカから電報で届いたビヴァリーの母親の訃報を握りつぶすなど、いかにも怪しげな様子である。で、船に乗ってウフィル村へと到着した一行。ここはビヴァリーの父親の生まれ故郷でもあるのだが、まるで中世の怪談物語から抜け出てきたような不気味な場所。森の中にひっそりと佇む、近代文明から取り残された寒村といった風情だ。しかも、村人たちも顔色の悪い不愛想な爺さん婆さんばかり。これまた相当に怪しい。
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で、なぜかビヴァリーだけがアンドロモレク教授と一緒に母屋へと通され、ほかの学生たちは薄汚いあばら家へ。睡眠薬入りスープを飲まされ熟睡したビヴァリーの股間に手を差し込む太った魔女みたいな婆さん。満足げにニターッと笑って一言、「処女だ」。すると、おもむろに村人たちが学生一同の泊まるあばら家のドアを釘で打ち付け、一斉に火を放って焼き殺そうとする。というか、ベッドが自然発火するんだよね。
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着の身着のままで逃げ出す若者たち。一人だけ逃げ遅れて丸焦げになっちゃったが、とりあえず騒ぎで目を覚ましたビヴァリーも合流して一緒に村を脱出。通りがかった蒸気機関車に飛び乗るのだが、男女2人だけ取り残されてしまう。で、英語の出来る車掌さんに事情を説明して助けを求めるも、残念ながら機関車に通信機器はなし。次の駅で警察に通報するしかないのだが、到着するのが翌朝になってしまう。仕方なく車内で一夜を過ごすことにするのだが、真夜中になって機関車は急停車。線路の向こうに火の手が燃え上がり、煙の中からアンドロモレク教授が姿を現したのだ。この人、やっぱり常人ではございませんでした。
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見えない力で次々と殺される車掌さんと機関士たち。次の瞬間、蒸気機関車は勝手に動き出して暴走を始める。ここからは一転して、スーパーナチュラルなディザスター映画へと突入。猛スピードで走り続ける機関車をなんとかして止めようと、若者たちと貨物車両に忍び込んでいた女泥棒サーヴァが知恵を絞るものの、しかし見えない邪悪なパワーによって一人また一人と無残に殺されていく…というわけだ。
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実は悪魔を崇拝する邪教の巣窟だったウフィル村。アンドロモレク教授はそのリーダーで、彼らの狙いは村人の血を引く若き処女ビヴァリーだった。「受難劇」の正体は悪魔への生贄の儀式。地上に復活した「闇の王子」の花嫁として、生まれついてからその運命にあるビヴァリーを捧げるのだ。学校の修学旅行は彼女を村へおびき寄せるための罠。一緒にやって来た同級生たちは皆殺しにされる運命だったのである。
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かくして、悪魔に乗っ取られた機関車はウフィル村を目指してUターン。異変に気付いた鉄道当局も機関車の暴走を止めようと乗り出すが、なにしろ悪魔が相手なので全く歯が立たない(笑)。行く手を遮るものを次々と破壊してはねのけ、しまいには線路まですっ飛ばして森の中や沼地を駆け巡るモンスター・トレイン。果たして、ビヴァリーと若者たちの運命やいかに…!?
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そんなこんなで、オカルト・ホラーに鉄道パニックを合体させた、一粒で二度美味しいサービス精神満点なB級エンターテインメント。アッソニティスによると、アンドレイ・コンチャロフスキー監督の『暴走機関車』('85)とジョルジ・パン・コスマトス監督の『カサンドラ・クロス』('76)をヒントにしたそうだ。本物の機関車を使った暴走シーンはまずまずの迫力。トラックや貨物列車とのクラッシュ・シーンなど、それなりにスペクタクルな見せ場も用意されている。まあ、線路を外れた機関車が森の中や沼地を疾走するシーンのミニチュア撮影はショボいけど、それもまたB級映画ならではの味わいでございましょう。
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もちろん、ホラー映画としても仕上がりは悪くない。東欧ならではのスラヴ的なゴシック・ムードに加えて、共産圏ならではの閉鎖的で陰鬱な世界観が禍々しさを盛り上げる。セルビアの雄大な自然を捉えたカメラワークも幻想的で美しく邪悪だ。これは、ほぼ無名に近いアメリカ人ジェフ・クイニー監督のお手柄というよりも、ジュゼッペ・ロトゥンノやトニーノ・デリ・コリなどのイタリアを代表する大物カメラマンに師事した撮影監督アドルフォ・バルトーリの手腕であろう。
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また、アッソニティスとは『デアボリカ』以来の付き合いである特殊メイク・アーティスト、ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリの手掛けた血みどろスプラッターも見どころ。ロサンゼルス空港でビヴァリーを送り出した母親が、タクシーに突っ込んだ鉄筋で首を吹っ飛ばされるシーンを筆頭に、バラエティ豊かな残酷描写を楽しませてくれる。『ポルターガイスト』('82)をパクった顔面ぐちょぐちょシーンもご愛敬。まあ、あくまでも低予算映画なので、いかにも人形っぽいダミー・ヘッドなどの粗雑さは否定できないのだけど。ちなみに、『デアボリカ」の共同監督ロバート・バレットの正体はピアッツォーリだ。
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そんな本作の最大の弱点は脚本だろう。イタリア映画らしいと言えばイタリア映画らしいのだが、とにかくストーリーの構成が大雑把で適当。伏線になっていない伏線や、意味のないシーンがかなり目立つ。脚本家のシーラ・ゴールドバーグは、もともとイタリア産B級映画の英語バージョンでセリフの翻訳やダイアログ・コーチを務めていた人。脚本を手掛けたのはルッジェロ・デオダート監督のスラッシャー映画『ブラディ・キャンプ/皆殺しの森』('86)と本作だけだ。
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メインキャストを務める若者たちだが、ヒロインのビバリーを演じるメアリー・コーナート以外はローマのアメリカン・スクールに通っていたティーンエージャー。要するに全くの素人だ。実は彼ら、アッソニティスの息子の同級生でもある。そもそも本作の企画自体、ホラー映画ファンの彼らにせがまれて立ち上げられたものだったらしい。アンドロモレク教授役のボー・スヴェンソンは、『ノース・ダラス40』('79)や『デルタ・フォース』('85)などでもお馴染みの、スウェーデン出身のハリウッド俳優。ビヴァリーの母親を演じているヴィクトリア・ジニーはマカロニ西部劇などで活躍したイタリア女優で、ランベルト・バーヴァ監督の『デモンズ』('85)や『グレイヴヤード』('87)に出ていた俳優カール・ジニーの母親だ。また、女泥棒サーヴァ役のサヴィーナ・ゲルサックは当時のアッソニティスの恋人で、彼のプロデュース作品にたびたび出演している。
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なお、日本だとブルーレイはおろかDVDも出ていない本作。ドイツでリリースされたブルーレイは、'08年にアメリカで出たDVDと同じデジタルマスターを使用している。なので、画質は決して悪くないもののブルーレイとして考えるとイマイチ。できればHDでテレシネからやり直して欲しかったところだ。特典映像のインタビューもアメリカ盤DVDからの移植。とりあえずメディアブック仕様の豪華パッケージは魅力だが、アメリカ盤DVDから無理に買い替える必要はあまりないかもしれない。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考ブルーレイ&DVD情報(ドイツ盤)※1,000枚限定プレス
ブルーレイ
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/1080p/音声:5.1ch DTS-HD Master Audio・2.0ch DTS-HD Master Audio/言語:英語・ドイツ語/字幕:なし/地域コード:B/時間:94分
DVD
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:5.1ch Dolby Digital・2.0ch Dolby Digital/言語:英語・ドイツ語/字幕:なし/地域コード:2/時間:91分
発売元:JSV
特典:オヴィディオ・G・アッソニティスのインタビュー(2008年制作・約26分)/アドルフォ・バルトーリのインタビュー(2008年制作・約12分)/オリジナル劇場予告編



by nakachan1045 | 2018-11-03 14:25 | 映画 | Comments(0)

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