なかざわひでゆき の毎日が映画三昧


映画/海外ドラマライターの「なかざわひでゆき」による映画評論日記
by なかざわひでゆき
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「日本の首領(ドン) 野望編」 Japanese Godfather: Ambition (1977)

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監督:中島貞夫
企画:俊藤浩滋
   日下部五朗
   松平乗道
   田岡満
原作:飯干晃一
脚本:高田宏冶
撮影:増田敏雄
衣装デザイン:芦田淳
音楽:黛敏郎
   伊部晴美
出演:佐分利信
   三船敏郎
   菅原文太
   松方弘樹
   岸田今日子
   高橋悦史
   金沢碧
   ユセフ・トルコ
   安倍徹
   浜田寅彦
   渥美国泰
   田島義文
   内田朝雄
   東恵美子
   藤岡琢也
   金子信雄
   成田三樹夫
   小沢栄太郎
   佐藤慶
   渡辺文雄
   小松方正
   小池朝雄
   嵐寛寿郎
   にしきのあきら
   星正人
   二宮さよ子
   折原真紀
   田中浩
    野坂昭如
   藤原富美男
   織田あきら
   志賀勝
日本映画/141分/カラー作品




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<あらすじ>
昭和46年。一宮病院を退院した中島組組長・佐倉(佐分利信)の全快を祝うパーティが盛大に催される。中島組は佐倉の右腕だった辰巳(前作の鶴田浩二)が死亡して以来、若衆頭が不在のまま一時は弱体化したが、実質的な後継者である幹部・松枝(松方弘樹)と佐倉の娘婿・一宮医師(高橋悦史)のビジネス手腕によって見事立ち直っていた。
佐倉の退院を機に再び全国制覇への道を歩み始める中島組。松枝は幹部仲間の片岡(成田三樹夫)や舎弟の総会屋・樽井(藤岡琢也)、情報屋の鷲津(田口計)らを従え、横浜に政財界とのコネを拡げるためのダミー会社・桜商事を設立。まずは手始めとして、新興の造船会社ジャパン・シップの乗っ取りを画策しする。大手銀行の頭取・田代(渡辺文雄)が同性愛者であると知った彼は、部下の美青年・若宮(にしきのあきら)を使ってジャパン・シップの内情を探り、業界最大手の五光汽船がジャパン・シップの株買い占めを計画していると突き止め、樽井を使って同社の汚職スキャンダルを煽り妨害しようとする。
これに危機感を抱いたのが、右翼界の大物・大山(内田朝雄)の後ろ盾を得た関東ヤクザの重鎮・大石(三船敏郎)が会長を務める関東同盟だ。実は、五光汽船のバックには関東同盟が付いていた。しかし、五光汽船の社長・瀬戸山(渥美国泰)は、影のフィクサー・岡山(小沢栄太郎)の仲介で秘かに佐倉と接触し、ジャパン・シップの乗っ取りで中島組と提携する。その一部始終を画策したのは松枝だった。しかし、ジャパン・シップ社長・横川(阿部徹)の息子のセックス・スキャンダルに巻き込まれた若宮が関東同盟に殺され、さらに大山が後藤通産大臣(寺田寅彦)に圧力をかけたことで乗っ取り計画は頓挫してしまう。
関東同盟に敗北を喫した中島組だが、今度は東南アジアの石油利権を巡って五光汽船と再び手を組むこととなる。ジャパン・シップは政治家を仲介して東南アジアの独裁国家ガルダスソネ共和国の石油開発を請け負う算段で、それを横取りしようというのだ。佐倉から中島組の若衆頭として正式に指名された松枝は、補佐役に傘下の河元組組長・天坊(菅原文太)を任命。高級クラブを情報収集の隠れ蓑にしようと考えた彼は、一宮の幼なじみである旧華族の令嬢・姉小路尚子(岸田今日子)にクラブの経営を任せる。
高級クラブ「シャングリラ」はたちまち政財界の社交場として人気となる。尚子からの情報でガルダスソネ共和国のアナンタ大統領(ユセフ・トルコ)が来日することを知った松枝は、政府与党の幹事長・平山(金子信雄)を抱き込んで大統領との接触を図るものの、関東同盟の妨害で思うようにいかない。だが、極秘で日本での滞在期間を延長したアナンタ大統領が「シャングリラ」に来店。そこで大統領が見初めたのは、意外にも怪我の治療をしてくれた一宮病院の看護婦・かおる(金沢碧)だった。
松枝と尚子はかおるを大統領夫人に仕立て上げ、ガルダスソネ共和国との太いパイプを作ることを画策。かおるの恋人である中島組の若者・柴田(星正人)は猛反対したため始末される。ところが、兼ねてから松枝の若衆頭就任に不満を抱いていた片岡が裏切り、関東同盟を介して野党議員に中島組が不利となる情報を提供。またもや松枝は窮地に立たされる…。
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『やくざ戦争 日本の首領(ドン)』の大ヒットを受けて作られた『日本の首領(ドン)』シリーズ第2弾。これだけの大作映画にも関わらず、前作から約9か月後の劇場公開だったことを考えると、恐らく即座に企画が決まって急ピッチで製作されたものと思われる。まあ、もともと日本映画は予算にも時間にも余裕なしが当たり前なのだけど、それにしたって2時間20分に及ぶスケールの大きなストーリーのオールスターキャスト巨編ですよ。『砂の器』だって実質的な撮影期間だけで10か月かけているのに…って、そうか、松竹と東映を一緒にしちゃいかんか(笑)。
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それはともかくとして、今回は佐分利信VS三船敏郎という超ヘヴィー級の大御所スター対決が最大の見どころ。前作は関東ヤクザのトップを務めるのが菅原文太で、それはそれでカッコ良かったことは確かなのだけど、しかしやはり天下のベテラン名優・佐分利信の向こうを張るライバルとしては役不足だった(厳密にいうと鶴田浩二のライバル的存在か)。その点、相手が世界のミフネであれば敵に不足なし。中島組が関東同盟にやり込められる展開にも納得がいく。とはいえ、それでもなお一緒に並ぶと、コワモテの重鎮・三船さえも格下の若造に見えてしまうのだから、佐分利信の全身から醸し出す威圧感というか、役者としての尋常ではない凄みのようなものには感服せざるを得ない。すげえな…と思わずため息が漏れる。
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物語は前作から2年後。佐分利信演じる中島組組長・佐倉が娘婿・一宮(高橋悦史)の経営する病院から退院し、病気の全快を祝う祝賀パーティが盛大に開かれるところから始まる。前作のラストで亡くなった若衆頭・辰巳(鶴田浩二)の後任はまだ空いたままだが、その右腕だった東大出のエリート・ヤクザ松枝(松方弘樹)が実質的に組をまとめている様子だ。ただし、その先輩である片岡(成田三樹夫)が若衆頭のポストを虎視眈々と狙っており、やり手の松枝をあからさまに疎んでいる。前作では兄貴分の辰巳に忠誠を尽くしていた片岡だが、なんたって演じているのが成田三樹夫だからね。いよいよ本性を出しましたってとこか。いやあ、怪しいと思ってたんだよな(笑)。そんな内紛の火種が、後々になって大きな波乱を引き起こす。
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一方、前作ではトラブルメーカーの次女・真樹子(折原真紀)が頭痛の種だった佐倉だが、どうやら今も親子の関係はこじれたままらしく、真樹子は佐倉に黙ってアメリカへ逃亡してしまった。連絡を取っていたのは妻・雪江(東恵美子)と長女・登志子(二宮さよ子)のみ。自分だけが蚊帳の外だったことを知った佐倉は憤慨…というより、ショックを受けて傷ついてしまう。で、そこへ真樹子が突然の帰国。しかもアメリカ人の旦那を連れてきたもんだから、さらなるショックを受けた佐倉は「うちの家系に毛唐の血が入るのは我慢ならん!」とマジギレ。毛唐ってあんた…(笑)。今だったら完全にNGワードですな。他にも、なにかと放送禁止用語が連発の本作。いやはや、昭和も遠くなりけりを実感させられます。しかも、そのアメリカ人の旦那がとんでもない女好きの暴力クソ野郎で、組長の娘婿という立場を利用してやりたい放題。そんなこんなで佐倉家にもまた、波乱万丈の不穏な空気が漂いまくる。
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とはいえ、和製『ゴッドファーザー』を標榜した前作に比べると、今回はヤクザ・ファミリーを描いたドラマ要素はかなり薄まっている。あくまでもストーリーの主軸は、政財界を巻き込んだ関西VS関東のヤクザ抗争と、国際的な石油利権を巡る政治的駆け引き。さしずめ、ヤクザと政界・財界の黒い相関図を暴いたポリティカル・サスペンスといったところか。今回もまた登場人物がやたらと多いため、あれ、こいつは関西だけ関東だっけ?誰の舎弟だったっけ?この政治家や社長はどっちと通じてるんだったっけ?と混乱する場面が多々あるものの、トータルでは前作よりも勢力図が分かりやすく整理されているので、それなりにストーリーも頭に入ってきやすい。逆に言うと、これは脚本をまとめるのが大変だったろうなあ、高田宏冶GJ!と感心する。
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また、今回はメインストーリーに絡む女性の存在感も増しており、男性社会における権力闘争で理不尽な犠牲を強いられる女たちの悲哀にも焦点が当てられる。そのカギとなるのが、一見すると対照的な旧華族の貴婦人・尚子(岸田今日子)と清楚で控えめな看護婦かおる(金沢碧)だ。元外交官の未亡人で頭脳明晰かつ野心的な尚子は、本当は男に生まれたかったと公言するほど権力志向の強い女性。なので、松枝から政財界の情報収集&裏工作のために高級クラブのママを任せたいと言われ、その場で即座にオファーを引き受ける。彼女にとって、男たちのパワーゲームに参加できるまたとないチャンスだからだ。
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一方のかおるは真面目で責任感が強く、命を救えなかった患者のことを思い出しては涙する心優しい娘。貧しい下っ端ヤクザの恋人にも献身的に尽くし、愛する人と結婚出来れば地位も名誉もお金も要らないと考えるナイーブな女性だ。そんな2人が運命の巡り合わせで関わることとなり、外交戦略のコマとして利用され悲劇の道を歩むことになる。…と、ここで何となく気付いた人もいると思うが、このかおるのモデルになったのはデヴィ夫人。まあ、全く似ても似つかないキャラ設定だし、劇中でかおるが辿る運命もデヴィ夫人のそれとはまるで違うのだけれど。そもそも、中島組のモデルとなった山口組はデヴィ夫人の一件に無関係だしね。事実をヒントにしたフィクションといったところでしょう。
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さらに、男社会の残酷な現実を知ることで、反対に女性としての考え方や意識を強く持つようになった尚子と、どこまでも男社会の非情なルールに縛られ、個人の倫理観よりも組織の論理を優先させてしまう松枝の、愛し合いながらも理解しあえない大人のロマンスにも渋い味わいがある。夕暮れの波止場での逢瀬などは、まるでフランス映画のワンシーンのように洒落ている。岸田今日子もエレガントでミステリアスで色っぽい。
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そうそう、女性ドラマの比重が増えたからというわけではないはずだが、今回は'70年代の東映らしいエロスの要素も盛り込まれている。前作では皆無に等しかった女優のヌード・シーンも本作にはアリ。そんな裸要員として投入されたのが、ジャパン・シップ御曹司の恋人である人気歌手を演じるひろみ麻耶。本作の公開直前に共演者にしきのあきら(現・錦野旦)を道連れにして逮捕された大麻女優である。また、冒頭ではゲイ・バーのショータイムでトップレスのニューハーフ・ダンサーたちが大挙して登場。乱闘騒ぎで男の地が出るというベタなギャグまで披露する。おかげでなんとなく作品全体にB級感が漂ってしまったというか、隠そうにも隠し切れない東映色がダダ洩れしてしまったというか(笑)。
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なお、メインキャストの多くが前作から引き続いて同じ役を演じている一方、全くの別キャラで再登板している役者もチラホラ。例えば、前作で関東ヤクザの急先鋒を演じた菅原文太が、なぜか今回は中島組傘下の組長として登場。いやいや、おんなじ顔しているんだけどね!誰も不思議に思わんのか?と言いたいところだが、そもそも東映は『仁義なき戦い』シリーズでも同じことやっているので、まあ、なんというか、パラレルワールドみたいなもんなのでしょう(笑)。志賀勝だって前回は中島組に殺されていたけど、今度は松枝の手下としてひょっこり顔を出しているし、岩尾正隆なんか前作では刑事だったけど今回は関東同盟の幹部だからね(笑)。
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そんな中、前作とは別人の国会議員、しかも田中角栄をモデルにした与党幹事長を演じる金子信雄が、今回も出色の怪演を披露。昭和世代にはお馴染みの角栄節を、これでもかとデフォルメした悪ノリっぷりがまことに痛快だ。また、菅原文太の先代組長として元祖・鞍馬天狗こと伝説の時代劇スター、嵐寛寿郎も登場。半ばゲスト出演的な役回りで、佐分利信や三船敏郎との絡みがないのは惜しまれる。口八丁手八丁の総会屋・樽本役の藤岡琢也もいい味を出して好演だ。また、中島組に雇われた殺し屋として作家・野坂昭如がチラリと出てくる。そのカミさんで幼い子供を抱えた貧しい主婦として、前作で場末のクラブのホステスを演じていた橘真紀も姿を見せる。さらに、関東同盟がアナンタ大統領に献上する元銀座の一流ホステスは沢野火子。綺麗なんだけど東映での扱われた方は本当に不遇だったよなあ。
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評価(5点満点):★★★☆☆

参考DVD情報(日本盤)
カラー/ワイドスクリーン(2.35:1)/音声:2.0ch Dolby Digital Mono/言語:日本語/字幕:なし/地域コード:2/時間:141分/発売元:東映ビデオ
特典:フォトギャラリー/予告編(3種類)



by nakachan1045 | 2018-11-10 06:02 | 映画 | Comments(0)

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